海外では子どもを対象とした握力測定の信頼性や自閉スペクトラム症を有する児童(以下,ASD児)の握力特性が報告されているが,本邦ではASD児における検証はほとんどない.ASD児では運動の協調性や模倣の困難,注意の持続や目的理解の難しさから,測定に集中しにくいことが指摘されている.そこで,本研究ではASD児が測定課題の目的を理解しやすく見通しをもって取り組めるように,視覚支援を導入した握力測定を考案し,その信頼性を検証することを目的とした.対象はASD児13名(8.5±1.7歳)で,ASD単独9 名,ASDと他の神経発達症併存4 名であった.スメドレー式握力計を使用し,2 名の検者がそれぞれ独立して測定した.測定時には目標値(2.5kg,5 kg,10kg)に動物シールを貼付し,針の動きを視覚的に提示して動機づけを図った.練習で手順理解を確認後,左右2 回ずつ交互に最大努力で測定を行った.測定後には測定値を提示し目標値に達した場合は称賛した.検者間信頼性の検討には相対信頼性として級内相関係数(ICC (2,1)),絶対信頼性としてBland-Altman分析による系統誤差および測定の標準誤差,最小可検変化量を用いた.握力の平均値(SD)は検者1 ,検者2 の順に12.3(3.2)kg,12.5(2.9)kgで有意差を認めなかった.ICC=0.98(95%CI=0.93-0.99)で優れた信頼性を示し,MDCは1.2kgであった.Bland-Altman分析では固定誤差・比例誤差ともに認められなかった(P>0.05).ASD児に対する視覚支援を用いた握力測定法は優れた信頼性を示した.測定前の見通し提示や視覚的動機づけが集中の維持と測定理解に寄与したと考えられた.今後は大規模な対象者数や心理的・環境的要因の統制を設定した検討が課題である.
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