環境システム研究論文集
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28 巻
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  • 天野 耕二, 渥美 史陽
    2000 年 28 巻 p. 1-8
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    全国の324市制自治体を対象に, 事業系ごみの受け入れ状況や収集範囲などの条例・規則とごみ収集量や総ごみ処理量との関係について統計分析を行った。事業系ごみを受け入れない自治体は受け入れる自治体に比べて総処理量原単位平均値が約200 (g/人/日) 小さいことがわかった。収集量原単位と人口あたりの飲食店数やサービス事業所数との相関関係を調べた結果, 手数料形態, 排出容器指定, ごみ分別方式といった収集制度ごとの分類において有意な相関が見られた。事業系ごみの直接搬入処理単価と事業系ごみ排出原単位との問に有意な負の相関が確認され, 有料化制度の有効性が実証できた。事業系ごみの収集範囲や種々の収集条件によって, 処理計画対象とするごみ収集量が有意に変動することが確認できた。
  • 松本 亨, 鮫島 和範, 井村 秀文
    2000 年 28 巻 p. 9-19
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    ディスポーザーは, 生活者の利便性向上のみならず, 家庭からの生ゴミを分離・回収できるシステムとして注目されている。本研究は, ディスポーザーを導入することによる都市生活排水及び廃棄物処理システムへの影響を, ライフサイクルアセスメント (LCA) 及びライフサイクルコスト (LCC) により評価した。導入ケースとして, ディスポーザー対応型浄化槽を設置するケースとしないケースを想定した。浄化槽設置ケースではさらに, 汚泥の再資源化としてコンポスト及び乳酸生成を比較評価した。また, 階層化意志決定法を用いて, 環境影響指標及び経済性指標の他, 利便性, 資源循環性を加え総合評価を試みた。
  • 松本 亨, 岩尾 拓美, 大迫 洋子, 井村 秀文
    2000 年 28 巻 p. 21-32
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    都市の有機物資源循環を評価するために, まず食物由来物質循環とそれに伴って直接・間接に投入される化石燃料及び環境負荷について考察した。その上で福岡市を対象に, 食物由来物質循環として, 都市の炭素及び窒素循環を解明した。また, これに付随して直接・間接的に排出されるCO2, T-Nを定量化した。これら3つの物質循環をもとに, 都市の資源循環指標群を提案した。具体的には, 都市生活者1人を基準とした炭素循環効率指標, 資源循環の健全性を表す指標, 資源循環に伴う環境負荷を表す指標, 循環の輪の大きさを表す指標を提案した。その適用例として, 具体的な対策を導入した場合のシナリオ分析を行った。
  • 和田 光永, ハンマード アミン
    2000 年 28 巻 p. 33-38
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    セメント製造は焼成・粉砕工程で多量のエネルギーを消費するため, 多量のCO2が発生する. 一方, 石炭火力発電及び粗鋼生産の副産物として産出されるフライアヅシュや高炉スラグを混合セメントの混合材として使用することにより, 石灰石の使用量や, エネルギーの消費量を節約でき, CO2排出量を減らすことができる。本研究では, 混合セメントの利用拡大による環境負荷低減効果を定量的に評価するために, 副産物の各セメント工場への運搬量を考慮した副産物リサイクル計画モデルを確立する。本モデルは地理情報システム (GIS) と最適化手法を用いて実行される。また環境税の導入が混合セメントの利用促進に与える影響についても検討を行う。
  • 枝澤 啓司, 澤田 俊明, 水口 裕之
    2000 年 28 巻 p. 39-45
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本研究では, 小規模な建設構造物であるコンクリート擁壁と木製擁壁について, CO2排出量を算出した。検討モデルは, 高さ2.0m・延長100mの小規模な擁壁で, コンクリート擁壁及び木製擁壁とも同等の擁壁安定性能を有する。そして, コンクリート擁壁と木製擁壁のCO2排出量の比較と特徴分析を行い, 擁壁構造物に木材を利用する場合の有効性について考察した。その結果,(1) 木製擁壁は, コンクリート擁壁に対して材料のCO2排出量を抑えることができること,(2) 擁壁施工時の木製擁壁のCO2排出量はコンクリート擁壁の約6分の1であること,(3) 木製擁壁の耐用年数が9年のとき, 耐用年数が50年とした場合のコンクリート擁壁と同程度の【CO2排出量】となること, などの知見を得た。
  • 藤田 壮, 盛岡 通, 徳永 拓
    2000 年 28 巻 p. 47-53
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    日本の都市では高度経済成長期に建造された膨大な建設ストックが, 21世紀の前半に一斉に更新の時期を迎える.それに伴う膨大な建設廃棄物の循環利用は, 新規資源の希少化や最終処分場の社会的コスト上昇のもとで緊急の課題となる.本研究では建設構造物の主要資材であるコンクリートをとりあげ, 建設廃コンクリートのリサイクルパスのフレームを示すとともに, 国土スケールの建設物資材のマテリアルフロー分析を通じて, 現状の社会システム下でのコンクリート廃棄物のリサイクル特性を明らかにする.さらに大阪市を対象に, 都市と地区単位で分散型の廃コンクリートの循環利用を実現することによる環境負荷削減効果を試算し, それにもとつく政策設計への知見を示す.
