環境システム研究論文集
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32 巻
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  • 黄河流域を中心にして
    幡野 貴之, 奥田 隆明
    2004 年 32 巻 p. 1-9
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    水紛争の時代と比喩されるいま、効果的な水利用と配分のための水戦略が求められている。そこで財・サービス生産に要した水を “仮想水” として扱うVirtual Waterの概念が注目されている。本研究では中国の地域間産業連関表を用い、 11産業交易に関し国内の仮想水動態を推計した。水資源が乏しい黄河流域内では中流域に他流域の仮想水が集中していることが判明した。これら結果から財取引を通じた地域レベルでの水戦略の必要性、 特に黄河流域では水配分公平の観点から水集約財を多く生産する下流域と、他地域に水集約財生産を依存している中流域への対策必要性が認識された。
  • 佐藤 伸幸, 原田 秀樹
    2004 年 32 巻 p. 11-19
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ジャカルタ市の下水道普及率はわずか2.62%であり、家庭汚水やし尿等の垂れ流し、また不適切な腐敗槽 (septic tank) 等の設置により、河川・地下水の水質汚濁が深刻な問題となっている。このような状況でありながら、具体的な水質汚濁の傾向等が評価されていない。本研究では、河川・地下水の水質汚濁の現況やその傾向について解析した。その結果・河川ではT-coli、COD、BOD、NH4-N、界面活性剤、PO4-P、油脂・脂肪等原地下水ではT-coli、NH4-N、Fe等が基準値を著しく上回っている。また、その解析結果をもとにインドネシア政府機関における水環境政策の方針を評価した。そこで、水質改善のための方策の一つとして提言されたことは、有用な人材を育成しジャカルタ独自の改善策を策定し、それを実施していくことである。
  • 福島 陽介, 萩原 良巳, 畑山 満則, 萩原 清子, 酒井 彰, 神谷 大介, 山村 尊房
    2004 年 32 巻 p. 21-28
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年, バングラデシュでは, 飲料水のヒ素汚染が深刻な問題となっている. しかし, バングラデシュでは, ヒ素汚染問題だけではなく, 洪水, 渇水, 塩害など多様な大災害を有しおり, さらに経済的な貧しさもともなって, ヒ素汚染に対して非常に脆弱であるといえる. 本研究では, ヒ素汚染問題を考えるにあたって, 現地の社会環境を十分考慮する必要があるという観点から, ヒ素汚染問題と社会環境を明確化し現地で受容可能な代替案を総合的に考察することを目的とした. そこで, 調査票を作成し, 実際に現地でインタビュー調査を行った. 本稿ではまず, ヒ素汚染問題を考える上で, 特に水の満足度及び不幸せさに着目し, 数量化理論を用いてモデル化を行い, 現地住民の抱える問題の明確化と, その地域比較についての考察を行った.
  • 坂本 麻衣子, 萩原 良巳, Hipel W. Keith
    2004 年 32 巻 p. 29-36
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    インドとバングラデシュはインド領ファラッカ堰におけるガンジス河の水配分問題に関して, 長い間コンフリクトをくりひろげてきた. 当事者間のみでの交渉でコンフリクト状態が膠着した場合, Third Partyの介入によるコンフリクトの調整が有効な方策として考えられる. 本研究では, まず, ゲーム理論を基礎としたGMCR IIの枠組みでThird Partyの役割に関して分類と定義を行い, Third Partyによるコンフリクト・マネジメントへのアプローチを示す. そして, 本アプローチをインド・バングラデシュのコンフリクトに適用し, Third Partyの調整過程とその効果を分析する. 分析の結果, Third Partyの介入によりインド・バングラデシュ間に相互信頼が形成され, 現実のコンフリクトでは実現困難なコンフリクト改善状況が均衡解として実現され得ることが示される.
  • 山田 淳, 服部 容子, 佐原 義規, 佐伯 健
    2004 年 32 巻 p. 37-44
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年、アカウンタビリティの確保とODAの質を向上させるためにODA評価の重要性が認識されている。本研究ではODAによって実施された水道整備プロジェクトを対象として、水質評価に焦点をあてた評価手法を提案することを目的とした。水質達成度 (Achievement Grade) と水質汚染のリスクレベル (Risk Level) をインパクト評価の指標とし、飲用適合度として評価する手法を提案した。評価事例を導くためにネパール、フィリピン、ベトナム、インドネシアにて現地調査を実施した。現地調査では複合的にプロジェクトの効果を把握するために、水質調査だけでなく、関係者へのインタビュー、施設調査、裨益住民を対象としたアンケート調査を実施した。
  • 平松 あい, 花木 啓祐, 荒巻 俊也
    2004 年 32 巻 p. 45-56
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    京都議定書のクリーン開発メカニズム (CDM) は, 先進国が開発途上国に資金と技術を移転し温室効果ガス削減プロジェクトを行って排出削減量の一部を獲得する制度である. 要件の一つである“途上国の持続可能な発展”の判断は, 非常に重要であるにもかかわらず途上国に一任されている. 一方持続可能性の評価については未だその手法が確立していない, 本研究は廃棄物分野にCDMを導入する場合に, 異なる特徴を持つ途上国の都市において持続可能性にどのような差が生じるかを明らかにすることを目的とする.また途上国の持続可能な発展が達成されるために考慮すべき事項を網羅的に取り上げ, それを基にして持続可能性を評価する手法を提案する.
