環境システム研究論文集
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31 巻
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  • 大原野森林公園を事例として
    出羽 浩明, 笹谷 康之
    2003 年 31 巻 p. 1-7
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、大原野森林公園を事例に、森林ボランティアの積極的な参加を促進し、市民, 行政, 専門家企業が連携する里山管理の方法を明らかにすることを目的とする。伝統的な里山利用である雑木による炭焼きは、今日では森林ボランティアにより人工シュラを用いて楽しく安全に集材し、炭焼きのプログラム等として活かせることを提案した。そして、市民や多様な主体が連携して木質バイオマス事業等を推進し、この活動をデジタル展示するデジタルエコミュージアムを構築することが、今後の有力な里山管理策であることを提案した。
  • 森野 真理, 萩原 良巳, 坂本 麻衣子
    2003 年 31 巻 p. 9-17
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    生物多様性の保全を意図した生息地管理は土地利用の問題でもあるため, 地域社会の協力が不可欠である. 本研究では, 鹿児島県屋久島にて, 地域社会の自然に対する保全インセンティブを見出すことを目的とした. そこで, 調査では, ISM法により保全意識に関連する要素群を階層構造化し, それに基づいた意識調査を行った. 回答結果から保全意志の有無の傾向を調べ, 数量化理論第II類により, 「保全行動への参加意志の有無」の判別要因を分析した.さらに, 数量化理論第1類によりアイテム (要因) を統合化し, 順位をつけた結果, 地域社会の保全インセンティブとして重要な要素は, 保全行動プロセスにおいて, 「経験」よりもむしろ「認識」・「意識」レベルにあることが示唆された.
  • 石原 洋平, 盛岡 通, 藤田 壮, 今堀 洋子
    2003 年 31 巻 p. 19-28
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年, まちづくりにおける新しい市民参加の形態としてワークショップ (以下, WS) が注目されている.本研究では環境保全のまちづくり計画の事例として尼崎21世紀の森構想 (以下, 森構想) を取り上げ, その中での市民ワークショップ (以下, 市民WS) に着目した.WSに関する先行研究, 文献調査をふまえた上で, 市民WSにおいて実施された自由記述式アンケートのテキスト分析を行い, 回答者全体および参加者属性別の「地域の学習」「合意形成」「市民の主体的活動」についての項目の時系列変化を見た.その分析結果と市民WSの運営内容とを照らし合わせることによって, 市民WSの成果を明らかにした.市民の思いと行政の計画進行とのバランスを考慮することを今後の課題として挙げる.
  • おおつ環境フォーラムを事例として
    木村 俊司, 笹谷 康之
    2003 年 31 巻 p. 29-37
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では、おおつ環境フォーラムを事例に、学習する視点から組み立てたグループウェアと、デジタル地図上でメンバーが登録・共有できるWebGISと、コミュニティ形成支援「WAKARU」の3つのシステムを構築して、これを運用・評価して、環境パートナーシップ組織のITマネジメントについて提案することを目的とする。
    構築したグループウェアは、おおむね市民に対する活動PRや事務処理に効果的であるが、イベント参加申込・受理通知機能や、会計報告機能の追加が必要なことが明らかになった。WebGISは、紙地図と併用するワークショップにおいて、テーマ横断型の学区別の地域課題をメンバーが共有していく上で効果的であることがわかった。WAKARUは同時にログインして同期的に行動するワークショップを行うことによって、意見の分布がわかり、多面的な交流が生まれることがわかった。
    フォーラムが母体となり、これら3つのシステムを、集合研修や、オフラインのワークショップと併用して使うことで、6つの機能と2つの意見共有・交流の効果があることを示した。また、このシステムを運用する上でのフォーラム内のプロジェクト等の役割と、外部のNPO、CBO、学生の役割を示した。
  • 恒見 清孝, 盛岡 通
    2003 年 31 巻 p. 39-45
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, リスク・コミュニケーション支援のプラットフォームの効果を検証するために, 企業のPRTR対応の担当者へのヒアリングと, 北九州PCB処理事業に見られる行政担当者のリスク対応のシミュレーションによる運用実験をおこなった. その結果, 産業セクターからは, リスク・コミュニケーションのチェックポイントやコミュニケーション事例の掲載, およびインターフェースの使い易さなどに対する一定の評価がなされた. また, 行政セクターのシミュレーション結果からは, 住民説明会の戦略, 情報公開の方針, 緊急時の行政の役割などについてニーズに対応できていることを明確にした. さらに, 事業所の日常管理についての事例の掲載, 簡易的なリスク・アセスメントによるリスク・レベル判断, NIMBY型住民との対応に関する方法などが求められていることが明らかになった.
  • 河瀬 玲奈, 松岡 譲, 内藤 正明
    2003 年 31 巻 p. 47-54
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    循環型社会を構築する上で, 食品廃棄物の飼料化・堆肥化・メタン発酵などを行う再資源化部門は人々の社会経済活動に大きな役割を果たす.したがって, 循環形成の効果を評価する際には再資源化部門以外の部門を含めた広い視野で評価しなければならない.加えて現在は過型から循環型社会への移行の過渡期であり, 循環型社会を構築するにはシステム系外からの影響に柔軟に対応できることや再生品の需給バランスを考慮することが必要条件となる.本研究では産業廃棄物の動植物性残渣と事業系一般廃棄物の厨芥類に注目し, 経済社会内の各部門の需給バランスの取り扱いが容易な応用一般均衡モデルを用いて, 各種対策 (再資源化部門への補助金・廃棄物委託処理価格の値上げ・バージン財への課徴金) や環境制約 (最終処分量と二酸化炭素排出量) が食品廃棄物の循環形成に与える影響について評価を行った.