  • 林 良嗣, 加藤 博和, 北野 恭央, 喜代永 さち子
    2000 年 28 巻 p. 55-62
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    都市が地球や地域に及ぼす環境負荷の定量的評価は, 環境問題に対処するための都市施策の検討にとって必要不可欠である。本論文では, 都市空間構造の環境負荷低減型への改変を検討することに焦点を当て, 都市の社会基盤施設や建築物から発生する各種環境負荷を推計するためのモデルシステムを構築することを目的としている。推計のための方法論としてライフサイクルアセスメント (LCA) の考え方を導入し, さらに社会基盤施設や建築物の立地変更に伴う交通活動への影響を加えた「拡張ライフサイクル環境負荷 (ELCEL)」での評価を可能としている。また, 各種環境負荷を重み付けした統合評価値「環境への優しさ指数 (EFP)」の導入も試みている。本システムを用いて, 住宅仕様や都市空間構造改変策を検討し, ライフサイクル環境負荷の削減に対する有効性を確認している。
  • 田村 英寿, 水鳥 雅文
    2000 年 28 巻 p. 63-68
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    建物群の効果を考慮して建物問気温を予測できる都市キャノピーモデルを開発するとともに、このモデルを組み込んだ三次元数値モデルにより、真夏日の東京23区を対象とした熱環境シミュレーションを実施した。その結果、日中の建物間においては、都心の北西側のみならず人工排熱密度が極めて高い都心や副都心でも気温が高くなるという解析結果が得られた。続いて、人工排熱が建物間気温に及ぼす影響について解析を行った。その結果、人, 排熱量を一律に50%削減した場合、日中の建物間の気温は建物直上よりも約2倍低下しやすいこと、建物間に放出される人, 排熱量の50%を建物直上に放出させた場合でも、日中の都心の建物間では、人工排熱量を50%削減した場合の半分程度気温が低下することが示唆された。
  • 上野 賢仁, 柴田 学, 谷川 寛樹, 井村 秀文
    2000 年 28 巻 p. 69-75
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    福岡市域を解析対象として, 都市気候モデルによる計算結果, 世帯の属性分布情報, 建築モデルを組み合わせた計算手法を用いて, 家庭の夏季空調エネルギー負荷と家族形態とを関連付けて解析した。家族形態として世帯の構成を考え, 5つのカテゴリーを想定し, 計算に取り入れた。また, 将来の家族形態 (世帯構成) の変化として「女性の社会進出」と「世帯人員の減少」を仮定し, この変化による都市域の家庭の夏季空調エネルギー負荷の変化を計算した。この結果をもとに, 家族形態の変化と都市域の家庭の夏季空調エネルギー負荷との関連について定量的に考察した。
  • 島田 幸司, 溝口 真吾, 日比野 剛, 松岡 譲
    2000 年 28 巻 p. 77-84
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    筆者らは、地球温暖化対策による大気汚染物質の排出削減量を推計する副次的効果推計モデル (ALICE) を開発し、このモデルをある地方公共団体に適用した。その結果、対策を講じることにより、2010年で参照ケースより23%の二酸化炭素 (CO2) 排出量が削減され、同時に窒素酸化物 (NOx) および粒子状物質 (PM) の排出量が11%削減されること、家庭・業務部門では、CO2排出削減と同等かそれ以上の効果がNOxやPMに対しても得られること、鉄鋼業の自主行動計画や発電部門の排出係数低減が、CO2、NOx、PMに対する顕著な排出削減効果を有すること、対策を講ずることにより、NOxやPMの排出削減効果が特に顕著となる地域があること、が明らかになった。
  • コジェネレーションシステムと清掃工場廃熱利用の地域冷暖房システムの導入による
    荒巻 俊也, 飯濱 美夏, 花木 啓祐
    2000 年 28 巻 p. 85-93
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    東京都区部を対象として地理情報を用いて各地区の特性を把握し, コジェネレーションシステム (以下, CGS) と清掃工場廃熱利用の地域冷暖房システム (以下, 清掃工場DHC) について, CO2排出削減という観点から適切な供給システムを各地区において評価し, これらのシステムを導入した場合の都区部全域でのCO2排出削減量を推定した.その結果, 都区部全体で民生用のエネルギー供給由来のCO2排出のうち7.6%(火力発電基準) を削減できる可能性を示した.また, CGS導入地区では地区内にさまざまな用途を混在させることがCO2排出削減により有効であることを示し, 清掃工場廃熱利用の地域冷暖房システムについては, 現状の設定では十分に未利用エネルギーを利用できていないことを示した.
  • 新潟県小国・小千谷・小出地域の地下水について
    羅 漢金, 坂本 康, 西田 継
    2000 年 28 巻 p. 95-103
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    地下水水質形成システムの推定のために, 地下水中の主成分元素による地球化学的水質分類を水温, 地質, 地形などと結びつけた手法で小国, 小千谷, 小出三地域の地下水を検討した.その結果, 水温分布, 水質分布は地熱水, 地質の酸化還元環境, 岩石とのイオン交換などの影響で説明できた.Na-Cl型地下水は地下深部から湧昇してきた化石海水に起因すると考えられた.また, Na-HCO3型地下水が形成されるイオン交換過程には, 水温とNa+/Ca2+当量比の関係により, 主に地中の滞在時間に支配されているものと, 主に水温に支配されるものとが考えられた.地熱水と関係のあるNa-HCO3型あるいはNa-Cl型地下水の存在はその地域の地下に伏在断層, ジオプレッシャー熱水系があることを示唆している.
