関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
選択された号の論文の295件中51~100を表示しています
口述
  • 根津 憲継, 渡邊 修司, 新永 拓也, 行貝 智弘, 望月 優人
    セッションID: O-031
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】立位姿勢は障害の無い健常者においても左右非対称であることが多い。立位姿勢の左右差について着目することは、臨床上重要視されている運動連鎖を考慮した臨床推論の一助になることが考えられる。本研究では、実験的に安静立位姿勢の左右差を測定し、その傾向について考察した。

    【方法】対象は、健常成人男性12名(年齢21±2歳、身長169.5±5.5cm、体重64.8±19.2㎏)。測定項目は、荷重比率、ランドマーク(肩峰、肩甲骨上角、下角、腸骨稜、上前腸骨棘、下前腸骨棘)、Leg-Heel-angle(以下LHA)、アーチ高率(以下AR)とした。ランドマークはデジタルカメラ(Nikon D320)にて撮影し、画像解析ソフト(Imagej)にてランドマークから床面への鉛直距離を測定した。各測定項目の左右差をWilcoxon符号付順位和検定にて比較検討した。

    【倫理的配慮】本研究は帝京科学大学倫理委員会にて承認(18098)を得て実施した。

    【結果】各測定項目の平均値(右側・左側)は、腸骨稜(102.9 ±4.2cm・102.0±3.6cm)、上前腸骨棘(93.3±3.3cm・ 94.2±2.7cm)、下前腸骨棘(112.0±5.3cm・111.3± 4.7cm)、AR(11.1±3.3%・10.2±3.0%)で有意差を認めた。肩峰(140.9±3.6cm・140.7±3.5cm)、肩甲骨上角(164.1 ±5.8cm・164.5±5.8cm)、下角(147.0±5.3cm・147.1± 4.1cm)、LHA(164.3±3.7°・165.9±3.9°)、荷重比率(49.1 ±3.0・50.9±3.0)には有意差は認められなかった。

    【考察】安静立位にて、ARは左側で低下、骨盤は右側挙上位、右側前傾位、左側後傾位であることが示唆された。 一般的に提唱される運動連鎖との矛盾があり、先行研究の様なヒト骨格由来の左右差などの影響も示唆された。 今後は対象者数の増加、既往歴の考慮など、研究デザインを再考する必要がある。

    【まとめ】安静立位姿勢の左右差について着目することは臨床推論の一助となる可能性が示唆されたが、本研究デザインではその可能性について論述することに限界がある。

  • 贄田 高弘, 今井 稚菜, 田島 健太郎, 黛 太佑, 横澤 美咲, 樋口 大輔
    セッションID: O-033
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】健常者において、ライデルセイファー音叉を用いた振動覚検査法(RS法)の検者内・検者間信頼性を明らかにすることを目的とした。

    【方法】検者は理学療法士5人(経験年数2 〜10年)とし、被検者は健常成人20人(男性16人、女性4人、29.2±6.2歳)とした。RS法で用いるRS音叉の頭部には0 〜8の目盛りがあり(数値が大きいほど振動が弱い)、被検者が振動を感じなくなった時点の目盛りを読み取った。従来法として、音叉を検査部位に当ててから被検者が振動を感じなくなった時点までの時間(感知法)と被検者が合図した時点から振動が停止した時点までの時間(不感知法)を測定した。音叉は右内果にあてた。検者内信頼性は1 人の被検者に対し、特定の検者1人が1週間以上の間隔をあけて2度、3種の振動覚検査を5回ずつ行った。次に、検者間信頼性は1人の被検者に対し、任意の3人の検者がそれぞれ3種の振動覚検査を5回ずつ行った。ICC(1,2)とICC(2,3)を算出した。

