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小泉 明, 荒井 康裕, 谷川 昇, 及川 智
2002 年 30 巻 p.
1-8
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究では, ごみ排出量と世帯属性並びにごみ減量化行動との関係を明らかにし, 都市における一般世帯の排出実態を把握した具体的には, まず世帯属性と排出量との関連性を分析し, 最も影響度の大きい要因が世帯人数であることを示した.つぎに, 世帯人数別にごみ排出実態の特性を分析した結果単独世帯の排出傾向が複数人数世帯と異なることが統計的検定により認められだ最後に, 単独世帯に焦点を当てた分析では, ごみ減量化行動への取り組みと排出量の多少との関係を捉え, 昼間の生活形態の違いがこれに関連していることを明らかにした.
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馬場 健司, 田頭 直人
2002 年 30 巻 p.
9-17
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
地球環境問題の解決に向けて, 再生可能エネルギーにより発電される電力 (グリーン電力) に係わる様々な普及促進策が実施されている.本研究は, 消費者を対象とするアンケート調査データを用いて, 自発的なグリーン消費行動に基づく各種取組みの受容性を分析した. その結果, グリーンプライシングは, 潜在的協力者が最も多く, 他の取組みより支払意思額が高く推定され, 適切な寄付金の使途決定機関や認証機関の設定とターゲットの絞込みを行っていくことで, グリーン電力の普及促進に貢献し得る可能性を持っていることが分かった.
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藤原 健史, 上野 智史, 松岡 譲
2002 年 30 巻 p.
19-27
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
家計の消費選好は, 最終需要財の種類と量を変化させて産業全体の需給バランスを変えるとともに, 排出される家庭ごみの性状や量を決定する.したがって将来の家庭ごみ排出量を推計する場合には, 老齢化, サービス消費化, 女性進出などに伴う消費選好の変化を考慮しなければならない.本研究では, 家計の消費行動が予算制約及び時間制約下で行われることを考慮した消費選好モデルを考えた.さらに, このモデルを家庭の物質収支モデルと連結することにより将来の家庭ごみ排出量の推計を行い, 高齢化による消費選好の変化を考慮しながら, わが国の2025年までの家庭ごみ量を推計した.
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公平な分配と価格付けの政策課題
四蔵 茂雄, 原田 秀樹
2002 年 30 巻 p.
29-36
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
自立的な財政の確立と公平な水の分配には、適切な価格設定が重要であり、それはひとえに受益者である市民の情報を正しく把握しているかどうかにかかっている。本研究では、ネパール国・カトマンズ市の低所得者層を事例に、彼らの支払い能力や支払い意志額 (WTP) など水の価格付けに必要な情報を収集すると共に、今後の政策課題について検討した。その結果、水道利用世帯と非利用世帯には経済的負担と病気の負担に著しい格差があること、低所得者層であっても支払い意志があり、受益者負担の原則に従ってコスト負担を求めることは可能であること、需要抑制的な視点に立った料金設定が必要であることなど、いくつかの知見を得た。
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中村 英佑, 森杉 雅史, 井村 秀文
2002 年 30 巻 p.
37-43
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
近年の経済のグローバル化に伴い, CO
2排出の国際移転問題が懸念されている. 本研究では, 産業連関分析の手法を用いて, 日本, 米国, アジア諸国間におけるCO
2排出負荷の指標としてCO
2内包係数を算出し, その経年変化の要因分析を行った. 結果として, アジア諸国は, 日本, 米国, 中国との取引において熱、CO
2内包係数を示し, また, 経年的には国家間取引の急激な増加を要因として, CO
2内包係数は高まる傾向にあることが明らかとなった.中でも, 特に中国との取引拡大に伴うCO
2内包係数の増加は顕著であった.
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大洞 久佳, 大野 栄治
2002 年 30 巻 p.
45-54
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究は, 旅行費用法による環境価値計測の可能性を示すことを目的とし, 環境価値に含まれる各種要素 (利用価値, 随意価値, 遺贈価値, 代位価値, 存在価値) の相関関係から, 利用価値によって環境価値のどの程度が説明できるかを検証した.まず, 各価値には有意な相関関係があり, 各価値が独立していないことを明らかにした.次に, 利用価値と各価値の相関関係より, 利用価値で説明できる部分は, 随意価値の80.17%, 遺贈価値の57.79%, 代位価値の76.60%, 存在価値の36.71%, 合計価値の78.98%であることを示した.したがって, 利用価値以外の環境価値も利用価値で80%程度説明できるため, 利用価値を評価対象とする旅行費用法で環境価値の相当部分が計測できることの可能性が示された.
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宇野 宏司, 中野 晋, 伊澤 誠一, 片岡 孝一, 岡部 健士
2002 年 30 巻 p.