  • 金 泰成, 山田 淳, 文 亨夫
    2000 年 28 巻 p. 105-113
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    分流式下水道の末端での雨水貯留施設に汚濁制御、洪水制御、水利用の3機能をもたせ、実測値を持つ集水区域をモデル地域として、シナリオ設定によりリアルタイム制御導入の効果を検討した。その結果、リアルタイム制御により後期集中型の場合が汚濁削減に有効であること、また、最適制御により利水貯留槽ではCODとSS濃度が0.3mg/lと0.9mg/l程度で収まっていること、降雨時都市域からの流出問題の対策とへしてリアルタイム制御方法を用いることがより効果的であることなどを明らかにした。
  • 中村 圭吾, 森川 敏成, 島谷 幸宏
    2000 年 28 巻 p. 115-123
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    霞ヶ浦に流入する川尻川の河口に設置された人工内湖は, 失われつつある湖沼の沿岸環境の復元と非点源負荷対策を目的としている. 人工内湖の面積は約30, 000m2 で, 水深は約1.0mである. 人工内湖の汚濁負荷削減効果について, 1999年から2000年にかけて調査を実施した. 人工内湖の水質は晴天時に湖沼と河川の中間的水質であった. 雨天時には, SSの11~54%, 窒素の7~17%(懸濁態窒素: 21~51%), リンの10~35%(懸濁態リン: 31~99%) を削減する効果があった. また, 人工内湖の年間負荷削減量を98年12月~99年11月の期間で推定した. 河川からの年間負荷流入量と底泥として人工内湖に新たに堆積した量より除去率を算出した. その結果, 流入負荷量に対しSSの191%, 窒素の19%, リンの83%が人工内湖に堆積していると推定された. SS除去率が10眺以上となったことは人工内湖が河川の流入負荷だけでなく, 霞ヶ浦のSSも除去していることが原因と推察された. このことは静穏な湖沼沿岸帯の復元が, 湖沼全体の水質浄化に大きく役立つことを示唆したものである. また, 窒素の除去率が低いのは, 脱窒により見かけ上低くなったと推定される.
  • 竹村 仁志, 三浦 浩之, 和田 安彦
    2000 年 28 巻 p. 125-131
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    大阪府では1998年から高度浄水処理を開始した. 本研究では市民の高度浄水への評価を調査した. 利用者の約50%は高度浄水の変化を認識している. 利用者の不安は水道水のくさみについては大きく減少している. 市販の水の購入も減っている. しかし, いまだに高度浄水導入後も市民の約75%は水道水に不安を抱えている. したがって, 今後, 水道水供給者は利用者の求める水道水の安全性に関する情報をさらに提洪しなければならない.
  • 『南紀熊野体験博』を例として
    説田 寿, 近藤 隆二郎
    2000 年 28 巻 p. 133-139
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本研究は、地域資源・文化の担い手としてのホスト (観光地住民) が、交流プログラムを通したゲスト (観光者) との交流からホストとしての役割意識 (=「ホスト」意識) を形成する実態に注目した。南紀熊野体験博リゾート体験イベントにおいて、イベントの準備・運営、現場での参加者へのサポート・指導を行う立場にあった体験リーダー (ホスト) を対象にアンケート調査を行い、イベントへの参加実態から、4つのタイプを抽出した。それにより、タイプごとに「ホスト」意識の傾向が異なることを明らかにし、それぞれに対応したサポート方法の必要性を指摘した。
  • 亀田 寛之, 萩原 良巳, 清水 康生
    2000 年 28 巻 p. 141-149
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    京都市上京区では、災害時の避難行動や避難生活に支障のある高齢者が、災害に対して脆弱な老朽木造家屋や袋小路が多い地域 (災害弱地域) に密に居住している。このような地域では、震災時に他の地域よりも大きな被害を受けることが予想される。今後、高齢化がより進展することを考えるならば、高齢者とその地域の歴史や文化等の環境を同時に考慮した防災・減災計画を立案する必要があろう。本研究では、震災を対象とした地域の防災・減災計画の基礎情報の作成を目的として、災害弱地域を定義すると共に災害弱地域に居住する高齢者の日常の生活行動や災害時の避難行動について調査・分析を行った。
  • 伊藤 禎彦, 平山 修久
    2000 年 28 巻 p. 151-161
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    復旧時の応急給水活動に着目して震災時応急給水のモデルの構築を行い、復旧期間における応急給水に関する市民の生活状況を推定した。その上で、応急給水量格差や復旧日数などの市民の応急給水状況に関、する認知要素について主成分分析を行うことで、震災時水道復旧過程での市民からの電話データを説明することができた。
    復旧に時間を要するほど、応急給水過程での公平性が小さくなり、市民は不公平を感じるようになると推定できた。震災時応急復旧過程での電話データからみたとき、苦情や問い合わせなどの電話が発生しないような理想的な震災時応急復旧目標期間は1週間であると考えられた。
  • 古守 将也, 笹谷 康之, 平井 孝治
    2000 年 28 巻 p. 163-170
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本研究では、環境経営を対外的にアピールしている企業・事業所と環境行政を積極的に推進している基礎自治体を対象としたアンケート調査から、企業と自治体の環境姿勢を分析・比較した。同時に、どの組織にも共通するオフィス部門の環境対策の取組みやすさやその取組状況に働く誘因等を明らかにした。これらの結果と、企業の環境報告書の検証や自治体へのヒアリング・Fax調査の結果を踏まえて、企業・自治体の環境問題に対する取組手順を明らかにした。環境への取組を進めていく上で、行政・事業者・市民等の各主体が、適切な役割分担のもとに, それぞれの取組状況や新たな課題等を共有し、今後の取組につなげるという環境マネジメントシステム (PDCAサイクル) の趣旨の沿った活動を地域全体で進めていくことが重要である。
  • 横山 重久, 室町 泰徳, 原田 昇, 太田 勝敏
    2000 年 28 巻 p. 171-176
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本研究では交通量配分モデル, 道路交通騒音被害予測モデルよりなる道路交通騒音分析モデルを構築し, ケーススタディとして仙台市にこれを適用して, 複数の道路交通騒音削減施策を実施した場合の効果分析を行った. GIS上で構築された道路交通騒音分析モデルは, 道路交通騒音の現状把握, 問題個所の抽出, 施策効果の分析などを効率的, 視覚的に行える点で有用である. 分析結果より, 仙台市中心部への交通流入に課金するコードンプライシングと低騒音舗装を敷設された環状道路の整備とを合わせた統合的道路交通騒音削減施策の有効性が示された.
