誕生時の体重が通常個体の40~60%であった人工哺育チンパンジー(個体名ビリー,オス)の行動観察を行った。観察期間は,動物病院から退院した生後28日目から哺育器が不必要となった日までの,約4ヶ月間であった。得られたデータから,運動技能,認知的行動,社会的行動の発達を示すと思われる行動パターンを取り出し,すでに報告されている人工哺育個体の成長記録(亀井,1963,1964,1969;熊崎,1983)および野生個体の観察データ(Plooij,1984)との比較を試みた。その結果,1.出生体重の違いにあまり影響されないと考えられる行動(発声,指しゃぶりなど),2.一定の体重を獲得した後に始めて現れる行動(視覚の発達に関する行動など),3.成育環境に影響を受けていると思われる行動(常動行動の出現など),があると推定された。
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