環境システム研究論文集
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34 巻
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  • EICネット環境年表を対象としたキーワード・センテンス分析
    谷口 守, 松中 亮治, 山本 悠二
    2006 年 34 巻 p. 1-8
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, わが国の環境問題・政策の推移を客観的な数値データとして捉えることを目的としている. 具体的には日本の環境白書を基にしたEICネット環境年表を使用し, 年表の記載事項4, 845件を対象にキーワードとセンテンスに着目した分析を行なう. キーワード分析では環境政策の視点が如何に変化したか, センテンス分析ではキーワード分析だけではカバーできない政策の目的や様態の実態を明らかにする. なお, キーワードおよびセンテシスは統一ルールに基づいて独自に設定し判断を行なった. 政策の重点は衛生と公害分野から自然保護, 気候変動, 循環型社会へと移り変わっていることが示された. 政策自体年々増加していることと, その内容が多様化し複雑になっていることも示された.
  • 旧野洲町「環境フェスタ」と彦根市「市民環境フォーラム」を対象として
    村上 浩継, 近藤 隆二郎
    2006 年 34 巻 p. 9-19
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    自治体において環境基本計画を背景とした環境づくりが進んでおり, 計画の見直しや改訂を迎えている自治体も増加している. しかし, 環境パートナーシップ組織や環境行政において取り組まれている様々な活動が市民に与える意味や価値, また, 計画に与える影響・効果は十分に評価はされていない.
    そこで, 本研究では計画の推進として策定後に市民参加型で実施されたワークショップに着目し, 滋賀県旧野洲町「環境フェスタ」と滋賀県彦根市「市民環境フォーラム」を事例としてワークショップの評価を行った. 地域性を重視するワークショップとテーマを重視するワークショップとして見たときの特徴を明らかにし, 今後の同様のプログラムにおけるあり方を明らかにした.
  • 栗島 英明, 瀬戸山 春輝, 田原 聖隆, 玄地 裕
    2006 年 34 巻 p. 21-28
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    地域における様々な活動が地球規模の環境問題の要因となっているため, 地方自治体においても地域住民のニーズだけでなく, 地域の内外で暮らす人々や生態系への環境影響にも配慮しつつ, 自らのまちづくりを推し進めなければならない.そのためには, まちづくりによって実現される地域の便益の向上と生じる環境影響を定量的に把握して比較し, 意思決定や改善につなげていくことが重要であり, 環境効率の概念の援用が有効であると考えた.本研究では, まちづくりの環境効率を「まちづくりによる住民便益/まちづくりのライフサイクル環境影響」として検討した.まちづくりの環境影響と住民便益は, まちを構成する施設の種類・規模を基準として, 環境影響は日本版被害算定型環境影響評価手法 (LIME) で, 住民便益は住民選好から便益を測るコンジョイント分析の選択型実験を用いてそれぞれ貨幣価値にし, 比較を行った.そして, 三重県多気町のまちづくりにこの手法を適用した.
  • カブトガニ保護から守江湾会議へ
    日野 明日香, 清野 聡子, 釘宮 浩三
    2006 年 34 巻 p. 29-36
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    現在, 沿岸域には多種多様なニーズが寄せられ, その利用は多元化している. 沿岸域の自然環境は, 微妙なバランスのもとに成立しているため, 持続可能な利活用を実現するためには, 管理や環境への配慮を個別活動ごとに行うだけでは不十分であり, 複数の問題へ配慮した統合的沿岸域管理 (ICM) を実現することが必要である. 大分県杵築市では, 守江湾に生息するカブトガニの保護に特化した活動から, ICMを目指した守江湾会議の設立へと地域の取り組みを展開させることに成功した. このような杵築市の経験は, 沿岸域管理の実現を考えている他の地域にとって, 参考になると考えられる. そこで, 本論文では, カブトガニ保護から守江湾会議設立までの経緯を整理し, その過程で重要な役割を果たした要因を分析した.
  • 清野 聡子
    2006 年 34 巻 p. 37-46
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    沖縄本島の泡瀬干潟には, 人工島建設の開発計画があり, 地域振興と生態系保全の両立が焦眉となっている. 地域史のシンボル「塩田」に着目し, 郷土史, ヒアリング, 写真記録をもとに地域住民の自然観と地域開発の要望の根源を解析した. 住民は, 入浜式塩田での製塩経験から, 塩の品質管理のため水質や塩田基盤の底質環境に対する関心が歴史的に高かった. 地域開発では, その地の自然特性と住民の自然認識の関係性や歴史性により注目すべきである.
  • 峰松 勇二, 土肥 唱吾, 三宅 洋
    2006 年 34 巻 p. 47-55
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    渇水にともなう瀬切れの発生は河川の連続性を遮断し, 河川生態系に影響を及ぼすことが危惧されている. 本研究では, 人間の影響で瀬切れが拡大・長期化している愛媛県重信川で, 河川環境および河川性底生動物の流程に沿った変化を調査し, 瀬切れが底生動物に及ぼす影響を解明することを目的とした. その結果, 瀬切れは水質には影響を及ぼしたが, 底生動物に及ぼす影響は明瞭には見られなかった. また, 下流域の人間による土地利用が河川の水質を改変し, 底生動物の流程に沿った変化に強い影響を及ぼすことが示された.
