関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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ポスター
  • 吉田啓晃 , 三小田健洋 , 滝川麻美 , 中山恭秀
    p. 185-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】 立ち上がり動作時の床反力を測定することで下肢筋力を評価できるが、報告者によって指標は様々である。今回、経時的に床反力垂直成分を検出できる重心動揺計を用いて、下肢機能を左右で分けて計測することができるか検討した。

    【方法】 大腿骨近位部骨折患者9 名(平均75.7 歳)を対象に、重心動揺計を用いて椅子からの立ち上がり動作を計測した。使用機器はHUMAC BALANCE(CSMI 社)とし、左右の下肢を中心線から均等に離れた位置に接地させ、高さ45cm の椅子から左右の下肢に均等に荷重して立ち上がることを課題とした。諸家の報告を参考にして、第1 相の指標に1)RFD9/w[kgf/s/kg]( 辻ら,2011) 、2)Increase[N/s](Lindemann,2003) 、第2 相の指標に3)Peak vGRF[N/kg](Houck ら,2011)を算出した。また、バランス能力指標としてBBS とTUG を測定した。統計は、患側値と健側値の差の検定にt 検定を用い、バランス能力指標との関連を順位相関係数で検討した。本研究は、当大学倫理委員会の承認を受け、ヘルシンキ宣言に則り施行した。

    【結果】 1)RFD9/w、2)Increase、3)Peak ともに患側は健側に比べて低値を示した。健側比は平均すると1)0.78、

    2)0.64、3)0.83 であり、立位保持期の荷重量比(1.02)よりも小さかった。バランス能力指標との関連をみると、1)患側RFD9/w はBBS と0.80、TUG と0.64 であり、健側に比べて高い相関を示した。

    【考察】 立ち上がり時の床反力を左右で分けてみるには、Peak に達するまでのタイミングが左右で異なることや二峰性を示すことがあり、諸家の両脚での評価指標は適さない場合がある。Increase はPeak 値を元に算出するため、値への影響が大きい。一方で、RFD9/w は床反力が最大増加を記録した10ms の前後90ms における増加量より換算するため、Peak のズレは関与せず算出しやすい。また、力発揮速度の評価とされるRFD9/w は、バランス能力と高い相関を示すことから予測妥当性が高く、臨床的に有用と考える。

  • 土屋元明 , 遠藤辰弥
    p. 186-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】山嵜勉氏考案の形態構築アプローチとは、ヒトの形態を再構築することによって運動機能の修復を図る理学療法技術である。この中に胸骨上端/下端加圧があり、これは体幹前方/後方移行位の構築を行う方法になる。今回体幹前方移行位(以下前方群)と体幹後方移行位(以下後方群)の群において、胸骨上端または下端加圧後の歩行動作が筋機能に与える影響を、膝伸展筋力と並進バランステストの結果から考察したので報告する。

    【方法】対象は健常成人22 名(男性11 名、女性11 名、年齢28.5±4.3)で、前方群(12 名)と後方群(10 名)の2 郡に分けた。各群において胸骨上端または下端加圧後に自然歩行を実施してもらい、以下の方法で筋力を評価した。膝伸展筋力は右大腿四頭筋の最大筋力(Nm)をInterReha のcorpus を用いて測定し、並進バランステストは右肩峰下垂直圧による姿勢安定性(kgf)をアニマ社製のμtasF-1 を用いてそれぞれ2 回測定した。統計学処理は各群において胸骨上端、下端加圧後の膝伸展筋力と胸骨上端、下端加圧後の並進バランステストを対応のあるt 検定を用い、危険率5%未満を有意とした。

    【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき、対象者には本研究内容を十分に説明し同意を得た。

    【結果】前方群、後方群ともに膝伸展筋力に有意差はなく(n.s)、並進バランステストにおいて有意に差が認められた

    (p<0.01)。前方群においては胸骨上端加圧後の並進バランスが有意に安定し、後方群においては胸骨下端加圧後の並進バランスが有意に安定した。

    【考察】膝伸展運動は速筋線維を多く動員し、並進バランステストにおける姿勢安定性は遅筋線維を多く動員する動きである。今回並進バランステストで有意差がでたのは、歩行動作が速筋よりも遅筋線維を多く動員する動きであるからと考えた。

    【まとめ】ヒトの形態を評価し歩行動作を改善させることは、姿勢を安定させる筋が活動しやすくなる可能性が示唆された。

  • 大橋亮介 , 秋月千典 , 大橋ゆかり
    p. 187-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】部分荷重練習方法が、その後の部分荷重歩行に与える影響を明らかにすることを目的とした。

    【方法】健常若年成人(以下、協力者)14 名を静的部分荷重練習群(S 群)あるいは動的荷重練習群(D 群)に無作為に振り分けた。S 群では、立位で右下肢への荷重量が体重の2/3 となるように荷重した。D 群では、右下肢への荷重量が2/3 となるように左下肢でステップ動作を行った。両群ともに左上肢で松葉杖を使用した。課題遂行時の荷重量は床反力計(KISTLER 社製)を用いて測定し、垂直方向の床反力を下肢への荷重量とした。練習試行は、1 試行3 秒間とし、計25 試行とした。その際、毎試行後に荷重量とその推移をフィードバックとして与えた。練習試行終了10

    分後と24 時間後に、協力者に右下肢への荷重量を体重の2/3 にするよう教示を与えた上で、松葉杖歩行中の右下肢荷重量を測定した。本実験では、目標荷重量と課題遂行中の最大荷重量の誤差を解析に用いた。統計解析にはSPSS Statistics 21 を使用し、練習条件と測定時期を要因とする二元配置分散分析により検討を行った。尚、協力者には、事前に書面と口頭にて研究の目的、方法、研究上の不利益、プライバシー保護などについて説明し、研究協力の承諾を得た。

    【結果】練習試行時の課題遂行成績には、練習条件間の有意差は認められなかったものの、松葉杖歩行中の荷重量では、D 群がS 群よりも有意に誤差が小さかった(p<0.01)。

    【考察】D 群では、部分荷重歩行の文脈に近い形で荷重練習を行ったため、学習の転移が生じやすい状況であったと考えられる。その結果、荷重練習による学習の効果が部分荷重歩行にも及び、その後の部分荷重歩行中の荷重誤差が小さくなったと考えられる。

    【まとめ】荷重練習を行う際には、より歩行に近い文脈で荷重練習を行うことで、その後の部分荷重歩行における荷重誤差を減少させることができる可能性がある。

  • 中山恭秀 , 平山次彦 , 五十嵐祐介 , 中村智恵子
    p. 188-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】早期からの介入が増えている臨床現場では、廃用症候群を判断する指標であるBI の下位項目全てを実施することが難しい。新しいグレーディングスケール(GS)を採用した学会版MMT が報告されたことを受け、総合的運動として報告が多いブリッジ運動のMMT(ブリッジMMT)を定義し有用性を検証したので報告する。

    【方法】ブリッジ運動の体位は諸家の報告を参考に両手を体に沿わせた背臥位、被検者初期姿勢を膝立て位とした。グレードの判断は学会版MMT のGS2 に則り、膝関節下方1 足長前後に置き殿部が最も持ち上がる足位で体幹が水平まで拳上できることを課題運動とし、抵抗部位は骨盤と定義した。当院で依頼のあった廃用症候群患者で同意が得られた7名にてブリッジMMT の尺度の内的一貫性(Guttman scale)、検者間一致率(cohen’s Kappa)、体組成計(Inbody)より求めた筋量との基準関連妥当性(rho)を検証した。検者間一致率は学会版MMT の体幹伸展も確認した。加えて135 名の患者で測定したブリッジMMT とAbility for Basic Movement Scale(ABMS)の立ち上がり動作と予測的妥当性(rho)を検証した。本研究は当大学の倫理委員会の承認を得ている。

    【結果】全患者で内的一貫性が確認され、検者間一致率は学会版MMT の体幹伸展で.71、ブリッジMMT で.86 となった。筋量との基準関連妥当性は.64、立ち上がり動作との予測的妥当性は.66 であった(p<.05)。

    【考察】ブリッジ運動は起居に制限が生じている患者の全身調整運動として適切としながらも両脚で行う場合は健常成人で最大筋力比の16~20%相当であるため筋力強化には適さないとの意見もある。一方で歩行に必要な脊柱起立筋筋力の最大比が6%前後とされるなか、高齢者では36%程度の筋収縮が必要とも報告され、離床期の患者では低い負荷とも言い難い。一貫性、高い一致率、妥当性などが備わっているブリッジMMT は臨床的有用性が高い評価並びに介入方法であると考える。

  • 赤塚友里 , 小林穂奈美 , 座間拓弥 , 新岡大和 , 鈴木英二
    p. 189-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】近年,回復期病棟における活動量計を用いた研究では,自宅退院する患者を対象に退院前後の活動量を測定し,活動量に影響する因子として主観的な活動感や痛みが関連すると報告されている.しかし,入院時の活動量に限定した報告は少ない状態にある.そこで本研究では,入院後早期の活動量にどのような要因が関連しているかを明らかとすることを目的とした。

    【対象・方法】対象は平成27 年9 月から平成28 年1 月に当院回復期病棟に入院した患者40 名(男性19 名,女性

    21 名,平均年齢73.6±11.5 歳).評価項目は生活意欲をVitality Index(以下VI),栄養状態を簡易栄養状態評価表

    (以下MNA-sh),ADL 評価を運動FIM,認知FIM を用い,各評価は入院時に調査した.活動量の評価は活動量計(タニタ製カロリズムスマートAM-121)を使用し,入院後1 週間以内に計測を行い,正確にデータが抽出された1 日分を採用した.尚,装着時間は入浴時間を除く9 時~17 時とし,活動量の数値はKcal で測定した(以下入院時活動量).統計学的処理は入院時活動量と各評価との関連性をみるためにSpearman の順位相関係数を用い,有意水準は5%と

    した.

    【倫理的配慮】本研究を行うにあたり,対象者に対し本研究の趣旨を説明し同意を得た上で研究を実施した.

    【結果】統計解析の結果,入院時活動量と年齢において負の相関が,運動FIM,VI,MNA-sh において正の相関が認められた.相関係数は年齢(r=-0.33),運動FIM(r=0.63),VI(r=0.57),MNA-sh(r=0.38)であった. 【考察】回復期に入院してきた時点で高齢,または栄養状態不良である場合、生活意欲も低い傾向があり,活動量が低値となったと考えら

    れる.回復期病棟では入院患者の38%が低栄養との報告があり,回復期病棟では介入していく上での栄養面のフォローや,リハビリ以外での離床意欲を高める関わり方の必要性が示唆された.今回は入院時のみの横断的調査であったが,今後は活動量の継時的変化を追い退院時の因子も検討する必要がある.

  • 伊藤将 , 下川京実 , 田中翔 , 中澤祐貴 , 桜木浩司 , 藤本瑛司 , 相笠康貴 , 川内基裕
    p. 190-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】心肺運動負荷試験(CPX)による嫌気性代謝閾値(AT)は運動処方で有効であるが、高齢者での報告はない。また、高齢者は個体差が大きく運動処方が困難であることが多い。当院では75 歳以上の後期高齢者、85 歳以上の超高齢者にCPX を安全に施行できたので、その結果を報告する。なお、本研究は当院倫理委員会より承認を得ている。

    【対象と方法】2012 年5 月から2015 年12 月の間に当院に入院した75 歳以上の2199 症例のうち75-92 歳(平均

    81 歳)の56 例にのべ81 回のCPX を施行した。認知症がなく、活発でCPX の禁忌となる心疾患がなく、NYHAII 度以下で原則200m 歩行が可能、エルゴメータ運動が可能、なおかつAT レベルでの運動処方を必要とした症例を選択した。 81 回の結果をA 群:後期高齢者47 例69 回(75-84 歳、平均79.8 歳)とB 群:超高齢者10 例 12 回(85-

    92 歳、平均87.7 歳)に分けAT およびpeak を比較した。

    【結果】検査中、検査後に事故/有害事象の発生なしに56 例に対して81 回のCPX を安全に施行することができた。

    AT VO2 はA 群8.98±2.61、B 群7.58±1.39(p<0.03)、peak VO2 はA 群12.2±3.16、B 群9.69±2.73(p<0.03)であり、ともにB 群で有意に低かった。HR はAT、peak ともに両群間で有意差を認めなかった。AT でのWatt はA 群25.9±10.5、B 群19.5±14.5 と有意な差がなく、peak でのWatt はA 群48.7±14.1、B 群37.7±14.9(p<0.03)とB 群で有意に低かった。検査後、AT レベルの運動処方を実施し、安全に施行することが可能であった。

    【結論】適切に症例を選択することで、75 歳以上の後期高齢者ならびに85 歳以上の超高齢者でも安全にCPX を施行し運動処方を行えた。超高齢者においてはVO2 が低下傾向にあり、これは下肢筋力の低下によると考えられた。

    これから高齢化社会を迎えるにあたり、個体差の大きい高齢者において安全で効果的な運動処方・運動指導を設定する上で、CPX が安全かつ有用であることが示唆された。

  • 近藤亮介
    p. 191-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】プラスチック製短下肢装具(以下SHB)装着による筋活動や関節運動の経時的変化を客観的に示す先行研究は少ない。第50 回日本理学療法学術大会にて、健常成人の歩行はSHB の形状に依存しないと発表した。今回は、当院にてSHB を処方した脳卒中片麻痺患者の歩行を経時的に検証した。