55-61
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
季節風および地形変動が吉野川河口域での塩分環境に及ぼす影響について現地観測及び数値シミュレーションから考察した.現地観測の結果, 年間を通じて北西方向の風の出現が卓越し流動に大きく寄与していること, 底層は夏季と冬季で変動が少なく安定した塩分環境にあることが確認されたまた, シミュレーションの結果, 河口周辺の地形変動により塩分の回復過程に違いがみられ, 特に河口周辺に広がる砂州には, 河道内の塩分流出抑止効果や外海水の直接現鉱を抑える効果があることが明らかにされた.
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山田 宏之, 別所 良起, 中尾 史郎, 中島 敦司, 養父 志乃夫
2002 年 30 巻 p.
63-69
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
兵庫県神戸市北区山田町藍那地区に多数分布する放棄ため池のうち, 56ヵ所において、2000年夏期と2001年冬期に, それぞれ水棲生物の捕獲調査を行い, 生息種および生息密度と、ため池周辺環境との関連性について解析した。その結果、樹木等によってため池上空が被覆され, その開放率が低下するに伴い, アメリカザリガニの捕獲される割合が増加するという結果力得られた。また, アメリカザリガニの生息密度および生息の有無について検討したところ, ため池の地理的な分布位置によって、それらが大きく異なることが明らかになった。このような偏った分布特性は、過去におけるアメリカザリガニの分布域拡大過程の影響を受けているものと考察された。
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山下 慎吾, 傳田 正利, 酒井 賢一, 山口 功, 中越 信和
2002 年 30 巻 p.
71-76
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本稿では, 定量的生態系評価のための生息適地指標算出に際し, 回帰木モデルを用いた手法を提案した.この手法を実際の魚類産卵場データに適用し, 環境要素ごとの適性値を結合させて生息適地指標を算出する Habitat Suitability Index (HSI) やComposite Suitability lndex (CSI) と比較した結果, 環境要素選択が容易で, かつ予測値の誤差がやや小さくなることが示された.これにより, Habitat Evaluation Procedure (HEP) やPhysica I Habitat Simulation Model (PHABSIM) における生息適地指標を算出する手法のひとつとして, 回帰木モデルの有用性が示唆された.
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千葉 武生, 萱場 祐一, 尾澤 卓思
2002 年 30 巻 p.
77-83
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究では都市化の進行や河川改修により減少してきている天然河岸を保全するための手法及び技術の確立を目指し、天然河岸の実態把握、河岸強度の定量化手法についての検討を行った。空中写真を用いて天然河岸の分布状況を把握した結果、神奈川県内の天然河岸は著しく減少していることが明らかになった。また、ケーススタディ河川における現地調査から、天然河岸の形態、材質、植生等の特徴を把握することができた。さらに、河岸強度の定量化については境川において河岸の浸食速度を推定した結果、河岸の浸食速度は非常に遅く、歴史的に見ても河道はほとんど変化していないことが明らかになった。
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衛星データと2kmメッシュ土地利用データを用いて
児島 利治, 宝 馨
2002 年 30 巻 p.
85-90
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究では, 都市域・森林・耕作地が混在する地域に対して, 植生指標 (NDVI) に基づく月蒸発散量の推定に分解能が及ぼす影響, 土地利用データを用いた蒸発散量の推定に関する検討を行っている.空間分解能の異なる疑似画像を生成し, 分解能20mから2km程度まで調べたところ, NDVIと月蒸発散量推定値の領域平均値は, 分解能にあまり影響を受けないことが示された.土地利用データを用いて蒸発散量を推定するF-C-Uダイアグラムを提案し, 土地利用の変化に伴う蒸発散量の推定を行った.また, 明治・大正期-現在までの土地利用の変化を示す2kmメッシュ土地利用データを用いて明治・大正期-現在までの蒸発散量の変化を推定した.
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廣田 福太郎, 大西 暁生, 森杉 雅史, 井村 秀文
2002 年 30 巻 p.
91-99
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
これまで都市部の緑地を分析する際, LANDSAT等の衛星データや航空写真などが用いられてきたが, それらは精度や費用の点で十分ではなかった. しかし, ここにおいて, 航空写真に近い精度を持ち周期的な観測が可能な高分解能衛星データの緑地分析への適用が検討され始めている, 本研究では, IKONOSデータを用いて, 都市内緑地の空間的配置構造を数値化する指標を提案した, またケーススタディとして, 指標を用いた名古屋市及び佐賀市の緑地の分析を行い, 名古屋市に関しては細密空間情報 (10mメッシュ) と組み合わせることで土地利用別の緑地の空間的配置構造を明らかにした. その分析結果をもとに, 名古屋市の今後の緑地計画のあり方を検討した.
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園田 陽一, 倉本 宣
2002 年 30 巻 p.
101-107
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究では都市近郊域における生息地の分断・孤立化がタヌキの交通事故に与える影響について検討することを目的とした.そのため, 神奈川県における交通事故による救護情報を用い, 緑地の配置との関係から救護情報の発生状況についてGISを用いて解析を行った.結果として, 樹林性緑地の孤立度が0. 4から0. 8の地域, 樹林性緑地周辺に分布する樹林性緑地の合計面積が105m2から106m2の地域, 樹林性緑地周辺の草地率が0. 4未満の地域において救護情報の発生率が高いことが明らかとなった.