  • 土肥 唱吾, 峰松 勇二, 井上 幹生, 三宅 洋
    2006 年 34 巻 p. 57-66
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    瀬切れによる河川の連続性の遮断は, 河川生物の流程に沿った移動を阻害し, それらの群集構造を改変すると予想される. そこで本研究は, 人為的な要因により発生している瀬切れ区間の上流-下流間で, 河川生物群集の比較を行い, 瀬切れが河川生物の空間的分布に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. この結果, 瀬切れが魚類の分布に及ぼす影響は明瞭ではなかった. 一方, 底生動物の分類群の一部は瀬切れによる影響を受けている可能性があることが示唆された. しかし, 底生動物に関しては, 瀬切れの発生に関わらず, 生息場所環境が群集構造を決定している可能性が考えられた.
  • 宮下 衛, 染谷 保, 三田村 敏正
    2006 年 34 巻 p. 67-73
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ヒヌマイトトンボは河川改修や埋め立てなどの開発により生自地が減少したため, 1991年に環境庁により絶滅危惧種に指定されているイトトンボである. 福島県南相馬市原町区の鶴江河口域に生息するヒヌマイトトンボに対するヨシ刈りの影響を調べた. 2003年3月, 鶴江川野馬橋の河川敷きの両岸のヒヌマイトトンボ生息地において, 河川工事のために立ち枯れヨシの刈り取りが行われた. 2003年夏の調査では, 鶴江川野馬橋下の両岸でヒヌマイトトンボの成虫が確認されたが, 2005年の調査では成虫は確認できなかった. また, 幼虫についてはヨシが刈り取られて以来, 全く確認されていない.ヒヌマイトトンボ生息地の立ち枯れヨシが刈り取られたために, 成虫の産卵や幼虫の生息の場であるヨシの枯茎葉が流出し, ヒヌマイトトンボは消滅したと考えられた.
  • 弁天内湖を中心として
    松尾 さかえ, 井手 慎司
    2006 年 34 巻 p. 75-82
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 滋賀県で最初に干拓されたといわれる小中の湖の再生を目指して, 古老に対するヒアリングを中心とした調査によって, 干拓前の同湖の状況と果たしていた機能, 伝統的な維持管理手法を明らかにしようとした.その結果, 内湖の環境形成機能として, 同内湖に生息していたであろう鳥類・貝類・魚類などを推察することができた.また, 同内湖が漁業やヨシ業などの生業の場であったこと, あるいは湖底のスクモと呼ばれる腐食土やモラ (藻) が冬の代用燃料や田畑への緑肥として利用されていたことなど, その水産機能や水生植物の生産機能, 維持管理手法の一端を明らかにすることができた.
  • 三阪 和弘, 岩間 祐一
    2006 年 34 巻 p. 83-88
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では関川流域の住民を対象に実施したアンケート調査に基づき, 河川美化活動 (草刈, 清掃, 排水配慮) に対する心理的要因と自治会活動の影響を, 態度と行動の2段階モデルにより検討した. その結果, 態度に対しては各活動に共通する要因として実行可能性評価が, 草刈, 清掃に対しては自治会に対する態度が影響を及ぼしていることが示された. 一方, 行動に対しては, 河川美化活動ごとに異なる要因が影響を及ぼしていることが示された.
  • 二村 昌輝, 井手 慎司
    2006 年 34 巻 p. 89-96
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 滋賀県野洲川流域で活動する森林および河川ボランティア団体メンバーの所属団体種による流域環境保全に対する意識の違いとその違いの理由を明らかにし, 意識の違いを乗り越えて両種団体が協働していくための方法論を提案するために, 両種団体メンバーに対してヒアリング調査とアンケート調査を実施した, 調査結果に対する偏相関分析の結果, 両種団体間の交流や協働が十分にできていない原因としては, 直接的には団体の種類や活動目的などの両種団体間にある団体としての性格の違いが, 間接的には両種団体メンバー間にある個人としての流域環境保全に対する意識の違いが要因となっている可能性があることなどが示唆された.
  • 福岡・今津干潟を例に
    馬場崎 正博, 宗 琢万, 河口 洋一, 朴 埼燦, 島谷 幸宏
    2006 年 34 巻 p. 97-103
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    干潟の保全再生の取り組みが全国で始まっている.その際, 環境目標の設定が重要であるが過去の再現は困難なことが多い.福岡都市圏の今津干潟は古代から栄え, 貝塚を始め多くの歴史的資料が蓄積されている.本研究ではこれらの資料を分析し, 古代から昭和50年代までは干潟と人の係わりが密接であったこと, 地域では干潟環境の悪化は砂質干潟の泥質化が原因だとされていたが, 出土貝類の状況から泥干潟が古代から存在していたことなどを明らかにした.本研究のアプローチは各地の干潟再生に貴重な情報を提供すると考えられる.
  • 稲垣 雅一, 林山 泰久, 阪田 和哉
    2006 年 34 巻 p. 105-115
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 個人が現在偏重型選好を有する場合において.環境改善施策として,(1)『環境育による環境改善』,(2)『再生可能資源の利用・採掘時の環境負荷の減少』,(3)『財生産における再生可能資源の利用効率の上昇』といった3つの施策を検討した. その結果,(1) の環境教育による環境改善のみが, 環境改善に効果を発揮し,(2) と (3) の施策は, 社会厚生を増加させるものの, 環境改善にはっながらない可能性があることを示した.