  • 天野 耕二, 加用 千裕
    2004 年 32 巻 p. 57-63
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    日本の建築分野における木材フローに基づいて, 建築木材に関わる炭素収支評価を試みた. 2000年に着工された日本国内の建築物に木材としてストヅクされた炭素量は379万t-C, これら建築木材に関わる森林放置木材や廃棄木材としての炭素放出量は429万t-C, 建築木材の生産および輸送過程における化石燃料起源の炭素放出量は297万t-Cと推定された. 伐採後の植林による炭素吸収量は, 建築物の平均耐用年数である30年を育林期間と仮定すると447万t-Cと推定され, 建築物の解体時に放出される炭素量を上回った.
  • 中村 太陽, 松岡 譲, 藤原 健史
    2004 年 32 巻 p. 65-73
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では, 循環型社会の構築に寄与する情報の提供を目的として, マテリアルフローとストック量を整合的に推計する手法を提案した. さらに, その手法に基づいてわが国の近年におけるこれらの諸量の推計を行なった. 取り上げた例は, 1970年から1995年における日本全体を対象としたもので、総務庁が構築している多年次の産業連関表および物量表を長期的な時系列比較ができるように加工し, 木材, 鉄, 骨材の3つの物質に関するフローとストック量を推計したものである. ストック量の経年変化の推計結果からは, 木材のストック量は伸びがゆるやかになっているのに対し, 骨材のストック量は依然高い伸びを示していることが明らかになった. 鉄はこれらの中間の傾向を示した. また, マテリアルフロー推計の結果, 各産業におけるそれぞれの物質の投入量・産出量・廃棄物量などが把握できた.
  • 吉田 登, 若林 俊輔, 金子 泰純, 日下 正基
    2004 年 32 巻 p. 75-82
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、地域の工業集積地におけるエネルギー消費及び可燃性廃棄物排出からみた環境効率を、統計データをもとに分析した。各都道府県、各業種ごとに、分子に製造品出荷額、分母にエネルギー消費量及び熱量換算された可燃性廃棄物排出排出量を適用して環境効率を算定し、これをもとに25%分位点及び中央値レベルの環境効率に満たない地域の業種が、これらのレベルまで環境効率を改善すると仮定した場合に、改善の可能性のあるエネルギー量を各業種、工業地区ごとに推計した。分析の結果、業種ごとに環境効率の異なる分布が確認された。また、エネルギー消費や可燃性廃棄物排出量からみた環境効率が改善されると仮定した場合に現状からの変化が大きい工業地区を抽出し、その集積業種等について考察した。
  • 馬場 健司, 青木 一益, 木村 宰, 鈴木 達治郎
    2004 年 32 巻 p. 83-90
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    温暖化対策を契機として, 現在各地域で地方自治体による新エネルギー技術の導入, そして関連する各種環境施策も含めた地域エネルギー政策の策定が進められている. 本研究は, 地方自治体の担当者を対象とするアンケート調査により, これらの導入プロセスに係わるデータを収集分析した. その結果以下が明らかとなった. 第1に, 限定されたアクターの関与により, 補助金で事業を進めるパターンが多いこと, 第2に, 関与するアクターの多様性や様々なコミュニケーションの場の設定は, プロセスの評価 (成果) と密接にリンクすること, 第3に, エネルギーの技術特性に応じて関与するアクター, つまり導入プロセスが異なってくること.である.
  • 丹治 三則, 山本 洋之, 盛岡 通
    2004 年 32 巻 p. 91-100
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    長期的かつ不確実性を伴う政策立案においてシナリオ誘導型の研究が注目されている. 本研究では流域管理におけるシナリオ誘導型の政策立案の枠組みを構築するとともに, 有機物循環政策を対象として政策シミュレーションシステムの構築を行った. 具体的には政策導入による流域全体のマテリアルフローを把握するため産業連関表を援用したマテリアルバランス表, 及び循環施策ごとの処理領域の設定やその施設立地を検討するためにGISを用いた評価システムを構築した. さらに四つの代替的な有機物循環政策を設計し政策シミュレーションシステムを用いて評価を行った結果として複数の有機物循環施策を導入した場合の流域全体のマテリアルフローの変化を示し施策効果をコスト, 最終処分量.二酸化炭素排出量等の次元で算出することを可能にした.
