日本古生物学會報告・紀事 新編
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1982 巻, 125 号
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  • 蟹江 康光
    1982 年 1982 巻 125 号 p. 239-258_1
    発行日: 1982/04/15
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    北海道・樺太の白亜紀チューロニアン~マーストリヒシアン階産の石灰質ノジュール中に保存されたTetragonites glabrus, Gaudryceras denseplicatum, G. tenuiliratum, G. sp.の顎器の形態と鉱物組成を記載した。これらの顎器は, 外ラメラ・わい小化した内ラメラと石灰質の嘴状部より構成されている。前者はカーボネイトアパタイト, 後者はカルサイトよりなり, 現生頭足類の顎器と比較検討することによって, それぞれキチンとアラゴナイトより置換されたと考えられる。石灰質嘴状部は, 内部構造・鉱物, 化学組成から, 現生オウムガイ類のリンコライト(上顎)・コンコリンク(下顎)に酷似する。これらの資料に基づいて, テトラゴニテス科アンモナイトの顎器と口球の一部を復元した。これらのアンモナイトの顎器は, オウムガイ類よりがん丈で, 住房部の大きさに対する顎器の大きさの比はより大きい。この事実は, テトラゴニテス科アンモナイトがオウムガイ類と類似の食生活をしていたことを示唆する。
  • 木村 達明, 辻井 正則
    1982 年 1982 巻 125 号 p. 259-276_1
    発行日: 1982/04/15
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    前編につづき, 来馬層群および岩室累層からつぎのシダ種子およびベネチテス目に属する植物化石を記載した。シダ種子目 : Ctenozamites sarrani (Zeiller) Harrisベネチテス目 : Anomozamites sp. A, Otozamites fujimotoi Kimura, O. neiridaniensis Kimura and Tsujii sp. nov., Pterophyllum ex gr. propinquum Goeppert, P. sp. A, Ptilophyllum cfr. cutchense Morris, P. nipponicum Kimura and Tsujii sp. nov., P. shinadaniense Kimura and Tsujii sp. nov., P. sp. A, P. sp. B.以上のうち, Ctenozamites属は, 日本で最初の産出であり, Ptilophyllum属は, 日本の古期中生界からの最初の産出である。とくに後者の産出は, 日本の初期ジュラ紀植物群の古植物地理的位置を判断する上で重要な資料となる。
  • 山口 寿之
    1982 年 1982 巻 125 号 p. 277-295
    発行日: 1982/04/15
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    Balanus sendaicusは仙台付近に分布する中新世茂庭層から得られた殻の一部分の1つの楯板(scutum)に基づいて畑井, 増田, 野田(1976)により新種として記載された。その標本は仙台の斉藤報恩会博物館に保管されているはずだが, そこには見つけられなかった。その名前のもとに殻の他の部分, 背板(tergum)および周殻(shell wall), は記載されなかった。原産地標本(topotype)および畑井ら(1976)に図示された標本調査で, 畑井らがB. rostratusとして記載・図示した周殻はB. sendaicusに属す。それゆえ, 本論文では畑井らによって記載されなかった背板を含めてB. sendaicusを明確にする。B. sendaicusは畑井らの指摘のとうり既知の分類群から異なる。B. sendaicusは漸新世から更新世に地中海地域テーチス海に繁栄したde Alessandri (1906)の意味合いでの絶滅種B. concavusと近縁である。B. sendaicusは周殻の壁管(longitudinalまたはparietal tubes)に直交副隔壁(transverse septa)を持つことおよび楯板の特徴的な表面装飾によってB. concavusに代表される種群に属す。この種群に属す"4種"が東部太平洋に生息している(Newman, 1979)けれども, 大西洋・地中海地域からのB. concavus種群の消滅はPilsbry (1916)の指摘のようにミステリアスである。化石の日本のB. sendaicusは, 中新世に限られ, B. concavus種群の東アジアからの最初の化石記録となり, そしてテーチス海と東アジアの間のつながりの存在を指摘する。
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