  • 米沢 高明, 井手 慎司
    2006 年 34 巻 p. 117-122
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 滋賀県における自然を活用した環境学習 (自然環境学習) と学校ビオトープ整備に関する実態を把握するために同県全小中学340校を対象にアンケート調査を実施した. その結果, 1) 有効回答150校のうち95%が校外で, 71%が校内と校外の両方で自然環境学習を実施しており, 2) 校内では, 理科や生活の教科の中で陸上の動植物調査や野鳥観察などを, 校外では, 学校から徒歩20分以内の近距離の場所で, 総合的学習の時間の中で水質調査や水生生物調査, 川の流れ学習などを主に実施している, また3) ビオトープは回答校のうち17校 (11%) に整備されており, 同整備校は, 校外での自然環境学習にも長時間取り組んでいる, といった実態が明らかになった.
  • 動学モデルの数値解析による均衡解の性質
    中嶌 一憲, 林山 泰久, 森杉 壽芳
    2006 年 34 巻 p. 123-134
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 地球温暖化による将来のリスクを定量的に評価するための基礎的研究として, カタストロフ・リスクを明示的に組み込んだ動学モデルを構築し, 数値解析によってモデルの挙動特性の把握と均衡解の性質に関して分析したものである.
  • 白木 達朗, 中村 龍, 姥浦 道生, 立花 潤三, 後藤 尚弘, 藤江 幸一
    2006 年 34 巻 p. 135-142
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は地産地消による環境負荷の変化を評価することを目的とした. キャベツとトマトに着目し, 地産地消によるCO2排出量削減効果を生産と輸送工程を考慮して推計した. その結果, キャベツは年間で12, 000tのCO2排出量を削減する可能性が示唆されたが, トマトは6, 000tに留まった. 生産の時期をずらす旬産旬消の効果を推計した結果, トマトは冬春から夏秋に一人当たり150gの消費量をシフトすることによって13, 000tのCO2削減効果が示唆されたが, キャベツは同程度のCO2削減効果を得るためには2, 000gを夏秋から春ヘシフトしなければならないという結果になった. 農業からのCO2排出量を削減するためには, 産地や季節を考慮した適産適消が有効である.
  • 島田 幸司, 田中 吉隆, 五味 馨, 松岡 譲
    2006 年 34 巻 p. 143-154
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    欧米の国・州において2050年を目標に温室効果ガス排出量を60%~80%削減する動きがあるなか, わが国の県レベルで長期的な低炭素社会シナリオ形成のための手法を開発した. 開発した手法を先駆的に滋賀県に適用した結果,(1) 年率1.6%の県内総生産の伸びを前提としても, 2030年に二酸化炭素排出量を1990年比で3割~5割削減するシナリオを描きうること,(2) 2030年に排出量を90年比で半減するためには, 技術的対策 (54%の貢献) だけではなく, 社会経済構造の変革 (36%の貢献) が不可欠であること,(3) 高削減率を目指すほど県独自の施策 (土地利用, 新エネルギー活用, ライフスタイル変革等) による削減寄与率が増して半減ケースでは41%となること, を明らかにした.
  • 山田 和人, 藤森 眞理子
    2006 年 34 巻 p. 155-164
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    小規模CDMの制度の効果と課題を分析し, 小規模CDMの各種優遇策が有効に機能して, 小規模プロジェクトの件数が順調に増加していることを確認した. 一方, プロジェクトタイプごとに異なる上限値が, CER獲得可能量にタイプ間のアンバランスを招いている状況を指摘した. これらを踏まえて, 小規模CDMの今後の望ましい方向性として, 上限値改正, ガイドラインの整備強化, 及び特に獲得CER量の少ないプロジェクトを対象としたマイクロスケールCDMの創設を提案した.
  • 和田 直樹, 齊藤 修, 山本 祐吾, 盛岡 通
    2006 年 34 巻 p. 165-173
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 途上国のCO2排出削減施策の検討の基礎的資料を提供することを目的として, 中国の石炭火力発電部門へ高効率技術を導入した場合のCO2排出削減量とその経済性を, 新たに構築したモデルにより求めた. モデル計算では, 中国の将来発展シナリオを考慮し, 技術導入の時期; 既存設備への改修の有無等の選択による削減効果の比較を行い, また中国の東部・西部の地域間での削減効果の比較も行った. その結果, 今後50年間で技術導入によるCO2総排出削減量は約16%であり, また移転が20年遅れることによりCO2削減量は30-40%減少し, CO2単位削減量当たりの費用も上昇することが示された.
  • 国内製造業81社の実証分析
    藤井 秀道, 金子 慎治, 金原 達夫, 馬奈木 俊介
    2006 年 34 巻 p. 175-181
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年, 企業の社会的責任に対する消費者や市場の関心が高まっており, 企業経営にとって経済効率の改善をともなう形での環境への対応が求められている. 本研究ではDEA (Data Envelopment Analysis) を用いたフロンティア生産性分析によって, 日本の製造業81社を対象にCO2排出量を考慮した生産性の時系列分析を行い2001年から2003年までの全要素生産性 (TFP: Total Factor Productivity) の変化を推計した. その結果加工組立型産業, 特に自動車製造業が相対的に大きな環境生産性の向上を達成していることが分かった.
