建設省では, 1965年当時より, 公共土木工事の効率的な事業執行を図るため, 建設省制定土木構造物標準設計 (以下「標準設計」) という, 土木構造物に対する設計の標準化を推進している。当時は, コンクリートや鉄筋等の材料費が労務費に比べて相対的に高価であったため, 材料数量が最少となる設計の考え方で標準設計が作成されていた。その結果, 構造物の形状や配筋は複雑化する傾向にあり, 施工に際しては多くの手間と熟練工を要していた。
その後, 労務賃金は材料単価に比べて大きくなった。その結果, 例えば, 場所打ち方式による逆T式擁壁では, 全工事費に占める労務費の割合は, 1965年には3割にも満たなかったものが, 1995年には約6割にも達している状況にある。さらに, 少子化・高齢化等が進展しており, 将来, 鉄筋工や型枠工といった熟練工の不足・高齢化が予想されている。
そこで, このような背景のもと, 従来の材料中心の考え方から, 施工性をより重視した設計の考え方への転換も, 経済性の面および施工性を改善する上で重要な視点になるものと考えた。本報告は, 標準設計の代表的な構造物である, RC構造のボックスカルバート, 逆T式擁壁等を取り上げ, 施工性を向上させる各種方策の提案およびそれらに対する経済性および施工性に関する評価結果等について紹介するものである。
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