  • 遺産価値の分離可能性と数値実験
    林山 泰久, 奥山 忠裕
    2003 年 31 巻 p. 55-66
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    環境質の経済学的価値が利用価値と非利用価値に大別されることはよく知られていることである. 本研究は, 特に, 環境質の非利用価値のなかで遺産価値に着目し, 遺産価値の発生する要因を理論的に定式化することにより, 発生要因が非利用価値に与える影響および遺産価値の定量的計測可能性を検討することを目的とする.
    そのため, 本研究では利他的動機を市場で観察可能なデータから把握するために環境保全行動を明示的に表現し, 利他的効用理論に基づいた消費者行動を定式化することにより, 遺産価値を定義した. その結果, 利他的効用理論を用いた場合においても環境質の価値は加法分離可能であり, かつ, 数値解析を行うことにより, 利他的効用水準の変化により遺産価値が上昇した場合には, 相対的に環境質の存在価値も上昇することが示された.
  • 神谷 大介, 萩原 良巳, 畑山 満則
    2003 年 31 巻 p. 67-73
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    都市域の自然的空間は生活者にとって日常時には遊び空間であり、震災時には減災空間である。本研究では、特に、震災時の避難行動に着目して自然的空間の減災価値評価を行った。まず、交通施設等による地域の分断を考慮し、さらに、町丁目の隣接関係を表現したグラフを作成した。そして、これを用いた1次避灘行動に関するシミュレーションを行い、避難が困難な地区を示した。さらに、空間毎の想定避難人数を算出した。次に、空間の広さ・水の有無・緑の量と配置に着目して避難空間としての安全性を評価した。さらに、一時的な避難生活を想定し、2次避難行動からみたときの空間の減災価値について述べた。
  • 山田 淳, 大崎 紗恵子, 服部 容子, 佐原 義規
    2003 年 31 巻 p. 75-82
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ODAの質の向上とアカウンタビリティの確保のためODA評価の重要性が認識され、DAC評価5項目により言判面の視点を揃えた成果重視型の評価手法により実践されている。しかしながら、分野別の評価項目や評価指標の整備が不十分であり、定性的な評価にとどまっている場合が多い。本研究では、水道整備プロジェクトを取り上げ現地での受益者直接調査によりプロジェクト実施効果を把握する。これにより、水道分野として重要となる水量・労働・水質の3つの観点から定量的な評価指標を導入し、適用の可能性を明らかにした。
  • 西村 和司, 萩原 良巳, 清水 康生, 阪本 浩一
    2003 年 31 巻 p. 83-89
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では河川、水道、都市活動、下水道の4つのネットワークから構成される大都市域の水循環ネットワークに影響する震災リスクを分類する。そして、この震災リスクを安全性から評価するための到達可能性と損傷度の2つの指標を作成する。これらの指標はリンクが破壊することなくネットワークとして機能する可能性と、管にどの程度の破壊が生じるかを評価することを目的としている。最後に、大阪府の北摂地域を対象としてこれらの指標を用いて安全性の評価を行ったのちに、水循環ネットワークの再構成のための代替案の1つである下水処理水を用いた水辺創生を行った場合の安全性と比較し、同評価指標の有効性を検討する。
  • 福田 篤史, 中村 英佑, 園田 益史, 森杉 雅史, 井村 秀文
    2003 年 31 巻 p. 91-99
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    各国は農産物取引を通じて互いの農地に依存している。依存の度合いを定量化すること自体、各国の持続可能性を知る上で有意義であるが、依存関係の在り方について論じることも重要であり、そのためには各地の農業生産性を定量化し、吟味する必要がある。本研究では、包絡分析法 (DEA) を用いることで各国農業の生産効率を分析し、そこから見た農産物取引の評価を行う。また、上述の方法に加え従来型の計量経済学的手法も併せて、気象条件や農地価格と生産効率との因果関係についても調べ、農業生産の非効率の原因について考察する。
  • 三上 市藏, 窪田 諭, 奥 裕子
    2003 年 31 巻 p. 101-111
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 一般道路の供用段階を対象として地球環境問題であるエネルギー枯渇問題, 地球温暖化, 酸性雨と地域環境問題である大気汚染, 騒音, 振動, 低周波音の七つを扱い, 環境負荷の統合評価手法を検討した. そして, これらの環境負荷量を経済価値に変換することによる統合評価を行った. 最終的に, 妥当性を検証するために実道路へ適用し, 環境への影響の実態を把握した.その結果, 道路の供用段階に発生する環境負荷は, 建設段階よりも大きく, 10年以内には建設段階の環境負荷量に達することがわかった. そして, 供用段階における酸性雨と大気汚染の環境負荷が建設段階の環境負荷に一日未満で達することから, 異なる環境問題の重要度を明確にすることができた.
