第三紀のPitarに似て, 殻表面に放射条を有する
Pseudamiantsが石川県金沢付近の大桑層から産出することは, 可成り古くから知られている。 所謂「大桑一万願寺動物群」に属する種としては, 不思議とその分布が限られて居り, 他地域からの報告には, ついぞ接したことがなかった. ところが最近菅野三郎が北海道瀬棚層より報告した“
Saxidomus”は, あらゆる点から判断して
Pseudamiantisであると思われるふしが多々ある。 一方, 福島県下の棚倉化石層として有名な貝化石群の中からも, 稀にではあるが産出することがわかった。 他方, 九州の白亜紀層から“
Callista”(
Pseudamiantis)
crenulalus MATUMOTOが報告されている。 幸いにして同種の模式標本及び保存良好な数個体をみる機会を得たが, 白亜紀の種は第三紀のものに類似するよりも, むしろ相違する点の方が多く, 同一のグループに含めるのはあまり好ましくないと結論するに至った。 従って第三紀層産の三地域の標本と, 黒田・波部の記載を比較検討して, あまりなじみのない同属について紹介すると共に, 類似する
Pitar, Callistaの一部と若干比較してみる次第である。
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