    【倫理的配慮】高崎健康福祉大学倫理審査委員会の承認を得た(3064号)。対象者には本研究の説明し、同意を得た。

    【結果】検者内信頼性で20人に行った各10回述べ200回の検査値は、RS法が7.7±0.6(5 〜8)点、感知法が18.0± 3.7(10.6 〜30.5)秒、不感知法が8.1±2.8(1.3 〜14.1)秒であった。ICC(1,2)はRS法が0.77(95%信頼区間 0.43 〜0.91)、感知法が0.65(0.12 〜0.86)、不感知法が 0.81(0.52 〜0.92)であった。ICC(2,3)はRS法が 0.85(0.69 〜0.94)、感知法が0.85(0.70 〜0.94)、不感知法が0.59(0.61 〜0.83)であった。

    【考察】感知法と不感知法はRS法と比較して検者内信頼性または検者間信頼性で劣っていた。これは、検者内でも音叉を叩く強さが一定でなかったことや、検者間で終了時点の判断にばらつきを認めたことによると推察された。

    【まとめ】ライデルセイファー音叉による振動覚検査は検者内、検者間信頼性共に担保できる方法である。

  • 浅井 朋美, 菅野 達也, 柏原 康徳, 藤縄 光留
    セッションID: O-034
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【はじめに】日々の臨床場面において熟達療法士から理学療法技術を学ぶ機会は多い。しかし、熟達療法士と同じように介入を試みても同様の結果が得られないことを多く経験する。そこで今回は、若手療法士(以下、若手)と熟達療法士(以下、ベテラン)のハンドリングから得られた反応を客観的データで示し、その違いを検討した。

    【方法】対象は、被介助者が健常者1名、介助者が臨床経験年数2年目の若手3名と臨床経験年数20年目以上のベテラン3名とした。計測課題はステップ動作とし、左右無作為に5試行行った。被介助者はアイマスクを着用し、介助は胸郭を後方より行うこととした。計測機器は三次元動作解析装置、床反力計を使用した。解析項目は5試行のうち右下肢をステップした試行を採用し、右下肢が床面から離れた時点の重心の位置(以下、COG)と左右合成足圧中心(以下、COP)とし、これらを静止立位からの差を算出し平均した。尚、被験者にはヘルシンキ宣言に基づき書面と口頭にて同意を得た。

    【結果】COGの左右位置は、若手は6.8±0.7cm、ベテラ ンは6.5±0.9cm左、前後位置は若手は6.5±1.0cm、ベテランは3.6±1.0cm前方にあった。COPの左右位置は若手は10.1±0.4cm、ベテランは10.1±0.8cm左、前後位置は若手は4.6±0.8cm、ベテランは0.7±1.5cm前方にあった。

    【考察】前額面上では若手とベテランで差が少ないことからハンドリングの違いは無かったと考えた。矢状面上では、若手はCOGとCOPの距離に差が無いことや、COGの位置がベテランよりも前方にあることから、COGを直接的に前方へ移動させるハンドリングであったと考えた。一方、ベテランはCOGとCOPの距離に差が生じていたため、被介助者本人の重心の制御を引き出すハンドリングであったと考えた。

    【まとめ】ステップ動作おいて若手とベテランのCOGに与えるハンドリングが前額面上で違いがあった。今後は、COGとCOPだけではなく他の因子との検討も必要であると考える。

  • 藤原 博也
    セッションID: O-035
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】6分間歩行試験(以下6MWT)は持久力の指標として広く臨床現場で用いられている.先行研究では心拍数の変化に3分間歩行試験(以下3MWT)でも同等の結果が得られたとの報告がある.しかし,若年者健常者の検証はされているものの高齢者に対する検証の報告は少ない.そこで当院入院患者の持久力評価として6MWTと3MWTを比較し3MWTが有用であるか検証した.