  • 堀江 典子, 萩原 清子
    2004 年 32 巻 p. 101-109
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    循環型社会の構築に向けて、都市内緑地は都市内で発生する有機性廃棄物を土壌に還元する空間として位置付けることが可能である。その意義と問題点について整理したうえで、堆肥の品質と施用可能性という観点から「R緑地」という概念を提示して都市内緑地を区分することを試み、都市における有機性廃棄物の発生量から、生産される堆肥を土壌に還元するために必要となるR緑地の面積を求める手法を検討した。さらに、東京都板橋区を対象に試算を行った上で、R緑地確保のためには緑被率を上げると同時に、現存する都市内緑地のあり方を見直し、堆肥の還元可能性を高めていくことが必要なことを示した。
  • 参河 祥道, 岡田 昌彰
    2004 年 32 巻 p. 111-116
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 歌謡曲の歌詞および雑誌記事における表現の変遷をもとに, 通天閣に対するイメージの変遷を明らかにした. 竣工当初は「高さ」とそれに付随する超越的イメージが投影されるが, その後周辺地域の高層化及び成長の価値低下という物理的・社会的環境の変化に伴い, 超越的イメージが概念化・減衰するとともに日常風景化の進行と親密的イメージの現出が見られる. 近年その高さは, 展望台からのパノラマ体験によって認識されていることがわかった.
  • 佐藤 祐一, 萩原 良巳
    2004 年 32 巻 p. 117-126
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    影響範囲が広範となる河川開発においてはステイクホルダー間でコンフリクトが生じやすいため, 自然科学的な側面のみならず住民の意識を考慮して計画を立てることが重要となる. しかし, 住民意識を評価して計画に結び付けるための体系的手法はほとんど存在しない. そこで本研究では, ステイクホルダーの視点に基づいて河川開発代替案の多元的評価を行う方法論の提案を行った.具体的には, 各ステイクホルダーの評価基準を「満足関数」と呼ぶものに投影し, 統一的に扱えるようにするモデルを構築した. またこれを吉野川可動堰問題に適用し, 代替案の多元的評価を行った.
  • 金森 有子, 松岡 譲
    2004 年 32 巻 p. 127-136
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では, ライフスタイルの変化が環境に及ぼす影響を定量的に評価するモデルを開発した. すなわち, 家計による財・サービス購入行動とそれらの消費に伴う環境負荷発生量を, 家計収支, 物質収支, エネルギー収支, 時間収支の観点に立ち, 関連付けるモデルを開発した. このモデルは, 財・サービス選好モデルと, 物質・エネルギー収支モデルからなる. 財・サービス選好モデルでは, 家計の財・サービス別の消費支出を推計し, 物質・エネルギー収支モデルでは, 推計された家計消費支出から環境負荷発生量を推計する. 本研究では, 2030年までの家計消費支出と, 家計生産活動に伴う環境負荷発生量を推計した, 対象とした環境負荷は, 家庭ごみ, 粗大ごみ, 排水発生量, エネルギー消費量, 水質汚濁物質, 大気汚染物質, 住宅建設廃棄物である.
  • 朱雀第三小学校を事例として
    野村 香奈子, 笹谷 康之, 出羽 浩明
    2004 年 32 巻 p. 137-144
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、朱雀第三小学校を事例に、小学校の「総合的な学習の時間」においてWebGISを用いたデジタルとアナログの教材を組み合わせて環境学習の効果を明らかにすることを目的とする。観察結果を詳しく登録できて場所や内容をすぐに検索できるWebGISは生き物学習を深めること、大きな紙地図を用いた学習は環境全体を正確に認識してグループワークを促進すること、ビデオレターを用いた学校間交流は、表現する力を身につけ、地域によって棲む生き物の違いを気づかせる学習効果があることを明らかにした。そして、環境学習を推進するために、WebGISを用いた教員、学生、地域住民や専門家の3者による授業運営体制を提案した。
  • 「環境日めくり日記」の試作と実験を通じて
    村上 浩継, 近藤 隆二郎
    2004 年 32 巻 p. 145-155
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    環境家計簿の取り組みは短期的には有効であるものの, 長期的に取り組むことは難しいとされている. その一因として, 画一的な形式で面白みに欠けることが挙げられる.
    そこで, 本研究では取り組みやすい環境家計簿として想起型環境家計簿を提案し, その可能性を探ることを目的とした.
    研究の方法として, 想起型環境家計簿「環境日めくり日記」を試作し, モニター調査を実施した. 調査結果から, 被験者を4つのタイプに分類し, 「環境日めくり日記」に向く主体を明らかにした. 結論として, 主体の段階に応じ, 主体に適した独自の環境家計簿が形成されていくタイプの環境家計簿を提案した.