  • 坂本 麻衣子, 萩原 良巳
    2000 年 28 巻 p. 177-182
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    一般に, 大規模開発においては, 計画並びに建設期間が長期化する。そして, この間に, 住民の価値観が変化してしまい, 当初の計画が完成時には住民の要望とはかけ離れてしまうといったことが, しばしば見受けられる。つまり, 大規模開発計画は自己矛盾を内包しているということである。このような認識のもとで, 本研究では, 価値観の変化を態度変化関数という形でモデル化する。態度変化関数は, プレイヤー同士の相互に及ぼしあう影響を記述する相互影響モデルと, 人の忘却の時間的変化を記述する忘却モデルからなる。本モデルと安定性分析の一手法であるコンフリクト解析とを合わせて用いることによって, 時間軸を考慮した循環的なアルゴリズムによるコンフリクトの展開過程の分析が可能となる。そして, 本モデルを長良川河口堰問題に適用し, モデルの適応性を見る。
  • 青森県大畑町木野部海岸の事例
    清野 聡子, 宇多 高明, 花田 一之, 五味 久昭, 石川 仁憲, 太田 慶生
    2000 年 28 巻 p. 183-194
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    2000年4月に施行された新海岸法では, 従来型海岸事業で生じていた施設整備と市民の望む海岸のあり方との乖離を埋めるために合意形成の必要性が謳われた.本研究では, 新海岸法を前提に1999年に青森県大畑町の木野部海岸を対象として実施された「住民合意に基づく海岸事業の進め方に関する実践的試み」について体系的にとりまとめたものである.
    対象は漁村の海岸であり, 地域住民, 海岸管理者, 専門家, 技術者との対話形式で, 計6回にわたる懇話会を行った. 懇話会では, 整備以前から現在までの海岸環境の変遷や施設の設置経緯などが明らかになり, 構造物設置後の海域の変化や, 利用上の問題等が指摘された.これより対策箇所の絞込みを行い, 結果を常時懇話会ヘフィードバックしながら検討を進め, 磯の生態系の回復や子供達の利用に寄与できる施設など具体的な計画がまとまった.
  • 三浦 浩之, 村岡 治, 和田 安彦, 白石 雅嗣
    2000 年 28 巻 p. 195-200
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本研究では, 大阪府に存在する3つのため池公園の利用者に対するアンケート調査を行った. その結果を用いて, 親水性が高い施設と環境教育の場として適した施設のあり方を明らかにした. 親水性を高めるためには水質を保全することが重要である. また, 水辺に安全に近づけるように整備することも必要である. 環境教育の場として適した施設は, 水辺に近づくことができ, さらにため池の生態系を観察できる施設である.
  • 多田 律夫, 三浦 浩之, 和田 安彦, 大山 秀格
    2000 年 28 巻 p. 201-206
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    Recently environment-friendly public works are demanded. We evaluated an advantage of the utilization of rainwater and treated domestic wastewater in urban area. The rainwater utilization is the use of rainfall on the roofs and collected runoff storm water in the storm water reservoir for flood controls. In the reuse of treated domestic wastewater, wastewater from the raw sewage is not reused. That is “Domestic Water Recycling System”. Water dispersion system (the use of rainfall on the roofs recycling system) are effective in the decrease of the resources consumption and the environmentaloads.
  • 喜田 昌, 吉田 登, 盛岡 通
    2000 年 28 巻 p. 207-213
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    産業革命以来, 先進国は大量生産・大量消費・大量廃棄のワンウェイ型で物質に依存した社会を作り出してきた.しかし, 近年になってこの大量生産・消費ナイクルシステムが過度に大きくなりその影響が顕在化し始めている.そこで本研究では産業社会を循環型・メンテナンス志向なものへ転換を促進するためにリサイクルとメンテナンスの2つの新たな機能を持った「逆工場」を提案した.そして, 政府による逆工場推進施策によって逆工場を保護し成長させること事が経済的に有効であることを応用一般均衡モデルのシミュレーションで検証するための理論約枠組みを提示し, プロトタイプのモデルを構築し逆工場実験プラントにて収集したデータを用いてケーススタディーを行った.