  • 岡村 実奈, 入山 広阿貴, 井村 秀文
    2003 年 31 巻 p. 113-123
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    都市の有機性廃棄物処理システムにおいては, 多様な選択肢があり複数の将来像が考えられる. 本論文では, 政策によって将来の構造がどう変化するのか複数の代替案を同じ基準で比較するために, 廃棄物処理, 下水処理, 自家処理間の有機性廃棄物フローを統一して評価できる将来予測システムを構築した. 手法の特徴は, 生ゴミ処理方法に対する市民の意識を反映した選択行動を組み込んだ上で, 発生から最終処理までの物質 (全体量, 炭素, 窒素, りん) フローを2000年から30年間予測し, 費用とCO2排出量を指標として予め設定した政策を評価し得ることにある. なお本手法は, 将来の新たな処理, 再資源化方法の追加に対する拡張性を持っている.
  • 松本 亨, 石崎 美代子, 左 健, 島岡 隆行
    2003 年 31 巻 p. 125-132
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 生ごみ分別・再資源化技術の導入として, 5つのシステムと3つの導入シナリオについて比較評価を行った. 評価手法としては, 社会フレームの変化を考慮せず純粋に技術システムの違いを評価するための従来型LCAと, 社会フレーム変化とそれに基づく環境負荷の変化を評価するためのライフサイクルシミュレーション (LCS) を用いた. LCSでは, 2000年から50年間を対象に将来予測を実施し, 浄化槽付ディスポーザーが新築集合住宅の5割に導入されるという趨勢ケースを設定した. これに対して, 2000年以降は直投型ディスポーザーが普及するシナリオと, 固液分離装置+ポリ乳酸 (PLA) 化が普及するシステムを設定し, 趨勢ケースと比較することでエネルギー消費及び温室効果からの優位性を示した.
  • 清野 聡子, 宇多 高明
    2003 年 31 巻 p. 133-143
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    絶滅危惧生物カブトガニの個体群保護や生息地の環境保全に関する研究を通じて、希少生物保護にかかる本質的障壁は、純粋な自然科学的問題にはなく、沿岸での土地改変を律し、かつそれを実行に至らしむる社会システムに存在することを明らかにする。専門家の提案が社会に受け入れられるかどうかは、その対策が行われた時代の法制度と、社会状況に強く依存する。これらの問題の克服のために、河川・沿岸管理の位置付けと専門家の責務・可能性を論じ、専門家の役割の改善策を提案する。
  • 奥田 尚孝, 中島 敦司, 中尾 史郎, 山田 宏之, 養父 志乃夫
    2003 年 31 巻 p. 145-150
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    年間を通じた気温の上昇がコナラの成長や生物季節現象に及ぼす影響を検討する目的で, 3年生の実生苗を野外の気温に1.5℃, 3.0℃;C, 4.5℃加温した温暖条件および野外と同温, -1.5℃に調整した人工気象室内で育成した。その結果, 春の開芽開始は, +1.5℃ 区, +3.0℃ 区, +4.5℃ 区で早くなる傾向が認められた。樹高伸長量, 着生葉数, 地際直径, 全乾重は+3.0℃区, +4.5℃区で大となり, 特に+4.5℃区の根の乾重が著しく大となった。また, +3.0℃区, +4.5℃区で落葉せずに着生した状態で越冬する個体が確認された。主軸の細胞長は加温区で増加した。そして, 紅葉の進行は加温区で遅れる傾向が認められた。SPAD値, 光合成速度は+4.5℃区で低下する傾向が認められた。以上の結果, 生育環境の気温上昇は, 樹高伸長量, 着生葉数, 器官別乾物重量, 地際直径等の増加, 光合成速度の低下, 春の開芽時期の促進, 紅葉の進行の遅れ, 落葉せずに越冬などの現象を引き起こす可能性があると考えられた。
  • 多島 秀司, 深川 良一, 湯浅 まゆ, 羽賀 浩, 勝見 武
    2003 年 31 巻 p. 151-158
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    植生用土壌には適度な排水性と保水性が求められる. 排水性, 透水性の指標となる透水係数やpF値は室内試験で求める場合, その密度によって結果が異なる. そこで植生用土壌の室内試験における密度管理手法に締固め仕事量による定量的概念を導入し, 透水係数およびpF値を測定した. 本研究は植生用土壌の供試体作製方法と, その妥当性を工学指標と農学指標との比較によって検討した.
  • 黄 光偉, 泉宮 尊司
    2003 年 31 巻 p. 159-168
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    水温は河川生態環境に関わる一つの重要指標である。本論文では, 適正な水中熱環境を維持することの重要性を提唱している。上流側の制御が下流域の水温の変動に与える影響を議論し, 水温の自然変動を考慮した操作が行われれば, ダム放流による水温変動の影響が軽減できることを示した。また, 河川水中熱環境を評価するために, 水温多様性指標を提案した。さらに, 全国一級河川における現在の水温観測システムの問題点等を指摘した。
  • 小棚木 修, 小泉 明, 渡辺 晴彦
    2003 年 31 巻 p. 169-177
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    わが国における水道管路の多くは昭和30年代から40年代の建設拡張時代に布設されており, 経年化が進んできている. 管路の経年化に伴い水道供給における障害の発生及び機能低下が予想され, これを予防するためには適切に管路を補修・更新する必要がある. 管路更新事業はその効果と給水収益に応じた投資が必要であるが, 投資に対する効果についてはこれまで十分な研究がなされていない.本研究では, 管路更新による効果を定量化し, 管路更新計画を給水収益にもとつく費用制約条件下で計画期間内の総便益を最大化する問題として定式化した. そして, 更新対象管路の抽出方法及び更新期の検討方法を提案し, その有効性を確認した.