    【症例】50 代男性。H27/7/24 ラクナ梗塞を発症し左片麻痺を呈した。データ計測開始の12/1 時点で、Br.stage Lt III-III-IV、左足関節背屈可動域制限、右>左で2.5cm の脚長差あり。T 字杖、SHB 装着にて歩行見守り、分廻しと反張膝が生じていた。症例には本研究の主旨を説明し、書面にて同意を得た。

    【方法】自由歩行3 試行を課題とし、計測は3 日間、初回計測日をday1、翌週をday2、翌々週をday3 とした。day1 ~day2 は病棟で車椅子を自操、day2~day3 はT 字杖、SHB を装着し病棟内歩行自立。SHB は処方の際、脚長差と下腿軸を是正するよう採型時にアライメントを調整した。計測は3 次元動作解析システムVICON370(OXFORD METRICS 社製)を用い、臨床歩行分析研究会推奨のDIFF15 マーカ貼付位置を参照した。麻痺側立脚期での重心移動速度と麻痺側股関節伸展モーメントの最大値の平均を代表値とし、計測日ごとに比較検討した。

    【結果】重心移動速度、麻痺側股関節伸展モーメント共に、day1~day3 で増大し、中でもday2~day3 で著明に増大した。また、歩容の改善がみられた。

    【考察・まとめ】SHB の底屈制動モーメントにより、膝関節を中心とした大腿の前方回転,麻痺側骨盤の前方移動が促されたと推察する。アライメントを是正した中で活動量を上げることは、経時的な機能向上になり得ると考えた。本研究はシングルケースデザインである為、今後症例数を増やした上で更なる検証が必要である。

  • 杉輝夫 , 鈴木未帆 , 野崎恵一
    p. 192-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに,目的】統合失調症の精神症状が運動により軽減するという報告が散見されるようになった。しかし、精神科領域における身体機能の特徴的な変化の評価方法や評価指標は特定されておらず、エビデンスの構築が進んでいない。そこで、精神科に入院となり理学療法を実施した統合失調症患者の歩行能力の変化を調査し、その特徴をまとめ測定項目の検討を行うこととした。

    【方法】対象:統合失調の患者5 名(60.0±17.6 歳, 男性1 名, 女性4 名)測定項目:歩行能力(10m 歩行テスト)。

    所要時間と歩数を計測し、歩行速度・歩幅・歩行率と各項目の変動係数(CV)を算出。測定方法:10m 歩行テストは通常歩行で3 回実施。理学療法開始時と約1 ヶ月後の2 回測定。比較方法:グラフを用いて1 ヶ月の変化を視覚的に確認した。 【説明と同意】参加者には、研究目的・計画等について説明し同意を得た。

    【結果】歩行速度(60.4→64.5m/分)と歩行率(121.2→128.8 歩/分)は増加し、歩幅(0.50→0.50m/歩)は変化を認めなかった。各個人の変化をみると、どの項目においても特徴は把握できなかった。CV は、歩行速度(6.9→4.0%)と歩幅(5.9→4.0%)で減少し、歩行率(1.9→4.8%)で増加した。各個人の変化をみると歩行率では全患者が増加したが、他の項目では特徴を認めなった。加えて歩行速度のCV の個人差は小さくなった。 【考察】歩行速度と歩行率、歩行速度のCV の個人差を測定することにより、統合失調症の患者の特徴的な変化を捉えられる可能性があると考えられた。統合失調症の患者ではばらつきの個人差が大きく、1 回の測定で疾患による特性や運動機能の特徴を把握することは困難であった。1ヶ月以上継続するとばらつきの個人差が縮小していくことから、理学療法の継続と定期的な運動機能の測定が重要と考えられた。

  • 井澤菜苗 , 阿部翔悟 , 板摺美歩 , 小泉周也 , 藤森大吾
    p. 193-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】急性期病院は入院早期から退院や転院調整が開始されるため,歩行獲得の可否は転機先を決定する要因の一つであり,早期から歩行の予後予測が求められている.これまでの報告は回復期のものが多く,急性期での報告は少ない.そこで今回の目的は,過去の報告を参考に評価項目を抽出し,急性期退院時の歩行獲得予測因子を明らかにすることとした.

    【方法】対象は,2015 年9 月から2016 年3 月に当院に入院した脳卒中患者で,入院前の歩行が自立し第5 病日時点で歩行に介助が必要だった37 例とした.内訳は,退院時に歩行を獲得した自立群21 例と,退院時歩行に介助を要した介助群16 例である.除外基準は,在院日数が14 日未満もしくは60 日以上,死亡,くも膜下出血例とした.評価項目は,初回介入時Functional Independence Measure(以下FIM),第5 病日目のJapan Coma Scale,National lnstitute of Health stroke scale(以下NIHSS),Brunnstrom recovery stage(以下BRS),Trunk Control Test(以下TCT),座位機能,Motricity Index(以下MI)とした.解析は,単変量解析において有意差を認めた項目に対して,多重ロジスティック回帰分析を行った.有意水準は5%未満とした.対象者もしくは家族に本研究についての目的説明し同意を得た. 【結果】単変量解析により,手指BRS,下肢BRS,座位機能,NIHSS,初回FIM,TCT,MI において有意差を認めた.多重共線性を考慮し,説明変数を下肢BRS,座位,NIHSS,初回FIM,TCT,MI として多重ロジスティック回帰分析を行ったところ下肢BRS において有意差を認めた.

    【考察】本研究の結果により,下肢BRS が急性期病院退院時の歩行獲得予測因子になりうることが示唆された.先行研究では,回復期での歩行獲得予測因子として,BRS,座位機能,体幹機能が重要であるとされている.しかし,本研究ではTCT,座位機能は多重ロジスティック回帰分析で有意差を認めなかった.重度運動麻痺患者では,急性期病院での歩行獲得は難しいことが考えられた.

  • 小武海将史 , 喜多智里 , 奥壽郎
    p. 194-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【諸言】平成27 年度1 年間の在宅復帰に関わる傾向について解析する。

    【方法】平成27 年4 月からの1 年間の死亡退所を除く退所者132 名(年齢82.6 歳,介護度3.0)を対象に,1在宅復帰群(復帰群)とその他退所群(その他群)に分け,入所前状況,住宅改修,介護1(有無),介護2(同居状況を調査した。2入所時在宅復帰希望で在宅復帰出来なかった群(希望・復帰出来ない群)と在宅復帰非希望で施設退所した群(施設退所群)に分け在宅復帰出来ない理由を調査した。3入所時在宅復帰希望で在宅復帰出来た群(希望・復帰群)と希望・復帰出来ない群に分け1の項目を調査した。解析は統計ソフトSPSS を用いた。倫理的配慮として施設倫理委員会承認後,対象者・家族に目的と内容を説明し同意を得た。

    【結果】結果1在宅復帰50 名・在宅以外97 名で在宅復帰の内,入所前自宅36 名・その他14 名,住宅改修済み25

    名・未実施25 名,介護者あり41 名・なし9 名,同居45 名・別居5 名,在宅以外の退所者の内入所前が自宅28 名・その他69 名,住宅改修済み5 名・未実施47 名,介護者あり28 名・なし69 名,同居63 名・別居25 名で両群に関連性を認めた。結果2希望・復帰出来ない群は介助者なし48.2%,住環境支障あり13.7%,認知機能低10.3%,身体機能低下37.9%,施設退所群では介護者なし48%,住環境支障あり16%,認知機能低下25.3%,身体機能低下21.3% であった。結果3希望・復帰群では入所前自宅70.4%,住宅改修済み56.8%,介護1 介護者あり79.5%,介護2 同居

    88.5%,希望・復帰出来ない群では入所前自宅33.3%,住宅改修済み13.3%,介護1 介護者あり40%,介護2 同居

    73.3%であった。

    【考察】本結果より,介護者が同居している自宅以外からの入所かつ住宅改修未実施者の中で入所時在宅復帰希者では,入所時の介護レベルで在宅復帰チーム(仮)が核となり,介護者の能力・住宅環境の問題等を解消することで,結果1の在宅復帰者に近づけることが課題となる。

  • 島津尚子 , 隆島研吾 , 小池友佳子
    p. 195-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】近年、末梢循環障害による下肢切断者が増加し、これにより高齢下肢切断者数が増加している。また、理学療法の対象となる疾患で「切断」は0.73%と少なく、理学療法士(以下PT)がリハに苦慮するとの声は聞かれるが、それに関する詳細な報告はない。そこで、神奈川県内の急性期病院に勤務するPT にアンケート調査を行い、切断者に対するリハの現状とPT の認識を把握することを目的とした。

    【方法】対象は神奈川県の急性期に勤務する経験年数3 年目以上のPT(27 施設135 名)とした。アンケートは郵送による無記名自記式質問紙法で、返信をもち同意を得たものとした。調査項目は属性、下肢切断のリハに対する不安の有無・自信とした。経験した切断者数と自信の関連をフィッシャーの直接確率検定を行い有意水準は5%とした。また、本研究は本大学の倫理審査委員会の承認を得て行った(保大第25-57)。

    【結果】アンケート回収率は42.2%、PT 経験年数は9.75 年、経験数は4 名以下が29%、5~9 名が39%、不安は

    73.2%に見られた。切断原因は循環障害59%、経験した切断高位は大腿切断30%、下腿切断34%であった。経験が少ない群では心理機能・断端部の評価、断端管理、義足装着・調整、義足を使用した動作練習など義足に関連した項目に強い不安がみられた。また、経験が多い群においても、義足に関連した項目では強い不安がみられた。経験人数と自信の関連は、断端・疼痛・歩行能力の評価に対する評価、断端管理・義足装着練習・異常歩行の把握・義足継手の選択に差があった。不安理由はリハの経験不足・義足に対する知識不足であった。

    【まとめ】切断者数自体が少ないため経験を重ね辛く、義足に関する項目は経験を重ねても不安は解消されにくかった。急性期の短期間の中では、断端管理や退院後の支援を含め病棟や地域のスタッフとの連携が重要と考えられた。

  • 深町光太郎 , 市川彰
    p. 196-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】当院では病院理念に国際保健医療への貢献を掲げ、力を入れている。2015 年5 月、当院とフィリピン大学との間に人事交流を主眼とした了解覚書を締結した。これに基づき、厚生労働省が公募した「医療技術等国際展開推進事業」を受託。2015 年12 月、当院スタッフ6 名で10 日間のフィリピ ン研修へ赴いた。今回、理学療法士として同事業に参加し、現地の地方都市で視察・活動してきた経験をまとめ、テクノエイド及び理学療法分野での新たな国際協力の提案の具体化に向けた報告をしたい。

    【フィリピンの現状】フィリピンは2013 年11 月、巨大台風により甚大な被害を受け、地方都市では未だに復興途上にある。高齢化率は約4%(日本約26%)と非常に若い国で、医療保健分野では感染症や母子保健が緊急の課題であり、死因の上位を占める生活習慣病や、老年症候群などの問題は視野にない状況であった。医学的なリハビリテーションは公的医療保険制度に組み込まれておらず、普及していなかった。また、医療従事者の海外流出が深刻な問題で、少ないスタッフで多くの患者の対応をしなくてはならない現状にあった。

    【活動に対する反応】テクノエイドの視点から「腰痛予防のための持ち上げない介助」をテーマに、フィリピンの医療従事者を対象にスライディングシートを使用した介助指導を行った。医療現場での腰痛が問題となっている中、スライディングシートなど福祉用具に対する関心度が高かった。

    【おわりに】今回の活動を通し、当院に期待することとして生活習慣病の対策が上がった。現在、当院で使用している生活習慣病の問診表を現地で導入できるよう検討していく方針である。理学療法分野では、潜在的に多い慢性疾患患者に対して医学的リハビリテーションの技術を紹介する需要があること、また実際の地域に入り、生活習慣病予防、介護予防、健康増進、医療介護労働環境改善などに対する啓発活動に期待するところが大きかった。

  • 廣瀬友太 , 海老澤玲 , 小芝健 , 高橋幸司 , 山本陽平 , 若梅一樹 , 戸口智子 , 関口裕也 , 岡持利亘
    p. 197-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】埼玉県士会職能局医療保険部では、今後の病院間連携のあり方について考えることを目的に急性期病院

    (以下、急性期)と回復期病院(以下、回復期)にアンケート調査を実施した。

    【方法】埼玉県内の急性期7 施設と回復期6 施設を対象に「急性期と回復期の情報共有に関するアンケート」を実施した。調査期間は平成27 年7 月24 日から8 月17 日で、急性期から12 件、回復期から9 件の回答を得た(施設ごとの回答率は46%)。

    【結果】「回復期への情報提供を行っている」と回答した急性期は100%であったが、「急性期への情報提供を行っている」と回答した回復期は25%であった。また、情報提供書について、すべての急性期が「負担に感じている」と回答した一方で、回復期からは「急性期から提供される情報の内容不足」を訴える意見が多数あり、急性期の負担感に対して回復期の満足度が低かった。情報共有の手段は情報提供書や連携パスなどの書面が95%を占め、急性期の