    【方法】対象は当院入院期間中の歩行可能な65歳以上の男女63名(男性28名女性35名)とした.平均年齢は80.7(± 9.4)歳であった.疾患内訳は脳血管疾患32名(循環器疾患を有する患者9名),運動器疾患31名(循環器疾患を有する患者6名)であった.方法は上記対象者に50mの廊下を用いて6MWTと3MWTを同日時に実施し心拍数計(パルスオキシメータリストックスシリーズ,Model3150)を用いて測定した.心拍数は安静時から終了時までの心拍を測定し記録した.統計処理は6MWT・3MWTの心拍上昇値(終了時心拍数-安静時心拍数)を性別・疾患別に分けそれぞれクリスカル・ウォリス検定をした後,6MWTと3MWTをWilcoxonの符号順位和検定にて平均値の差を求めた.統計処理にはJSTATを用い,有意水準は5%とした.

    【倫理的配慮】対象者には本研究の趣旨を十分説明し同意を得た.また,本研究に対し法人内倫理委員会にて承認を得ている.

    【結果】6MWTの心拍上昇値に性別,疾患別の差は認められず(p=0.45),3MWTの結果も同様に差は認められなかった(p=0.14).さらに,6MWT群と3MWT群における2群間における心拍上昇値の差も認められなかった(p=0.41).

    【まとめ】上記の結果から入院中の高齢者においても6MWT,3MWTの心拍上昇値の差はなく,3MWTは疾患や性別問わず当院における持久性の指標として有用であることが示唆された.持久力は在宅退院後の身体活動に大きく寄与する為,入院期間中の評価の重要性は高いと考えられる.

  • 西元 淳司, 峯岸 雄基, 宇都 弥紀, 村田 健児, 国分 貴徳, 今北 英高, 金村 尚彦
    セッションID: O-036
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】末梢神経損傷後は、その支配筋の神経支配が途絶えることで、筋萎縮を認める。何らかの治療的介入がなければ、筋萎縮はより進行し、再神経支配が成されても、機能障害が残存する場合が多い。理学療法介入としては、ストレッチングや電気刺激などが行われているが、広く行われている歩行練習のような荷重による機械的負荷が筋萎縮に及ぼす影響は未だ明らかではない。末梢神経切断後は筋萎縮関連因子が発現することが報告されており(Bodine,2001)、機械的負荷がAtrogin-1、Muscle RING Finger Protein-1(MuRF-1)の発現に与える影響を明らかにすることとした。

    【方法】対象はICR系雄性マウス(10週齢:6匹)とした。 末梢神経切断モデルは坐骨神経を10mm切断し、神経切断後4週時点において再神経支配のないモデルを採用した。対象を神経切断後に機械的負荷のない群(N群)、神経切断3日後からトレッドミルによる機械的負荷(時間:1時間/日、頻度:5日/週、速度:10m/min)を与える群(Nex群)、神経損傷のない群(Sham群)の3群とした。 組織採取時期は神経切断後2週、4週時点とし、各群のヒラメ筋(SOL)と長趾伸筋(EDL)を採取した。その後に蛍光免疫染色を行い、Atrogin-1、MuRF-1の発現の局在を観察した。

    【倫理的配慮】所属大学動物実験倫理委員会の承認を得た(承認番号29-8)。

    【結果】2週、4週時点のAtrogin-1の陽性所見はSOL、EDL共にN群、Nex群においてSham群よりも顕著であったが、N群とNex群の違いは明らかではなかった。2週、4週時点のMuRF-1の陽性所見は、SOLにおいてはN群がNex群よりも陽性所見が顕著であった。EDLにおけるMuRF-1の陽性所見は、2週時点おいてN群がNex群よりも顕著であった。

    【考察】末梢神経切断後のように随意的筋収縮が困難な状態となっても、機械的負荷によりMuRF-1の発現を抑制し、筋萎縮を抑制できる可能性が示唆された。今後はmRNA遺伝子発現解析やタンパク質の発現量などの量的評価を行う必要がある。

  • 大山 祐輝, 山路 雄彦
    セッションID: O-038
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】スクワット時は膝外反を制動しつつ実施することが望ましいとされる.膝外反が生じる原因の一つに、大腿筋膜張筋(tensor fascia latae、以下:TFL)などが関与している.従って、本研究ではTFLのスタティックストレッチング(Static stretching、以下:SS)が、スクワット時の膝外反角度にどのような影響を及ぼすか調べることとした.

