日本古生物学會報告・紀事 新編
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1986 巻, 141 号
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  • 大塚 康雄
    1986 年 1986 巻 141 号 p. 275-288_1
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    北海道上部白亜系産の保存の良いアンモナイト23種と英国及び西ドイツの下部ジュラ系産アンモナイト4種を走査型電子顕微鏡を用いて観察し, その初期殻体内部構造の特徴を記載するとともに高次分類との関係を検討した。検討したすべての個体の初期螺環は最初のくびれ(primary constriction)を境にして, 稜柱層一層よりなるアンモニテラ(ammonitella)と二つの稜柱層が真珠層を挾む三層構造よりなるそれ以降の段階の2つに分けられる。不規則な稜柱層(亜稜柱層)よりなる胚殻(protoconch)からアンモニテラにかけての殻構造も, 盲管(caecum)付近を境に2つの段階に分けられる。初期殻の構成要素は検討したすべての個体で共通するが, その形態及び成長にともなう変化は, 中生代アンモナイトの亜目レベルで安定している。
  • 小池 裕子
    1986 年 1986 巻 141 号 p. 289-295
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    嫌気的呼吸説によると, 貝殻成長線の周期的形成は, 閉殻時の嫌気的呼吸下では貝殻表面の脱灰がおこり, あとに残された有機物が成長線として見えると説明されている。しかしながら貝殻の外層の薄片をブノールフェノールで染色すると, 成長線部分は染まらず, いわゆる成長線は富有機物層ではないという疑問をもった。Mercenaria mercenaria (Linne)を用い, 貝殻中の炭酸カルシウムを完全に除去し, 有機物層の微細構造をみると, プリズムをつつむ"interprismatic membrane"と, それと直交する"organic membrane of the growth increment"の二種類の有機物層が認められた。同一個体の標本を用いて完全脱灰標本の電顕像とエッチング像を比較すると, この二種類の有機物層は, いわゆる成長線部分とは対応せず, ブノールフェノール染色法の濃染層および有機物除去脱灰法の凹みによく対応した。一方成長線部分は, 完全脱灰標本ではinterprismatic membraneの薄く粗になった部分に対応し, organic membrane of the growth incrementはその成長線部分の直前に多く出現する傾向を示した。
  • 高橋 静夫, ドムニング D. P., 斎藤 常正
    1986 年 1986 巻 141 号 p. 296-321
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    1978年8月, 山形県西村山郡大江町を流れる最上川で, 異常渇水のため露出した河床に大型哺乳類の骨格が含まれているのを2名の小学生が発見した。河床の岩層は, 本郷層の橋上砂岩部層で, 初期後期中新世のDenticulopsis katayamae Zone (9-10.4 Ma)を指示する珪藻化石を産する。一節の長さ6~8センチ, 直径14~15センチの椎骨が140センチの長さに連なり, 長さ20~90センチの大きく湾曲した肋骨が26本程度数えられた。骨格前部には長さ51センチの頭骨が, 口蓋を上に頭頂を下にした状態で保存され, 長さ41センチの一対の肩甲骨も認められた。骨格を砂岩からとり出すにつれて, この標本は体前半部の骨格がほぼ完全に揃った, 極めて良く保存された大海牛の化石であることが明らかになった。指・掌骨を含む右前肢は, 絶滅した大海牛類の前肢の構造を示す, 現存する世界唯一の標本である。骨格の特徴により山形の化石は, カリフオルニアから記載されたDusisiren jordaniに近似するが, 歯の大きさがjordaniのものの3/4と小さく, しかも咬合面の模様が単純で, 歯が著るしい退化を示す点で大きく異なる。歯の退化は, 大海牛の進化系列のもっとも際立った形質変化で, 大型の歯を備えた先祖型のDusisiren属から, 歯が退化して失われたHydrodamalis属への進化系列が北太平洋地域で確立されている。歯の特徴および肩甲骨, 胸骨, 手根骨の性質から, 本骨格はD. jordaniとHydrodamalis cuestaeを結ぶ, これまで未記載の中間型の種であることが判明し, ここにDusisiren dewana(和名 : ヤマガタダイカイギュウ)という新種を提唱した。H. cuestaeは, ベーリング海で1768年に絶滅したステラー大海牛(H. gigas)の先祖なので, 本新種の設定により, 中期中新世のD. jordaniにさかのぼる四代の大海牛の進化系列が明らかになった。
  • 石賀 裕明, 宮本 隆実
    1986 年 1986 巻 141 号 p. 322-335
    発行日: 1986/04/30
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    熊本県八代郡氷川上流域に分布する上部ペルム系球磨層のLepidolina kumaensis化石帯より, Follicucllus bipartitus Caridroit and De WeverおよびF. charveti Caridroit and De Weverにより特徴づけられる放散虫群集を識別した。この群集は美濃-丹波帯の層状チャートから報告されている放散虫群集とは, 主な構成種が異なるが, チャート層中で設定されているF. scholasticus群集帯とNeoalbaillella optima群集帯の放散虫群集の両方に, またはいずれか一方に対比されると考えられる。
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