日本古生物学會報告・紀事 新編
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1970 巻, 80 号
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  • 西田 史朗
    1970 年 1970 巻 80 号 p. 355-370_1
    発行日: 1970/12/20
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    1968年1月東京大学海洋研究所の研究船・白鳳丸が赤道太平洋(KH67-5-St.21 : 南緯00°39.6′, 東径160°36.7′, 深度2940m)から採取した有孔虫軟泥中の石灰質超微プランクトンについて報告する。軟泥の大部分はGrobigerinaceaeからなり, これ以外はほとんどCoccolithophoridよりなっている。この軟泥中から電子顕微鏡観察により28種の石灰質超微プランクトンを記載した。光学顕微鏡下ではさらに2種が確認されている。本試料の採集された南赤道海流域からはHASLE (1959)が32種の現棲のCoccolithophoridsを報告しているが, 本試料中よりそのうち6種が見出されている。またKAMPTNER (1963)が本海流域の鮮新世から現世におよぶ2本のcore試料から41種のCoccolithophoridsを報告しているが, そのうち9種が本試料中に見出される。同時に彼が赤道反流域のcoreから報告している8種のうち4種が, 北赤道海流域のcoreおよびdredge試料より報告している35種のうち3種が本試料中のものと共通している。量的にはKH67-5-St.21試料のナノプランクトン群集の76%はCyclococcolithus leptoporus (MURRAY & BLACKMAN), Gephyrocapsa oceanicaとUmbilicosphaera mirabilisの3種からなるが同じ白鳳丸KH67-5-St.23 core試料(北緯00°49′, 東経164°00′, 深度4330m, コア長271cm)の表層部ではCycl. leptoporus (MURRAY & BLACKMAN), Ellipsoplacolithus productusとGephyrocapsa apertaの3種で全体の88%を占め, G.apertaのみで51%に達する。St.23 coreではこのような構成がコア長271cmにわたりほとんど変化しない。また絶対個数では軟泥の湿重1g当り3×109個程度に達する。同じ海流域についてみてもこのような現棲種群や試料ごとの共通種の原因はBRAMLETTE (1961)の言う5000m/10年というような沈降速度とその間における海流の循環, 混合, 表層海流と深層海流のちがいや気候変化などに求められよう。MCINTYRE & BE (1967)とMCINTYRE & LOUISE (1969)は太西洋と太平洋でCoccolithophoridについてそれぞれ5つのfloral groupを区別したが, それによると本試料中のCoccolithophorid群集はtropicalないしsubtropical assemblageの様相を示す。
  • 松尾 秀邦
    1970 年 1970 巻 80 号 p. 371-389
    発行日: 1970/12/20
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    1951年, 石川県石川郡白峯村大道谷において, 前田四郎教授は上部白亜紀植物化石を採集された。その材料は遠藤誠道・天野昌久両教授によって函渕植物群に匹敵する新期白亜紀植物群であると報告された(1952年)。このたび, 小林貞一・前田四郎両教授の御好意によって大道谷産の材料を見せて戴く機会に恵まれたので, 今までに谷峠および福井県勝山市谷町御所ケ原で採集した植物化石をも含めて報告する。大道谷植物群は毬果植物に富む植相をしめすが, 採集した個体数ではHemitrapaが圧倒的に多い。堆積層は湖成相をしめし, 最大層厚150m位で, 面谷流紋岩類の間に存在する。この特徴ある新期白亜紀酸性岩類を伴なっている足羽植物群に比較すると, 大道谷植物群の層準は上位であるが, 領石統のNilssonia densinerveを産出する。しかし, 本邦では第三紀的要素であるPseudotsuga, Pinus等を産出する特徴を持っている。
  • 鹿間 時夫 /, DARYL P. DOMNING
    1970 年 1970 巻 80 号 p. 390-396_1
    発行日: 1970/12/20
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    1965年8月当時横浜国立大学地学教室学生であった龍野伸武と同教室の尾崎公彦が, 長野県上水内郡戸隠村土合の水内層群猿丸層(猿丸砂岩礫岩層下部)より哺乳類の巨大な助骨を発見した。現地は裾花川と楠川の合流点の近くの川岸である。一見海牛類のものであることは明かであったので, 鹿間は1969年Berkeley滞在中DOMNINGと共同研究をした。骨はバナナ状に肥厚し強く曲り, 先端部は断面が円形に近い。California大学の標本と比較検討の結果, 現世絶滅の有名なリチナ海牛に近い種Hydrodamalis sp.であることが判った。リチナ海牛H. gigasの最小に近い大形の中新世種Metaxytherium jordaniの助骨よりは曲り方大であるが, 基部の形はリチナ海牛よりも中新世種に近い。Californiaの鮮新統よりjordaniとgigasの中間的な新種が発見されているので, 之との比較が考えられる。北太平洋の海牛の系列は単系的でMetaxytherium jordaniよりHydrodamalis gigasへの進化しか見られない。現世ベーリング海に分布したHydrodamalisが鮮新世には太平洋の両岸ではるか南方にまで分布していたことは意義深い。
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