  • 片谷 教孝, 重岡 久美子
    2003 年 31 巻 p. 179-188
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    悪臭公害に対する行政の対応は、住民からの苦情発生を起点としているため、苦情発生要因を把握することが的確な行政遂行上不可欠である。本研究では、悪臭苦情がどのような要因に基づいて発生しているのかを把握することを目的として、毎年行政によって集計されている悪臭苦情件数データを社会統計学的にさまざまな角度から分析した。その結果、苦情件数の地域による違いや時間的変化は、悪臭発生施設の分布だけでなく、県民気質などの多くの要因によっていることが示された。
  • 山下 三平, 前原 暢仁
    2003 年 31 巻 p. 189-194
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    住民意識の相違を克服して合意形成を確実にするためには, 住民意識の構造とその形成プロセスを的確に把握する必要がある.そこで本研究は沿川住民を対象とし, 1988年, 1995年および2002年の3度に渡って環境意識調査を行った.その結果, 1) 住民の河川水質に関する知覚が正確なこと, 2) しかし環境評価にそれが反映しない傾向があること, 3) 1990年代以降, 身近な河川環境に対して強い関心をもつ人々とそうでない人々との意識の相違が広がりつつあること等が示された.
  • 尾崎 平, 和田 安彦, 三浦 浩之, 松本 由紀子
    2003 年 31 巻 p. 195-200
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 多目的雨水貯留施設を対象施設として, 施設周辺住民に対して施設の存在, その機能の認知度および貯留水利用に対する住民意識や住民による維持管理活動の参加意思を調査した. 貯留雨水の日常的利用に対する住民意識と一部の地域のみの住民が貯留雨水を利用することに対する意識を把握し, 草木への散水など, 住民による簡単な施設の維持管理の可能性について検討を行った. その結果, 貯留水の日常的利用に賛成している人の大半は, 貯留水の一部地域のみの利用でも賛同している. また, 貯留施設の存在やその機能が地域住民に広く認知されることにより, 住民は貯留施設を高く評価し, 貯留水の日常的利用や維持管理活動にも積極的に参加するようになると考えられる.
  • 橋本 忠夫, 岸 邦宏, 佐藤 馨一
    2003 年 31 巻 p. 201-208
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は、東京都と札幌市において意識調査を行い、低公害車の購入意識を明らかにし、低公害車の導入促進方策を提言することを目的とする。分析手法は、集団意思評価技法として自家用車の購入について選択要因を定量的に評価するグループファジィAHP、そして低公害車の価格に対する費用負担意識を分析するためにロジット型価格感度測定法を適用した。グループファジィAHPより、環境に配慮する意識が高いほど低公害車の購入意識も高いことを定量的に示した。また、ロジット型価格感度測定法より、札幌市民はハイブリッド車の価格がガソリン車と同等であれば受け入れることが明らかになった。そして、環境に配慮する意識が低くても、価格によりハイブリッド自動車の購入可能性が高くなることを示した。
  • Shobhakar DHAKAL, 金子 慎治, 井村 秀文
    2003 年 31 巻 p. 209-216
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は北京市、上海市におけるエネルギー消費による二酸化炭素排出量を推計・分析し、東京とソウルとの比較を行う。総二酸化炭素排出量あるいは部門別二酸化炭素排出量に対する各要因の寄与について、要因分析法によって明ちかにする。急速な発展段階にある北京市や上海市では、エネルギー消費原単位は改善されているものの、所得増加が二酸化炭素排出量増加の第一要因であることが判明した。交通部門では、自動車台数の増加が概ね唯一の原因である。交通部門、業務部門、家庭部門のそれぞれにおける要因の寄与構造は、各都市それぞれの特徴を反映して、各都市間さまざまであり時間的にも変化する。特に、北京市と上海市における各要因の寄与構造の時間変化は比較的不安定であるといえる。
  • 方 偉華, 井村 秀文
    2003 年 31 巻 p. 217-225
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 黄河流域におけるポテンシャル蒸発散量 (PET) の推計を行うものである. ポテンシャル蒸発散量の推計に影響を及ぼす主な因子は, 適用性や気象パラメータの入手可能性である. 第一に, Penman-Monteithの推計方法を基準として, 6の経験的なポテンシャル蒸発散量の推計方法を比較及びキャリブレーションした. 6の経験的な推計方法は, Thornthwaite, Blaney-Criddle, Hargreaves, Priestley-Taylor, Makkink, Penmanである. 2002年における10ヶ所の気象観測所での完全な日常の気象データが, 比較及びキャリブレーションに用いられた. キャリブレーションの結果, Makkinkの推計手法が最適であるという結果を得た. 第二に, 黄河流域におけるポテンシャル蒸発散量が, 190地域からの温度と日射時間から, キャリブレーションしたMakkinkの推計方法により推計された.