  • 吉田 登, 谷口 真澄, 井上 博, 甲谷 寿史, 平田 隆行
    2006 年 34 巻 p. 183-191
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    これまでのESCO事業は単独施設を対象に実施されることが殆どであり, 施設によっては, 使い道がないため熱エネルギーを破棄するなどエネルギーの利用が非効率的であるなどの課題が認識されていた. 本研究では, エネルギーの相互利用という新たなアプローチの視点を加え, 岸和田市の市有施設と他官公庁系施設や民間施設との連携・エネルギーの相互利用による省エネルギーの可能性について分析を行った. 分析の結果, 施設間が連携して適正な排熱利用をおこなうことにより, 施設単体のESCO事業に比べてさらに省エネルギーを図りうる可能性があることを定量的に明らかにした.
  • 全世帯太陽光発電付き賃貸マンションを事例として
    石崎 美代子, 乙間 末廣, 松本 亨
    2006 年 34 巻 p. 193-198
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    北九州市内にある日本初の全世帯太陽光発電付き賃貸マンション (RC造, 全43戸, 各戸1.5kW規格パネル設置) を対象に, 発電システムのエネルギー収支を把握し, オーナーと居住者の経済性を評価することにより経済的成立条件を探った. 発電量は年平均で4.5kWh/日/戸であり, エネルギーペイバックタイムは約1.95年, 世帯の消費電力量に対するエネルギー消費削減量の割合は約30%となった. 経済的には, オーナーは家賃に上乗せをして投資額を金利込みで回収するが, 現実的な回収期間や金利利率, 補助金額等の設定により, 投資以上の回収ができ, かつ居住者は太陽光発電による電気代の節約と売電により利益を出し得る賃貸料金の範囲が存在することがわかった. つまり, 太陽光発電は, 環境・オーナー・居住者の3者の問でWin-Winの関係を築ける可能性を有しており, RC造賃貸マンションへの設置はその一つのモデルと考えられる.
  • 馬場 健司, 田頭 直人
    2006 年 34 巻 p. 199-207
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    地球温暖化対策の1つとして, 大規模風力発電所 (ウィンドファーム) の建設が全国各地で急速に進められているが, 景観を巡る論争がしばしば発生している. 6つのウィンドファームの立地地域住民を対象としてアンケート調査を実施し, 現在立地しているウィンドファームに対する評価について分析した結果, 以下の知見が得られた. 第1に, ウィンドファームの景観は, 海岸立地型については, 普段の生活の中で間近に感じる距離であるほど高く評価されている. しかしながら, 第2に, 景観問題は軽視されるべきではないが, 必ずしも最も重要な論点であるとは限らない. 第3に, 事業主体や行政による情報提供は, 様々な心配と同時に期待を抱かせる可能性を持ち, 総合評価を高める上で重要な役割を担っている.
  • 藤森 真一郎, 河瀬 玲奈, 松岡 譲
    2006 年 34 巻 p. 209-220
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 2001年における全世界の人間活動に伴う窒素のフローを推計した. また, 全世界の窒素のフローを記述する表として全世界を対象とした窒素物質勘定表 (GNAT) を開発した. GNATは投入表, 産出表, 貿易表の3種類の表から構成される. GNATのフローの推計には物質収支調整計算を用い, 各種国際機関が発表する様々な統計値などを基に整合的なフローの値を推計した. その結果, 2001年の全世界における人間システムへの窒素の投入量は203.5TgN/yであった. 地域で比較した場合最も投入量が大きかったのは中国, 次いでアメリカであり, それぞれ42.1, 27.1TgN/yであった. 人ロー人あたりの投入量は中国が32.9kgN/y/人であり世界の平均とほぼ同じであったのに対して, アメリカはその2.8倍の95.3kgN/y/人であった. 貿易量を比較すると, 純輸入量が最も大きかったのは日本で1.38TgN/yであった. また財の産出量に対する純輸入量が0.67であり, 日本が多くの窒素を国外に依存していることが明らかとなった. 先進国と途上国の貿易関係に注目すると, 先進国間での貿易量 (18.9TgN/y) が大きかった. 途上国から先進国へのフロー, 先進国から途上国へのフローの量に大きな差は見られなかった.
  • 硝酸性窒素の表層流出における統合モデル分析
    田中 勝也
    2006 年 34 巻 p. 221-226
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では環境税による農業汚染の軽減効果として, 窒素肥料に対する課税 (窒素税) による硝酸性窒素の表層流出量の変化を考察した. 実証分析はトウモロコシ・大豆の輪作が盛んな米国アイオワ州デモイン川流域を対象とし, 土地利用モデルとSWATモデルから構成される統合モデルによる政策シミュレーション分析を実施した. 統合モデルによる分析結果によれば, 窒素税の導入により汚染型農業生産 (トウモロコシの連作およびトウモロコシ・大豆の輪作) の面積が減少し, 非汚染型の農業生産 (牧草その他) の面積が増加することが確認された. 土地利用の変化が顕著なのは比較的高い税率 (200%以上) においてであり, 窒素肥料に250%の税率を課すことにより, デモイン川流域からの硝酸性窒素流出量を約70%削減しうることが示された.
  • 市木 敦之, 山田 友博, 佐々木 暁人, 天野 耕二, 山田 淳
    2006 年 34 巻 p. 227-233
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    流域におけるポイントソース由来の環境堆積物は, 降雨等の水理的掃流力を介して流出し, 新たにディフューズソースとして受水域の水質へ影響を及ぼしているものと考えられる. 本研究では, 琵琶湖集水域を例として, 汚濁物の挙動特性について定量的かつ面的な解析を行うことにより, 汚濁物の分布性状を予測し, これを地理情報システム上に記述した. これにより, 発生源としてはポイントソースながら流出源としてはディフューズソースとして振る舞うポイント由来ディフューズ汚濁負荷の挙動・現存特性が明らかとなり, 流域における汚濁物流出管理のための意義ある情報を示すことが出来た.