  • 神谷 大介, 酒井 彰, 山村 尊房, 畑山 満則, 福島 陽介, 萩原 清子, 萩原 良巳
    2004 年 32 巻 p. 157-164
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    バングラデシュでは、国民の43%はトイレを持たず、この国で普及が進められているタイプのトイレも衛生面での問題を有している。開発途上国の住民が主体的にトイレを普及し、し尿を衛生的に処理していくためには、住民が受入れ可能な技術とその導入の方法論を明らかにする必要がある。筆者らは、バングラデシュ都市住民がトイレ、し尿処理、ならびにこれらを含めた衛生、生活全般に関して抱いている意識を直接インタビュー形式の調査により把握し、衛生改善技術を導入するにあたっての要件について考察した。
  • 細井 由彦, 増田 貴則, Dagnachew AKLOG, 佐々木 秀和, 石津 昌彦
    2004 年 32 巻 p. 165-172
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    小規模な自治体では水道事業においても給水区域が分散しており, 小さな無人の施設が分散して存在している場合が多い. 市町村合併や, 水道の統合などが進むとさらにこのような水道施設が増加することが考えられる. 無人の施設に対しては, 定期的に巡回して点検, 維持管理が行われているが, 施設数が増加するほど, その効率化が求められるようになる. 本研究では, 多数存在する無人の水道施設を効率的に巡回作業を行う方法の計画法について検討する. まず最も効率的な巡回経路の決定方法を検討し, さらに巡回作業を軽減するために自動監視装置を設置する場合の設置場所や設置個数の決定方法を検討する. 解法として遺伝的アルゴリズムを適用することを検討し, 効率的な巡回作業を行う方法を示すことができた.
  • 多島 秀司, 深川 良一, 薮原 奈緒子, 湯浅 まゆ
    2004 年 32 巻 p. 173-182
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    人工地盤の構造は浅く排水層を有することから, 雨水の浸透特性も自然地盤と異なる挙動を示す. 著者らは人工降雨装置により, 人工地盤の浸透特牲の調査を行った. 植生用の緑化基盤を対象とし, 土質, 層厚を変化させ, 降雨の浸透特性および貯留高の検討を行った.
    実験の結果, マサ土, 黒土ともに貯留高は低く, 改良が必要であることが確認された. また, 屋上緑化の場合, 土壌の厚みが薄く, 排水層を有することなどから自然地盤と比較し, 浸透能は同等であるが, 貯留高は低くなることが確認された.
  • 糸井 優輔, 古米 弘明, 中島 典之
    2004 年 32 巻 p. 183-190
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    雨天時のファーストフラッシュ現象で流出する汚濁負荷の多くは, 晴天時に管路内に堆積したものと考えられるため, CSO流出汚濁負荷量を減少させるためには堆積物が多量に存在している管の分布を理解することが重要である. 本研究では, 分布型モデルを用いて予測した管内堆積物分布状況に基づいて, 晴天時において堆積現象が生じやすい傾向を有する管の特徴を確認するために複数箇所において管内堆積物の観察を行った. その結果, 堆積物が多く存在すると予想された管においては下水の滞留が生じ, 多量の堆積物が存在していることが確認された. そこで, 下水道台帳データと汚濁負荷輸送モデル式 (Ackers-White式) を利用した, 堆積物が局所的に存在する箇所の特定手順を考案し, その管に存在する堆積物量の簡易な推定手法の提案を行った.
  • 松山 直樹, 田部井 進一, 三島 由里, 吉本 国春, 菅原 良行
    2004 年 32 巻 p. 191-196
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    人体から排出される女性ホルモンは、環境ホルモン作用が示唆されている代表的な化学物質に比べて約1, 000倍から10, 000倍のエストロゲン活性を有している。そこで、紫外線を使用して女性ホルモンを効果的に削減するための研究を行った。紫外線と他の技術との併用は、下水処理場における操作管理を複雑化するため、紫外線単独で女性ホルモンの削減を目指した。実験容器はステンレス製で、この中にE2とE1を含む試料水や下水処理水を入れ、紫外線照射装置を封入、室内で紫外線の照射時間を変化させてE2とE1の削減効果を求めた。実験の結果、紫外線によって女性ホルモンを削減できることが分かった。
  • 田中 規夫, 北上 裕規, 小川 友浩, 浅枝 隆
    2004 年 32 巻 p. 197-203
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    河川内の自然再生湿地の湿地植物ヨシと陸上植物オギの競合が洪水規模・洪水間隔, 茎の破壊によって受ける影響を評価した. 二次元の水深平均レイノルズ方程式を用いて河川流を解析し, 茎に働くモーメントを算定した. ヨシ・オギへのダメージの1種である茎の破断に限定し, その影響を想定した生長モデルを作成した. モデル解析により, 洪水規模・洪水間隔の影響を単独生長の場合と競合生長の場合についてバイオマス減少量で評価した. その結果, 両種の茎が折れる洪水規模で洪水間隔が1年であれば両種とも群落の維持が危うくなること, 洪水間隔が2-5年程度であれば混成群落が続くがオギの優位性が減少するため, 湿地植物から陸上植物への遷移を遅らせることが可能であること, 等が評価できた.
  • 和田 安彦, 尾崎 平
    2004 年 32 巻 p. 205-211
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    都市内河川を対象に周辺住民に対して河川の利用状況, 目的, 満足度などを意識調査から明らかにし, 河川への来訪頻度と満足度, 要望の関係から, 積極的に利用される都市内河川の整備方向について検討した. 河川の水のきれいさに関しては, 来訪頻度に関わりなく多くの住民は不満を持っており, 環境基準の達成だけではなく, 見た目など河川水の印象に対する改善が必要である.また, 河川に対する満足度の因子分析より「快適環境」, 「清潔感」, 「安全性」, 「自然環境」の因子が抽出でき, 来訪頻度の違いに影響を与えている因子は安らぎやのんびりできるなどの「快適環境」である. 今後の都市河川整備は, 河川浄化に努め, 快適環境因子および安全性因子に関する満足度を向上させる整備を重点的に行う必要がある.
