鹿児島県獅子島の白亜系御所浦層群中部層 (
Graysonitesを産した部層のすぐ下位の三角貝の多い砂岩で, おそらく下部セノマニアン) から1個のおうむがい類化石が得られた。これは
Paracymatoceras属の新種を代表する。本種は同属の模式種
P.asper (欧州のチトニアン産) と同様に, 殻の腹面中央に浅いくぼみがある。白亜紀の
Paracymatocerasの既知種にはこのくぼみがないのに対し注意すべきである。縫合線は波打っており,
Cymatoceras semilobatus (イソド南部の上部アルピアン) や
Cenonmanensis (欧州のセノマニアン) よりも波が強い。本種が
P.asperの直系子孫か, やや波打った縫合線をもつ部類の
Cymatocerasのある種類から, 側枝として進化したものかは, とくに下部白亜系産のものを今後探求してよく比較しないと, 断定できない。
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