  • 加用 千裕, 天野 耕二, 島田 幸司
    2006 年 34 巻 p. 235-243
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    2002年以後100年間の国内人工林を対象として持続的に多くのCO2吸収量が見込まれる森林経営手法を検討した, さらに, 炭素吸収機能を考慮した森林の経済的評価を行った, 京都議定書の第二約束期間以降も伐採木材の取り扱いに関して現行のIPCC Default Approachが採用される場合, 年間平均CO2吸収量が1990年比6%に相当する森林経営手法を提示した. また, 森林経営活動によって吸収されるCO2が将来の国内排出権取引市場で売却可能となった場合, 排出権売却利益を見込んだ森林経営収支は現行の育林補助金と同等もしくはそれ以上の収支改善効果を示した. さらに, 森林経営は省エネルギーなど他のCO2削減施策における限界削減費用と比較して1/15以下の費用負担で実施できる可能性を示した.
  • 吉川 直樹, 天野 耕二, 島田 幸司
    2006 年 34 巻 p. 245-251
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    日本国内で消費される野菜の生産および輸送に伴う環境負荷を詳細に把握することを目的として, 野菜生産費用および, 卸売市場・貿易データに基づいて直接・間接CO2排出量を品目別 (14種)・時期別・地域別に推計し, 栄養素の含有量を機能単位とする環境効率の比較を行った. 国産野菜の生産と輸送に伴うCO2排出量は全体で約580万トンであり, 野菜1kg当たりに換算すると生産で280g-CO2, 輸送では130g-CO2の排出量となった. 品目別では, 根菜類のCO2排出量が比較的少なく, 果菜類のCO2排出量が多かった. 地域別にみると, 野菜の自給率が高い地域でCO2排出量が少なくなる傾向が明確に示された. また, 輸入野菜1kg当たりの輸送に伴うCO2排出量は平均で国内産の約1.2倍であった. 環境効率では, ビタミンAではにんじん, ビタミンCやカリウムではだいこん (葉) やばれいしょの効率が高かった.
  • 萬ケ谷 義久, 片谷 教孝
    2006 年 34 巻 p. 253-259
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 乗用車における動力源別 (ガソリン車, ディーゼル車および代替燃料自動車) の得失を, 環境影響面と維持管理費用等の経済面の両面から, 金額べースで比較評価する手法を提案することを目的としている. 近年の自動車の大幅な普及に伴い, 地球温暖化等の環境影響や, 排ガス中の汚染物質による人体への影響が問題となっている, その対策を考える際, 温暖化に重みを置くとCO2の削減が, 人体リスクに重みを置くとNOx, SPM等の汚染物質の削減がそれぞれ優先課題となる. 動力源によってこれらの排出量が異なり, さらに車両価格や維持管理費用にも差があるため, どの動力源が有利であるかを客観的に判定することは容易ではない.そこで本研究では, 自動車の性能, コスト等, あらゆるデータの収集を行い, 環境影響については排出される温室効果ガスや汚染物質の金銭換算を行い, すべての事項を金額で表現することによって, 動力源別の比較評価を行う手法を提案する, また, 現時点で入手可能なデータをもとに試算を行った結果, 現時点ではハイブリッド車が優れた評価を得たが, 将来的にはCNG車が上回り, さらに燃料電池車もそれらを上回る可能性があることが推定された.
  • 紀伊 雅敦, 亀岡 敦志, 湊 清之
    2006 年 34 巻 p. 261-266
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    途上国では急速にモータリゼーションが進展し, 自動車排出ガスに起因した大気汚染が深刻化している. ASEAN諸国は排出ガス規制導入を目指しており, それには燃料性状改善が必要である. これには石油精製の高度化に加え, 流通末端の品質確保が必要であり, これを担保するシステムが不可欠となる.
    本研究では, フィリピンとインドネシアを対象に流通末端の燃料品質分析を行い, 流通品質の検査体制の評価手法を作成した. 分析の結果, 不適合燃料が相当程度検出され, 製油所出荷からスタンドまでの流通段階での品質劣化の可能性が示された. また, 検査体制の評価手法をフィリピンに適用し, 現在の公的品質検査はサンプル数の上で不十分である可能性を示した.
  • ネットワーク分析を用いた分析手法の提案
    木村 道徳, 井手 慎司
    2006 年 34 巻 p. 267-276
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, テーマを共有した複数の環境情報サイトによってインターネット上に形成される情報ネットワークの構造をネットワーク分析によって定量的に把握することを提案し, 同分析手法を世界各国の7つのPRTR情報サイトに適用した.その結果, 単一サイト内の情報構造の基本は階層構造であるが, サイトによって階層間を結びつけるリンクの形態に大きな違いがあることや, 同PRTR情報サイトの間にはすでにある程度の情報ネットワークが形成されていることなどが明らかとなり, これらによって, 提案した分析手法の有効性を部分的にではあるが示すことができた.