  • 一ノ瀬 俊明, 王 勤学, 大坪 国順
    2004 年 32 巻 p. 213-223
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    GDPの比に比例して, 食糧余剰地域から食糧不足地域にメッシュ間の食糧輸送が起こる計画経済的な (非市場原理型の) モデル, メッシュの食糧吸引力分布形が当該メッシュのGDPに比例して決まる市場原理型のモデルの2つを構築し, 1辺約360kmの仮想島及び中国の華中~華南を対象として食糧ストック変化の数値シミュレーションを行った. 非市場原理型の線形需要空間型モデルでは, 食糧ストックの地域格差を縮小する方向に変化が進むのに対し, 市場原理型の非線形需要空間型モデルでは, 沿海部の大都市が急速に食糧を蓄積する結果, 地域格差が拡大し, 内陸地域で広域的に食糧ストックが不足するアンバランスな分布が発生する.
  • 家電リサイクルにおける回収システムを対象として
    荒井 康裕, 小泉 明, 稲員 とよの, 前田 雅史
    2004 年 32 巻 p. 225-233
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 家電リサイクルを対象とした静脈物流計画に関して, その施設配置問題及び輸送問題を解くための遺伝的アルゴリズム (GA) を提案した家電リサイクルの回収システムを発生, 中継及び最終ノードから構成されるネットワークモデルとして定式化した上で, 従来解法による予備分析から, 規模の大きい問題を扱う場合には従来解法の適用に限界があることを示した. GAを用いた提案方法の有用性を明らかにするため, 東京都を対象としたケーススタディを行った. この結果, 静脈物流における組合せ最適化問題に対し, 提案した方法が有用であることが明らかとなった.
  • 松橋 啓介, 工藤 祐揮, 上岡 直見, 森口 祐一
    2004 年 32 巻 p. 235-242
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    自治体が運輸部門のCO2削減に効果的に取り組むために, 市区町村の特性を反映し, 削減効果予測にも利用可能な推計手法が求められている. しかし, 全国や都道府県の値を活動量の比で按分する推計手法は, 市区町村の削減策の検討には不向きである. そこで, 全国OD調査データを用いて自動車交通に起因する市区町村別CO2排出量を使用本拠地別・目的地別に求めた. また, 断面交通量や燃料販売量を用いた他の推計手法との比較分析を行い, 市区町村別の特性によって推計手法別に異なる数値の傾向が得られることを明らかにした. さらに, 削減効果予測のための枠組みとして排出推計テーブルを構築・提案した.
  • 北九州市を対象として
    渡辺 義則, 寺町 賢一, 蓑毛 博章, 浦 英樹, 外山 崇史
    2004 年 32 巻 p. 243-251
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    多孔質弾性舗装を施工した場合に, 通常舗装からの騒音低減量がどの程度見込まれるかを理論的に計算した.そして, これを導入すれば都市部全域にネットワークされた幹線道路の騒音環境基準適合率の向上が都市全体としてどの程度はかれるか, 北九州市内の主要道路を対象に評価した. その結果, 1) 通常舗装を多孔質弾性舗装に変更した時の自動車の平均パワーレベルの減少は大きい. 通常舗装からの騒音低減量の殆どの部分を占める.2) 多孔質弾性舗装上に遮音壁を設置した場合に期待される騒音低減量は, 通常舗装上のそれと大差ない. 3) 多孔質弾性舗装の導入により, 北九州市内の殆どの幹線道路で騒音環境基準に適合する. 4) ただ, 低減効果は大型車混入率が大きくなるにつれて減少するので, 大型車が多く混入する所では, 併せて大型車への対応を考える必要がある.
  • 三井 達郎, 森 健二, 萩田 賢司
    2004 年 32 巻 p. 253-260
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    車両感知器データを使って, 幹線道路における自動車排出ガス量を推計するシステムを開発した. 最初に, シャシダイナモメータによる排出ガス測定データを基に, 車の走行パターンから自動車排出ガス量を推定する方法を検討した. 次に, 実道路上での走行実態調査データと車両感知器データを用いて, 車両感知器データから走行パターンを推定する方法を検討した. 以上の検討結果を千葉県柏地域の国道16号, 国道6号, 県道船橋我孫子線に適用し, 238道路区間 (信号交差点に挟まれた区間) の排出ガス量を時々刻々と算出するシステムを構築した.
