1970年に千葉大学とチリー地質調査所の協力で行なわれたドメイコ山地の地質古生物合同調査の採集品を検討した結果, アントフアガスタの約180km南東の砂質石灰岩から得られた化石群中にLimidaeの2新種を含む二枚貝13種と腹足類3種を識別, 鑑定したので記載する。このうちAntiquilima atacamensisはジュラ紀に世界的に繁栄したCtenostreonの特徴をも備え, 同属の起源を考察する上に興味ある種である。この化石群はペルー中部のセロ・ド・パスコ地域から知られている三畳紀後期(ノリアン)の軟体動物群に共通する種を多く含み, 母岩の性質も類似するので, ペルーに広く分布するPucara層群の南縁がこの山地に達していることを示している。二枚貝の外層は一般によく保存されているが, がんらいアラレ石でできていたと思われる内層はしばしば消失していて, 殻の構造や鉱物組成のちがいによって差別的な化石化がみられる。化石は多少とも珪化作用を受け, 酸処理によって基質を除去できる場合がある。珪化は差別的な化石化の後で残された殻の内外の表層から内部に向って進行したと考えられる。
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