  • 高木 朗義, 廣住 菜摘, 澤田 基弘
    2006 年 34 巻 p. 277-284
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年頻発する自然災害により顕在化してきた避難に関する様々な課題を解決するためには, 住民や地域特性の視点から避難計画について総合的に評価する必要がある. 本研究では, 避難所・避難路の地域住民に対する適切さを表す個別評価指標とその相対的重要度の積和によって表現される総合評価指標を提案する. 個別評価指標は避難計画の問題点を定量的に判断するための指標であり, 相対的重要度は世帯属性, 地域属性, 時刻によって表現される. アンケート調査に基づいて特定化した総合評価指標を用いて, ある世帯に対する地震時避難計画について評価した結果, 一次避難に適している避難計画と二次避難に適している避難計画が存在することがわかった.また自助・共助・公助の各視点から改善策を考案して評価した結果, 各改善案の長短所がわかった. 以上のことから, 住民と地域の特性を考慮した避難計画を様々な面から評価するとともに, 改善案を検討できる指標が提案できたと思われる.
  • 酒井 康夫, 山本 祐吾, 吉田 登, 盛岡 通, 森口 祐一, 内藤 弘
    2006 年 34 巻 p. 285-291
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 鉄鋼産業が既存の生産インフラを活用し, リサイクル型の先導的な生産技術を導入することによって, 高度な資源循環を形成しようとする取り組みに着目する.具体的には, 廃棄物産業連関表を援用した勘定モデルを構築した上で, 先導技術を核とした高質な鉄リサイクルシステムの廃棄物産業連関分析をおこない, 技術変化による物質フローおよび環境負荷の変化を定量的に評価した. その結果, 当該技術の適用がマクロに展開されたとき, 従来に比して埋立処分量およびCO2排出量ではそれぞれ約2.65%, 0.41%の増加となる一方で, 天然資源投入量が約9.2%削減され, 資源生産性では約6.15%の向上が達成されることが明らかになった.
  • 東京-北京の事例
    金子 慎治, 市橋 勝, 吉延 広枝
    2006 年 34 巻 p. 293-303
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本稿では, 都市間の経済依存と発生環境負荷の時点間変化を, 複数の地域産業連関表を組み合わせて計測し, その比較と要因分解を行なう. 対象地域は, 東京, 北京, 日本のその他地域の2都市, 1地域であり, 比較する時点は92年及び97年, 90年及び95年である. 分析から得られる主要な結論は, 各地域の相互輸出はこの5年間で2倍前後の伸びを示していて, 相対的に東京から北京への輸出の増大が大きくなっている, だが, 輸出1単位当りの誘発環境負荷量の比較や要因分解の結果によれば, 北京での環境負荷は増大しており, その日本との格差は依然深刻であることが分かった. 環境負荷増大の要因は, 北京側での原単位の悪化と日本側での輸出の増大である.
  • 柴田 学, 松本 亨
    2006 年 34 巻 p. 305-314
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 企業の新たな環境管理会計として開発が進むマテリアルフローコスト会計を用いて, 地域の循環連鎖を評価する環境会計のモデルを構築したものである. 具体的には, 我が国と海外におけるマテリアルフローコスト会計の導入動向を踏まえ, 同手法を地域の循環連鎖の評価に拡張するための理論的検討を行うとともに, 具体的な基本フレームを開発した.また, 北九州エコタウンを対象にケーススタディを行い, 構築した手法の有効生を検証した. その結果, 地域の資源循環管理における現状把握と課題の抽出, 立案した対策の評価とその確認といった作業が統一的なフレームで実行可能となることが実証され, 本研究の提案手法が実際の政策過程においても有効な管理ツールとなることを示した.
  • トラベルコスト法の適用に関する検討
    奥山 忠裕, 林山 泰久
    2006 年 34 巻 p. 315-325
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ある財や環境質に対し, 個人はどのような基準のもとにその価値を判断しているのであろうか.環境評価論では, 伝統的経済理論に従い, 効用水準に絶対評価基準を仮定してきた.しかしながら, 実験経済学の分野では, 個人の価値評価が何らかの比較対象との相対評価基準に依拠しているとの報告がある.
    本研究の目的は相対評価を基準とした選好関係を仮定し, 環境質の利用価値および非利用価値評価に用いるためのモデルを構築することにある.基本モデルとしてトラベルコスト法を用いる.まず, 相対評価を考慮した環境質の利用価値, 非利用価値を定義し, 定性的な分析を行う.次に, 実証可能な関数形を特定化し, 定性分析の知見を確認するため, 数値シミュレーションを行う.
  • 金谷 健, 宮腰 裕章
    2006 年 34 巻 p. 327-334
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    企業における環境報告書等の公表媒体 (冊子, HP) 選択の実態と理由, 公表内容の推移を, 日経300に挙げられている企業の中の6業種 (食品, 化学, 電気機器, 機械, 建設, 商社) を対象として, 企業アンケートおよび各企業の環境報告書等の内容分析によって調査した.
    調査の結果, 公表媒体がHP主体の企業は現在, 約3割, 今後は約5割と予想に比べそれほど多くなかった. これは「費用の増大」, 「人員労力の問題」などのデメリットのためと推測される. また公表内容については, 冊子は「社会的取組」の情報量が, HPは「サイト別データ」と「環境マネジメント」情報が, それぞれ顕著な増加傾向にある.