    66%、回復期の100%が「連携が不足している」と回答していた。急性期の83%、回復期の75%が「今後、連携方法を変化させる必要がある」と回答しており、具体例として「急性期と回復期間で同一症例の検討」などが挙げられた。

    【考察】現状では急性期から回復期への一方的な情報提供であること、回復期が必要としている情報提供が行われていないことが課題である。また、提供書作成者の負担軽減も重要であり、情報提供書の内容と連携手段を検討していく必要がある。今後、急性期と回復期が相互理解を深めるため、連携をとりやすい関係性を構築するための機会が一層必要と考える。

    【倫理的配慮、説明と同意】本調査は埼玉県士会理事会にて事業承認されたものである。調査実施時に目的や結果の公表を明記し、回答を得た時点で同意を得たものと判断した。また無記名で調査を実施し、個別機関名が特定されないように配慮を行った。

  • 小芝健 , 海老澤玲 , 廣瀬友太 , 戸口智子 , 関口裕也 , 若梅一樹 , 高橋幸司 , 山本陽平 , 岡持利亘
    p. 198-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】埼玉県士会職能局医療保険部では地域医療ネットワーク構築に向け、今後の回復期病院と在宅サービス間の情報共有のあり方を考えることを目的にケアマネジャー(以下ケアマネ)に対してアンケート調査を実施した。

    【方法】埼玉県内の施設に在籍しているケアマネ124 名に「回復期病院から自宅退院される方の情報共有」についてアンケートを実施した。調査期間は平成27 年7 月15 日から31 日で、50 件の回答を得た(回収率40.3%)。

    【結果】回答者におけるケアマネ取得の為に有する資格は介護職が64%、医療職は18% であった。退院する際の回復期病院からの情報提供については100%が「ある」と回答しているが、そのうちの21%が「情報が不足している」と感じていた。不足情報としては「在宅生活に対する細かい評価が少ない」ことが挙げられ、退院時の在宅支援で困ることについての自由回答で「過剰な住宅改修」「生活に合わない環境の提案」「家族の介護力を知りたい」など、具体的に情報の不足や不適切さが指摘された。退院前カンファレンスの開催時期については「1~2週間前までに行いたい」と希望している回答者が42%を占めていた。

    【考察】ケアマネは回復期病院に対してより在宅生活を想定した関わりと生活に反映できる情報を望んでいることが明らかとなった。回復期病院は入院時から在宅生活を見据えた環境設定や家族への介助伝達を行い、退院の1~2 週間前にカンファレンスを行うことで課題共有や在宅生活移行への準備が余裕をもって行えると考えられる。その際、ケアマネだけでなく患者や家族にも理解しやすい言葉で伝達していくことが大切である。

    【倫理的配慮、説明と同意】本調査は埼玉県士会理事会にて事業承認されたものである。調査実施時に目的や結果の公表を明記し、回答を得た時点で同意を得たものと判断した。個別機関名が特定されないように無記名で調査を実施した。

  • 井上優紀 , 来住野健二 , 山本裕子 , 中山恭秀
    p. 199-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】パーキンソン病(以下PD)患者の運動症状として無動、固縮、振戦、姿勢反射障害が知られており、臨床の場面ではそれらによって基本動作やADL を困難としていることがある。しかし、姿勢反射障害やバランスについて注目される一方で、無動、固縮、振戦の症状が動作にどのような影響を及ぼすのかは本邦では散見しうる限り報告されていない。今回は姿勢反射障害以外の運動症状が基本動作に与える影響や傾向を明らかにすることを目的とし、検討を行った。

    【方法】2013 年1 月から2016 年3 月に当科に依頼のあったPD 患者のうち、評価が可能であった62 名を対象とし、後方視的に検討を行った。初回介入時の運動症状の有無と寝返り、起き上がり、立ち上がり動作のAbility for Basic

    Movement Scale(以下ABMS)、Hohen and Yahr の重症度分類(以下H&Y stage)の評価結果から、従属変数を動作の自立度、説明変数を無動、固縮、振戦の有無とし、ロジスティック回帰分析を用いて解析を行った。本研究はヘルシンキ宣言に則っている。

    【結果】PD 患者62 例のH&Y stage の内訳は、stage1 は17 例、stage2 は11 例、stage3 が19 例、stage4 が10 例、stage5 は5 例であった。ロジスティック回帰分析の結果、寝返り、起き上がり動作で無動が説明変数として選択された

    (<I>p</I>=0.21、オッズ比0.074)。立ち上がり動作は無動、固縮、振戦の全てが選択されなかった。

    【考察】PD 患者の寝返り動作は体幹回旋を伴うことが少なく、体幹を一塊に回転させるために運動開始の動作が重要である。無動によって運動開始が遅延すること考えられ、介助を要すると考える。また、起き上がり動作については、いくつかの運動の切り替えを要求されるため、無動が生じることで動作が困難となると推察する。立ち上がり動作は座位から支持基底面の狭い立位へ姿勢を変換する動作であり、無動や固縮、振戦よりも姿勢反射障害の要素によって自立度が変化するのではないかと考えた。

  • 深田実里 , 樋口謙次 , 桂田功一 , 佐々木健人 , 齋藤夕紀 , 平野健大 , 保木本崇弘 , 山田健治 , 木下一雄 , 竹川徹 , ...
    p. 200-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに,目的】 造血幹細胞移植患者は原疾患や前処置,移植後合併症の影響により,骨格筋の異化亢進が生じやすく,筋量の減少が惹起されやすい. 今回,介入1 ヶ月後に筋量の向上を認めたが,その後は緩徐に低下した症例を経験した.その原因を治療内容,経過,血液データから考察したので報告する.

    【症例紹介】 症例は40 代女性で診断名は急性リンパ性白血病.X-3 年に発症し寛解したが,X-8 ヶ月に再発.X

    2 ヶ月に同種骨髄移植を施行.その後GVHD が出現しステロイド内服が開始され,X 日にPT 開始.開始時は身長

    157cm ,体重63kg ,SMI8.0kg/m<SUP>2</SUP> ,WBC3.1×10^3/μL ,Hb8.1g/dL ,PLT52×10^3/μL ,

    Alb3.1g/dL,CRP0.1mg/dL,移動能力は点滴棒と手すりを支持してトイレ歩行が可能だった. 【説明と同意】 症例には公表の有無,個人情報の取り扱いについて説明し同意を得た.

    【経過および結果】 理学療法は筋力増強運動,歩行練習,自主トレ指導を中心に実施した.介入1 ヶ月後,体重

    67kg,SMI9.3kg/m<SUP>2</SUP>に増加し,移動能力は病棟内杖歩行レベルとなった.1 ヶ月以降SMI は緩徐に低下を認め,4 ヶ月後は8.6kg/m<SUP>2</SUP>であった.CRP は3 ヶ月後には6.6mg/dL まで上昇した.

    【考察】 本症例は前処置による有害事象や,ステロイド投与によって筋量や活動量が低下していた.一般的に悪液質や合併症の影響で筋タンパクの同化と異化の均衡が崩れやすいのに対し,介入1 ヶ月後にSMI の向上を認めた.介入によって,随意運動の頻度が増加し運動単位の増大が図れたことや,自主的に歩行練習を行うことで活動量が増加したと考えられる.1 ヶ月以降はSMI が緩徐に低下したが,CRP 高値に伴い異化の割合が増加し,筋の分解が亢進したと考えられる.今後はCRP に留意し負荷量を考慮した介入が必要である.

  • 宗村明子 , 藤崎公達 , 成田雄一 , 鈴木拓也 , 馬場玲子 , 毛利悦子 , 西井優瑠
    p. 201-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】症例は夜勤業務に就労しており,治療継続に問題が山積していた.症例に対し多職種が関わることで,身体機能や治療へのモチベーションの向上と治療効果の一助となったので報告する.

    【症例・経過】50 歳代男性.健康診断で高血糖を指摘され当院受診,血糖コントロール不良にて糖尿病と診断され,初めての糖尿病教育入院となる.症例は夜勤業務に就労しており,昼夜逆転の生活を約20 年続けていた.入院初期より運動や治療に対するモチベーションが低く受動的であった.理学療法介入,多職種との情報共有,各職種による個別指導を行った.なお,症例に対し主旨を文章にて説明し記名による同意を得た.

    【方法】運動指導,生活スタイルの聴取により退院後の運動プランの作成を行った.また,看護師によるインスリン自己注射指導,栄養士による栄養指導,薬剤師による薬剤指導,作業療法士による精神・心理面への介入,カンファレンスで多職種と情報共有を行った.そして,退院後は外来受診時に経過確認を行った.

    【結果】入院時体重:63kg から60kg へ減量,入院時HbA1c:9%から6.6%へ改善し,3kg の減量,血糖コントロールの改善の一助となった.また,作業療法士の介入により,精神・心理面の変化があり,治療へのモチベーションの向上がみられ,運動介入においても自らプランを立て,退院後継続することが出来た.

    【考察】理学療法介入に加えて,多職種との情報共有,各職種による個別指導を行った.結果,治療へのモチベーションの向上が確認され,自ら夜勤帯から昼間の仕事へ変更するなど,治療に前向きに取り組む姿勢が見られた.多職種協同で関わることで,専門的視点から,患者の異なる生活スタイルに合わせたアプローチが可能となる.そして,身体機能の変化や血糖コントロールの改善,治療へのモチベーションの向上により,患者自身も生活スタイルの変更を行い,治療へ前向きに取り組むことが出来,多職種協同で関わる重要性を再確認する一例となった.

  • 川口沙織 , 加藤宗規
    p. 202-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】リハビリ拒否の末期胃癌患者に対する介入効果を検討した.

    【方法】胃癌と診断された60 歳代男性.5 年前から中等度の左片麻痺を有するが,日常生活(ADL)はほぼ自立して

    いた.胃癌の宣告を受けた後,ネガティブな発言(N 発言)5 回/日以上,ポジティブな発言(P 発言)0 回/日,病棟Functional Independence Measure(FIM)69 点(移乗:ベッド4,トイレ3,入浴1)であった.リハビリでの起立10 回で強い疲労を訴え,その後リハビリ拒否が目立ち,リハビリ参加率は30%(26 日中8 日)であった.28 病日から酒井医療株式会社製リカンベントサイクル(リカンベント)を使用し,運動負荷量を段階的に増加した.負荷量は9 段階として,

    1 から8 は機器の負荷調整を1 から順に8 まで引き上げ(運動時間10 分間),9 は負荷8 を15 分間とした.段階の引き上げ基準は2 日連続運動達成と自覚的運動強度Borg scale5 以下であった.運動後は負荷と時間のフィードバックを行い,設定の運動達成又は前日より改善に対して,セラピストや病棟スタッフ,家族,医師から笑顔での称賛を

    した.そして,介入効果を検討した.本研究はヘルシンキ宣言に則り行われ,対象と家族には目的と方法を説明し,承諾を得て行った.また,当院生命倫理審査委員会の承認を得た.

    【結果】介入変更後,リハビリ参加率は100%(26 日中26 日),運動負荷段階は9 日で段階9 に達し,Borg scale は全て3~4 であった.P 発言増加,N 発言減少し,段階9 ではP 発言が5/日以上,N 発言は0/日であった.病棟FIM は退院で110 点(移乗:ベッド7,トイレ6,入浴4)であった.介入変更前後の血液データや麻痺の状態,筋力には変化は見られなかった.

    【考察】介入により心理的な改善,運動に対する達成感と自己効力感に繋がり,ADL にも影響したと考えられた.