  • 細井 由彦, 城戸 由能, 飯田 奈穂
    2000 年 28 巻 p. 215-226
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    高普及化した水道事業においては設備の老朽化が始まっており, 日々の維持管理や更新を行う必要に迫られているところが増加している.事業実施に当たっては近年の時代の要請もあり, その費用や便益を評価し効率的に進めることが求められる.本研究では水道における事業実施効果を評価するために, まず日常の給水事業によってもたらされている便益の計量化方法について, 生活用水, 都市活動用水, 工業用水に分けて検討した. つぎに具体的な事例として配水管整備事業と, 管路の耐震化事業を取り上げ, それらの便益を計算し事業費と比較しつつその事業効果を検討した.
  • 北九州市紫川流域を対象として
    増田 京美絵, 伊東 啓太郎
    2000 年 28 巻 p. 227-232
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    これまでの河川整備では, 治水・利水政策を重視してきた結果, 河川生態系や河川景観に深刻な影響を与えている。近年, 河川整備においても自然環境や景観を保全することが重要課題となっているが, 河川流域の整備をおこなう上で, 地域住民に関連した多くの問題が残されている。
    本研究では, 1999年に北九州市紫川流域の1350名の地域住民, 特に子どもとその保護者を対象としてアンケート調査をおこなった。数量化III類による解析をおこなった結果, 地域住民は子どもにとっての親水空間を求めていることが示された。今後の子どもと紫川の関係を回復していく上で必要な河川整備のあり方について議論した。
  • 百瀬 浩, 木部 直美, 須田 真一, 河野 勝, 林 光武, 藤原 宣夫
    2000 年 28 巻 p. 233-240
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    ダム湖畔に整備した湧水汲み場と2つのビオトープ池をつなぐ2個所の水路で、水生生物のコドラート調査と両生類のセンサスを行った。一方の水路 (水路A) はU宇型の練石積みで単純な断面構造を持つが、他方 (水路B) は、内側の石の間に一部空隙を残すなど、 生物の生息に一定の配慮がなされており、 周囲の環境も樹林などが多い。両水路に実験区を設けて浮石を設置し、浮石設置の有無、 設置の前後、水路の違いによる水生生物の生息状況の違いを分析した。水路Aは浮石設置の有無に関わらず生物が少なく、時間の経過と共に生物が多様になる傾向も見られなかったが、水路Bでは浮石の設置により複数の種の個体数が増加し、時間と共に環境も多様となった。また、水路Bで流水性のカジカガエルの繁殖が確認された。これらの結果を踏まえ、ダム湖畔の水路整備の手法について若干の提案を行った。
  • 谷本 茂, 中越 信和, 根平 邦人
    2000 年 28 巻 p. 241-246
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    多自然型河川整備の工事実績は伸びているが, 工事実施後の植生遷移については未解明な部分が多い.筆者らは, 低水路護岸に植生ロールを用いて工事された都市中小河川において, 工事後3年までの植生遷移の調査を実施した.その結果植被率は早期に回復し当年夏から70%以上となること, 出現種の構成は経時的に変化し施工後2年には多年生草本種を主体とする群落に変わること, その遷移系列はイヌビエ群落-アメリカセンダングサ群落→イーセイタカアワダチソウ群落・セイタカアワダチソウーヨモギ群落となることが確認された.また, 帰化率や多様度の経年変化は小さいものの, 遷移の進行により群落は変わり帰化種も一年草から多年草の種に置き換わること, 植生ロールは工事2年後夏には分解され水際に新しく発生した生息地に一年草の侵入が見られることも観察された.このことから植生ロールエは適度な撹乱を許容する工法であることが示唆された.