    【方法】健常成人8名を対象とした.膝外反角度は両膝関節50°屈曲位(条件①)、80°屈曲位(条件②)の2条件で測定した.SSの前後で測定した.右の上前腸骨棘、膝関節中央、足関節中央に直径0.5cmの反射マーカーを貼付し、3点の通る線のなす角を膝外反角度とした.2肢位をデジタルカメラ(Nikon社製 COOLPIX S7000)で撮影し、imageJを用いて画像解析を行った.解析方法に関して、SS前後の膝外反角度の比較を対応のあるt検定にて比較した.有意水準は5%とした.

    【結果】条件①の膝外反角度はSS前( 5.23±7.32 )とSS 後(2.26±5.56 )で有意差を認めなかった.条件②はSS 前(2.79±9.63 )と比較しSS後(-0.49±9.43 )で有意に膝外反角度が減少した.

    【考察】SSにより膝外反モーメントに作用するTFLの活動が抑制されたと考えられる.条件①と比較し、条件②は肢位保持に大きな筋活動が必要になるため、より膝内反モーメントに作用する筋を活動させ肢位保持を行ったため、条件②でより膝外反角度が減少したと考えられる.

    【まとめ】TFLのSSにより、スクワット時の膝外反角度に変化を及ぼす可能性が示唆された.

    【倫理的配慮】本研究を行うに当たり,医療法人社団日高会日高リハビリテーション病院の医療倫理委員会の承認を得た(承認番号:180501).全ての対象者には,ヘルシンキ宣言に従い,口頭および文書で説明し同意を得た.

  • 伊藤 遼佑, 小曽根 海知, 岡 優一郎, 荒川 航平, 村田 健児, 金村 尚彦, 国分 貴徳
    セッションID: O-039
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【序文】腱の骨付着部はEnthesisと呼ばれ、4層構造を呈し筋活動に伴う機械的ストレスを軽減する役割を果たす。同部は成長期Overuse障害の好発部位として知られているが、運動に伴うストレスがEnthesis部の構造にどのような変化を及ぼすかについての報告は少ない。本研究の目的は、マウスのEnthesis構造の組織学的観察により、異なる運動による機械的ストレスと構造変化の関係性を明らかにすることとした。

    【方法】ICR系若齢白色雄性マウス30匹を、平地走行群(0 度)、下り坂走行群(16度)、非運動群に分類、小動物用トレッドミルを使用し15m/minにて60分/日、5日/週の走行運動を8週間行なった。介入終了後、ヒラメ筋とアキレス腱付着部を採取しそれぞれ包埋後に切片を作成、一般染色を行い筋およびEnthesis全体像の構造変化を定量的に解析した。本研究は所属施設の動物実験倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号29-1)。

    【結果】ヒラメ筋横断面積は非運動<平地走行<下り坂走行の順で増大傾向を示し、統計学的に有意差を認めた。 アキレス腱付着部のEnthesis構造は、同様の順で線維軟骨層における石灰化線維軟骨層の割合が拡大する傾向を示した。

    【結語】本研究では非運動<平地走行<下り坂走行の順で、筋横断面積の増大及びEnthesis部における石灰化線維軟骨層の割合の拡大が認められた。下り坂走行は下肢抗重力筋に対し遠心性収縮を引き起こすため、負荷量が大きく筋肥大効果が高いとする報告があるが、本研究においても同様に筋肥大を認めた。一方、アキレス腱付着部のEnthesis構造では、遠心性収縮による機械的ストレスの増大により、他群と比較し石灰化線維軟骨層の拡大が観察された。これらの結果は、遠心性収縮の筋力トレーニングとしての有用性を再確認するとともに、Enthesis部においては構造的変化を引き起こしており、付着部症(Enthesopathy)と言われるEnthesis部の傷害の発症要因となりうる可能性が示唆された。