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手法の枠組みの構築及び植物の生産量を指標とした被害係数の算定
中川 愛, 井伊 亮太, 安部 和子, 林 健太郎, 伊坪 徳宏, 稲葉 敦
2002 年 30 巻 p.
109-118
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究では, 既存の研究事例における土地利用に係るライフサイクル影響評価手法の枠組みを比較検討した上で, 通称LCAプロジェクトにおいて開発されている被害算定型の影響評価手法体系に適合した土地利用影響評価手法の枠組みを構築した.本手法では, 土地利用被害の保護対象として生態系を選定し, 被害評価指標として植物の純一次生産力 (NPP) を対象としている.この手法を実際に利用可能なものとするために, 日本の植生や土地利用の分布状況及び気候条件等を反映させた形で, 現況及び潜在的な純一次生産力の分布を求め, これに基づき植生分類又は土地利用分類に対応した形式による, 土地利用の維持及び土地の改変の被害係数を算定した.
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神谷 大介, 萩原 良巳
2002 年 30 巻 p.
119-125
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
都市生活者にとって水・土・緑の空間は日常時のアメニティ空間であり、震災時の減災空間である。再現期間の長い災害のためだけの施設整備は財政的にも困難であること等から、環境創成による震災リスク軽減のための計画の重要性は高い。以上の認識のもと、本研究ではこの計画の代替案作成プロセスを示す。まず、震災時の避難行動を考えて地域の分断を想定し、地域を地区と町丁目の2つの階層として捉え、それらをノードとした隣接関係をグラフとして表現した。そしてノードにハザードの要因に関する情報を持たせたグラフを作成した。これらをもとに計画代替案の抽出の考え方を示した。最後に北摂地域を対象にした分析を行い、水・土・緑のネットワークの形成に関する代替案を提示した。
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亀谷 一洋, 山中 英生, 土岐 源水
2002 年 30 巻 p.
127-133
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
裏道となっている旧街道のように, 幹線道路と平行して連続性を有する旧街道型細街路は, 幹線道路の迂回ルートとしての活用が考えられる, 本研究は旧街道型細街路の自転車空間としての評価を明らかにするため, 一般細街路, 旧街道型細街路, 車道, 歩道における自転車利用者の意識, 速度, 振動状況, 大気環境を比較分析した.その結果, 旧街道型細街路は一般細街路に比べると交差点などの安全評価に問題があるが, 歩行者と混在する歩道よりも走行空間として望ましい環境を持っていることが明らかになった.
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加藤 博和, 鈴木 弘司, 丹羽 晴紀
2002 年 30 巻 p.
135-141
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
自動車走行に伴う環境負荷発生量には, 車両の走行挙動が大きな影響を及ぼす. しかし, 推計にあたって, 従来一般的に用いられてきた, 平均旅行速度を説明変数とする巨視的環境負荷原単位では, 車両走行挙動を十分に表現できないため, 交通流改善施策の感度評価が困難であった. そこで, 車両の加減速に着目した, 走行モード別の微視的環境負荷原単位を, シャシダイナモ装置を使用した実験によって推定した. この原単位を用いた推計では, ストップアンドゴー回数の増加による環境負荷増加を把握できるために, 巨視的原単位を用いた推計に比べ, 交通流改善施策の感度をより大きく推計することが確認できた.
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常 杪, 井村 秀文
2002 年 30 巻 p.
143-152
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
アジアの途上国では、都市・生活型汚染問題が深刻化し、下水道・下水処理施設、ゴミ処理施設といった都市環境インフラ整備の重要性が高まっているが、巨額の投資が必要な為、政府財源の限界・ODA資金縮小の中で、当該分野への投資不足が課題となっている。そこで、持続可能な成長の実現に向けた新たな方策の切り札として民間部門資金の導入 (PFI) を提案する。アジア各国の都市環境インフラ整備における民間部門投資の展開状況を明らかにし、PFI実現の為の新たな体制-PPP構築に向けて、PPP理念及びPFI事業リスクを明確にし、PFI事業促進の全体フレームを設計し、特定組織の確立・リスク対策・優遇措置といった促進政策の策定、PFI事業プロセスのマニュアル化を試みた。
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東京都千代田区外濠公園を事例として
坪井 塑太郎, 萩原 清子
2002 年 30 巻 p.
153-159
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究は都市における水辺環境の評価研究においてこれまで研究蓄積の少なかった都市内部の閉鎖水域である濠に着目し, 快適性, 防災性双方からの水辺環境評価構造を明らかにすることを目的として調査を行った. 1980年代以降河川の環境的利用が提唱されると, その快適性の効果を評価する研究が数多く蓄積されてきたが, 本研究では都市の水辺空間を災害時にも活用できる空間ととらえ「快適性」と「防災性」の二つの空間機能がどのような構造で評価, 認識されているかを共分散構造分析により多重指標モデルを用いて検討した. 本研究からは, 総合的な「空間有用性」としては「防災性」が「快適性」よりも強く認識されていることが示唆された.
