宮城県志津川町附近のユラ系の下部から出て, 暫定的に
Alsatitesとして, リストにあげられたことのある標本をよくしらべた。その結果これは特異な性状をもち, 新属を代表するものであることがわかつた。こゝに
Yebisites onoderaiとして記載する。新属は,
Arietitaceaeとしては珍しい, 周期的のくびれをもつ。縫合線・殻形・肋は,
Alsatitesや
Colocerasのそれに近似である。腹面の龍骨は狭小で,
Alsatiesの典型者のそれと同一ではないが,
Vermicerasなどに於けるような溝はなく, また腹面の平坦化もみない。住房の肋の腹側末端が.やゝ膨らむ傾向は, Schlotheimidsに通じるものがあるが, 他の点ではちがう。結局分類系統としては, Psiloceratidae科中の亜科Alsatitinaeに入れるべきものである。この化石の産出層準は, 志津川層群韮ノ浜層中の三角貝砂岩の石灰質部で, 従来菊石は未知であつた。新属だから, 対比上必しも有力な資料ではないが, Alsatitinaeの進化史一般からいうと, やはりユラ系下部のヘッタング階の中・上部が暗示される。三角貝砂岩の下位の, いわゆる蜆貝層 (この蜆貝には問題があるが) が, ユラ系最下部か, レーチックにも反ぶかは, 依然問題である。
抄録全体を表示