  • 中山 裕文, 高尾 彰, 島岡 隆行, 井村 秀文
    2003 年 31 巻 p. 227-233
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、中国の都市における経済成長と市街地拡大との関連性について分析した。成長会計分析の理論を用いて都市レベルでの経済成長要因を推計し、技術進歩を表すTFP (Total Factor Productivity) の変化について都市別の値を算定した。さらに、これと市街地面積の拡大状況とを比較したところ、TFP成長が大きな都市においては、資本や労働などの生産要素の大量投入によって成長している都市と比べ、市街地面積あたりの生産性の増加が大きいことを示した。中国の都市は、ある一定の経済成長を遂げる場合、TFP成長の高い都市では要素投入成長型の都市に比べて市街地の拡大が低く抑えられる傾向があることを示した。
  • 金子 大二郎, 大西 政夫
    2003 年 31 巻 p. 235-244
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 中国・インドの巨大な人口増問題と新たな水資源制約時代を背景に, 現代における穀物需給の体制上の問題点と水資源不足の視点から, 穀物生産量の監視について, 現在の気温中心のモデルを発展させた光合成型のモニタリング法が必要であることを説いている.人口の巨大な両国における水制約の条件下では, 従来からの有効積算気温や植生現存量ばかりでなく, 日射と作物の水ストレスをも考慮した穀物生産指標を新たに開発することが必要である.本論文は, 世界気象データと衛星による植生指標を用い, 日射・有効気温・植生現存量・気孔開度を考慮した光合成型の穀物生産指標をモデル化し, 水資源不足時代における穀物生産量を早期に監視する方法を提案している.小麦・米・トウモロコシ等の穀物生産量の中で水稲を研究対象として最も重視する.その理由は, 水稲は食糧問題の中で単位面積当たりの収穫量が小麦より高いことから人口扶養力が大きく, また, 水資源を最も多く必要とし, 水配分の視点から重要な作物となっているからである.
  • メモン ムシタク・アハマド, 井村 秀文, 櫃本 礼二
    2003 年 31 巻 p. 245-256
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文は、都市環境問題、特に上下水、固体廃棄物、大気分野を対処するための地方政府の能力向上のプロセスについて、検討を行った。地方政府の能力は、アセスメント能力と対策実施能力として分類できる。アセスメント能力は、モニタリング能力を含むと同時に、汚染が齎す社会経済への影響も含まれる。対策実施能力は、計画、規制、行政、社会、資金、技術における諸側面の能力を意味する。そして、地方政府の能力向上のプロセスの中で国際協力の役割を論じた。北九州イニシアティブは、国際環境協力が如何に地方政府の能力向上プロセスに寄与するかが示され、一例として挙げた。
  • 武庫川流域圏におけるケーススタディ
    盛岡 通, 藤田 壮, 岡寺 智大
    2003 年 31 巻 p. 257-266
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    武庫川流域を対象に有機物循環の70年代と2000年との2時点比較を行い, ついで,(1) 人口の増加,(2) 家計武庫川流域を対象に有機物循環の70年代と2000年との2時点比較を行い, ついで,(1) 人口の増加,(2) 家計からの排出強度の変化,(3) インフラの整備,(4) 産業の生産増加,(5) 産業からの排出強度の変化という活動要因による有機廃棄物の変化を評価した. その結果, 武庫川流域では流域下水道が有機廃棄物の増加の大きな要因となっている反面, 人口と家計からの排出強度は有機廃棄物を減少させていることが明らかになった. 又, 中流域, 下流域では流域下水道整備が有機廃棄物の大きな増加要因となっているが, 上流域では人口増加が増加の主要な要因となっていることも明らかとなった.
  • 荒井 康裕, 稲員 とよの, 小泉 明
    2003 年 31 巻 p. 267-276
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, ごみ処理システムにおける広域化計画を取り上げ地区の統合・再編化に関する適正規模の検討, 並びに選択すべき処理シナリオの最適化モデル分析を試みたまず, 対象地域のごみ処理に関する費用関数を作成し, 地区の集約化を財政的効率性の観点から検討した. また, 総費用を最小にする目的の下, 埋立処分量の削減目標レベルに応じながら, 地区連携による集約パターンの選定と, 選択すべき処理シナリオの組合せを同時に決定する最適化モデルを提案し, このモデルを実際の対象地域に適用した際のシナリオ結果を示した.
  • 佐々木 努, 藤原 健史, 松岡 譲
    2003 年 31 巻 p. 277-285
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    廃棄物処理の広域化は, ダイオキシン対策ならびに廃棄物のリサイクル, 処理費用と環境負荷の削減に有効であるが, 対象地域の人口によって廃棄物輸送による環境負荷量や交通量が変わるため, 広域化の適正規模が存在すると予想される.本研究では, 廃棄物処理広域化を評価するためのモデルを開発し, 総費用, 環境負荷量 (CO2, NOx, SOx), 交通量の変化を広域化規模の関数として表すことにした.このモデルを使用して, いくつかの典型的な人口分布を持つ地域における広域化最適規模を示した.