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高木 朗義, 武藤 慎一, 村松 穂高
2002 年 30 巻 p.
161-169
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究は, 河川における連続的につながった各所の水環境保全策を経済的に評価するために, 一つの地域をメッシュ単位で捉えるとともに, 地理情報システム (GIS) データベースを有効に活用できる地域間応用一般均衡 (Spatial Computable General Equilibrium: 略してSCGE) モデルを構築した. また同時に, 既存の水環境評価モデルを組み込み, 水環境の物質的な面で評価精度の向上を図っている. そして, このモデルを長良川支川の吉田川に適用し, ある水環境保全策を想定して社会経済システムへの影響を分析し, 費用や便益などを試算することにより, 経済評価手法としての適用性について確認した.
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粟生木 千佳, 荒巻 俊也, 花木 啓祐
2002 年 30 巻 p.
171-181
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
WBCSDにより提案されたEco-efficiencyにおける価値と環境影響の評価にステイクホルダー毎の異なる視点を導入することによって, 企業活動に外部の価値観を組み込むことや, 操業方針に関する住民等との協議を合理的に進めることを提案した. 市販されている7種の家庭用エアコンに対して企業, 投資家, 消費者, グリーンコンシューマーのそれぞれの立場でのEco-effidencyを算出し製品間での比較を行い, ステイクホルダー毎の評価の違いを明示し, この方法が新製品の開発などの際に有効に用いられる可能性を示した. また, 環境負荷の増大や地域への貢献をもたらす工場の将来の操業方針に対して, 企業, 投資家, 近隣住民, NGO, 行政毎にEco-efficiencyを算出して操業方針間で比較するケーススタディを行い, 合意形成のためのツールとしての活用が可能であり有用であることを示した.
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生態学者と生産業者の意見に注目して
曽根 真紀, 近藤 隆二郎
2002 年 30 巻 p.
183-189
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究は、琵琶湖におけるヨシと人との関係の歴史的変遷を文献・ヒアリングによって調査研究を行ったものである。かつて琵琶湖のヨシと人とのかかわりは生活と密着していたが、開発や生活様式の変化に伴い人々のヨシに対する関心は薄くなり、かかわりはほとんどなくなった。ところが現在、ヨシは水質浄化作用など環境的価値が見直され、ヨシ保全に向けた取り組みとして行政や地域住民が主体となってヨシ刈りを行い、刈ったヨシを松明にしてイベントを行っている。本研究では、ヨシに関して専門的に知識を有する生態学者と生産業都の意見からヨシの維持管理に関して重視すべき点を明らかにして、今後の市民参画型のヨシ刈り・ヨシ松明祭りのあり方について提案することを試みた。
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臼井 寛二
2002 年 30 巻 p.
191-198
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究では、フィリピン国の大規模事業に適用される環境アセスメント (EIA) 制度を対象に、そこで実施される参加手続の適正性が、紛争状況での住民の事業に対する態度に与える影響を考察した。分析事例として明確な紛争状況にあるサンロケ多目的事業を対象とし、周辺住民への調査によって得たデータをもとに、共分散構造分析を用いて仮説因果モデルの検証をおこなった。その結果、(1) 不適正な手続の実施が住民の態度に負の影響を与えたこと、(2) 不適正な手続参加のため、メディアが住民の態度に大きく影響を与えたこと、(3) 事業の公益性は態度決定の根本的な要素であること、以上3つの知見が得られた。
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谷本 圭志, 石本 裕亮
2002 年 30 巻 p.
199-206
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
環境問題の解決には主体間の提携が不可欠である.どの提携を形成すべきかやどのような提携構造に至るかの判断には, 提携形成メカニズムについての理解を要する.しかし, 環境の状態に応じて選択すべき提携行動は異なり, かつ選択する提携行動によって実現しうる環境の状態も異なるという多くの環境問題に見られる「提携行動と環境の状態の相互依存性」を取り上げた研究はこれまでにない.本研究では, この性質を明示した提携形成を確率ゲームによりモデル化するとともに, 利得構造が提携行動に及ぼす影響について分析する.
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坂本 麻衣子, 萩原 良巳
2002 年 30 巻 p.
207-214
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
現在、我が国では、開発を行おうとする主体と環境保護を訴える主体の間で利害の衝突、すなわちコンフリクトの発生が頻繁に見受けられる。特に、開発の影響圏が一般に広範な水資源開発においてこの傾向は顕著である。無用なコンフリクトの激化や長期化を避けるためにも、今後開発計画に臨むにあたってコンフリクト・マネジメントが不可欠であるという認識を持つことが重要であるものと考える。本研究ではこのような認識のもと、コンフリクトが到達し得る均衡状態を分析するためのモデルを構築する。モデルはプレーヤーの戦略行使確率の時間変化を記述する数学モデルと、プレーヤーの特徴を規定することによって利得行列を簡略化し設定するプロセスモデルから構成される。さらに、ケース・スタディとして長良川河口堰問題にモデルを適用する。
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佐藤 祐一, 萩原 良巳, 内藤 正明
2002 年 30 巻 p.