  • 荒木 健太郎, 鎌田 磨人, 湯城 豊勝, 岡部 健士
    2000 年 28 巻 p. 247-254
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    河道内樹木を適切に維持・管理するための基礎資料を得る事を目的として、徳島県那賀川の河口から川ロダムまでの約43kmの河道内における樹木群落の分布と、その立地環境を把握した。アカメヤナギ群落は下流部の固定砂州上、主に1-2mの比高に、ネコヤナギ群落は上流部の巨礫・崖上の0-2mの比高に分布していた。カワラハンノキ群落は上流部の巨礫・崖や交互砂州上の1-2mの比高に分布していた。アキグミ群落は下流から上流まで幅広く分布しており、下流部では交互砂州と複列砂州、上流部では巨礫・崖と交互砂州上の2-3mの比高に分布していた。以上の結果より、ヤナギ群落は洪水の撹乱を受けやすい最も不安定な立地に、カワラハンノキ群落は比高の高い安定した立地に、アキグミ群落はさらに比高の高い最も安定した立地に分布の中心を持つと考えられた。
  • 山中 英生, 澤田 俊明, 上月 康則, 鎌田 磨人, 石田 健一, 山口 行一, 田中 祐一
    2000 年 28 巻 p. 255-266
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本研究では、徳島県上勝町の棚田地域を対象として、参加型計画手法であるPCM (プロジェクト・サイクル・マネージメント) 手法を導入して、棚田保全戦略を立案した。そして、PCM手法により得られた棚田保全戦略の特徴を、PCM手法の開発思想および作業特性の観点から分析した。その結果、PCM手法が、「科学的判断による分析行為」と「戦略的判断による選択行為」から構成されていることを示した。「科学的判断による分析行為」であるPCM手法におけるアプローチ抽出までの情報は、共通課題を有する場合の他の棚田地域への応用性が高いことが指摘できる。また、PCM手法は、「合意形成の対象となる情報」について複合的な「わかりやすさ」を有していることなどを示した。
  • 加藤 大昌, 近藤 隆二郎
    2000 年 28 巻 p. 267-276
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    Aurovllleとは、1968年に、インド人哲学者のSri. Aurobindoとフランス人芸術家で彼の哲学を最も色濃く受け継いだ弟子であるミラ・アルファッッサ (通称Mother) の哲学及び将来への展望に基づき、インド政府の保護・ユネスコの支援のもと建設されたワールドコミュニティである。Auroville建設は砂漠と化した不毛の地を開拓することから始まり、周囲の村や政府等との様々な衝突、Aurovilleの方針や運営を巡っての内部でのぶつかり合いを克服してきた経験に基づき、規則や指導者を持たずに運営されている特殊なコミュニティとしての社会システムを形成している。現地調査を通じ、その環境社会システム成立の要因を解明し、今後のエココミュニティデザインの新しい方法についての提案を行う。
  • 清水 康生, 秋山 智広, 萩原 良巳
    2000 年 28 巻 p. 277-284
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    近年、従来の河川管理、水道管理及び下水道管理という個別の枠組みでは捉え切れない震災リスク、環境汚染リスク、渇水リスク等のリスクが顕在化している。このような都市の水供給に係わるリスクを軽減するためには、個別的に行う管理の発想でなく、都市内の水の流れを水循環システムとして捉えたリスクマネジメントを行うことが必要である。本稿では、防災・減災のために都市の水循環システムのあり方を研究することを目的として、都市水循環システムモデルの概念を提案する。同モデルの意義は、都市の水循環システムに係わる異なった管理主体を同じ土俵にのせて一体のモデルとして分析・評価することができる点である。
  • 藤田 壮, 盛岡 通, 大石 晃子
    2000 年 28 巻 p. 285-294
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    Industrial Ecology has attained global concems in the manufacturing sectors. The idea has been highly validated as the key concept for new urban development strategy. While Kalundborg is recognized as the advanced samplewhich spatiallymaterialized theindustrial ecology concept in industrial complex. This paper focus the well-recognized examples of cycle oriented industrial complex development in Europe, the United States, and Japan. While comparing the decision making process among three progressive Cycle industrial complex projects, that is Kaluridborg in Denmark, Fairfield in the United States and Kitakyushu Eco-town in Japan, material flows are categorized into on-site orinfra-site, and five hierarchical recycle process.
  • 石崎 勝義, 正木 晴彦, 戸田 清, 上 幸雄, 中川 直子, 糸永 貴範
    2000 年 28 巻 p. 295-302
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    水洗トイレットに代わる資源循環型のトイレットを高度に市街化したわが国で採用できるかどうかを検討した.このトイレットは環境負荷が小さく, 家庭で排出される有機物を廃棄物から資源へと変える.まず家庭において生ゴミとし尿は同時にトイレットで発酵・乾燥される.乾燥された有機物は堆肥化センター等に集められ, 肥料に変えられる.検討の結果, システム構築の可能性があることが判った.
  • 穀物菜食団体「蒼玄」を事例として
    近藤 隆二郎, 石井 直子
    2000 年 28 巻 p. 303-312
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、食にこだわるライフスタイルと環境意識の関係を明らかにすることにある.そのため, 穀物菜食者が環境 (生活環境, 地球環境) に対して持っている意識をアンケート調査により把握し, そのような意識に至らせた要因と「食」との関係について分析を行った.さらに, 市民全般を対象とした既存の調査結果と, 穀物菜食者を対象とした本研究の結果を比較することによって, ライフスタイルと環境意識形成の関係について考察を行った.その結果, 穀物菜食を厳格に実践している人ほど環境意識が高く, 環境配慮行動の実践度も高いことがわかった.従来の「地球にやさしい」といった地球から発想されるライフスタイル変革のプロセスではなく, 食一身体を基点とするライフスタイル変革の新しいプロセスを提案した.
  • 上月 康則, 佐藤 陽一, 村上 仁士, 西岡 健太郎, 倉田 健悟, 佐良家 康, 福田 守
    2000 年 28 巻 p. 313-320
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    絶滅危惧II類に指定されたメダカの生息環境要因を明らかにすることを目的に, 徳島市郊外に広がる全長約71kmの用水路網を対象に, かんがい期と非かんがい期に魚類, 環境調査を行った.その結果, 非かんがい期には用水路への約半分の水路で非湛水化が生じ, メダカの生息分布も減少したが, その傾向は他の魚種で顕著にみられた.メダカの生息には流速10cm/sec以下の環境が必要であり, そのような環境は止水的な小規模水路の他に, 沈水植物群落内に多くみられた.止水的な環境では水質も悪化していたが, メダカの生息に及ぼす影響は見られず, 圃場整備の進んだ用水路では流速が最も制限的な要因として作用していることがわかった.