  • 伊藤 貴紀, 国分 貴徳, 滋野 莉穂, 小林 章, 金村 尚彦
    セッションID: O-040
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】尺側手根伸筋(Extensor Carpi Ulnaris ; ECU)腱鞘炎は手関節尺側部痛が主症状の疾患であり、タイピング動作はECU腱鞘炎が生じる動作の一つである。 Cookらは、リストレストを用いたPlanted PostureはFloating Postureと比較し、上肢近位筋(僧帽筋、三角筋前部線維)の負担を軽減すると報告したが、ECU筋活動負担については述べられていない。本研究の目的は、リストレストの使用とタイピング動作時の手/手関節制御・ECU筋活動の関係について検討することである。

    【方法】対象は健常成人8名(男性3名、女性5名(20.2歳±0.4))、計測条件はリストレスト非使用/使用条件とした。計測課題はEnter・“saitamakenritudaigaku”・Enterの入力とし、各条件で10回繰り返した。解析区間はEnter入力間とし、解析対象はEnterの入力ミスのない5回とし、全被験者と右ECU筋活動が有意に増加した1名(A)について検討した。運動学データは3次元動作解析装置VICON、筋活動データは表面筋電計Delsysにて計測した。統計方法にはPaired t-testを用いた(p<0.05)。

    【倫理的配慮】本研究は埼玉県立大学倫理審査委員会の承認(承認番号:29976)を得た後、被験者に対して事前に実験に関する説明を行い、同意書への署名を得て実施した。

    【結果】全被験者の上肢近位筋の筋活動はCookらの報告と同様であった。また、右ECU筋活動(p=0.10)は増加傾向を示し、(A)では有意に増加した(p=0.01)。さらに、(A)では右手関節尺屈角度、右手総軌跡長、右手水平軌跡長は有意に減少した。

    【考察】リストレストの使用は上肢近位筋の手/手関節の制御を減少、持続的な右ECU筋活動を増加させるため、リストレスト非使用時のFloating Postureは運動範囲が狭小したPlanted Postureへ変化させることが示された。 つまり、リストレスト使用時のタイピング動作は上肢近位筋による運動制御を減らす利益と右ECU筋活動による運動制御を増加させる不利益を持った運動様式である可能性が示唆された。

  • 五十嵐 達也, 松岡 秀典, 星野 涼, 新井 健太, 臼田 滋
    セッションID: O-041
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】脳卒中後の筋量低下は転倒リスクの増大や能力障害と関連することから、臨床で評価することは重要である。本研究の目的は、急性期脳卒中患者に対して筋厚測定の信頼性を検討し、筋量測定としての有用性を明らかにすることである。

    【方法】脳卒中患者16名(70.3±11.9歳)を対象とした。 対象の筋は非麻痺側、麻痺側の大腿直筋(RF)、内側広筋(VM)、中間広筋(VI)、外側広筋(VL)、前脛骨筋 (TA)、腓腹筋内側頭(GM)、ヒラメ筋(SOL)で、3 名の理学療法士が2回ずつ計6回測定した。統計解析の手法は以下の通りである。検者内・間信頼性にICC(1,1)とICC(2,2)、比例誤差にBland-Altman分析、加算誤差にdiff95%CI、測定誤差にSEMとMDC95を算出した。 統計ソフトにはSPSSver.25を用い、有意水準は5%とした。

    【倫理的配慮】当院倫理審査委員会の承認を得て実施し、対象者に本研究の意図を説明して同意を得た。

    【結果】初回測定病日は12.4±7.3日であった。各筋厚値(cm)をRF、VM、VI、VL、TA、GM、SOLの順に非麻痺側/麻痺側で示す。1.61±0.28/1.58±0.46、2.22± 0.86/2.17±0.82、1.26±0.27/1.26±0.34、1.80±0.48/1.91 ±0.45、2.19±0.45/2.20±0.42、1.66±0.39/1.61±0.43、1.61±0.29/1.61±0.27であった。ICC(1,1)、ICC(2,2)は両側共に0.8以上でalmost perfect、非麻痺側GMに比例誤差を認めた。diff95%CIは全て0を含み、全筋厚のSEM(最小値-最大値)は非麻痺側0.03-0.06、麻痺側0.05- 0.09、MDC95(最小値-最大値)は非麻痺側0.08-0.18、麻 痺側0.14-0.24であった。