215-222
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
近年日本において, 流域環境への影響が危惧される水資源開発を行う際には, 関連するステイクホルダー問の合意形成の基での意思決定が重要課題となってきている. しかし, 地域性や住民意識などが十分に考慮されないまま開発計画が立てられることも少なくない.水資源開発の意思決定においては, 結果よりも結果にいたるプロセスが重要であるとの認識に立ち, 本研究では, その意思決定を行う為のシステム論的なプロセスの提案を行うと共に, その吉野川可動堰問題への適用を行う. そこではまず, ステイクホルダーとして開発推進派と環境保護派を設定し, それらの効用関数を構築する. そして凸依存性を考慮したグループ効用関数を用いて, 開発推進派が環境保護派に対して歩み寄りを進めたときの意思決定について述べる.
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清野 聡子, 宇多 高明
2002 年 30 巻 p.
223-231
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
現在, 各種公共事業では「合意形成」の必要性が謳われている。1997年の河川法の改正では, 河川事業への民意の反映が約束され, また1999年の海岸法改正でも同様となった。筆者らは, これらの河川・海岸に関する法制度の大きな変革期に, それぞれの立場から合意形成問題に深く係わった。本論文は, これらの実践的な試行錯誤の過程で具体的に生じた問題への対処から課題を抽出し, この分野における専門家のあり方を問い, 今後の科学・技術と社会のよりよい関係性を構築するための手法について論じる。
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高等教育論の視点から
内山 弘美
2002 年 30 巻 p.
233-239
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
地球環境問題を解決し, サステイナブルな社会を築くために, 環境科学という学問分野の構築が必要とされる。しかし, 環境科学の研究・教育を行い, 環境科学の人材養成機関であるはずの環境冠学科において, 従来から, 理念と現実の乖離の問題が指摘されてきた。この問題が生じた要因の一つは, 環境冠学科の設置の過程にある。従って, 本研究では, 国立大学工学系学部の建設系学科に焦点を当て, 工学系の拡大過程と科学研究の「ライフサイクル」論の枠組みを用いて, 環境冠学科の設置のメカニズムを解明した。その結果, 環境冠学科の設置は, 環境科学だけでなく, 工学系学部の学科構成や学科設置動向を反映していることが明らかになった。
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谷本 圭志, 森田 浩和
2002 年 30 巻 p.
241-247
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
大規模な水資源開発が困難となる今後においては, 利水者間の水利調整が重要な渇水対策となる. 現河川法は渇水時の水利調整を認めているが, 当事者間の円滑な合意形成の観点からは, 事前の取り決めがより有効と考えられる, そこで, 本研究ではその方策としての水融通契約とその運用を支援するための意思決定マップから成る水融通システムを動的計画法とゲーム理論を援用して開発するとともに, それを用いて渇水リスクの軽減効果を分析する.
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山田 淳, 弘島 洋平, 甲賀 大志, 岩崎 篤史
2002 年 30 巻 p.
249-256
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
都道府県単位の広域行政が、地下水を自己水源とする中小都市に対して用水供給を行うことを想定し、水道事業広域化のメリット、デメリットを考慮したうえで受益者が受ける便益、負の便益に関して評価を行った。その手順として、(1) 広域水源導入地域のもたらす便益を各帰着主体別に分類し、(2) 全ての便益項目を貨幣換算することにより便益の定量化を行い、(3) 各地域、各主体の水道に対するニーズを反映させるために、72ケースの水利用政策シナリオを想定してシミュレーションを行い、評価項目別および主体別に政策の及ぼす影響を把握し、(4) さらに、シミュレーション結果に主成分分析を適用し複数代替案の評価を行った。
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小棚木 修, 小泉 明, 渡辺 晴彦
2002 年 30 巻 p.
257-263
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
水道供給の維持・改善のためには, 管路を適切に改良・更新していくことが必要である. 膨大な管路から構成される管網の中から改良・更新の対象を選定する場合や, 効果的な布設ルートを検討する場合, 考え得る全てのケースについて検討を行うことが求められる. しかし管網解析をはじめとする水理解析では実管網への対応が難しく, 簡便な代替指標によるアプローチが有効と考えられる. そこで本研究では, 管網系の供給能力は管路のつながりに強く規定されることに着目し, ネットワーク構造に基づいた管網系の安定性を表す指標を提案し, 同指標を用いた水供給システムの安定性の網羅的な評価手法を提案した.
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清水 康生, 萩原 良巳, 西村 和司
2002 年 30 巻 p.
265-270
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究では、大都市域における水循環圏の概念を提案し、圏域の河川網、水道施設網、都市活動による水質変換及び下水道施設網から構成される水循環をネットワークとして一体的に捉えることの重要性を述べる。そして、同水循環ネットワークをモデル化する方法を示す。さらに、ネットワークの構造安定性を評価するためにグラフ理論を援用した14の評価指標を提案する。適用事例として、大都市域に下水処理水を利用した水辺創成水路を導入した場合を対象とした水循環ネットワークの構造安定性の向上について検証する。
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玄地 裕, 菅原 有希, 大友 順一郎, 温 慶茄, 高橋 宏, 稲葉 敦
2002 年 30 巻 p.
