古くから手許にあつた北上山地地方産アムモノイド2種の記事で, 即ち
1. 宮城縣桃生郡十五濱村小濱の西方に産した
Stacheoceras sp.(第1圖)
2. 岩手縣氣仙郡矢作村飯森産 (烏羽源藏氏採集) の
Paraeeltitens aff.
elegas GIRTY (第2~4圖)
の記載である。ただし, 前者は唯1個の極めて不完全な破片で, 縫合線なども殻の断面と, 烈しく溶蝕さわた側衝とから, その大勢がうかがはれるに過ぎないが, それが
Stacheocerasであることだけは確實で, 又, 數年前馬淵理學士が氣仙沼南方の岩井崎から記載した
Stachecceras iuaizakienseとは明瞭に異るものである。後者は1塊の灰黒色砂質頁岩の水蝕圓礫を破砕したところ, その中に數多の型となつて残つてゐたもので, 凡ての點でGIRTYの種
Paraceltites elegansに酷似してゐるが, 縫合線の外側の部分が不明であり, 又, 螺巻の最終の部分の表面が細い, 多少波状の肋線を指ふといふ點で, 固定をさし控えて置く。此後の性質は,
Paraceltitesの他の種類にも見られることではあるまいみ? そして, それは殻のliving chamberの部分を示すのではあるまいか?
今日まで我が國で知られた古代末期の頭足類は次の4種類であり, 從つて, 此の文のものを加へて6種となる。今後の探求を待つ。
1.
Gasirioeeras sp. 新潟縣青海石灰岩 (矢部, 1906)
2.
Protocyeloceras cf.
cyclophorum WAAGEN. 宮城縣雄勝粘板岩 (早坂, 1924) 清水・小幡兩氏に依れば, これは
Cycloceras probab. n. sp. の由。
3.
Stacheoceras iwaizakiense MABUTI.宮城縣岩井崎石次岩 (馬淵, 1935)
4.
Metacoceras sp. indet. 宮城縣米谷町上部二疊系石灰岩 (矢部・馬淵, 1935)
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