昭和5年5月に發行された “地球” に, 京都帝國大學槇山次郎博士及び君塚康治郎學士が, 長野縣樽ノ澤の1200米の地點から採集された蛙の化石に就き發表された。その結論としては, 該標本はアカガヘル屬
Ranaに含まるるものであるが, 種名が判然しないとの事であつた。筆者は同教授の御厚意により, その標本を拜見する事が出來たので, 之れを現存する本邦に最も普通なるトノサマガヘル
Rana nigr.nigromaculataH. 及びヱゾアカガヘル
Rana temp. tmporariaL.両種の, 本化石標本と略ぼ同體長のものの骨骼をとり相比較したるに, 化石標本はトノサマガヘルよリヱゾアカガヘルに, その骨骼標徴が似てゐることを知つた。然し該標本はほぼ同體長のヱゾアカガヘルに比し, 頭蓋骨の長さ及び幅が小で, 且つ前後両肢が著しく短いものである。依つて之れを新種とし
Rana architemporariaと命名する。本研究を進むるに當り, 文獻閲覧の便宜を與へられた, 徳永重康博士に謝意を表する。
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