  • 田畑 智博, 岩本 薫, 奥田 隆明, 森杉 雅史, 井村 秀文
    2003 年 31 巻 p. 287-296
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    循環型社会の実現を見据えた廃棄物管理においては, 3R (発生抑制, 再利用, 再資源化) による適正処理の推進を図るとともに, 廃棄物処理の伴う環境影響を抑制することが求められるといえる.本研究では動脈部門における財・サービスの生産・消費活動, 静脈部門における廃棄物活動に伴う物質の投入・産出構造を体系的に把握可能なマテリアルバランス表を作成した.これを愛知県の廃棄物管理政策の評価に利用するとともに, 本表を政策評価に用いることの有用性について検討した.
  • 田畑 智博, 辻岡 信也, 森杉 雅史, 井村 秀文
    2003 年 31 巻 p. 297-306
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    資源有効利用度を向上させる手段として, カスケードリサイクルが注目されている現状の廃棄物処理でもカスケードリサイクルは実施されているが, 必ずしもその有効性を十分に活かせていない. 本研究ではカスケードリサイクルを考慮した紙資源のリサイクルシステムをモデル化し, 資源有効利用度及び経済性からみたカスケードリサイクル実施の有効性について評価した. その結果, カスケードリサイクルの実施は資源有効利用度及び経済性の向上において有効であるが, 現状のリサイクルシステムは最適であるとはいえず, その改善が見込まれることが明らかとなった.
  • 剪定枝葉等発生材のリサイクルを事例として
    堀江 典子, 萩原 清子
    2003 年 31 巻 p. 307-315
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    緑地を活用した様々な循環型の取り組みは多角的な検証が行われるべき段階にある。その評価にあたっては、複雑さを増す社会のなかでの合意形成と意思決定を支援するために、簡易でわかりやすく、多視点、多基準、多主体を前提とした評価手法が求められると考える。本研究では、勇定枝葉等発生材のリサイクルを取り上げて、客観的評価とステイクホルダーの属性化による主観的評価とを統合して総合的評価スコアを求める手法を検討し、江東区における勇定枝葉の利用方法に適用することによって、実用の可能性を示した。
  • 京阪神都市圏における再資源化の効果
    藤田 壮, 盛岡 通, 高橋 友幸
    2003 年 31 巻 p. 317-326
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本稿は京阪神大都市圏を対象に戸建住宅から発生する建設廃棄物の循環再資源化のシステムを構築してその環境改善効果と経済効果を算定する. 圏域における半世紀の着工統計資料から都市圏に蓄積された建設ストックの立地量を算定した上で, 建設の構造材を再利用する建設部品リサイクルと資材の原材料として活用するマテリアルリサイクル, さらにエネルギー資源とし再利用するサーマルリサイクルを組み合わせた代替的な再資源化オプションを定義する. その上で, 住宅の構造に応じた適切な再資源化技法を組み合わせた政策システムを比較することによって, 多元的な再資源化政策の有効性を算定した.
  • 金築 優, 中山 裕文, 島岡 隆行
    2003 年 31 巻 p. 327-332
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、再生土木資材に関わる法規制と市場それぞれの観点からリサイクルの状況を分析することで、今後のリサイクル促進に資することを試みた。 再生砕石については、地域別にみると、市場価格が需要に影響を与えていることを確認できた。 また、再生砕石の市場シェアには、バージン砕石の域内自給率が関係していることを示した。近年では価格が再生材需要に与える影響が薄れてきており、リサイクル関連法等の規制による影響が大きくなっていることが示唆された。 一方、アスファルト合材市場の需要量は価格にあまり影響されていないことを示した。 市場取引きを伴わないことが多い再利用土砂については、価格に関する分析はできなかったが、再資源化における他の土木資材との相違点について考察した。
  • 栗栖 雅宜, 盛岡 通, 藤田 壮
    2003 年 31 巻 p. 333-342
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    自然共生型の流域管理を行っていく上で, 物質循環を制御することは重要な意味を持つ. 本研究では循環制御の対象として有機物資源を取り上げ, 武庫川流域圏をケーススタディの対象として有機物資源リサイクルシステムの構築を支援する方法を提案した. 具体的には地域特性に適合する有機物資源再資源化技術の指標として量的指標, 質的指標, 需給指標の3つをあげ, それらの指標から示される資源循環区に対して再資源化技術を導入することによる二酸化炭素排出量の削減効果を評価した.それによると, 適合度分析により示される流域リサイクルシステムは, 対象区域全域に画一的な単一の再資源化技術を導入した場合よりも環境影響が少ないことが示された. これにより流域管理において, 地域特性を見た上で再資源化施策を決定するプロセスを試行的に構築することができた.
  • 今堀 洋子, 盛岡 通
    2003 年 31 巻 p. 343-349
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    循環型社会において「ものの販売から機能の提供へ」に代表されるビジネスの変革が求められている. 現に欧米を中心としてサービス経済化として様々な研究がなされている. 本研究では, その中から米国で提示されている「サービサイジング」をとりあげ, サービサイジングにおけるリースの位置付け, サービサイジングが循環型社会にどのような点で寄与するかを整理した上で, 家電産業を例に取り, 家電リース・レンタルの先行事例も概観しつつ, 具体的に生協の組合員を対象とした家電リース社会実験を実施し, そこから循環型社会を促進する持続可能なビジネスとしての家電リースの課題や有効性を明らかにした.