  • 郡嶌 孝, 池田 秀文, 今堀 洋子, 小澤 寿輔, 玄場 公規, 竹内 裕明, 辰巳 菊子, 松本 亨, 吉田 登
    2006 年 34 巻 p. 335-346
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年, 製品として販売していたものをサービスとして提供する, サービサイジングと呼ばれる経済活動が, 環境負荷低減に寄与する可能性が高いとして注目されている. 本研究では, 環境負荷低減の面で優れた特性を示すサービサイジング (グリーン・サービサイジング) に着目し, まずこれまでの類型化に関する既存研究のレビューをもとにグリーン・サービサイジングを実現する手段からみた類型化を試み, さらにこの類型に基づき既存事例における環境への効果及び付加価値の発現する傾向について分析をおこない, 具体的事例への考察をもとに, 類型ごとに特徴ある事業としての成立要件や課題を明らかにした.
  • 樋口 明彦, 高尾 忠志
    2006 年 34 巻 p. 347-352
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    米国ロングアイランドでは, 1993年以来, エコシステム保全・地下水保全を目的とした開発権移転 (TDR) プログラムが実施され, 成果を挙げている。本稿では, この事例に着目し, 環境保全を目的としたTDRプログラムの意義と課題について考察を行った。主な所見は以下の通りである。
    米国におけるTDRによる都市近郊田園地域の環境保全は1970年代以来の知見の積上げにより効果的な手法として定着しつつあるが, 運用の煩雑性や市場からの影響の受けやすさ等から, その運用は, 単独ではなく公的土地取得等と一体的なものとなっている。
  • 「家庭生活の合理化」の100年
    樋口 幸永, 近藤 隆二郎
    2006 年 34 巻 p. 353-363
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 婦人雑誌『婦人之友』が「家庭生活の合理化」を基本理念に掲げ100余年にわたってライフスタイルを提案し続けていることに着目し, 誌面分析によってその変遷を把握した. この雑誌には, その提案を実施する読者組織も存在し, 近年は環境保全活動を活発に行っていることから, 各時代に読者組織がどのような実践を行い, 現在に至ったのかにも注目した. その結果, 記事の傾向が「家内」から「公共」へ移ってきていることと, むことへの意識と意味づけを変化させており, 時代ごとに雑誌の果たす役割も変遷していたことがわかった.
  • 松本 幸正, 伊東 裕晃, 松井 寛, 古井 良典
    2006 年 34 巻 p. 365-376
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 住民意識調査の結果を用いて, 生活環境に対する評価が暮らしやすさ評価へ及ぼす影響の形態を考慮して, 生活環境に対する意識を定量的に評価する手法を提案し, 実際の調査データを用いて適用計算を行った. この手法では, 生活環境に対する意識が暮らしやすさにつながっているのか, 暮らしにくさにつながっているのかを明らかにすることができる. 旧豊田市と旧岡崎市における市民意識調査の結果を分析した結果, 両市において生活環境に対する住民の満足意識が高いものの暮らしやすさにつながっていないという, 住民にとってはあって当たり前のものとなっているものや, 住民の不満意識が高いものの暮らしにくさにつながっていないという, 悪くても仕方がない状態にあるものなどを明らかにすることができた.
  • 金森 有子, 松岡 譲
    2006 年 34 巻 p. 377-386
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    家庭のライフスタイルが変化する要因の1つに, 世帯構成が考えられる. 現時点で容易に入手できる情報は, 世帯をある面からしか見ていないものが多い. そこで, 本研究では, Cross entropy法を用いて, 世帯類型, 世帯主の年齢, 住居の所有関係の面からまとめられたデータを用いて, これらの3要因を組み合わせた世帯分類での消費支出データの作成を試みた. さらに, 作成されたデータを用いて, 世帯分類別の環境負荷の発生量を推計し, 世帯分類と環境負荷発生量との関係を考察した. 推計の対象は, 1987年から2002年の16年間で, 日本の家庭部門とした. その結果,(1) 環境負荷の発生量に最も大きな影響を与えるのは世帯類型であること,(2) 高齢者世帯には特有の消費行動があり, いくつかの財に関して, 世帯類型の傾向と異なる傾向が見られること, がわかった.
  • 渡邉 雅士, 松井 三郎, 内海 秀樹
    2006 年 34 巻 p. 387-393
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年, 企業の社会的問題・事件 (いわゆる不祥事事件) が相次ぎ, 企業の社会的責任ならびに消費者との信頼形成が強く求められるようになった. そこで本研究では, 食品産業の社会的問題・事件からの事例研究に基づいた質問紙調査を実施し, 共分散構造分析を用いて, 食品産業を代表とした企業と消費者における信頼形成の因果的構造をモデルとして構築した. その結果, 信頼形成には, 企業内のシステムの健全性を高めることが第一であることを示した. そして, そのための具体的手段は, 信頼の失墜を防止する際と信頼の回復を促進する際では異なっていることが明らかとなった. また, 企業の提供する商品に問題があった場合と企業が地域環境汚染を起こした場合との間に, 消費者の認識の相違を発見できた.
  • 大西 悟, 藤田 壮
    2006 年 34 巻 p. 395-404
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    川崎エコタウンは, 今後適正な施策を推進することで, より社会的便益が高い産業共生モデルを構築することが期待されている. 本研究では, 川崎エコタウンに立地する鉄鋼産業の廃プラスチック高炉原料化施設および製鉄施設を利用した廃プラスチック地域循環システムの環境改善効果 (CO2排出量) を算定した. その結果, 循環利用しない場合 (ケース0) と比較して, 現状 (ケース1) の削減量では, 1.7×105t-CO2/y, 近郊産業および近郊都市と連携する場合 (ケース3-2) では, 3.6×105t-CO2/yの削減効果があることが明らかになった.