  • 山田壮一郎 , 豊田和典 , 板垣昭宏 , 矢上健二 , 関口成城
    p. 203-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】 中谷らは脳卒中片麻痺患者に股関節屈曲補助バンドを用いたことで、歩行速度の向上を認めたと報告している。今回、歩行速度が低下した症例に対して股関節屈曲補助バンドを参考に作製した簡易バンドを使用し、歩行能力の向上を認めたため考察を加えて報告する。 【症例紹介】 70 歳代女性。4~5 年前より下垂足を呈し当院にて腰部脊柱管狭窄症と診断され、X 日にL3/4、L4/5 の拡大開窓術を施行した。X+3 日に硬性コルセットと両下肢に短下肢装具を処方され、X+5 日から理学療法を開始した。なお、本症例には発表について説明を行い、同意を得ている。 【理学療法評価】 徒手筋力検査(右/左)は股関節屈曲2/2、膝関節伸展4/3、足関節背屈

    1/1、足関節底屈3/4 で関節可動域制限はなかった。歩行は両側下垂足で両手T 字杖を使用していた。 【理学療法および経過】 セラバンドと結束バンドによる簡易バンドを作製し、上前腸骨棘から大腿部遠位2/3 の前面を結ぶように両股関節に装着した。初期(X+20 日)の10m 最速歩行速度(両手T 字杖)は簡易バンド装着時が35.9 m/分、非装着時が33.1m/分であった。終了時(X+128 日)の評価では身体機能に著変はなく、10m 最速歩行速度(片手T 字杖)は46.5m/分となった。 【考察】 Wittington らは遊脚初期の関節パワーのうち約58%は筋の伸長による受動的弾性が担っていると報告している。我々は本症例と同条件で健常成人の両股関節に簡易バンドを装着して、腸腰筋の表面筋電図を測定した。その結果、装着時は非装着時よりも遊脚期の腸腰筋の筋活動が減少していた。本症例も簡易バンドの装着により遊脚期での腸腰筋の受動的弾性を効率的に使用できるようになったと推察する。さらに、この効率的な歩行を反復学習したことで、終了時には簡易バンドを外しても歩行速度が向上し、効率的な歩行となったと考える。

  • 中村智恵子 , 五十嵐祐介 , 平山次彦 , 中山恭秀
    p. 204-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】肺炎は高齢者に好発の疾患であり高齢化、臥床期間が長期化することで廃用症候群を発症するリスクは高い。今回、肺炎患者の理学療法開始時の基本動作能力に着目し、Ability for Basic Movement Scale(以下、ABMS) において全介助群と自立群とで比較し若干の知見を得たので報告する。

    【方法】平成24 年7 月から平成27 年3 月までに肺炎にて理学療法依頼のあった60 例(男性34 例、女性26 例、平均年齢81.0±12.1 歳)より、初期評価の寝返り、起き上がり、座位保持、立ち上がり、立位保持の全項目が全介助であった全介助群8 例(男性4 例、女性4 例、平均年齢82.0±6.1 歳)と、全項目が自立であった自立群8 例(男性5 例、女性3 例、平均年齢81.0±7.5 歳)を対象とした。これら2 群において年齢、入院から理学療法開始までの日数、既往歴、炎症値(CRP)、栄養(Alb)、白血球数を対応の無いt 検定にて、入院前生活自立度、呼吸器使用の有無、肺炎重症度(A-DROP)をχ<SUP>2</SUP>検定にて比較した。尚、本研究は当大学倫理審査委員会の認承を受けて行った。

    【結果】A-DROP による肺炎重症度は、ABMS 全介助群では超重症2 例、重症5 例、中等度1 例、ABMS 自立群では、超重症0 例、重症2 例、中等度6 例であり、全介助群では超重症~重症例が自立群と比較して有意に多かった

    (<I>p</I><0.05)。また、入院前の日常生活自立度は、ABMS 自立群においては全例が外出自立のJ1、J2 を占め、ABMS 全介助群においては外出介助のA1から下位のC2 を占める結果となった。

    【考察】肺炎患者の基本動作能力は年齢や臥床期間、既往歴による影響は少ないことが示された。また、肺炎の重症度や入院前の日常生活自立度、特に外出自立の可否が肺炎患者の基本動作能力に寄与することが示唆された。

  • 大沼博
    p. 205-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに・目的】当施設に入所している重症心身障害児1 例に対して、呼吸障害の改善、排痰の目的で腹臥位装置を作製し、日常生活に導入したところ、当初目的としていた効果の他に側彎が改善されるという経過を示した。その要因について考察を加え報告する。

    【説明と同意】発表に際し、当施設の倫理審査委員会による承認と両親による同意を得た上で最大限倫理的配慮を行った。

    【症例紹介】13 歳、男児、身長100cm、体重16.6kg、BMI16.6、疾患名:先天性小頭症、精神発達遅滞、症候性てんかん、喘息性気管支炎、横地分類:A1、大島分類:1、側彎は頸椎右凸、胸腰椎左凸、股関節は右へ偏位したwindswept deformity が進行してきている。1 日の多くの時間を背臥位及び左下側臥位で過ごし、4 時間程度を座位保持機能付き車椅子に乗車している。

    【方法】腹臥位装置の構造的特徴は、(1)左右の肩峰と上前腸骨棘を指標に不快反応が出現しない範囲で体幹を対称姿勢に近づけ(2)その上で下肢は自然肢位で支持面を広くとる(3)頭部はリラックスでき、上気道の通過を優先するというもので、各種ベルトとパッドで身体状況の変化に対応できるようにした。2015 年12 月より、週5 日間、午前中約30 分間、学校と病棟生活で使用した。Cobb 角(リハビリテーション科専門医によるレントゲン画像読影)を導入前、導入後1 ヶ月後、3 ヶ月後で測定した。

    【結果と考察】導入前と比較し1 ヶ月後、さらに3 ヶ月後のCobb 角の改善がみられた。重症心身障害児の側彎は、一見固定的にみえても可逆的な範囲を有しており、腹臥位装置による姿勢管理は側彎の予防的一対策になりうることが示唆された。

  • 箕輪俊也 , 木村貞治 , 中川昌子
    p. 206-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】Mirror Therapy(以下,MT)は,鏡による視覚的運動錯覚を利用した治療法であり,幻肢痛の軽減や脳卒中後の運動機能改善を目的とした介入法として確立されてきた.近年MT の神経筋再教育の効果から整形外科疾患における適応についても報告がなされるようになり,臨床におけるMT の有用性は広がりをみせている.そこで今回,膝蓋靭帯断裂術後に筋出力低下を呈した症例に対しMT を適用したところ,著効が得られた1 例を経験したので報告

    する.

    【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき,患者への説明と同意を得て実施した.

    【症例提示】40 歳代,女性.右膝蓋靭帯断裂.受傷後10 日目に靭帯再建術を施行し術後2 日目から理学療法開始,術後54 日目に退院した.初期評価時の右膝関節機能は屈曲可動域40°,伸展筋力はMMT にて1,ExtensionLag(以下,Lag)は40°と著明な機能障害を呈していた. 【経過】術前はギブス固定にて経過.術後より右下肢免荷,膝屈曲90°以下で理学療法を開始,術後8 日には膝装具が処方され制限なく訓練が可能となった.装具処方翌日からフリーハンド歩行練習を開始したが,Lag は60°と増大し,「力の入れ方が分からない」との訴えが聞かれた.そこで従来の理学療法に,座位での左膝関節の自動伸展に右膝関節の自動伸展を同期させるMT を追加したところ,即時にLag は45°に改善し,継続的な介入により退院時には5°までの改善が得られた.

    【考察】本症例は外科的な安静度に応じてADL の再獲得は進んだものの,随意的な筋出力機能の特異的な低下を来たした症例であった.関節固定や不動による影響として,中枢性運動指令の減少や運動イメージ想起機能の低下から筋出力低下を来たすことが知られている.このことから,今回,MT の導入によってLag の改善が得られた理由として,MT による運動錯覚の付与が大脳皮質関連領域の賦活化や運動イメージの再構成を経て筋出力機能の改善に至った可能性があるものと考えた.

  • 佐藤俊城
    p. 207-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】股関節屈曲制限のある変形性股関節症(以下Hip OA)に対し、人工股関節全置換術(以下THA)後も股関節屈曲に著しい関節可動域(以下ROM)制限が残存した症例を経験した。寛骨大腿関節に着眼した理学療法を展開した結果、良好な成績を得たので報告する。

    【症例紹介】左Hip OA を有した60 歳代女性、左THA(後側方アプローチ)を実施。半年前右Hip OA に対してTHA を実施。幼少期に臼蓋形成不全と診断後、股関節に痛みが出現し末期Hip OA と診断されTHA を施行するまで10

    年間程度経過。

    【説明と同意】ご本人へ報告の旨を説明し、同意を得た。

    【経過および理学療法】左THA 術前の股関節屈曲角度は自動右30 度、左10°、他動右40 度、左20 度、靴下着脱動作は要介助。術後股関節屈曲角度は左自動10 度、他動20 度。寛骨大腿関節上の運動を意識したROM 練習、大腰筋の筋力強化を実施、術後4 週目の股関節屈曲角度は自動右70 度、左65 度、他動右80 度、左70 度となり、靴下着脱動作を獲得した。

    【考察】末期Hip OA と診断後THA を施行するまでに長期間を要したことから、骨盤後傾による股関節屈曲が習慣化しており、術後も股関節屈曲における寛骨大腿関節による屈曲が乏しく著明な股関節屈曲制限が残存したと考えられた。そこで介入当初より寛骨大腿関節上の運動の獲得を目的に、運動軸の再学習を目的としたROM 練習や大腰筋の筋力強化を行ったことで骨盤と大腿骨の選択的な運動を可能とし、股関節屈曲可動域は自動・他動運動ともに拡大、靴下着脱動作を獲得した。

    【まとめ】股関節屈曲角度測定方法は骨盤傾斜を考慮しておらず、理学療法介入においても寛骨大腿関節上の運動は見逃されがちではないかと考えられる。THA 患者の股関節屈曲における寛骨大腿関節上の運動は股関節屈曲制限の改善に対して良好な成績が得られたので、今後は理学療法研究として、臨床においての寛骨大腿関節屈曲の明確かつ簡便な測定方法の基礎研究などへと繋げていきたい。

  • 山下侑哉 , 新田智裕 , 宮本謙司
    p. 208-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】今回転倒により,左上腕骨近位端骨折(NEER 分類3-parts)を呈し観血的プレート固定術を施行した症例を担当した.本症例は術後,拘縮肩を呈し可動域の改善に難渋した.4 か月間介入し,代償は残存しているが可動域の改善が得られたので報告する.なお,対象者にはヘルシンキ宣言に則り主旨を説明し同意を得た.

    【症例紹介】60 歳代女性,夫と二人暮らしであり家事全般をおこなっていた.2015 年8 月に自宅で転倒受傷し,5 日後に観血的プレート固定術を施行した.術後2 ヶ月後より本症例の担当となった.

    【理学所見】初回介入時の可動域は,左肩関節屈曲95°scapular plane 上外転 45°伸展20°外旋5°内旋10° 内転0°であり,左肩甲帯周囲筋・腱板筋群のMMT2,その他の肩関節周囲筋はMMT4,左肩関節屈曲時にshrug sign を認めた.また左上腕骨頭の上方偏移を始め,左肩甲帯・鎖骨の不良肢位及び可動域制限を認めた.

    【介入・結果】4 ヶ月間担当し,介入開始から2 ヶ月は肩甲上腕関節,肩甲胸郭関節に対する可動域訓練を中心に介入したが左肩関節可動域の大きな改善は認めなかった.そこで問題点を再抽出し,棘上筋・肩甲下筋下部線維・広背筋・大円筋の柔軟性改善,上腕骨頭の上方偏移の改善,肩甲帯周囲筋・腱板筋群、三角筋の筋力低下改善,関節包内運動の改善,隣接関節機能の改善を目的にアプローチを実施.またホームエクササイズを工夫し,定着を図った事により持続的な効果が得られるようになった.その結果,左肩関節屈曲150°scapular plane 上外転85°外旋35°内旋25°まで改善し,左上肢も使用して家事がおこなえるようになった.

    【考察】肩甲上腕関節に対して適切な評価・介入を実施し,隣接関節の可動域・機能を改善する事で良好な結果が得られた.

  • 武井宏彰
    p. 209-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】大腿骨骨幹部骨折は股関節周囲の筋走行により特徴的な骨転位を取る。そのため筋走行に注意し支持性の高い下肢機能の獲得が必要である。今回上記骨折を受傷した症例に対し座位,立位にて筋走行に配慮し運動療法を提供した事を紹介する。症例にはヘルシンキ宣言に基づき同意を得た。

    【症例紹介】10 代男性。診断名大腿骨骨幹部骨折。手術名観血的整復固定術。既往歴なし。現病歴は平成28 年2 月6 日上記受傷。同日緊急手術施行。平成28 年3 月1 日当院回復期病棟入院。入院時右下肢免荷状態。平成

    28 年3 月25 日に1/3 荷重開始。平成28 年4 月6 日に1/2 荷重開始。平成28 年4 月22 日に2/3 荷重開始。平成28 年5 月6 日全荷重開始。

    【初期評価】(関節可動域制限)右股関節屈曲90°,右膝関節屈曲100°(筋力テスト)中殿筋2 内転筋2 大殿筋2 腸腰筋3(脚長差)大腿長右46cm 左44cm,下肢長右78cm 左76cm(座位姿勢)右骨盤後傾,右股関節軽度外旋、外転位(立位姿勢:1/2 荷重時)右骨盤後退,右股関節軽度外旋,外転位。

    【最終評価】(関節可動域制限)右股関節屈曲110°,右膝関節屈曲130°(筋力テスト)中殿筋4 内転筋4 大殿筋4 腸腰筋4(脚長差)大腿長右45cm 左44cm 下肢長右77cm 左76cm(座位姿勢)骨盤前後傾中間位,右股関節内外線中間位(立位姿勢)骨盤の左右対称性が現れ,右股関節内外旋中間位に改善。

    【考察】骨折により筋走行に影響が出る筋は大腰筋,大内転筋,小殿筋,中殿筋が考えられる。よって大腰筋の伸張を徒手にて誘導し,多裂筋との協調性を確認し,骨盤中間位保持,上半身質量位置の調節を行った。また,関節は内転筋を短縮方向、小,中殿筋を伸張方向に徒手誘導し下腿,足部との協調性を確認しながら左下肢の運動を行った。

    免荷時期は座位,部分荷重時期は立位で実施した。今回のように荷重制限の期間が長い症例に対しては,骨折による骨転位をレントゲン上で確認し,筋走行を意識し全身のバランスを考えた運動療法を提供することが大事であると考える。

