公共事業の効率的な執行が求められる中で, 会計検査において, 予算の執行や施策, 事業の実施状況などのすべてから一部を検査対象として選び, 正確性, 合規性, 経済性, 効率性, 有効性などの観点から検査を行っている.
本稿では, 検査に沿って記述されている事例から, 戦後に実施された公共工事に対する会計検査について建設プロジェクト実施過程の各分野にわたって検査内容, 指摘内容の移り変わりを分析した。
分析結果をみると, 昭和30年代は施工, 40, 50年代は積算, 施工, 60年代以降は設計, 積算, 契約, 施工とそれぞれの年代で各分野の問題点を取り上げているほか, 公共事業のストックに着目して事業の効率性, 有効性の観点からの評価を積極的に行っている.
多くの事例において, 予定価格の根拠としての積算基準, 構造物の設計基準, 施工の妥当性・適正性の面から, 発注機関に対しコスト縮減を図らせたり, 適切な品質管理を行わせていることなどを確認した.併せて, 技術者が公共工事に携わるうえでの技術審査の留意点についての考察をした.大きな転換点を迎えている公共事業では透明性, 客観性, 競争性を確保するため, 事業の実施過程, 事業評価に対する説明責任 (accontabihty) の充実が求められており, 会計検査においても評価手法の確立に着手しつつある。
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