  • 久田 由紀子, 松永 信博, 池本 和生, 杉原 裕司
    2004 年 32 巻 p. 261-269
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    局地降雨は周辺地域の地形の影響を強く受けるため, 地域によって局地降雨の形成過程は多種多様である. 九州北部の鳥栖・基山地域は東西に山系が迫り, 山系間の狭い平野地帯が南北の筑紫・福岡平野をつなぐ地形となっており, 頻繁に局地降雨が発生する. 本研究では, この地域の風系と局地降雨の関係について検討し, また数値計算により実際に局地降雨が発生した日を再現させ局地降雨の発生機構について検討する, アメダスデータによると, 局地降雨の発生日には福岡平野では玄界灘方向, 筑紫平野では有明海方向からの風が卓越することが明らかとなった. さらに, 局地降雨の発生時には40%以上の割合で両方向からの風90%の割合で少なくとも一方からの風が吹く. 玄界灘からの風に含まれる水蒸気量が20g/m3を越えると, 局地降雨の発生可能性が高くなる. 再現計算の結果では, 玄海灘からと有明海方向からの海風の発生が確認された.内陸では, 2つの海風の収束ラインが形成され, ライン上では強い上昇風の形成と比湿の増加が見られた.
  • 岩川 貴志, 牛島 樹昭, 内藤 正明
    2004 年 32 巻 p. 271-276
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    持続可能な地域社会を形成する上で地域内のバイオマス資源を積極的に循環利用していくことが望ましいが, 事業自体の持続性を保つためには地域内の主体による自立的運営が可能な仕組みが必要とされる. 本研究では地域内循環における「参画」の重要性と問題点を指摘した上で, 農作業全般の協力を含めた堆肥の農地還元ならびに地域内に賦存する森林資源の炭化について, 地域内の事業者・住民の積極的な参画が可能な形態のバイオマス循環システムを想定し, CO2削減量による環境負荷削減効果に加えて「マネーフローの内向性」として地域内部における経済活動の活性化, 「地域住民の参画機会の創出」として事業に関わる地域内主体の総参画時間を求めることで, 地域社会への影響を含めた循環システムの意義とその評価概念を提案する.
  • 後藤 尚弘, 藤江 幸一
    2004 年 32 巻 p. 277-285
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では業務用冷凍空調機器からのフロン回収・破壊システムの費用、環境負荷を簡易に推計する手法の開発を行った。特に、フロン収集工程を詳細に推計するために、GISを用いて空調機器のフロン分布は建物床面積の分布と床面積あたりのフロン量から、冷凍冷蔵機器のフロン分布は業態別事業所の分布と業態別フロン量から求める方法を示した。その結果、フロン回収費用は、抜取り費、保管費、破壊費が大きな割合を占めていることがわかった。
  • 武藤 慎一, 東海 明宏, 高木 朗義, 河合 俊介
    2004 年 32 巻 p. 287-296
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    難燃剤は, 耐火性を高めるための素材として様々な産業で使用され, 我々の生活における火災に対する安全性を向上させている. しかし, 難燃剤には有毒な化学物質が含まれており, 健康面での被害が懸念されている. そのため, 適切なリスク管理が必要となるが, 難燃剤が多くの産業にて使われていることを考えると, 規制による産業活動および生活への影響を極力抑えるような方法を検討していくことが重要といえる. 本研究では, 難燃剤規制策を導入した場合の費用, 便益の分配, 波及構造を明らかとするための応用一般均衡 (CGE) モデルを開発し, 数値シミュレーションに基づき難燃剤規制のための課徴金制度を評価した.
  • 保倉 修一, 内海 秀樹, 松井 三郎, 寺田 悟
    2004 年 32 巻 p. 297-302
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ごみの収集運搬事業は都市衛生に直結するため、清掃事務所はそのサービスの水準を高く維持することが要求される。そのため清掃事務所では、特に各収集地域の習熟や職員間の不公平感を解消するために公平に作業を分担したり、職員同士の組合せを調整したりすることで対応している。このように清掃事務所における人員配置の持つ意味は大きいが、様々な制約の下で適切な人員配置を行うことは非常に困難である。
    本研究では、収集員配置問題を職員同士の組合せ回数および各班の担当回数を均等化する2目的最適化問題に置き換え、遺伝的アルゴリズムを用いてパレート最適集合を得ることで、人員配置を立案する手法を開発した。そして、実際の人員配置履歴をもとにシミュレーションを行い、本手法の有効性を実証した。
  • 中山 裕文, 三好 範雄, 島岡 隆行
    2004 年 32 巻 p. 303-310
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、埋立地の再生事業に伴うGHG排出量の推計手法を示し、ケーススタディとして既存埋立地のごみを掘り起こして20万トン分の埋立容量を確保こと想定した場合について試算を行った。併せて、埋立地を新規に建設したケースについても推計し、埋立地を再生したケースと比較した。推計結果から、埋立地再生によるCO2排出量は新規建設と比較して10~16倍大きいことを示した。また、生ごみ主体・嫌気性構造の埋立地において再生事業を行った場合、埋立地において発生するCH4を大きく削減できるため、これを考慮するとトータルのGHG排出量はマイナスとなる場合があることを示した。
  • 石崎 俊夫, 島岡 隆行, 中山 裕文, 小宮 哲平, 真鍋 和俊
    2004 年 32 巻 p. 311-318
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 中国有数の大規模廃棄物処分場である上海市の老港廃棄物処分場をケーススタディとし, 衛星リモートセンシングを用いた大規模廃棄物処分場のモニタリング手法について検討した. 具体的には, 老港廃棄物処分場の埋立進捗状況の把握, 地表面被覆状況と地表面温度との関連性, 埋立完了区画における植物活性度と埋立ガスとの関連性について分析した. その結果, 異なる時点の衛星画像について地表面被覆分類を行うことにより処分場の埋立進捗状況を把握できること, 地表面に廃棄物が露出している箇所の地表面温度が高いことが衛星画像からも確認できること, 植物活性度 (NDVI)の増加量を用いることで埋立ガスの発生状況を間接的に把握できる可能性を示した.