  • 徳島県勝浦川における調査から
    佐藤 陽一, 岡部 健士
    2000 年 28 巻 p. 321-331
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    徳島県下を流れる2級河川勝浦川において, 発電取水のためにダム下流に生じた減水区間における魚類の生息状況と環境との関連を, 多様性の観点から探るための調査を実施した.その結果, 調査地域内において17種が確認された.地点ごとに出現魚種とその出現頻度が異なり, 減水区間では種多様度が低い傾向がみられた.また, 各地点を構成する環境を, 水理特性を表す変数を中心とした17個の変数によって評価したところ, 6つのタイプに分類できた.減水区間において種多様度が低いのは, 環境タイプ頻度から求めた環境多様度が低いためだけでなく, 種多様度の低いトロ的な環境タイプが優占しているためであることが示唆された.
  • 林田 寿文, 本田 隆秀, 萱場 祐一, 島谷 幸宏
    2000 年 28 巻 p. 333-338
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    治水・利水を目的とした河川構造物による河川の分断化がおき、その対策として魚道が設置されている。その中で階段式魚道が最も実績があり、研究も多く行われている。階段式魚道はプール規模・流量変化により、プール内流況が大きく変化し、大きく2つに分けて、表面流 (Plunging Flow)、落下流 (Streaming Flow) 状態を形成することが過去の研究で確認されている。一方、隔壁頂部形状の変化により、魚の遡上率に強い影響を受けることも確認されている。本研究ではウグイの遊泳行動と流況がこの隔壁頂部の形状 (丸型・斜型45°・斜型30°) とプール規模 (プール水深・プール延長) に関連していることを示した。
  • 宮本 和雄, 関根 雅彦, 樋口 隆哉, 浮田 正夫
    2000 年 28 巻 p. 339-345
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    ホタル護岸が実際にホタルの生息、繁殖にどの程度貢献しているのか、また、低水敷、河川形態、日当たりなどの要因のホタルの生息、繁殖に与える影響や重要度は、現在のところ明らかにされていない。そこで、ホタル護岸が採用されている山口市を流れる一の坂川において実態調査を行った。その結果、一の坂川ではゲンジボタルの踊化場所として、低水敷が多く利用されていたが、ホタル護岸も有効であることが確認された。
  • 萱場 祐一
    2000 年 28 巻 p. 347-352
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    近年、自然裸地の減少、樹林地の増加が日本各地の扇状地河川で報告されている。このような河道内のハビタットの変化は河原に依存する生物の減少等様々な問題を引き起こしている。本研究ではこの要因として冠水頻度を取り上げ、これとハビタットとの関連性を検討した。対象としたのは、ここ数十年で裸地の減少、樹林化が生じた雫石川で、空中写真から約50年間のハビタットの分布と河道形状の変化の把握、そして、過去の日流量データに基づく水位計算結果から、各ハビタットの冠水頻度を調べ、木本地及び裸地と冠水頻度との関連性を探った。この結果、1-5日/年程度の冠水頻度を境界とし、河道内の裸地及び木本地が占める面積の割合が変化することを示した。
  • 郡 麻里, 鎌田 磨人, 岡部 健士, 中越 信和
    2000 年 28 巻 p. 353-358
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    吉野川河道内に分布するアキグミ群落の空間分布を1/2, 500スケールで地図化し, 各群落に隣接する定期横断測量線の年代標高データをもとに, その定着立地環境を解明することを試みた.続いて, 6箇所において年輪調査を行ったところ, 上流から下流のサンプリング地点にかけて限られた年代に定着していることが判った.さらに, 分布の70%以上が低水面からの比高が2-4mの範囲に制限されていることがわかった.この比高は, アキグミの種子散布期には冠水し, 定着後は実生が流れによる撹乱に耐えぬくことのできる限界と考えられる.加えて, 実生の生存には大型の礫による保護効果が示唆された.すなわち, アキグミの種子が洪水によって到達可能な立地であり, しかも実生は流されない立地が存在すれば, 晩秋の洪水のある年は効率よく種子を分散し, 新たに定着するものと思われる.
