日本古生物学會報告・紀事 新編
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1984 巻, 136 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 田中 啓策, 野田 雅之, 田中 均
    1984 年 1984 巻 136 号 p. 445-454_1
    発行日: 1984/12/30
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    大分県の秩父帯に分布する下部白亜系佩楯山層群の上部層から産したウニ化石について, Heterasterの3種(既知種・新種・同定不能種)及びPseudowashitasterの1種(既知種)を識別し, 古生物学的記載を行った。Heterasterの新種は和歌山県湯浅地域の有田層の上部層(下部バレミアン)からも産する。Heterasterの既知種は秩父帯の他地域の下部バレミアンから, Pseudowashitasterの1種も同じく下部・上部バレミアンから知られている。佩楯山層群の上部層はアンモナイトによって下部バレミアンに対比されており, ウニ化石の層位はこの対比論と矛盾しない。
  • 野田 雅之
    1984 年 1984 巻 136 号 p. 455-473
    発行日: 1984/12/30
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    本論ではInoceramus incertus Jimbo, 1984について従来の研究方法に加えて生物測定学的見地から, また, 化石層序学的見地から再検討した。まず, 奔別地域の各露頭からのサンプルに対して, カイ2乗検定によって各形質について正規分布の認定を行い, あらためて種の定義づけをした。次にいくつかの形質について, その変異を数量的に明らかにした。さいごに該種の化石層序学的意義について論及した。その概要は次のようである。1.従来, Inoceramus incertus JimboとされていたものはMytiloides incertus (Jimbo)と呼ぶべきである。これまでI. incertusといわれていた奔別産の標本の大部分はM. incertusでよく, 形, 表面装飾ともかなり大きい変異を示す。また上位の層準のサンプルほど変異が大きくなる。2.種の定義づけについては本文(p. 459)を見よ。3.産地Ik2014から産出したMytiloidesの標本の中には明らかにM. incertusの変異のうちとは認められないものがいくつかある。これはMytiloides sp. aff. M. mytiloidiformis (Troger)ともいうべきものである。4. "M. fiegei (Troger)"とか"M. aff. fiegei"とか呼ばれているものが世界のいろいろな地域のチューロニアン上部から報告されている。本研究の計測にもとづく形質の数量的な解析や, その他の検討からM. fiegei (Troger), 1967は恐らくM. incertusの新参シノニムと見なされる。したがって, M. incertusはチューロニアン上部を特徴づける広い地域にわたる有効な帯指示化石といえる。
  • 金子 篤
    1984 年 1984 巻 136 号 p. 474-491
    発行日: 1984/12/30
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    中部デボン系中里層N3部層から, Lichidae, Scutelluidae, Dechenellidae, Calymenidae, Phacopidae, Dalmanitidae及びOdontopleuridaeの各科に属する豊富な三葉虫動物群を発見した。この動物群は岩手県大船渡市日頃市町の大森沢及び樋口沢産の三葉虫から成る。両産地はこれまで互いにその産出層準を異にするものと考えられてきた。即ち, Thysanopeltella paucispinosa (Okubo, 1951)及びDechenella (Dechenella) minima (Okubo, 1951)は, それぞれ大森沢に在ってアイフェル世を, 樋口沢に在ってジベー世を指示するものと考えられてきた。しかし, 両者は樋口沢の産地に於て共存することが明らかになったのである。現在では時代の指示者として用いることのできるものはThysanopeltellaのみである。それ故本三葉虫動物群の生息年代はアイフェル世を下らないものと考えられる。これはCopper et al. (1982)の腕足類Atrypaの検討結果とも符合する。本三葉虫動物群の構成に関しては, 属レベルでは東北日本に固有の型と考えられるものが少なくなく, 飛騨山地の下部デボン系三葉虫動物群とはただ汎世界型のAcanthopyge (s. l.) 1属のみを共通にするに過ぎない。科及び亜科の構成からみても本三葉虫動物群は飛騨山地三葉虫動物群の後裔であるとは考えられない。本篇に於てはLichidae科に属する2新種を記載し, 内ひとつに対し新属を提唱しNipponargesと命名した。新属は頭鞍中葉上を明瞭な頭鞍溝(2p及び3p)が横切る点で本科としては特異である。模式種の新種Nipponarges mediosulcatus以外にこのような性質を示すものは未だ知られていない。他の1新種はAcanthopyge (Acanthopyge) duplicispinataである。筆者は, 樋口沢産の三葉虫を順次記載して行く予定である。
  • RITSUO NOMURA
    1984 年 1984 巻 136 号 p. 492-501
    発行日: 1984/12/30
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    南極のリュツォ・ホルム湾東岸の隆起汀線と現世海底堆積物(海抜11.5, 9, -31.5, -98m)からCassidulinidae科の4種の有孔虫, Globocassidulina biora (Crespin), Cassidulinoides porrectus (Heron-Allen and Earland), Cassidulinoides parvus (Earland), Ehrenbergina glabra Heron-Allen and Earlandについて個体発生および解剖学的知見のもとに記載した。G. biora, C. porrectus, C. parvusの3種は, 個体発生を通じて形態変化がそれぞれ確認される。たとえば, G. bioraの口孔は個体発生を通じてI型→L型→=型の3段階の形態変化を示すため, I型とL型の幼殻期の外部形態はG. subglobosa (Brady)とG. crassa rossensis Kennettにそれぞれ類似する。また, 成長が開施回を示すC. porrectusとC. parvusは幼殻期にG. subglobosaに似る。しかし, これらの種と類似種とは殻構造と口孔の内部構造の違いによって区別することが可能である。
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