271-276
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
太陽電池パネル設置による屋上面熱収支変化の実測とモデルの構築をおこなった。その結果, 設置した太陽電池パネル表面の総括熱伝達係数hはパネル表裏共に風速γに対して
h=4.3
V+1.6と表され, 顕熱フラックスを風速と気温と太陽電池パネル表面温度から求めることができた。
Inputを風速, 気温, 日射量, 室温とする太陽電池熱収支モデルを作成し, 太陽電池設置による顕熱フラックス, 伝導熱フラックス変化を定量的に計算できた。
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峰村 太輔, 山田 宏之, 山本 幹雄, 中尾 史郎, 中島 敦司, 養父 志乃夫
2002 年 30 巻 p.
277-283
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
屋上緑化による建築物への熱環境の改善効果の定量化を目的に、表面温度、地温、熱流の測定を実施し鳥その結果、断熱層上面地温とスラブコンクリート下面表面温度の温度差と断熱層の熱流との間に高い相関がみられ、簡単な時間補正のみで、精度良く熱流を推定できることが分かった。そこで、1997年から2001年までの温度データを用いて熱流の推定を行った。夏期の7、8月の期間について4年間を平均してみると、緑化区の屋上面から下向きの最大熱流は非緑化区の最大熱流の7.3%に抑制されていた。また、冬期の1、2月の期間について4年間を平均してスラブコンクリート面から屋上面へ向かう上向きの最大熱流を比較したところ、緑化区の最大熱流は非緑化区の最大熱流の59.0%に抑制されているという結果になった。
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金子 大二郎
2002 年 30 巻 p.
285-294
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究では, リモートセンシングデータと気象台ルーチンデータを用いて地表面温度の平面分布形を風向条件によって区別し, 首都圏の気温と地表面温度に及ぼす植生と海風による温度低下について検討した. 具体的には, AMeDAS地点において観測された気温と, 気象衛星NO飴から得られる地表面温度とを用い, 地表面熱収支の境界条件となる地表面温度が, 大気と相互作用している実態を捉えると共に, 植生指標NDVIを用いて首都圏における植生と海風が接地層気温に及ぼす緩和効果について季節的実態を抽出した. 現実の地表面温度は, 日射と土地利用によって一義的に定まるのではなく, 風向条件により冷たい海面や都心からの熱の移流を受けて平面分布が変化する. また, 植生による気温緩和効果は, 植生指標NDVIと共に増大し最大5℃に達した. この値は, 著者がLandsat TMデータを用いて島根県域について得た植生による気温緩和の抽出効果である5℃以上の値と一致する. これらの現象は, ヒートアイランドの数値シミュレーションにおける地表面熱収支のモデリングに重要である.
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ダカール ソバカル, 金子 慎治, 井村 秀文
2002 年 30 巻 p.
295-303
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究は東京とソウルにおける二酸化炭素排出量について、1) 一人当たり二酸化炭素排出量、GRP当たり二酸化炭素排出量を東アジアの主要都市及び主要国と比較し、2) 総排出量と部門別排出量の要因分析を行った。分析結果から東京は一人当たり及びGRP当たりの双方において二酸化炭素排出がきわめて低い水準で推移していることが分かった。また、東京、ソウル共に高経済成長期 (それぞれ1970年から1990年、1990年から1998年) には所得増加が二酸化炭素増加の主要因であることが分かった。さらに、東京は低経済成長期である1990年から1998年においても二酸化炭素排出は増加を続け、著しく悪化したエネルギー効率が大きくこれに寄与した。同様に、東京、ソウルにおいて燃料質、自動車利用率、家計収入、労働生産性、スケール効果などを用い、部門別二酸化炭素排出量排出の要因分析を行った。
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松本 亨, 左 健, 岩尾 拓美
2002 年 30 巻 p.
305-313
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
研究では, 企業の内部管理会計の一種であるマテリアルフローコスト会計を, 都市の有機資源循環構造の解析に用いるための手法提案を行い, それを実際の都市の現状評価に適用した. これにより, 都市のフードシステムの生産過程から廃棄・処理過程までの一連のマテリアルフロー, またそれに付随するエネルギーや包装材の投入構造の関係をシステマティックに捉えることができ, 食品廃棄物対策のシナリオ分析や複数の都市 (地域) の比較評価を行う際の利用可能性について考察した.
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田畑 智博, 後藤 尚弘, 藤江 幸一, 井村 秀文, 薄井 智貴
2002 年 30 巻 p.
315-322
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
廃棄物の再資源化は主に収集・輸送・再資源化の工程からなる. しかしながらそれぞれの工程において新たなエネルギー・資源を使用している可能性があり, 再資源化自体が環境負荷の増加を招いているケースも少なくない. 本研究では低環境負荷型の循環型社会構築を実現するため, 地域内での廃棄物発生空間分布の把握, 廃棄物を再資源化施設までに輸送するための収集・輸送領域の決定, 廃棄物輸送時のエネルギー消費量を最小にしつつ適当な処理規模での再資源化が可能となるような地域内での適正な再資源化施設の配置について検討した.