    【考察】ICCは0.41-0.60でmoderate、0.61-0.80でsubstantial、0.81-1.00でalmost perfectと解釈される。本研究結果ではICC(1,1)、ICC(2,2)共に0.81-1.00間でalmost perfectであり、大腿前面、下腿後面などの筋群に対して信頼性を検討した先行研究と近似した結果を得たことから、筋量測定としての有用性が示唆された。

    【結論】非麻痺側・麻痺側ともに優秀な信頼性を確認でき、筋量測定としての有用性が示唆された。

  • 小松 大輝, 長谷川 智, 幸地 大州, 渡辺 真樹, 柳澤 正, 臼田 滋
    セッションID: O-042
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】体幹機能評価指標は他の身体機能評価指標と比較して使用頻度が低く,反応性の検討も必要である。本研究は臨床的体幹機能検査(Functional Assessment for Control of Trunk: FACT)の反応性を検討することを目的とした。

    【方法】対象は当院回復期リハビリテーション病棟入院脳卒中患者44名(男性:23名,年齢:75.4歳±10.6歳,脳出血:10名/脳梗塞:34名,発症から当院入院までの期間:30.0±10.4日)とした。入院時および退院時に体幹機能(FACT,TCT),麻痺側機能(BRS),バランス能力(BBS),基本動作能力(FMS),日常生活活動能力(FIM)を評価した。FACTとTCTの天井効果として,満点の対象者の割合を算出した。反応性の指標として,Effect Size(ES),Standardized Response Mean (SRM),Relative Efficiency(RE)を算出した。ESとSRMは0.2以上で小さい,0.5以上で中等度の,0.8以上で大きい反応性があるとされており,REは1以上で基準評価指標と比較してFACTの反応性が高いと判定される。

    【倫理的配慮】本研究は当院倫理審査委員会の承認を受けて実施した。書面と口頭にて説明し,十分な同意が得られた者を対象とした。

    【結果】天井効果は,入院時および退院時でFACTで20.5%・56.8%,TCTで34.1%・79.5%であり,FACTで天井効果が低かった。ESとSRMはFACTで0.327・ 0.774,TCTで0.268・0.588であり,どちらもFACTで高値を示した。TCTを基準としたREは1.735であり,TCT と比較してFACTの方が反応性が高かった。

    【考察】FACTは今回の対象者について難易度が適切であったこと,項目が多様であり詳細な評価が可能であることが考えられ,介入の効果判定や自立度検討の目安としても適切であると考えられる。今後,下位項目についても詳細な検討が必要である。

    【まとめ】脳卒中患者を対象にFACTの反応性を検討し,TCTと比較してFACTは天井効果が低く,反応性が高かった。

  • 冨田 洋介
    セッションID: O-043
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】立位リーチ動作は手を目標物に到達すると同時に姿勢制御をするという2つの運動課題の遂行が必要となる.脳卒中患者は協調性の低下により運動学的冗長性を有効に利用できない可能性がある.本研究は立位リーチ動作における関節間協調性がエンドポイント(EP)および身体重心(COM)位置にどの程度寄与しているのかUncontrolled manifold(UCM)解析を用いて明らかにすることを目的とした.

    【方法】脳卒中患者19名(62±8歳)と健常対照群11名(65 ±10歳)を対象とした.被験者は麻痺側あるいは非利き手での立位リーチ動作を30試行実施した.マーカーを上下肢・体幹の17 ヶ所に貼付しその位置を3次元動作解析装置(Optotrak,NDI)で測定した.UCM解析の要素変数には各体節角度を,パフォーマンス変数にはEPマーカー位置またはCOM位置を用いてパフォーマンス変数を安定化・不安定化する成分の割合を算出した(EP 位置: ⊿VEP,COM位置:⊿VCOM).動作中における各種⊿Vの範囲と最小値をMann-Whitney検定で群間比較した.