  • 岡野 雅通, 盛岡 通, 恒見 清孝
    2003 年 31 巻 p. 351-356
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    循環型社会システムの形成に向けて, 廃自動車(ELV)のリサイクルシステムを取り上げて評価する. ELVリサイクルシステムは, ASRに注目した再資源化率向上という目標と, 回収されるスクラップの質が重要であるが, 近年, 電装系部品に含まれるCuの混入が鉄スクラップの品位の低下を引き起こしている. ELVリサイクルに関係するセクターにおける, ASRの再資源化や減量化を目的としたさまざまな技術が進展していく中, システム全体を総合的に評価する必要がある. 本研究においては, 解体業者とシュレッダー業者の連携によって, 効率的かっ効果的にASRを削減する方法についてシナリオを立て, 費用便益分析によって検討する.ここから, 将来的な循環型社会の構築へと向けたについて考察する.
  • 緑地の特性に着目して
    大西 暁生, 廣田 福太郎, 吉川 拓未, 森杉 雅史, 井村 秀文
    2003 年 31 巻 p. 357-365
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年, 高分解能衛星画像を用いて詳細な土地被覆情報を簡便に得ることが可能となった. 本研究では, 高分解能衛星 (IKONOS) から得た情報を用いて都市内部の土地被覆状況と輝度温度との関係を分析する. 次に, 正規化植生指標 (NDVI) を応用し, 植生の活性度を表すための純粋植生活性度指標を作成・提案し, その実用性を検証する. また, 緑地の空間的配置構造においては, 距離に応じたマトリックスを用い, 集塊指標を定義・作成する. 最後に, これら緑地の指標を使い, 緑被率, 活性度, 空間的配置構造の3つの側面から輝度温度への影響を考察した.
  • 丹治 三則, 盛岡 通, 藤田 壮
    2003 年 31 巻 p. 367-377
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    自然共生型の流域圏におけるシナリオ誘導型の施策立案を行うための地理情報システムを用いた施策評価システムの設計を行った. 本研究で得られた成果として, 第1に流域圏の将来シナリオを描き各シナリオ下で多様な個別施策から施策プログラムを立案させる枠組みを提示した. 第2に有機循環政策に焦点をあてその計画と評価を行うために, 必要な地域情報を統合化し有機廃棄物の発生分布量を算定するプロセスを構築した. 第3に廃棄物の発生, 回収, 資源化, 副産物供給の各プロセスをGIS上で取り扱うアルゴリズムを構築した. 最後に武庫川流域圏において開発したツールを適用するために, 2つのシナリオと施策オプションを設定し, 同流域における有機廃棄物の発生分布, 地域ごとの家計の熱需要に対する供給可能熱量の分布, 回収・資源化・供給の処理プロセスにおけるエネルギー投入量及び二酸化炭素排出量を明らかにした.
  • 瀧口 博明, J. Wayland Eheart
    2003 年 31 巻 p. 379-385
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    汚染物質を費用効果的に削減できる排出量取引について、米国での代表例を分析し、ほとんどの例が排出枠の配分方法としてグランドファザリング方式を採用していること、汚染物質の集中を避けるために取引に制限を加えていること、排出量取引の成否は取引に関する規制の少なさや信頼性、透明性、柔軟性によることなどを明らかにした。また、日本における排出量取引導入の可能性を論じるとともに、閉鎖性海域の水質保全のために排出量取引を導入することについて考察した。
  • 畑山 満則, 寺尾 京子, 萩原 良巳, 金行 方也
    2003 年 31 巻 p. 387-394
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    阪神・淡路大震災前後から, 京都市市街地周辺を通る断層系は活動期に入ったと言われており, 早急な対策の必要性が指摘されている. 本研究では, 京都市市街地を対象とし, 震災時の人的な被害の軽減に関して考察することをすることを目的とした. 被災対象を高齢者とし, ハード的な震災リスクとして袋小路, これを軽減するソフト的な手段としてコミュニティの活性化を取り上げた. 独自の定義によって明らかにされた災害弱地域に住む高齢者の震災リスク軽減のためのコミュニティとして, 居住地を中心とするコミュニティと, 高齢者が通う施設を核とするコミュニティの存在を指摘し, 後者の重要性を明らかにした. 両コミュニティの関係と, 震災リスクの軽減化まで考慮した施設の配置について考察した.
  • 中村 英佑, 森杉 雅史, 井村 秀文
    2003 年 31 巻 p. 395-403
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    環境公平性を議論する上での1つの規範は, 「人間は全て平等であり, 人間1人当たりに許容される資源消費量と環境負荷発生量は等しくなければならない」というものである.しかし現実には, 1人当たりの資源消費量や環境負荷発生量は国によって大きく異なる. さらに, 経済のグローバル化によって, 世界各国は資源消費と環境負荷の相互依存性を強めており, 自国の環境負荷を他国に転嫁する動きもみられる. 本研究では, アジア太平洋地域を対象として, 産業連関分析により貿易を通じた資源消費と環境負荷の国際的相互依存状態を定量化し, それが環境問題をめぐる国同士の公平性にとって如何なる意味を持つかを検証した. その結果, この地域での資源消費と環境負荷の中心は米国と中国であり, 1人当たりの資源消費と環境負荷には米国と他国との間に格差が存在することが明らかとなった.