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羽原 浩史, 松藤 敏彦, 田中 信壽, 井上 真智子
2002 年 30 巻 p.
323-332
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究ではまず広域化の制約条件となる収集輸送条件を検討した. 次に広域化を想定した場合の中心都市や周辺自治体の人口規模, 中心都市から周辺自治体までの距離を定めた広域モデルを設定し, 現在考えられる主なごみ処理シナリオについて, LCA的な観点から広域化によるコスト, エネルギー消費量の変化を計算した. これらによって, 広域処理によるコスト (コストの内訳を含む), エネルギー消費量を比較検討し, リサイクル型のごみ処理シナリオが成立する条件を検討した. 最後に標準広域モデルのパラメータ感度分析を行った.
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金森 有子, 藤原 健史, 松岡 譲
2002 年 30 巻 p.
333-339
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
現在, 社会が直面している廃棄物問題に対処するためには, 廃棄物処理だけに頼らず, 家庭のラ イフスタイルの変革や社会システムの改善による対応が必要となってくる. 本論文では家庭ごみに注目して, 物質収支則の観点から家庭の財-家庭ごみ変換機能をモデル化する. このモデルは家庭の財の購入量推計とごみ発生モデルからなり, 前者は家計への財の購入金額から家庭への物質搬入量を求め, 後者は物質搬入量からごみの組成別ごみ発生量を求める. 財は1年以内に消費される消費財, 家庭にストックされる耐久消費財, そして容器包装材に分けて取り扱い, 耐久消費財では時間廃棄率を考慮し, 容器包装材では産業連関表から搬入量を推計する方法を提案した.
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京都市内の宿泊施設を対象として
仁賀 崇之, 金谷 健, 京のアジェンダ21
2002 年 30 巻 p.
341-347
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究では、京都市内の宿泊施設を対象とし、宿泊施設の環境配慮に関する取り組みの現状を把握するためにアンケート調査を行った。そして把握した現状を基に環境配慮の性質を明確にし、いくつかのタイプに分類した。これらの結果を受けて宿泊施設の環境配慮に対する取り組みを評価するためのシステムを提案した。
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塩見 聡, 中野 加都子, 尾 崎平, 和田 安彦
2002 年 30 巻 p.
349-354
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
プラスチック容器の分別収集が実施された地区で排出実態調査を行った.また, 分別収集実施地区と未実施地区において意識変化や困難な点など分別収集に関するアンケート調査を実施した.その結果, 異物混入量は経時変化と共に増加している.異物混入量の増加する要因は, 分別種類の特定が困難な商品があることや, 保管場所がないなど分別収集実施前には予期できない問題が生じたこと, 住民が期待していた効果が明確に現れないこと等が考えられる.したがって, 異物混入を低減させるには, 行政は分別収集に関して情報提供を行い, 企業は容器の使用素材を住民にわかりやすく表示する, 住民はそれらをもとに廃棄物の分別に努め, さらに収集場所の管理体制を整えることが重要である.
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牛島 健, 石川 忠晴, 上原 英之, 中西 徹, Corazon C. DAVIS, Sylvano D. MAHIWO
2002 年 30 巻 p.
355-362
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
フィリピンのマニラ首都圏では、有機性廃棄物による公共水域の汚染が著しい。一方、現在の社会経済状態のもとでは先進国型の処理施設の導入は困難である。本研究では、まず主な汚染源である貧困層のトイレと生ゴミ処理の実態を調査し、コンポスト型トイレによる屎尿・生ゴミ一括処理を代替案の一つとしてあげる。次に、オガクズを用いた既存のコンポスト型トイレで屎尿・生ゴミ一括処理を行った場合の減量効果の実験結果と、現地でのコンポスト型トイレの受入可能性に関するアンケート調査結果を示す。
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白川 直樹, 楠原 千佳子, 玉井 信行
2002 年 30 巻 p.
363-370
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
河川の減水区間対策の水源として下水処理水に着目し, 上水取水点まで導水・放流して河川流量を増強した場合の効果と費用を計算した.効果は水理量 (水面幅・水位), 水質 (BOD), それに流況曲線を用いた順序統計学的手法により評価した, 導水量を変化させて各ケースの費用対効果を算出したところ渇水基準と低水基準の間に差が生じた.事業規模を大きくして複数処理場を組み合わせると, 水質影響はほぼ事業費用に比例したが流量影響には組み合わせによる優劣がみられ, 代替案の比較や取捨選択に有効な結果が得られた
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原 圭史郎, 佐藤 弘泰, 味埜 俊
2002 年 30 巻 p.