  • 齋藤涼平 , 道明大貴 , 可知芳則
    p. 210-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】膝関節での離断性骨軟骨炎(以下OCD)はAichroth の分類が用いられ、大腿骨内側顆85%大腿骨外側顆15%、外側顆前方の膝蓋大腿関節面2%とされている。膝関節OCD はスポーツ動作等の繰り返される力学的な負荷がかかる事が原因と言われている。今回、大腿骨外側顆前方のOCD の症例に対して、動作分析を通して患部への力学的負荷を推察し理学療法を実施したので報告する。

    【症例紹介】症例は14 歳男性。スポーツはサッカー(蹴り足:右)を行っている。主訴は踏み込むときに左膝が痛い。

    当院受診後MRI 検査で左大腿骨外側顆のOCD をみとめ保存療法での理学療法開始(スポーツ活動の制限)。ヘルシンキ宣言に基づき症例には同意を得た。

    【初期理学的所見】圧痛所見は膝関節屈曲位で膝蓋骨を膝蓋大腿関節の外側面への圧迫で(+)。関節可動域は股関節屈曲外旋位での内転が左右差あり。徒手筋力テストでは、左股関節外転が3。立位姿勢はスウェイバック。疼痛は左脚での片脚スクワットでNRS 7/10 関節角度は60°。片脚スクワットの際に、Knee-in を呈していた。両側スクワットやランジ動作では疼痛(-)。

    【理学療法および経過】理学療法では股関節周囲筋の柔軟性と筋力の改善と同時に、体幹のStability 能力の向上と下肢と体幹での協調したMobility on Stability 能力の向上を行った。片脚スクワットでの疼痛は消失し関節角度も左右差なしとなり、徐々にスポーツにも参加。

    【考察】両側スクワットやランジ動作では膝蓋大腿関節は内側面と外側面での接触となるが、片足スクワットの際にKnee-in を呈していることから大腿骨は内旋位となり膝蓋大腿関節での外側面での接触が強くなり、大腿骨外側顆前方のOCD に力学的負荷が増加することが疼痛を誘発していると考えた。

    【まとめ】膝関節OCD の保存療法において、力学的負荷を推察しそれを軽減するための運動療法を実施することは重要と考える。

  • 外川慎吾 , 伊藤勝敏
    p. 211-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】 腰椎の椎間関節は股関節へ関連痛を生じることが知られている。今回、歩行時に鼡径部痛を呈する症例に対して、腰椎への治療を施行した。その結果、疼痛軽減と長距離歩行が可能となったため、治療経過について報告する。

    【症例紹介】女性(40 代)、左鼡径部痛を主訴として来院した。画像診断ではMRI により左股関節の関節唇損傷が指摘されていた。痛みは犬の散歩時に左鼡径部(以下P1)と左膝関節(以下P2)に出現していた(約500mで歩行困難)。日常生活での症状は歩行と電車での長時間立位時のP1 であり、週1 回のテニスは問題なく行えていた。症状出現の1 か月前に右下腿後面の肉離れの既往があるが、受診時には症状が消失していた。

    【理学療法経過】評価時歩行では右立脚期にデュシャンヌ歩行を呈していたが症状の出現はなかった。足踏み動作では30 秒経過時にP1 が出現した。左SLR10°位での左股関節外転でP1 が再現された。左股関節の前後方向の滑り運動を加えるとP1 消失を認めた。評価結果より左股関節の前後方向のmobilization を実施した。実施後、評価時に確認された症状は消失した。しかし2 回の治療で歩行距離の変化はみられなかったため、再評価を実施した。

    再評価ではL2-4 の後前方向の可動制限が確認された。またL3 の後前方向の滑り運動時にP1 とP2 が再現された。再評価よりL3 の機能障害が症状に関与していると考え、治療は・L3 の後前方向のmobilization・左股関節の前後方向のmobilization とした。治療後、確認された症状はすべて消失した。4 回目来院時に歩行距離増大と疼痛の軽減を認め、理学療法を終了した。

    【まとめ】本症例は腰椎と股関節への治療により症状の改善が認められた。下肢の外傷は脊椎の機能に影響を与えるといわれており、本症例も対側下腿の既往が発症に影響していた可能性も考えられる。患部のみの治療では効果が一時的であることが多く、症例全体の評価治療が重要であると考える。

  • 今村純子 , 前野理恵 , 高橋素彦
    p. 212-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】小児の末梢性顔面神経麻痺は予後良好とされているが、具体的な回復過程についての報告は少ない。

    今回、小児への理学療法(以下、PT)において、出現した病的共同運動がほぼ改善した症例を経験したので報告する。なお、文書にて症例の保護者および症例に同意を得た。

    【症例紹介】学童期。診断名は左末梢性顔面神経麻痺。Electroneurography(以下、ENoG)6.1%。2014 年X 月Y 日顔面の違和感が出現し当院入院。柳原法16 点。6 日後PT 開始、退院。PT は外来で継続。

    【理学療法経過】開始時は柳原法4 点。母親にマッサージ・ストレッチを指導。症例にも運動の練習や粗大で強力な運動の禁止について説明。発症3 週間後、柳原法10 点。 1 ヶ月後、目をこすると左下眼瞼挙上。翌週、閉眼時に左下眼瞼挙上。2 ヶ月後、閉眼時の左下眼瞼挙上が軽減。2ヶ月半後、欠伸で左眼裂狭小し、口すぼめで左口角外側に筋収縮あり。母親・症例に開嶮運動を指導。翌週、口すぼめでの筋収縮消失。3 ヶ月後、柳原法38 点。強閉眼や片眼つむりで左口角外転。3 ヶ月半後、閉眼での左下眼瞼挙上は消失。4 ヶ月後、瞬きで左口角外側に筋収縮あり。4 ヶ月半後、瞬きでの左口角外側の筋収縮軽減。7ヶ月後、柳原法40 点。欠伸での眼裂狭小は意識下で抑制可。8 ヶ月後、大欠伸で眼裂狭小。1 年後、PT 終了。顔面拘縮なし。瞬きでの左口角外側の筋収縮はごく稀。欠伸での眼裂狭小は消失。経過中、病的共同運動の生じる部位を重点的にマッサージするよう母親に指導。

    【考察】成人では、ENoG10%未満の予後は病的共同運動が優位になり、機能不全・機能異常が残るとされているが、本症例では出現した病的共同運動がほぼ改善した。小児は予後良好とされているが、出現した病的共同運動が改善したという報告はない。早めに病的共同運動の兆候を把握し、出現した部位のマッサージを強化することが、病的共同運動の改善に寄与した可能性があるのではないかと考える。

  • 今井哲也 , 芝崎伸彦 , 沼山貴也
    p. 213-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)では筋力低下に伴い、肺・胸郭が十分な深吸気を行っていないとコンプライアンスが低下する。肺を他動的に最大伸張させるMaximum Insufflation Capacity(以下MIC)を評価手段とし、肺コンプライアンス維持訓練を長期間行った報告はない。今回、非侵襲的陽圧換気(以下NPPV)管理のALS 一症例におけるVital Capacity(以下 VC)とMIC の経時変化を検討する。

    【方法】対象は、本研究の説明と同意を得られたNPPV 管理のALS 患者一症例とした。呼吸リハビリテーション介入内容として、週1 回の胸郭モビライゼーションとMIC、自主トレーニングで舌咽頭呼吸(以下GBP)とカフアシストを指導し行ってもらう。測定項目はVC とMIC で、両測定には最大吸気後にライトレスピロメーターを使用し、呼気を行った。MIC は蘇生バックを使用し、最大吸気位まで他動的に加圧した。尚、本研究における最大吸気位は肺損傷を考慮し、「きつく感じない程度」までとした。また、MIC の再現性を上げるために、1 ヵ月の導入期間を設けた。測定はそれぞれ3 回行い、最大値を代表値とした。VC とMIC の測定を3 ヵ月に1 度行い、経時的な変化を記録・比較した。

    【結果】導入期のMIC は1350ml でVC は1550ml。開始時のMIC は1750ml でVC は1520ml。3 ヵ月後はMIC

    1800ml とVC 1380ml、6 か月後はMIC 1850ml とVC 1380ml、9 ヵ月後はMIC 2150ml とVC 1200ml、12 ヵ月後はMIC 2000ml とVC 1220ml。

    【考察】疾患の進行により呼吸筋力およびVC は低下するも、GBP やカフアシスト等により肺胸郭コンプライアンスおよびMIC が維持できたと考えられる。MIC は導入期から開始時で大きく上昇し、患者の呼吸と施行者の送気のタイミングが是正されたと考えられる。GBP やカフアシスト指導を併用することは、他動的な柔軟性の維持に寄与する可能性がある。

  • 大鷲智絵 , 田村拓也
    p. 214-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】麻痺の回復は発症から3 か月までにいかに効率よく麻痺の回復を促進できるかが予後に大きく関わる。

    効率的に麻痺の回復を促進するためには患者が意図した運動を実現し、それをエラーレスに反復し大脳皮質から脊髄前角細胞までの神経路を再建・強化することが必要とされている。低周波電気刺激(以下電気刺激)を用いて筋収縮を行えば効率的な麻痺の回復が図れるのではないかと考えた。 【目的】電気刺激が麻痺の回復促進に影響を与えうる一因となるのか自然経過と比較し検討すること。

    【方法】対象は左片麻痺(下肢BRS3)を呈した50 代前半の女性。発症から61 日目より介入開始。治療頻度と時間は週7回、約60 分、治療内容はA の第1・2 基礎水準期(各1週間)では通常の理学療法+起立運動、B の第1・2

    操作導入期(各1 週間)は通常の理学療法+麻痺側大腿四頭筋に電気刺激を加えた起立運動を行った。評価項目は、1)自動膝屈曲角度([°],Image J)、2)大腿四頭筋筋力([N/Kg],HHD ANIMA 社製)、3)1 分間での最大努力での起立可能な回数[回/分]とし、1 週間に2 回測定した。AB 各期間の比較と、退院後1 か月に1 度評価を実施し

    4 か月間のデータを収集し比較した。

    【結果】A、B 各期ともに1)自動膝屈曲角度、2)大腿四頭筋筋力、3)起立可能な回数は軽度改善するものの著明な変化はなかった。退院後自宅生活をされている期間での測定では1)自動膝屈曲角度、2)大腿四頭筋筋力において著明な改善がみられた。

    【考察】本症例においては、電気刺激の有無によって著明な変化はみられなかった。退院後は、活動時間が増加したため改善に繋がったと考えられる。また、従来考えられている麻痺の回復期間を過ぎても運動量が多い症例においては麻痺筋の随意性や筋力は向上する可能性があることが示唆された。

    【説明と同意】症例には十分な説明をし、画像の使用および症例報告に対して書面にて同意を得た。

  • 石井岳 , 元住孝志 , 青山敏之
    p. 215-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】 脳卒中ガイドライン2015 では,通常の理学療法に加え,機能的電気刺激(以下FES)を行うことで足関節背屈力や歩行能力が改善すると報告されている.またFES を用いた先行研究では前脛骨筋を対象としたものが多いが,前脛骨筋は内反作用も有する.よって足関節内反の制動には外反筋の機能改善が必要である.今回,歩行時に左足関節の過度の内反を呈し,初期接地(以下IC)時に内反捻挫の恐怖心を訴える症例に外反の作用を併せ持つ長趾伸筋へのFES を行った結果,その改善が得られたため報告する.

    【方法】対象は当院に脳梗塞で入院(24 病日)した50 歳代女性である.電気刺激装置GD-611(IVES)を使用し,センサトリガーモードで長趾伸筋を対象として電気刺激を行った.関節角度は動画からImageJ にて計測した.今回,通常の理学療法に加え, 20 日間FES を処方した.本報告は対象者に説明し,同意を得た.倫理的配慮として当院倫理委員会の承認を得た.

    【経過】 初期評価時(54 病日), MAS:下腿三頭筋0. FMA:29/34 点, MMT:麻痺側足関節背屈3,底屈2+,底屈,外返し3, MP,IP 関節伸展2,内反捻挫の恐怖心としてNRS:5/10.足関節内反角度遊脚後期(以下TSw):14°,遊脚中期

    (以下MSw):16°.最終評価時(75 病日),FMA:30/34 点,MMT: MP,IP 関節伸展3,内反捻挫の恐怖心NRS:1/10.足関節内反角度TSw:8°,MSw:16°.

    【考察】 TSw の足関節内反角度の減少は長趾伸筋の出力向上のためと考える.一方でMSw の内反角度が変化しなかった要因は足関節底屈,外反筋である長,短腓骨筋の出力が改善されなかったことに起因する可能性があると考える.本症例では長趾伸筋へFES を行うことでTSw の過度の内反を抑制し,踵接地の安定と恐怖心の減少に効果的であった可能性が示唆された.

  • 寺尾詩子 , 小野順也 , 山徳雅人 , 仁木久照
    p. 216-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】認知障害にて指示動作が困難な場合は,立位や歩行を通して理学療法(以下PT)施行することが多いが,立位,歩行の誘導も難渋する症例を経験する.そこで免荷装置を利用し安全かつ簡便に歩行練習できた症例を経験したので報告する.尚,個人情報保護に十分配慮し情報収集を行った.