  • 鳥類の出現と環境要因との関連性に着目して
    水上 象吾, 萩原 清子
    2004 年 32 巻 p. 319-326
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    人工構造物である雨水調整池が都市の自然創出に果たす役割を有しているのかを検証するため、調整池における鳥類の出現と環境要因の関連性を調べた、その結果、渡り鳥も含めた多種の鳥類が観察された、また、内部の植生や水域の存在が鳥類の出現種数に強く影響し、植生は年月の経過により回復していることが示された、これらの結果は、都市域に孤立した雨水調整池においても、内部の環境条件によって鳥類相の生存とさらなる多様性の確保が見込め、都市域外とのつながりをもった広域的な環境として作用することを示している、以上のことから、雨水調整池は人工化した都市空間において、生物の生存と植生等の環境要因を含めた自然の創出に果たす役割を持つと結論した。
  • 森野 真理, 小池 文人
    2004 年 32 巻 p. 327-333
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    猿害は, 種々の防御策がとられてきたにも拘らず顕著に減っていない. 猿害急増の背景には, 自然林の大規模伐採等人為的な環境変動がサルの環境適応能力を発現させたためと考えられる, 本研究では, 鹿児島県屋久島を対象に, 被害低減に効果的な自然林および農地の配置決定を目的とし, ロジスティック回帰分析により, 被害レベルに対する空間要素の近接性の影響を調べた. その結果, 農地が森林, あるいは川幅の広い河川と離れていること, 幅員の広い道路と近いことが, 被害レベルを緩和することが示唆された.
  • 園田 陽一, 倉本 宣
    2004 年 32 巻 p. 335-342
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, タヌキによる生息地選択における下層植生構造の影響を明らかにすることを目的とした. まず, 丘陵地における下層植生構造を下層植生単位ごとの面積, 群度, 草丈をもとに植物体量指数を算出し, 下層植生構造の分布と地形との関係を把握した.さらに, タヌキの生息に配慮した緑地の植生管理の方向性に対するを示すことを目的として, タヌキの下層植生構造に対する環境選択性をラジオテレメトリー法により把握した。結果として, 植物体量指数が高く, アズマネザサの面積率の高い環境は傾斜地に分布しており, タヌキはこのような環境を有意に選択していた.本研究から, タヌキの生息には樹林の存在と共に, 樹林内部の下層植生構造が生息の制限要因となると考えられた。
  • 吉野 隆
    2004 年 32 巻 p. 343-349
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    三種類の生物で構成されている生態系モデルにおいて, 生物が規則的ではないネットワーク構造上を拡散した場合の個体数の変動について検討した. ネットワーク構造には, 規則的な格子に対して与えられた確率でショートカットと交換したネットワークモデル (small world構造) を導入し, 生態系には植物-被食者-捕食者の三種類の生物による食物連鎖モデルを用いた. 計算結果を最も遠い2点間の相関の値の平均値で比べると, 周囲との連携が深いタイプのネットワークの場合には, small world構造が発達するほど相関の平均値が高くなる傾向が見られた. これは, small world構造をもつネットワークにおける生態系は系全体で同期しやすいことを示している。
  • 浦野 真弥, 後藤 尚弘, 藤江 幸一
    2004 年 32 巻 p. 351-356
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    持続性観光形態の提案手法を提示するために屋久島において観光客行動調査および廃棄物調査, 関連業種へのヒアリング等を行い, 数種の観光行動に伴う廃棄物および二酸化炭素の排出量を明らかにした。観光行動調査では観光行動を把握し, また廃棄物調査から観光関連施設からの廃棄物排出量および利用人数, 排出された廃棄物組成を把握し, 様々な観光行動に伴う廃棄異物排出原単位等を求めた。観光客行動調査に基づき観光客の行動パターンを5つに分類し, 観光形態毎の廃棄物および移動に伴う二酸化炭素の排出原単位, 総排出量を算出した。さらに5つの観光行動パターンについて, 4種のシナリオを導入し, 本研究により求めた観光行動に伴う廃棄物排出原単位を用いて将来の廃棄物排出量推計を行った。
  • 松下 桐子, 笹谷 康之
    2004 年 32 巻 p. 357-364
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は、梅ヶ谷集落を事例に地名やGISを用いた景観変遷調査と、地元学に基づいて住民が参加する地域資源の再発見を踏まえて、農村都市協働プログラムを提案することを目的とする。集落を維持するためには宅地周辺のゾーン内と重要な水源である水路を保全して、定住環境を整えていくことが重要なことを示した。そして地域住民と集落外の利害関係団体が未活用経営資源と不足経営資源を補完して、連携して耕作地維持と竹林繁茂防止の協働プログラムを実施することが有効であることを提案した。
  • 野洲川下流地区田園空間博物館を事例として
    相羽 佑輔, 笹谷 康之
    2004 年 32 巻 p. 365-372
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 野洲川下流地区田園空間博物館を事例に, 地域住民による主体的な田園空間博物館の運営を支援する情報システムの提案を目的とする. 田園空間博物館にふさわしい運営主体を求め, その主体のニーズを明らかにした. そして各主体が情報を共有し, 連携して田園空間博物館の運営を推進するツールとして, 地理情報標準に準拠したWebGISのモデルシステムを構築した. また, このシステムを運用していくための「システム運用管理」, 「データ運用管理」, 「登録情報の検査」の3つの役割を挙げ, 田園空間博物館の開設に向けた取り組みの中で試行的にシステムの運用を図るための提案を行った.