371-378
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
下水処理に伴って排出される下水汚泥は、脱水・焼却などの工程を経て処理され、その後、埋立てや再資源化工程へと流れていく。現在、各自治体ごとに様々な汚泥再資源化のあり方が試みられているが、持続可能な汚泥の処理・再資源化を考えていくためには、それぞれの工程におけるエネルギー効率性が重要な要素の一つである。本研究では、東京都の汚泥処理・再資源化施設における複雑な汚泥のフローを把握し、そのフローもとにして汚泥処理工程、再資源化工程にて消費される年間のエネルギー量と二酸化炭素排出量の算出を試みた。また、汚泥再資源化施設における3つの再資源化工程でのエネルギー消費量を相対比較することで、それぞれの工程におけるエネルギー効率性を相対的に把握した。これらの算出結果をもとに、東京都における汚泥処理、再資源化工程のエネルギー消費の現状が把握された。
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細井 由彦, 小池 淳司, 増田 貴則, 飯田 奈穂
2002 年 30 巻 p.
379-390
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
水道事業においても費用効果分析の実施は重要な課題になってきている.すでに個別に効果の計測法が種々提案されている.しかし個別に計測法を考えているだけでは, 集計の段階において効果の計測漏れや波及効果の二重計測が発生するおそれが残る.そこで便益評価の理論的な枠組みを検討し, 消費者行動, 生産者行動をもとにした整合的な個別計測手法を提案した。発生ベースの便益を, 家庭利用については消費者余剰変化で, 事業活動, 工業活動については利潤変化で計測するようにした.つづいて提案した手法による事例分析を試みた.
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河川に関する研究解説パネルを例に
吉冨 友恭, 吉田 健, 松下 幸司, 前迫 孝憲
2002 年 30 巻 p.
391-400
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究では、自然共生研究センターの実験河川に計画された研究解説パネルの開発例をとりあげ、企画段階から完成に至るまで、そのプロセスで行った評価・検証の取り組みに注目し、展示表現の改善とその特徴、問題点や課題について考察した。企画段階における利用者の意識調査、試作パネルを用いた評価・検証の作業により、パネル改善のための項目が抽出され、利用者の要望に応じた情報レイアウト、表現が決定された。
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ヴァラナシ (INDIA) におけるDev Diwali祭を事例に
橋本 慎吾, 近藤 隆二郎
2002 年 30 巻 p.
401-408
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
本研究では、宗教と水の関係が密接な関係にあるヒンドゥー教の聖地「ヴァラナシ (Varanasi)」の河岸空間ガート (Ghat) で行われるDev Diwali祭を対象とし、住民主体の地域環境を再生する可能性を提示することが目的である。Dev Diwali祭はモハッラ (Mohalla) と呼ばれる周辺コミュニティが中心となり、10年程前から汚染の深刻化したガンジス川 (Ganga) を美しくしようというメッセージが伝統的な祭の意味に加えられ、現在はヴァラナシ最大級の祭となっている。そこで先ず住民に対してヒアリング調査を行い、日常におけるガートとモハッラの関係性を明らかにし、Dev Diwali祭が日常の社会構造に及ぼす影響についてヒアリング調査と祭の現象を基に考察を行った。その結果、この祭には「伝統的仕掛け」と「現代的仕掛け」と呼ぶことのできる、河岸空間と周辺コミュニティの関係性の再生に有用な構造があることを明らかにした。
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関 平和, 和田 健一郎, 松尾 雄一, 菅谷 博
2002 年 30 巻 p.
409-418
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
フリー
北向き斜面に設置された傾斜ハウス内の微気象の特徴を実験的に把握した後、数理モデルによりその特徴を定量的に検証した。晴天時に、傾斜方向に最大3~4℃、床面と垂直な方向に最大2.5℃の気温差が生ずること、曇天時には両方向にほとんど気温差が生じないことが示された。これらの微気象は日射量とハウスの向きによって決まる被覆部と土壌表面の温度差によって大きな影響を受ける。3~4℃の気温差は作物の生育速度のずれをもたらすのに有意な差であることが指摘された。
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宮下 衛, 染谷 保
2002 年 30 巻 p.
419-428
発行日: 2002/10/26
公開日: 2010/03/17
ジャーナル
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ヒヌマイトトンボは河川改修や開発により生息地が減少したため, 1991年, 環境庁により絶滅危惧種に指定されている汽水性のイトトンボである, 利根かもめ大橋建設地においてヒヌマイトトンボ生息地の事前・事後の環境影響調査を行った.1997年の建設前にはヒヌマイトトンボは同橋下のヨシ原に多数生息していたが, 2001年10月-2002年8月まで幼虫および成虫の生息状況を調査した結果, ヒヌマイトトンボは全く確認されなかったヒヌマイトトンボが利根かもめ大橋橋梁下の生息地から消滅した主な原因として, 中央排水路の川幅を拡げ, 板張りの水路に替えるという工法を採用したために, 水路や湧水からヨシ原に流入する淡水量が激減し,(1) ヨシ原が乾燥化したこと,(2) 幼虫が集中して分布する窪地が土砂の堆積により消滅したこと,(3) 生息地の塩分濃度が上昇したこと, が考えられる.
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