    【症例紹介】(1)70 歳代男性,左後頭葉皮質下出血を発症,脳膿瘍を併発し,発症後6 週目から本格的に離床開始.従命困難,自発動作はあるも右優位に運動頻度,範囲の低下あり,離床時は介助2 人以上,立位-歩行練習は困難な状況が持続.7 週目から免荷装置を利用し,断続的に両下肢の支持,振り出しを認めた.10 週目に免荷装置で50m 連続歩行,12 週目に装置なしで手引き歩行が可能となった.認知機能は意識レベルが安定し,指示理解は時々可能も,失語,半盲などが持続し,誘導に工夫,介助が必要な状況であった.(2)20 歳代女性,ギランバレー症候群で両膝立て不可,右上肢挙上困難,精神発達遅滞にて指示理解困難な状態.治療は2 週目,6 週目に免疫グロブリン療法,10 週目にステロイドパルス療法を施行.PT は3 週目から開始.5 週目に起居動作は自立,MMT は足部1,その他4 以上まで

    改善.その後ADL の改善は停滞し,立位は不可,移乗介助は2 人以上の状況が続いた.8 週目に免荷装置を利用したところ,時々下肢の支持性を発揮,10 週目に免荷装置で100m 以上の歩行,12 週目に手引き歩行が可能となった. 【考察・まとめ】2 例とも潜在する運動障害は歩行可能と判断できる状態だが,認知機能の問題で介助量が多く,誘導も工夫が必要であった.免荷装置の利用で荷重,歩行の機会を安全かつ簡便に設定でき,歩行獲得につながったと考えられた.疾患の自然経過や治療による症状の改善も緩徐に認め,最終的なADL の獲得は疾患の回復が寄与して

    いる.しかし,積極的な介入が難しいと思われても免荷装置の利用でより早期に運動量の確保,歩行の獲得ができる可能性が示唆された.

  • 飯田健治
    p. 217-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】運動失調では平衡機能障害あるいは協調運動障害から,上肢の過剰努力での姿勢保持となる場面が少なくない.今回上肢の過活動軽減を図る介入により,着座動作に改善がみられたため報告する.

    【説明と同意】今回症例報告を行うにあたり,ヘルシンキ宣言に基づき患者様ならびにご家族に同意を得た上で報告

    する.

    【症例紹介】80 歳後半の女性.疾患名は心原性脳塞栓症で病巣は右小脳ならびに脳幹部,既往に心房細動および気管支喘息があった.病前ADL は屋内外自立レベル.本人から自宅復帰,家族からトイレ動作獲得の希望があった.

    【理学療法評価および経過】両肩関節屈曲および両膝関節伸展にて可動域制限,体幹および左下肢にて筋力低下,筋緊張は左脊柱起立筋と左下腿三頭筋で亢進,腹部前面部と両殿筋群で低下がみられた.感覚は表在ならびに位置覚鈍麻,踵膝試験は右下肢で陽性,躯幹失調試験ではステージ3 であった.初期評価では手すり把持にて見守り.前額面ではワイドベースで,着座中に左側への動揺.矢状面では股関節屈曲および足関節背屈不十分で平行棒を強く把持.勢いよく着座する場面もみられた.介入内容では肩甲帯に着目し,座位での姿勢修正の後に体幹筋群の協調性を図った.また,立位での重心移動訓練にて殿筋群を促通し起立ならびに着座訓練を主に実施した.最終時では,両大腿部把持し見守りで着座可能.前額面での左側への動揺は軽度だが残存.矢状面では股関節屈曲および足関節背屈は増加し勢いよく着座する場面はみられなかった.

    【考察】着座では身体重心を下方へ移動させる動作で下肢への負担が増大する.体幹および右下肢の運動失調による協調性の低下が,非対称性の着座動作の一要因として考えられる.肩甲帯からの介入により体幹伸展筋群および殿筋群の賦活し,反復した動作練習から対称性の活動を図ることで着座時の動揺軽減に至ったと考える.

  • 関根陽平 , 村田佳太 , 木下良一 , 木村誠 , 久場川真那
    p. 218-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】当院の脳卒中後遺症者の経口摂取移行率は平成27 年1 月~12 月では53.1%となっている。今回、当院で実施している摂食機能に関する会議にて、介入の必要性が提案された症例の経口摂取能力の獲得に対して、担当者間の情報交換と、問題解決に対する助言の役割を担った。結果として、3 食の経口摂取が可能となったので報告する。

    【対象と方法】対象は、脳梗塞により左片麻痺症状と嚥下機能の低下が認められた70 歳代の男性1 名。平成27 年

    3 月の入院時、不顕性誤嚥を認め、経鼻経管栄養の適応。4 月中旬、医師による嚥下造影検査により、直接摂食練習を開始。5 月中旬、ティルトリクライニング車いすを使用しての昼食を開始。しかし、自力摂取は困難で、食事全量介助の状態であった。方法として、自力での3 食の経口摂取を目標に、食事場面を評価し、各担当者に経口摂取に必要な介入の提案を実施した。

    【結果】担当PT に対し、a.ポジショニングb.座位能力の改善に対する介入を提案した。OT に対しては、a.自助具の

    検討b. 食事環境を確認した。ST に対しては、a.PT と共同での移乗動作とポジショニングの実施b.嚥下機能の情報発信と、食事介助の情報交換の管理を依頼した。これらを継続した結果、5 月下旬より夕食、6 月中旬より朝食が開始となり、3 食の経口摂取に至った。また、5 割程度の自力摂取が可能となった。

    【結論】食事動作の介入において、リハビリ担当者の症例に対する全般的な介入に合わせ、担当者以外のスタッフが客観的に評価する事で、より介入を円滑に進める事が可能であったと考えられる。また、各担当者が日々の介入の様子を加味し、担当者自身が問題解決に取り組めた事が、症例を中心としたチームアプローチに繋がったと考えられる。

    【倫理的配慮,説明と同意】対象者である症例、及びご家族に対し、口頭、及び書面にて本研究の説明を行い、同意を得ている。

  • 小野優輔 , 作美真以 , 佐藤茜 , 山崎駿 , 新谷益巳
    p. 219-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】本研究は繰り返しの投球が肩関節回旋筋群に与える影響について,投球側肩関節回旋筋力の変化を引き起こす,投球回数及びその間隔と,投球前に対し各投球回数の筋力と投球後5 日間の筋力の変化を調べることを目的とした.

    【方法】対象は,野球経験のある大学生5 名(平均年齢20 歳).群馬医療福祉大学倫理審査委員会の承認と,研究参加に同意を得た者を対象とした.方法は,20 球1 単位として計5 回実施.回旋筋力の測定は,BIODEX(BIODEX 社製)を使用し,投球前と各投球回数とその後5 日間測定した.測定肢位は,肩甲骨面及びゼロポジション近似肢位とし,等速性運動は60°/sec で行った.パフォーマンス測定はスピードガンを使用.解析は,JSTAT for Windows 使用し,投球前に対し,各投球回数後の最大トルク,平均パワーに対して対応のあるt-検定.100 球後に対し,1 日から5 日後の最大トルクと平均パワーに対して対応のあるt-検定.投球前,各投球回数,1 日から5 日後の肩関節外旋と内旋の最大トルクと平均パワーに対して対応のないt-検定を行う.投球前の最大トルクと平均パワーを100%とし,それに対する各投球回数の割合、100 球後から5 日間においては回復状況を求めた.

    【結果】最大トルクは,内外旋ともに60 球後に最低値となり,投球後の回復は,内旋で2 日後,外旋は1 日後に最低値を示した.また内外旋ともに3 日後以降から上昇した値を示したが,5 日後では投球前の値に戻らなかった. 平均パワーは,内旋で60 球後,外旋で80 球後に最低値を示した.100 球後からの回復は,内旋は3 日後のみ上昇がみられたが,4 日後には最低値を示した.外旋は,1 日後から徐々に上昇した.内外旋ともに5 日後は投球前の値まで回復しなかった.

    【考察およびまとめ】 先行研究同様に肩関節回旋筋力は徐々に低下した.その後の回復状況については,研究報告が少なく,本研究結果から数日間,投球間隔をあける事が必要であることが示唆された.

  • 伊沢諒 , 押山徳 , 安江大輔 , 押山麻里
    p. 220-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】成長期の野球肘障害、特に上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎(以下OCD)においては早期発見が重要である。

    そこで当院では、2013 年度より医師・地域高校と協力し地域学童野球チームに対し野球肘検診を実施している。今回、当院の三年間の活動について報告する。

    【方法】対象は2013~2015 年度に検診に参加した選手(287 名)とし、医師による超音波画像診断装置(以下エコー) を用いた両肘の検査を行った。また指導者や家族に対し投球障害の勉強会と、選手へのストレッチ指導などを実施した。2014 年、2015 年度においては選手(194 名)・指導者(22 名)に障害予防についてのアンケートを実施した。また、アンケートは目的を書面にて説明し、同意を得た。

    【結果】エコー検査にてOCD が疑われた選手は287 名中5 名(1.7%)であった。選手へのアンケートでは、週の練習平均日数が4.8 日であった。投手(53 名)では、一日の投球数が60 球を超えていた選手が49%であり、その内23% は100 球を超えていた。また一日2 試合登板したことのある投手は21%であった。指導者アンケートでは、指導年数の平均が1.7 年であり、適切と考える一日の最大投球数が60 球以上と回答していた指導者が90%であった。また、臨床スポーツ医学会による「青少年の野球障害に対する提言」については知らないという回答が86%であり、「メディカルチェックが少年野球に必要か」、「試合での選手の投球制限は必要か」に対しては必要という回答が100%であった。

    【考察】指導者はメディカルチェックや投球制限の必要性は感じているが、障害予防についての知識は不足していると考えた。それに関連してか、選手の投球数も「青少年の野球障害に対する提言」と比較しても多い傾向にあった。

    【今後の展望】現在行っている活動内容をより良質なものにし、地域への障害予防への理解をより深めていくためにも今後継続して野球肘検診を行っていく必要があると考える。

  • 増間弘祥 , 渡邊裕之 , 門倉和成 , 見目智紀 , 倉坪亮太
    p. 221-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】肘関節外反動揺性(外反動揺性)は肘関節の投球障害を誘発する要因の一つとされている.外反動揺性の測定は超音波断層撮影装置を用いた方法が報告されている.また,簡易的な測定方法の一つとしてgravity stress を用いた方法がある.しかし,gravity stress を用いて外反動揺性の可否を検討した報告は少ない.そこで,本研究は野球経験の有無が外反動揺性に与える影響をgravity stress を用いた方法にて検討する.

    【方法】 対象は男性の野球経験者20 名,未経験者20 名とした.なお,本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.測定に関して背景因子は年齢,身長,体重,競技歴の問診を行い,評価項目は佐々木らの方法に準じ,超音波断層撮影装置を用いて外反動揺性を測定した.被験者は背臥位,肩関節90°外転,肘関節90°屈曲,前腕中間位とした.検者は超音波プローブを上腕骨内側上顆と尺骨鉤状突起に当て,内側側副靭帯のfibrillar pattern を最も描出できる位置を測定対象画像とした.外反動揺性は上腕重量が負荷されるgravity stress の有無による2 条件にて腕尺関節の関節裂隙距離を計測し,その差分を算出した.野球経験の有無による外反動揺性の差をMann-Whitney のU 検定を用いて比較した.

    【結果】投球側の外反動揺性は経験者が0.58mm,未経験者が0.37mm であり、経験者は未経験者に比して有意に高値を示し,非投球側は両群間で差を認めなかった.