  • 荒井 康裕, 小泉 明, 稲員 とよの, 西出 成臣
    2006 年 34 巻 p. 405-412
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 都市ごみの広域的処理システムの最適化に焦点を当て, 最も適切な広域ブロックの選択と処理シナリオの組合せについて分析した. すなわち, 処理システムの多目的最適化を図るため, 経済性及び環境性に関する評価指標について検討する一方, 線形メンバーシップ関数及びファジィ決定の理論を組み込んだ多目的ファジィ整数計画問題として定式化するとともに, 遺伝的アルゴリズム (GA) による多目的最適化モデルの提案を行った. ケーススタディの結果, 経済性と環境性をバランス良く満足する計画代替案が得られ, モデルの有効性を示すことができた.
  • 岡崎 誠, 増田 貴則, 細井 由彦, 河野 嘉範
    2006 年 34 巻 p. 413-422
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    人口低密地域に焦点をあてて効率的な家庭廃棄物の分別収集のあり方を検討した. モデル地域で分別数の増加に伴う収集・運搬過程のコストの変化を算定し, さらに変化のパターンに影響を及ぼす要素として分別ごみの収集頻度と集落, 人口の分布状況に着目して解析を試みた. 加えて, 家庭での分別の煩雑さを支払意志額として推定し, また, 収集した後処理場内で選別する過程でのコストも算定して, これらを合計して総合評価した. さらに, 分別数の増加による環境負荷 (CO2排出量) の変化を算定した.
  • 小宮 哲平, 石崎 俊夫, 中山 裕文, 島岡 隆行
    2006 年 34 巻 p. 423-431
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 衛星リモートセンシングを用いて広大な面積を有する大規模最終処分場の安定化状況をモニタリングする手法について検討した. 上海市廃棄物老港処置場を対象とし, 現地調査で得られた廃棄物層ガス組成と衛星リモートセンシングで得られたNDVI (Normalized Difference Vegetation Index: 正規化差分植生指標) との関連性について検討した. 両者の間には一定の相関が見られ, NDVIを使用することで廃棄物層のガス組成を推定できることを示した. また, 多時期の衛星画像から得られたNDVIの時期変動パターンを用いることで, 処分場内の植生を分類し, 植生遷移状況の推定及び植生遷移段階が遅延していると考えられる箇所を検出する手法について検討した.
  • 吉田 綾子, 山縣 弘樹, 吉田 敏章, 鶴巻 峰夫, 森田 弘昭
    2006 年 34 巻 p. 433-441
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, ディスポーザー設置地区のごみ集積場におけるごみ調査及びディスポーザー使用者の意識調査を実施し, ディスポーザーの導入によりごみ処理システムから下水道システムに移行する厨芥の量及び組成の解析を行った.得られた結果を以下に示す.
    1) ディスポーザーを導入した場合でもごみ集積場に厨芥が100g/人・日程度残存し, 厨芥移行率は100%とならない.
    2) ディスポーザー導入地区でも, 日常的にディスポーザーを使用しない世帯が1割, 厨芥を全量ディスポーザーで処理しない世帯が3割程度存在する.
    3) 厨芥を分別収集しても, 分別しきれない厨芥が発生する.
    4) ディスポーザー設置地区と未設置地区では, 厨芥類のみを分別収集したごみ組成に相違はなかった. しかし, 可燃ごみに混入した厨芥やディスポーザーに投入される厨芥の組成については, 今後の課題といえる.
  • 石井 暁, 花木 啓祐
    2006 年 34 巻 p. 443-453
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    都市における有機性廃棄物およびエネルギー需要の空間分布を建物レベルで推定し分析する手法を用いて, 川崎市の各下水処理場に仮想的にバイオガスプラントを導入し, 家庭系および事業系有機性廃棄物を8通りの収集シナリオで受け入れた場合のエネルギー回収および二酸化炭素削減効果を推定した. その結果, 最大で年間約30GWh/yearの余剰電力および75TJ/yearの余剰熱の回収が可能であり, 施設運用から約12000t-CO2/yearのCO2削減効果があることが明らかとなった. この方法により, 従来の分析では曖昧となっていた余剰エネルギーと周辺建物の需給バランス, 都市内の空間的偏りを考慮した輸送量を検討することが可能となった, 廃棄物焼却場における低位発熱量の向上や, 熱の需給エリアの線引きなど, 都市環境政策を進める上で重要となる項目を検討するための知見が得られた.
  • 村野 昭人, 藤田 壮
    2006 年 34 巻 p. 455-462
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    木造住宅には大量の炭素が蓄積されており, その解体・新築を適切にマネジメントすることは重要な課題である. さらに, 木造住宅は多様な部材から構成されており, それぞれに求められる性能は一様ではない. 各部材の特性を考慮して, 解体材の再資源化技術の選択を行うことが求められる. そこで本研究では, 木造住宅の解体に伴って発生する廃木材を対象として, その部材特性を考慮した循環利用技術の評価を行った. 対象とした技術は, 建材化, 製紙化, 燃料用チップ化である. さらに, 埼玉県における森林の樹齢別の蓄積と, 樹木の成長期間を考慮して, 地域内の木材循環の可能性について検討した.
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