  • 犬上川南青柳橋-宇尾大橋を事例として
    佐々木 和之, 細馬 宏通, 近藤 隆二郎
    2003 年 31 巻 p. 405-415
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    1965年にスタートした河川敷の公園空間としての活用、1970年にスタートした親水をキーとした河川整備、いずれも「単一目的」の設計思想に支えられている整備である。故に元々川の持つ、行動の多様性・多義性が失われている。
    この多様性・多義性に着目した既存研究は存在する。しかし、人が河川空間をいかに認識しているのかについては考慮されていない。本研究は行動の要因として、生態学的視覚論を基に、動的視覚に着目した。その結果、縁とテクスチャと人間行動との対応モデルを5カテゴリー21種提示している。
  • 『なにわ町方あきんど会』の10年
    長田 知子, 近藤 隆二郎
    2003 年 31 巻 p. 417-424
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では10年にわたりまち歩きを続けている『なにわ町方あきんど会』の活動記録である引札を分類し、「名づけ」という行為が環境認識の変化を促すかを、「対象物」「名づけ方」「対象物のとらえ方」という三軸から分析した。引札の分析からは、対象物への注目点にはそれほど個人差は出ないものの、その「とらえ方」と「名づけ方」には、大きく2タイプー「コレクター型」と「エディター型」。があると考えられた。環境認識の変化としては、「エディター型」は、 モノと周囲とのかかわりについて深く考える可能性も秘めているが、「コレクター型」になると、自分の“まなざし”にもとつく見方が固定しがちであり、逆に認識を深める作用を鈍化させる怖れもある。この場合は、あらたな見方の刺激や、「名づけ」の深層を見るようなしかけがさらに必要とも考えられる。
  • 藤岡 誠一, 近藤 隆二郎
    2003 年 31 巻 p. 425-430
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、詩を用いた環境学習プログラムの提案にあたり、詩のイメージ形成効果に着目し、詩を読む前後の言語連想調査によって詩の効果を把握した。調査で使用した詩は金子みすヾの『大漁』である。調査結果から、『大漁』には、人間以外の立場に視線を向けさせる効果があることがわかった。そこで、『大漁』を用いて、立場を変えて考えることができるような環境学習プログラムの可能性について考察した。また、本研究の言語連想調査では、個人のイメージ構造を把握するために「連想マップ」という調査手法を提案し、集団のイメージ構造の有向グラフ化を試みた結果、言葉のつながりの関係性を示すことができた。
  • ワークショップによるプロセスプランニングの手法について
    伊東 啓太郎, 増田 健太郎, 春園 望, 津田 佐知子, 真鍋 徹, 藤原 勝紀, John BENSON, Maggie ROE
    2003 年 31 巻 p. 431-438
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    宅地開発等により身近な自然環境が減少している中で、日本の都市部では、環境教育を実践していくことは難しいのが現状である。このような現状の中で、身近に残された自然空間やオープン・スペースを、子どもの「遊び」と「環境学習」を目的としたビオトープ(生物生息空間)を創造していくことは、重要な課題である。本研究では、福岡市の市立小学校内の敷地を対象とし、以上のような目的を持ったビオトープの計画・設計・管理までのプロセスにっいての研究を行った。小学校ビオトープ計画の初期段階から設計・施工までの1年間のワークショップの過程を通して、計画手法としてのプロセスプランニングの有効性と課題を議論した。
  • 森山 克美, 田村 信義, 古賀 憲一
    2003 年 31 巻 p. 439-445
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 遠賀川支流の彦山川を対象に栄養塩の流出について解析を行ったものである。NH4-N, NO3-N, PO4-Pを指標に, C-Q図, L-Q図の関係を用いて, 流出プロセスを検討した。その結果, NO3-Nは降雨時に農耕地の土壌から溶脱され, 河川水中に含まれるという流出過程が重要と考えられた。一方, NH4-NとPO4-Pについては, 生活排水の流路あるいは河道への直接的なそれらの流入が, 汚濁の主要な部分を占めることが示された。また, 河口堰湛水域での藻類増殖の支配要因について検討した。湛水域への流入水となる上流地点の水質と湛水域内の水質との比較により, 湛水域ではPO4-PとNO3-Nが藻類増殖の支配要因となっていることを示した。
  • 小泉 明, 稲員 とよの, 荒井 康裕, 河野 裕和
    2003 年 31 巻 p. 447-454
    発行日: 2003/10/24
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では, 有害廃棄物の広域輸送計画に用いるための多目的ファジィ線形計画モデルを提案している. このモデルは, 計画目標に対する意志決定者の許容幅をファジィネスとして捉え, 地域全体の経済性および安全性という複数の目的を同時に考慮した上で, 複数の輸送手段による有害廃棄物の輸送経路を決定するものである. そして, 提案したモデルのケーススタディおよび比較分析を行い, モデルの特性を明らかにするとともにモデルが輸送計画の視点に立った処理施設の整備規模に関する検討にも有用であることを示した.
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