    【考察】投球側の外反動揺性において,経験者は未経験者に比して有意に高値を示した.このことから,経験者の投球側に外反動揺性が存在することが明らかとなった.投球動作は肘関節に外反力を加えるため外反動揺性を助長するとされている.そのため,経験者は外反動揺性が出現したと考えられる. 【結語】野球経験者は野球未経験者に比して,gravity stress による外反動揺性が存在することが明らかとなった。

  • 渡邊恭介 , 成田崇矢 , 白澤美雪 , 末木千裕 , 中嶋恵菜 , 吹田裕美子 , 渡邉幸美
    p. 222-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】ハーフマラソン後の身体機能変化及び筋疲労、筋疼痛について調査し、疲労回復や障害予防へのアプローチを検討することである。

    【方法】対象者は2014 年富士鳴沢紅葉ロードレース(距離:21.0975km)に参加した健常成人16 名(平均年

    齢:22.2±4.9 歳、男性8 名、女性8 名)とした。レース後の疲労、疼痛部位を質問紙(複数回答)にて調査した。身体機能は体重、体脂肪率、筋硬度は大腿前面、後面内側・外側、下腿前・後面、下肢周径は大腿膝蓋骨直上5cm、下腿の最大周径、筋柔軟性は指床間距離と踵臀間距離を各々レース前後に測定し平均値を採用した。筋硬度はNEUTONE TDM-N1/NA1 を用いて計測した。統計処理はレース前後の結果を対応のあるt 検定にて比較し、有意水準は5%未満とした。また、説明と同意はヘルシンキ宣言に基づき当院倫理委員会の承諾を得て実施した。

    【結果】疲労部位は総数53 件中、下腿後面16 件(30.19%)、疼痛部位は総数49 件中、大腿前面10 件(20.41%)が最も多い結果であった。身体機能評価(平均)は、体重(kg)(前:57.0、後:55.6)、筋硬度大腿前面(N)(前:1.10、後:1.14)、下腿前面(前:1.43、後:1.39)、下腿後面(前:1.22、後:1.15)、下腿最大周径(cm)(前:34.5、後:33.6)にレース前後で有意差を認めた(P<0.05)。体脂肪率、筋硬度の大腿後面内側・外側、大腿周径、筋柔軟性は有意差を認めなかった。

    【考察】ハーフマラソン後に体重、下腿周径、下腿筋硬度に低下を認め、下腿後面に筋疲労が生じた。これは発汗による筋血流量減少が筋内圧低下をもたらしたと考える。また、筋血流量低下による無機リンの蓄積にて筋疲労が生じたと推測する。また、大腿前面部では筋硬度増加、筋疼痛を認めた。本レースはアップダウンの激しいコースであり、衝撃吸収作用のある大腿四頭筋に筋損傷が起きたと推測する。本研究によりランニング後の大腿と下腿の機能変化に違いを認めた。その原因については、更なる検討が必要である。

  • 森祐希
    p. 223-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】今回、転倒により左大腿骨転子部骨折を呈し、観血的整復固定術を施工した症例を担当した。回復期病院入院から退院までの治療経過を報告する。発表に際し症例にはヘルシンキ宣言に基づき同意を得た。

    【症例紹介】80 代女性、H27 年12 月、自宅内トイレで転倒、急性期病院に搬送。急性期治療を経て28 年1 月当院入院、回復期リハビリテーション開始。既往歴に両変形性足関節症・両変形性膝関節症があり左膝は3 年前に人工膝関節全置換術を施工している。また、両足部は、変形が著名であり、5 年程前より足関節運動を制御、また骨突出部に直接衝撃が加わらないよう免震インソール付の装具を着用していた。移動は、主に自宅内主に車椅子、週2 回の訪問リハビリ時にサークル歩行器で訓練をしていた。入院時、術創部にVAS3 程度の痛みはあったが膝や足部の痛みは無し。手術の影響で、脚長差が5.5cm(右>左)出現し、左中殿筋・小殿筋の筋力低下はMMT2 程度と著名であった。

    【経過】入院後まもなく、車椅子でのADLは自立し、自主訓練も開始した。しかし歩行時、脚長差や筋力低下が影響し骨盤の左への動揺が著名で、右遊脚の出現が困難であった。その為、左足部の装具の上から、加工したキャストシューズ(高さ2cm)を着用し、補高を行った。3 か月の訓練の末左股関節外転MMT4 レベルまで改善し、シルバーカーでの歩行が自立した。

    【考察】5.5cm の補高を試した際は、静止立位は安定したものの動作戦略が崩れ、歩行は困難であった。その為、様々な長さでの補高を試したが、2cm の補高が適していた。また、フラットなキャストシューズのソール前方に角度をつけることで推進力が得られ歩行動作の獲得につながったと考えられる。

  • 下鶴舞 , 真下翔太 , 吉益佳美
    p. 224-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【背景】足部疾患のなかで代表的なものとして扁平足があり、その治療としてインソールがあるが、効果が不確定な部分がある。また看護師は長時間の立位を必要とするため足部の負担が大きいが、靴による予防策が十分にとられているとは言えない。

    【目的】インソールが扁平足傾向の看護師において効果を発揮するかどうかを検討する。

    【方法】研究デザインは前向き介入研究、対象はフットプリントにて扁平足傾向の基準(staheli-index)を満たした聖路加国際病院の看護師、2015 年11 月から2016 年2 月に行った。聖路加国際病院倫理委員会の承認下に対象者の同意を得てDYMOCO インソール&reg;を使用し実施した。手順はまずインソール無しで日勤業務を1 日行い、その業務前後に疲労部位、疼痛、快適度に関する独自のアンケート、身体機能テスト(片足立位、ホップテスト)、歩数計測を実施。1 週間以降に同様の内容をインソール有りで行った。インソール有りと無しで日勤業務の歩数を比較、次に日勤業務前後での身体機能テストの変化率を算出し、それをインソール有り、無しで比較した。どちらもWilcoxon の符号付順位検定(p<0.05)で解析を行った。

    【結果】フットプリント実施76 名中、扁平足傾向の基準を満たした本研究対象者は26 名(全例女性26.3±4.83 歳)であった。インソール快適度、疼痛、疲労部位、ホップテストについてはインソールの有無による有意差はみられなかった。片足立位時間では左足でインソール無しのほうが有意に日勤業務前後での改善がみられた(p<0.04)。

    【考察】本研究では、インソールの効果が出なかった要因として、全員同一のインソールを使用したこと、看護師の業務内容が様々で先行文献とは大きく異なっていたこと、対象者のほとんどが無症状であったこと、使用期間が短期間であったことが考えられる。よって、インソールの効果を得るためには個別対応、有症状、長期での経過フォローが必要ではないかと示唆された。

  • 糸部恵太 , 鶴岡祐治 , 東史朗 , 真鍋雅春 , 陣内雅史 , 豊田敬
    p. 225-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】変形性股関節症(以下,股OA)は歩行時痛,動作時痛を有することが知られている.骨盤前傾位を呈している股OA 患者では腹横筋の筋活動が健常人よりも低下しており歩行時や下肢伸展挙上運動(以下,ASLR)において腸腰筋の筋活動が得られにくいと報告されている.臨床にてASLR の際に骨盤帯を同側回旋し下肢を挙上してくることを経験した.そこで股関節痛を有する股OA 患者に対し腹横筋単独収縮練習(以下,ドローイン)を実施した結果,上記の改善が見られたのでここに報告する.

    【症例提示と方法】症例は61 歳女性.診断名は右変形性股関節症.股関節JOA スコア77 点.股関節ROM は屈曲

    110°,伸展5°,外転20°.疼痛はVAS4.3mm,運動時,開排時に出現した.被験者に十分な説明を行い同意を得た上で行った.方法は患側を挙上側とし背臥位でのASLR(条件1)を実施し,ドローイン後もう一度測定(条件2)した.測定肢位は股・膝関節中間位,足関節背屈0°,SLR 挙上角度は0°,30°,60°とした.また骨盤帯の回旋角度を測定するため,両側ASIS を結んだ線上に傾斜角度計とASIS からベッドへの垂線に定規を両側に設置した.安静臥位を基準とし,健側に対し患側のASIS がどれだけ回旋したかを左右の変化量として測定した.

    【結果と考察】結果は,条件1 では30°健患差-2.2cm,傾斜角-5°.60°健患差-5.4cm,傾斜角-10.5°.条件2 では30°健患差-0.7cm,傾斜角-1.5°.60°健患差-2.5cm,傾斜角-5°であった.またドローイン後,骨盤帯回旋量の減少,疼痛は股関節痛の改善が見られた.30°に比べ60°にて大きく数値が変化した原因として,先行研究では腹筋群の筋活動量は60°以降で優位に上昇すると報告しており,体幹,骨盤帯の安定性が高まるため骨盤帯の回旋量,傾斜角は小さくなり,同時に股関節の制御への負担が減少したため股関節痛が改善したと考えられる.今後は症例数を蓄積し腹横筋と骨盤帯回旋量の関係を追求していきたい.

  • 安藤克久 , 長正則 , 大石健太 , 山岸辰也 , 吉川咲子 , 中野博介 , 秋山智子 , 三箇島吉統
    p. 226-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】前十字靭帯(ACL) 再建術後のスポーツ復帰では、再受傷の恐怖や膝の痛み、不安定性により同レベルのスポーツ復帰を果たせない例がある。今回、再受傷への恐怖感を失くす為、受傷機転となった動作の確認や患者教育を重点的に行い、同レベルのスポーツ復帰を果たすことができた症例を経験したので報告する。

    【症例】18 歳、男性。診断:右ACL 損傷。術式:関節鏡視下ACL 再建術(STG 使用、Single Root 法)。競技:柔道(高校部活レベル)。受傷機転: 技を掛けた時に相手が覆いかぶさるように倒れ受傷。症例報告をする主旨を十分に説明し同意を得た。

    【経過】2014 年5 月14 日、受傷。同年7 月30 日手術施行。術後1 日目より、クーリング、Knee Brace 下での筋力強化および右下肢免荷での両松葉杖歩行練習を開始した。術後7 日目に退院となり、術後11 日目から可動域訓練と

    1/3 荷重を開始した。術後4 週で全荷重とし、術後2 か月目から自転車を許可した。術後4 か月よりジョギングを開始し、術後8 か月でラン、ジャンプ訓練を開始した。その後、競技中での禁忌動作の指導および反復練習を実施し、術後9 か月で競技復帰した。

    【評価】術後11 日:右膝ROM 伸展0°屈曲80°。 術後1 カ月:ハーフスクワット、ランジ動作にて痛みの訴え無し。

    Knee in(-)。片脚スクワットでのknee in(+)。術後4 か月:右膝ROM 伸展0°屈曲140°、等速性膝伸展筋力測定

    (60°/秒)にてWBI0.64(健側比73%)。術後8 か月:右膝ROM 伸展0°屈曲145°、等速性膝伸展筋力測定(60°/秒)にてWBI 1.30(健側比88%)。片脚スクワットでのknee in(-)。

    【考察】本症例は柔道で技を掛けた時に受傷した。 受傷機転である背負い動作をイメージした片脚荷重動作等を重点的に確認し、受傷メカニズムの教育も合わせて行った。それにより、受傷に対する恐怖回避思考や競技に戻れるのかといった不安感を取り除くことができ、同レベルの競技復帰を果たすことが出来た。

  • 西尾翔多 , 阿部夏織
    p. 227-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】頸髄症は運動麻痺や感覚障害など多様な症状を呈し日常生活に大きく影響を及ぼす.今回頸髄症に対し姿勢筋緊張の調整と神経筋促通訓練が基本動作獲得において有効であった症例を経験したため報告する.

    【症例紹介】50 歳代男性.病前ADL 自立.診断名:頸髄症(C3-C6)術式:脊椎固定術,椎弓切除術,椎弓形成術現病歴:塗装業,作業中に転倒,翌日より頸部痛増強あり.近医を受診し経過観察となるも右頸部痛増強,四肢脱力,しびれの出現により当院受診.精査目的で入院したが症状が進行し手術施行.

    【説明と同意】報告にあたり本人に説明し,同意を得た.

    【経過】術前B.I0/100.MMT 左右上肢2,下肢0-2,体幹1,右下肢深部感覚脱失.術後2 日目より離床開始.初回介入時は仰臥位で背部の筋緊張亢進,頸部疼痛NRS10.坐位にて後方へ倒れ込み,姿勢保持困難.筋緊張の調整と筋出力の増強としてコンディショニングと筋緊張が減弱する肢位での神経筋促通訓練を実施.48 病日に坐位保持,起居動作,移乗動作が自立.歩行は72 病日に交互型歩行器で監視10m 可能.84 病日にリハビリ目的で転院.転院時

    B.I50/100.MMT 左右上肢3-4,下肢2-4,体幹3.背部痛NRS2.

    【考察】本症例は頸髄症による四肢・体幹の筋緊張低下,感覚障害と手術による頸部と背部筋緊張亢進に起因した筋緊張のアンバランスにより,基本動作や姿勢保持が困難であった.本来筋緊張とは動作を行うにあたり,姿勢の変化に合わせ最適な緊張状態を変化させていく必要がある.しかし本症例では筋出力の低下や頸部疼痛により困難であった.そのため,まずリラクゼーションやポジショニングによる疼痛管理,筋緊張が亢進しにくい姿勢での各関節運動の誘導,筋促通運動を実施.筋緊張のアンバランスが軽減された後,日常生活動作訓練を実施した結果,転院時には基本動作が自立,歩行は歩行器歩行監視で可能となった.筋緊張の調整や神経筋促通運動の併用は基本動作の獲得に有効な手段であることが考えられた.

  • 妹尾佑輝
    p. 228-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】今回,注意障害,観念運動失行を主症状に多くの高次脳機能障害を持つ事例に対して,歩行能力の再獲得を目標に介入し,反復動作を通じて高次脳機能障害の影響が改善され,独歩監視に至った.その経過について以下に報告する.尚,本報告は本人・家族に十分な説明を行い,同意を得ている.

    【事例紹介】60 歳代女性,診断名は右頭頂葉アテローム性脳梗塞であり保存療法実施.発症から約1 か月後に、当リハビリ病院へ入院.既往に腰椎圧迫骨折,左同名半盲等あり.病前はADL 全て自立,屋外歩行はT 字杖使用,腰椎圧迫骨折の治療目的で当院の外来リハビリに通院していた.

    【理学療法評価】BRS 左下肢V,GMT 右下肢5 左下肢4,感覚は表在深部共に左上下肢重度鈍麻,起居・移乗動作中等度介助,歩行は右手すり把持左腋窩最小介助にて5m 実施可能,高次脳機能障害は,机上での検査の多くが実施困難であったため,動作上で評価をし,ゲルストマン症候群,身体失認,注意障害,観念運動失行,構成障害を認めた.