  • 深田 健二, 亀山 章, 工藤 岳
    2000 年 28 巻 p. 359-366
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    伝統的な植生管理手法によって維持されてきた二次林の雑木林や草原などの半自然生態系には、固有の種が生育しているが、近年、管理の放棄によって多くの種が絶滅、または激減している。それらの種の保全には、伝統的な植生管理の持っていた生態学的な意味やその種の生活史戦略を把握することが重要であると考えられる。
    本研究では、二次林において、林床の光環境を操作することによって、林床植物の生活史戦略タイプごとの光環境に対する反応の傾向を明らかにすることを目的とした。
  • 神谷 大介, 吉澤 源太郎, 萩原 良巳, 吉川 和広
    2000 年 28 巻 p. 367-373
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    自然的空間は都市域で生活する人々にとって貴重な空間であり、地震時には減災空間となる。このため、空間の整備計画では利用者心理を反映した空間の配置を考えなければならない。そこで本研究では、大阪府の北摂地域を対象として、現地調査とアンケート調査を行った。空間を階層的に捉え、ボロノイ分割を行うことにより、階層間の関係を示した。さらに、空白円を用いて「自然と触れあう機会の平等さ」、「地震時の避難しやすさ」という視点からの配置の評価を行い、整備すべき場所を明らかにした。整備内容と利用者心理との因果関係を明確にするために、これらの関係を心理学的にモデル化し、共分散構造分析を用いて階層毎に分析を行った。これより、階層毎に整備すべき内容を明らかにした。
  • 井手 慎司, 安藤 英二
    2000 年 28 巻 p. 375-381
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本研究は, 滋賀県において1970年代後半におきた「石けん運動」をゲーム理論的視点からとりあげ, 同運動が「共有地の悲劇」ゲームであったと仮定することによって, 同運動の前後において大きく変容したであろう県下住民の粉石けん使用に関する利得マトリックスの構造 (利得差) を, 大学生を対象としたゲーム実験と同県における粉石けんの使用率の変化とから推計, 推計の過程と結論から仮説の妥当性を検証しようと試みたものである.その結果として, 仮説の検証までにはいたらなかったが, 「共有地の悲劇」ゲームにおいてはバンドワゴン効果が認められないこと, 本研究で想定したゲームの場合, 石けん運動の前後において人々の粉石けん使用に関する利得マトリックスの利得差が最大5から最小2まで変化したであろうことが明らかになった。
  • 今堀 洋子, 盛岡 通
    2000 年 28 巻 p. 383-389
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    循環社会を形成する上で「循環資源を循環的に利用する」という意味でのリサイクルは, ますます重要な役割を担う.しかしながらリサイクルにおいては, ニーズとシーズの情報マッチングがリサイクル情報の不透明性のゆえに上手く機能していないというのが現状である.本論文では, 特に産業界にスポットをあて, 情報マッチングを得意とするインターネットを活用し, 事業者がリサイクルに関して抱えている問題をアンケート調査により把握し, 一方でインターネット上の情報マッチングシステムを比較調査することにより, リサイクル情報マッチングシステムに求められる機能, 条件, 仕組み, システム構成等を明らかにする.
  • 神崎 幸康, 萩原 良巳, 渡辺 仁志
    2000 年 28 巻 p. 391-397
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本研究では、地域によって地域構造に違いが存在してきていることに着目し、その原因として地域によりアメニティに違いがあること、世帯属性によりアメニティに対する選好が異なることを考える。そこで本研究では、アメニティと地域構造との関連をシステム論的に分析することを目的とする。そのために地域構造をライフステージによって分けられる属性毎の世帯数を構成要素とする単純なシステムとして定義し、アメニティと世帯属性に着目して、連立微分方程式を用いて地域構造のモデル化を行う。そして安定性解析を行い、アメニティと地域構造との関連を分析する。さらに、高齢社会を想定した環境政策に関する分析を行い、環境政策と地域構造の関連分析を行う。
  • 金子 慎治, 今井 晃, 中山 裕文, 白 雪梅, 井村 秀文
    2000 年 28 巻 p. 399-410
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    世界各国の都市環境の比較には、さまざまな環境関連指標の分析が必要となるが、このとき問題となるのが国による都市域の定義の違いである。このため本論文では、日韓中3国における都市の定義の違いを都市の人口、面積、人口密度によって比較した上で、各国の都市環境関連指標の比較を行った。具体的には、日本の政令市、韓国の広域市及び中国の直轄市・副省級市の市区を「主要都市」と定義し、各環境関連指標について、主要都市と国平均との格差、総人口との関連を比較分析した。その結果、日韓の都市活動の集中度が減少傾向にあるのに対し、中国ではそれらの都市への集中が顕著であることが分かった。また、生活関連基本指標、都市住民の消費活動指標、インフラ整備指標の3指標群と総人口との間にみられる関係を示した。
  • 松岡 譲, 川口 洋平
    2000 年 28 巻 p. 411-420
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    我々は気候変動の推計を簡易に行うモデルを開発した。このモデルは, 温室効果ガスの大気中濃度を算定するサブモデル, 放射強制力の変化を算定するサブモデル, 気候変動サブモデル及び気温上昇及び海面上昇を算定するサブモデルから構成されており, 温室効果ガス排出量を入力として, 地球平均の気温・海水位の変化量を算出することが出来る。このモデルを用い将来推計を行ったところ, 2050年には0.8℃-2.1℃, 6cm-48cmの上昇, 2100年には1.3℃-4.7℃, 13cm-97cmの上昇結果を得た.
  • 松岡 譲, 川口 洋平
    2000 年 28 巻 p. 421-428
    発行日: 2000/10/13
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    気候変動を抑制し安定化を達成するには温室効果ガス排出の大幅な抑制が必須である. この論文では, 今後の数百年を対象として, 気候安定化に到達する温室効果ガス排出経路を探索し, それらの21世紀中の経路範囲はどのようなものかを明らかにした. 可能な排出量変化速度を0.15GtCy-2以下とする時, 23世紀中に450ppmv安定化を行うには1990年から2050年の累積排出量を867GtC以下, 2100年まででは累積排出量を1389GtC以下にする必要がある。また, 1.5℃安定化目標では2050年までの累積排出量を918GtC以下, 2100年まででは1739GtC以下とする必要がある。
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