【はじめに】
腱板機能低下症例や肩甲胸郭機能低下症例等の理学療法
では腱板機能訓練と肩甲胸郭機能訓練を目的としたCuff-Y
exerciseが推奨されている。しかしながら、動画において
可視的な関節や筋肉の動きを確認している報告は非常に少
ない。本研究の目的は、負荷量の異なるCuff-Y exercise
において三角筋の断面積の変化をCine-MRIで測定し、最適
な訓練時の負荷量を検討することである。
【方法】
対象は、健常者13名13肩(男性7名:女性6名,年齢28±4.66
歳、全例右肩)とした。無負荷Free(以下F群)と2種類の負荷
(Thera-Band社製TUBING Yellow(張力:0.55kg、Green(張力
:2.73kg)を使用し(以下Y群、G群)それぞれ3群で肩関節外旋
自動運動を行わせた。その運動中に大結節下縁をとおる横断
面をスライス面に設定しCine-MRIを撮像した。運動中の肩関
節外旋の補助動筋である三角筋後部繊維の断面積の変化を観
察し、開始前と終了時の三角筋全体の断面積を測定した。
【結果】
断面積:全13名において、三角筋の断面積の差はF群と比較
してY群とG群では有意に大きかった。(p<0.05)
男女差:男性7名:女性6名において、男性と比較して女性
の方が有意に断面積の差が大きかった。(p<0.05)
【考察】
負荷のない外旋運動では、開始前と最大外旋時の断面積の
差が少なく、これは棘下筋と小円筋が選択的に働き、補助動
筋である三角筋後部繊維の関与が、少ないことを示唆してい
る。負荷が増加するにつれて断面積の差が大きく、三角筋後
部繊維の収縮が強くなっている可能性が考えられた。負荷を
上昇させると、Outer Muscleの収縮を促進し、筋バランスが
不安定となる。また女性の方が男性より断面積の差が大きく
訓練の効果がより低いと考えられた。研究前は、三角筋後部
繊維は、負荷量の上昇に伴って筋腹が膨隆し断面積が増加す
ると考えていた。しかし実際は、三角筋後部繊維が平坦化す
るように、収縮し断面積が減少したことがCine-MRIを用いて
動画で観察できた。その理由として臥位にて肩関節の外旋運
動を行ったことから、肩甲骨が固定され、肩甲骨の内転が起
らず、広背筋によって三角筋後部繊維が引っ張られるように
平坦化したと推測した。Cuff-Y exerciseの外旋運動では、負
荷なく外旋運動を行うことで、外旋の補助筋である、三角筋
後部繊維の関与が少なく棘下筋・小円筋中心の訓練が可能で
あることが、動画から確認された。運動を視覚的、定量的に
評価することができるCine-MRIは有用であった。
【結語】
運動を視覚的、定量的に評価できるCine-MRIは有用であった。
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