    【経過】初期では左右の確認を静止時・動作時共に行なっていくことから介入し、左上下肢のボディイメージ改善と共に動作の反復訓練による定着化を実施.約4 週間で起居移乗動作監視に改善.その後,視覚入力による体幹の正中位の意識付けから介入し,歩行訓練を実施.約2 週間で独歩での訓練が可能となった.続いて独歩での訓練では,歩行時にボールを持つ等下肢に意識がいかないようにすることから介入し,反復動作による動作定着化によって失行の改善が見られ,最終的に独歩歩行監視で可能となった.

    【考察】本症例では,反復動作が動作の定着化に有効的であり,歩行能力の改善が見られた.大川らは,ADLは1 日を通じて繰り返し行うものであり、脳に対する訓練効果も大きいと述べており,それに準じた結果となっている.

  • 鈴木結貴 , 川嵜康太
    p. 229-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】本症例は、立ち上がり動作時に後方重心が著明であり動作自立が困難であった。今回は立ち上がり動作時の安定性向上を目的とし、長期的な介入の一部である即時効果に着目し報告する。ご本人と御家族に本発表の説明を十分に行い同意を得た。

    【症例紹介】80 歳代男性。診断名:脳挫傷(左前頭葉)、急性硬膜下血腫(左前頭葉、左側頭葉)。受傷機転:買い物帰りにリュックを背負っている時に転倒。既往歴:左脳挫傷(4 年前)、認知症。関節可動域:体幹および股関節、足関節に制限あり。

    【方法】動画にて40 分間の理学療法介入前後の立ち上がり動作を比較した。撮影時は座面・足部の接地場所・カメラを固定した。理学療法では、立ち上がり動作の屈曲相の体幹前傾に伴い骨盤前傾と下腿前傾、足部への荷重を徒手的に誘導した。また屈曲相から殿部離床への移行時に足部へ荷重を行うように促した。

    【結果】介入前後で比較すると殿部離床から伸展相に変化が見られた。介入前の立ち上がり動作は、殿部離床時に体幹伸展を行い、伸展相に体幹後傾位の状態で股関節・膝関節伸展し後方重心であった。介入後の伸展相では体幹前傾位で保持した状態で股関節・膝関節伸展が行えており、屈曲相より両上肢を挙上していた。

    【考察】本症例は立ち上がり動作時の屈曲相に着目した介入により、殿部離床から伸展相に改善が見られた。介入によって体幹前傾位を保持した状態で屈曲相・殿部離床・伸展相に移行できたため、立ち上がり動作時の後方重心が軽減したと考える。後藤らは両上肢挙上位での立ち上がり動作では体幹の前傾は減少されると述べている。本症例も両上肢挙上により体幹と股関節の関節可動域制限による体幹前傾不足を代償していたと考えられる。

  • 中村花穂 , 安達みちる , 後藤圭介 , 圖師将也 , 冬賀清香 , 和田太 , 猪飼哲夫 , 石黒久美子 , 七字美延 , 佐藤孝俊 , ...
    p. 230-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)は大脳形成異常による知的障害を伴う筋ジストロフィーである.運動機能判定は上田分類(レベル0~8)が用いられているが,粗大運動能力を詳細に捉えることは難しい.粗大運動能力尺度(GMFM)は脳性麻痺に対する運動評価尺度として開発されたが,脊髄性筋萎縮症やDown 症候群など他の神経筋疾患でも妥当性が証明されている.そこで我々はFCMD 患者の能力をGMFM で評価し,その妥当性と有用性を報告した.本研究では検者間および検者内信頼性について検討を行った.

    【対象と方法】対象は2013 年10 月から2015 年1 月までに当院入院中の0 歳7 ヶ月~16 歳11 ヶ月のFCMD 患者

    17 名.全例にGMFM を実施し,患者家族の同意を得てビデオカメラで記録をした.内3 名は上田分類の運動機能レベルが異なる時期で2 回評価を行い,計20 回分の記録を行った.検者間信頼性では,GMFM 講習会を受講し,採点前に判断基準を再確認した経験年数2,5,8,29 年の理学療法士(PT)計4 名が,全ビデオ記録を採点した.検者内信頼性では,経験年数2 年のPT1 名が再度20 回分のビデオ記録を半年の期間をあけて採点した.統計学的処理はSPSS にて級内相関係数(ICC)を求めた.

    【結果】検者間信頼性のICC は,項目ごとにA 領域:0.9739,B 領域:0.9898,C 領域:0.9954,D 領域:0.9979,E 領

    域:0.9933,総合点:0.9961 であった.検者内信頼性の ICC は,項目ごとにA 領域:0.9821,B 領域:0.9948,C 領

    域:0.999,D 領域:1,E 領域:0.9844,総合点:0.9978 であった.

    【考察】今回の結果はFCMD に対するGMFM の全領域にて検者間および検者内信頼性が高いことを示している.GMFM を習得し,判断基準を確認したPT であれば経験年数に大きく左右されず,FCMD 患者に対してGMFM を使用できることが示唆された.今後FCMD の臨床や治験等での主要評価項目として期待できる.

    【倫理と同意】本研究は東京女子医科大学倫理委員会の承諾を得て実施した.

  • 高橋遼
    p. 231-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】標準型車椅子使用者は不良座位姿勢が原因で、骨盤の前方滑りによる褥瘡や転落事故が発生するケースも少なくない。骨盤の前方滑りに対して座面クッションのアンカーサポートを導入することがある。そこで、バスタオルを使用し、簡便にアンカーサポートの代用として、骨盤の前方滑りの軽減が出来るか検証を行った。

    【対象】対象は健常成人19 名(平均年齢37.4±11.2 歳,男性6 名,女性13 名)とした。また、対象者には研究の趣旨と倫理的配慮の説明に同意を得た。

    【方法】車椅子は標準型車椅子を使用し、座面には30mm のチップウレタンに、10mm の高弾性ウレタンで上・下面を覆ったクッションを使用した。クッション下前面にバスタオルを挿入し、アンカーとした。実施内容は下肢での車椅子駆動を30 歩行い、アンカーサポート有りと無しの計2 回行った。それぞれの車椅子座位時のズレ度(JSSC 版)を計測した。全てのズレ度計測後にVisual Analog Scale(以下:VAS)にて座り心地を計測した。統計解析はズレ度及びVAS をWilcoxon 符号付順位和検定にて比較した。統計学的有意水準は5%未満とした。

    【結果】アンカーサポート無しでは右ズレ度1.98±1.13%、左ズレ度1.56±0.69%、VAS5.66±1.91cm、アンカーサポート有りでは右ズレ度0.99±0.83%、左ズレ度0.79±0.53%、VAS6.34±1.86cm にて左右ズレ度に有意差が認められた。効果量においても効果量大を示した。右ズレ度(P<0.01,効果量r=0.8)左ズレ度(P<0.01,効果量r=0.82)。

    VAS は有意差が認められなかった。

    【考察】バスタオルを用いたアンカーサポートの有無でズレ度において有意差がみられた。バスタオル挿入によるアンカーサポートは前方滑りを防ぎ、アンカーポイントとしての有効性が示唆された。日用品を用いて、良肢位保持が困難な方や前方滑りの剪断力による褥瘡のリスク、車椅子からの転落など臨床場面で多く見られる問題への早期の対応が可能であると考えられる。

  • 高松眞 , 横尾浩 , 高橋了資 , 大山貴裕 , 大島清乃 , 正木隆之 , 武末大臧 , 佐藤佑一 , 福田明
    p. 232-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    目的急性期病院として機能するため、円滑に医療を提供し、早期退院を達成することが重要である。そこで、自宅復帰群と転院群のBarthel Index(以下BI)を評価し、入院時のBI から退院調整を円滑に進めるための指標を退院時BI の傾向から調査した。方法当院PT8 名全員による2014 年4 月1日から2015 年3 月31 日までの全患者(1,648

    人)で初期評価と最終評価のBI を自宅復帰群、転院群(施設、病院等)、死亡群・中止群に分けた。リハビリテーション開始時を初期BI とし、リハビリテーション最終日を最終BI としてBI の変化を算出した。今回、リハビリテーション介入期間は問わないこととした。説明と同意ヘルシンキ宣言に基づき、調査を行った。調査にあたって、対象者に説明と同意を得た。結果 自宅復帰群:初期時平均BI67±30 点、最終時平均BI82±29 点。転院群:初期時平均BI29±26 点、最終時平均BI41±32 点という結果が見られた。考察 自宅復帰群では初期時平均BI67±30 点に対し、最終時平均BI82±29 点まで改善が見られた。初期時で60 点台であれば、およそ15 点または合計値80 点以上までの改善で、自宅復帰に必要なADL を獲得することができると考えられる。転院群では、初期時平均BI29±26

    点に対し、最終時平均BI41±32 点であった。初期時で30 点以下の場合、40 点まで改善することができれば、転院調整が円滑に進められる可能性がある。結論 初期時と最終時でのBI を比較すると、自宅復帰群では約15 点、転院群では約13 点の改善で、転院調整を円滑に進められる可能性があることがわかった。当院のリハビリテーションで平均15 点程度の改善が予知できるため、入院時のBI から早期退院調整を進めることができるのではないかと考えた。また、リハビリテーションだけでなく、ADL・歩行に必要な筋の自主訓練を導入していくことで、円滑な転院調整に繋げられるのではないかと思われる。

  • 山下美香 , 石川茂幸 , 頼経貴正 , 古川広明 , 原島宏明
    p. 233-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】近年、地域包括ケアシステムの構築が市町村で進められており、いかにして住み慣れた地域で在宅生活を送っていくかが課題となっている。日本理学療法士協会は高齢者が地域で活動的な生活を送るための指標としてLife Space Assessment(以下、LSA)を推奨しており、すでに有用性も示めされている。活動参加を促していく事で生活空間の拡大を図り、社会的な役割をもっていただくことで生きがいや介護予防にも繋げていけると考えている。

    【目的】当院訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)では、訪問リハ介入により外出頻度が増え、活動参加に繋がっているか、当事業所の現状把握を目的とし、LSA をもとに検討する。

    【方法】 研究に同意を得られた訪問リハ利用者31 名。活動参加を把握するため、訪問リハのみの単独群、サービス併用の併用群の2 群に分け、2 群間でLSA の得点をMann Whithey のU 検定を用いて比較した。単独群19 名、併用群12 名、有意水準は5%とした。

    【結果】各群のLSA の点数は単独群で39.0±17.0 点、併用群で24.5±9.3 点で単独群が有意に高い結果が得られた。また、当院訪問リハ利用者の生活範囲は自宅内、近所への外出までにとどまっていることが判明した。

    【考察】今回の結果からLSA は要介護認定者を対象とする場合、身体機能・移動能力は当然のことながら、それ以外にも様々な要因が関連していることが予想される。利用者の意思、家族環境、生活環境などが反映され生活空間が狭小化し、活動参加を妨げている可能性もある。今後は身体機能・移動能力、LSA のみだけでなく、その利用者がかかえる生活環境の詳細を把握し、より活動参加に沿ったリハビリテーションが出来るよう、検討する必要もある。様々な因子との関連を検討する事で、活動参加、生活空間を拡大し住み慣れた地域での在宅生活に繋がるのではではないか。

  • 平野誠一郎 , 増渕和宏 , 鷺池一幸
    p. 234-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】重度脳梗塞患者に対して、起居・移乗の介助方法などの家族指導を行い、退院後、家族に介助の実施状況を問うアンケート調査を行ったので、ここに報告する。

    【方法】症例はA 氏、84 歳男性。右脳梗塞。初期評価時、起居動作軽介助、座位軽介助、立位・移乗2 人介助。妻と2 人暮らしで長女、次女の面会も多かった。家族指導は3 つの点に工夫した。1 点目は病棟でも家族との移乗練習を実施したこと、2 点目は複数人の家族への指導を行ったこと、3 点目は資料配布を行い、介助方法を統一させたことである。理学療法で移乗が1 人介助で安定したため、家族指導を開始。介護老人保健施設(以下、老健)に転院し、その2 か月後に、起居・移乗の実施状況、疑問点などを問うアンケートを実施した。本症例報告は個人情報が特定できないように匿名化を行った。

    【結果】最終評価時に起居動作・座位・立位監視、移乗軽介助まで改善し、長女、次女、孫の介助で離床が可能となった。アンケートにより、老健でも家族との離床が疑問なく実践できており、自宅退院が可能となったことがわかった。

    【考察】先行研究で在宅復帰の要因として、家族の意向や同居家族の人数が挙げられている。そのことから複数の家族に指導を行ったことで介護負担が軽減し、また家族が機能改善を実感したことで家族の意向に変化が生じたと考えた。また移乗能力も在宅復帰の要因として挙げられている。そのことからA 氏が家族の軽介助により移乗が行えたことも在宅復帰の要因になったと考えた。排泄に介助を要する患者の過半数が在宅復帰できていない現状がある。

    A 氏の排泄はオムツ全介助だった。排泄への対策次第で、さらに介助量が減った可能性があった。

    【まとめ】積極的な家族指導により、A 氏の立位や移乗などが改善し、家族との離床や在宅復帰が達成した。また、家族の意向や介護力に影響を与えた。特に移乗や排泄の達成は在宅復帰に関わることが示唆された。

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