  • 平山 修久, 伊藤 禎彦, 加川 孝介
    2004 年 32 巻 p. 373-381
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    評定尺度法を用いたアンケート調査を実施し, 共分散構造分析を用いて需要者特性別に水道水質のリスク認知における構成概念間の因果関係を考慮した認知モデルを構築した. そのうえで, 情報量, 親近感などの水道水質のリスク認知における構成概念が水道水質に対する不安感をどのように規定しているのかを把握し, また, 需要者特性が水道水に対するリスク認知の構成概念間における因果関係にどのような影響を与えているのかについて比較検討した. その結果, 水道水質のリスク認知では, 男性に比べて女性のほうがより不安と感じやすい傾向にあることを示し得た. また, 水道水質への不安の因果モデルにおける因果連鎖の構造が飲用形態により異なることを明らかにした.
  • 坪井 塑太郎, 萩原 清子
    2004 年 32 巻 p. 383-389
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 都市型水害に対する居住者のリスク認知の特徴を河川・水辺の地域特性と個人属性の双方から把握し, 近年重要性が指摘されているリスクコミュニケーションにおける「情報」による水害回避意向の認知構造を, 共分散構造分析を用いて検討した. その結果, リスク回避 (水害回避意向) には情報の介在と充実が重要であることが確認されたが, 具体的情報手段の一つである「ハザードマップ」については, 現状では充分な認知が得られておらず, 情報提供の方法論的課題が残されていることを指摘した. また, 水害リスクに対しては, 現在, 溢水をある程度容認しながら流域単位での防御を目指す「総合治水対策」が展開される中においても, リスク受容意識よりもハード整備依存の傾向が高いことが示された.
  • 加藤 文昭, 丹治 三則, 盛岡 通
    2004 年 32 巻 p. 391-402
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究はシナリオアプローチにより持続可能な流域環境管理における政策立案を行うことを目指して, 既存のシナリオアプローチの文献調査を行い, 過去のシナリオアプローチにおけるシナリオの構成及び作成手順を明らかにした. またその設計手順を元にして独自のシナリオ設計システムを構築し, 荒川流域圏を対象として4つのシナリオを作成した. 本研究で得られた成果として流域圏の将来像を対極的に定性的に記述し, さらにそれを定量的な数値 (産業出荷額, 総人口, 土地利用) 表現することにより, 政策効果を定量的に評価することを可能にするシステムを構築した.
  • 五十嵐 勇気, 東 信行
    2004 年 32 巻 p. 403-409
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    河川環境評価法の一手法であるIFIMはわが国に紹介されて約10年となるが, 未だ事業として広く用いられるにいたっていない. そこで本研究ではIFIMを基本とするより簡便な評価手法について検討した. カジカ大卵型を調査対象とし, 簡便化の鍵となる評価の空間スケールを瀬-淵が一単位となる程度において検討を行い, さらに流程方向に広く評価地点を設けた場合, 流速や水深, 底質といったその場の物理量の情報からのみでは適切な評価は困難であった. そこで, 重回帰分析によって他の必要な環境要素を抽出し付け加えることにより, 適切な評価が可能であることが示された.
  • 団 朋希, 近藤 隆二郎
    2004 年 32 巻 p. 411-418
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、ちんどん屋の街頭宣伝において、ちんどん屋と街の人々とのコミュニケーションに着目し調査を行った。調査ではちんどん屋を追跡調査し、街廻りの様子をビデオに記録した。ビデオを元に街廻りでの出来事を地図に描き、分析を行った。分析結果からちんどん屋と街の人々とのコミュニケーションを「ついてくる型」、「応答型」、「目を配る型」、「引き寄せ型」、「声かけ型」の5類型にまとめることができた。場所によって見られる類型やその出現数に違いがあり、ちんどん屋は場所の様子を読み取り、街頭宣伝を行っていることがわかった。
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