    【倫理的配慮】本研究は倫理委員会の承認を得て行われ,対象者には書面・口頭で説明し書面で同意を得た.

    【結果】脳卒中群における⊿VEPの範囲および最小値は,それぞれ健常群より有意に高値(95%CI: [-0.52 -0.09],p<0.01),低値(95%CI: [0.06 0.50],p<0.05)を示したが⊿VCOMの範囲および最小値は両群間で有意差は認めなかった.

    【考察】立位でのリーチ動作では脳卒中患者のCOM位置は安定していたがEP位置は不安定にする成分が大きく,脳卒中患者はいわゆるPosture-first-strategyを選択していた.

    【まとめ】脳卒中患者は高度な姿勢制御が要求される場面では上肢動作の安定性が低下しやすい可能性が示唆された.

  • 宮澤 拓, 平田 恵介, 塙 大樹, 斎藤 雅史, 鶴田 歩, 国分 貴徳, 金村 尚彦
    セッションID: O-044
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】3軸加速度計がバランス評価に応用されており、動揺の大小をバランス能力とすることが多い。一方、ヒトの立位姿勢が単純な倒立振子ではなく多関節が協調して制御されているという知見を考慮すると、協調パタン変化を評価する必要がある。

    【方法】対象は若年群(10名,29.8±5.3歳)、高齢群(地域在住高齢者28名,73.9±5.2歳)とした。直近1年の転倒歴等の問診と、身体機能評価としてTimed Up and Go test(TUG)、Mini-BESTest、片脚立位時間等を計測した。30秒間の静止立位を開眼閉眼2回ずつ計4回計測し、後頭部・仙骨に貼付した加速度計の前後・左右方向のroot mean square(RMS)を動揺量とした。また頭部-骨盤の前後・左右加速度を相互相関にかけ位相関係を算出した。加速度パラメータを群間×視覚で2way ANOVAにかけ、高齢群ではそれらパラメータと問診及び身体機能評価との相関係数を算出した。

    【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に則り、被験者には事前に実験に関する説明を行い同意書への署名を得た。

    【結果】加速度計の前後動揺量は頭部:若年群5.9、高齢群9.2、骨盤:若年群2.9、高齢群4.3(mm/s2)で、有意に高齢群が高値であり、また左右方向でも高齢群が高値であった。頭部-骨盤動揺の相互相関係数は前後:若年群-0.19、高齢群-0.05、左右:若年群-0.11、高齢群0.03であり、前後では若年群が有意に逆位相であったが(p<0.05)、左右では有意差はなかった(p=0.08)。問診及び身体機能評価との関係では、閉眼時頭部左右動揺はMini-BEStestと有意な負の相関を認めたが(r=-0.6)、それ以外のパラメータは身体機能評価を反映しなかった。

    【考察】加速度計は若年者と高齢者を鑑別することが可能であった。しかし身体を2セグメントとした場合の多関節協調パタンは、先行研究結果よりも低い相関であり、さらなる検証が必要である。閉眼時の頭部左右方向の動揺は個人のバランス能力を反映するパラメータである可能性が示唆された。

  • 後藤 未来, 佐藤 亮輔, 田口 崇, 藤田 聡行
    セッションID: O-045
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】FLIR ONE pro(FLIR Systems社製)は,スマートフォンに装着し赤外線サーモグラフィに変換可能な機器である.医療用実機では活動筋上の表面皮膚温度の描出が可能なことが報告されている.本研究では,FLIR ONE proを用いて,感覚閾値強度の神経筋電気刺激(以下NMES)と足関節背屈運動した際の表面皮膚温の変化を描出が可能か検討した.

    【方法】健常成人19名を対象とし,同一被験者に対しNMESと座位での足関節背屈運動(30回/分)を,(1)NMESのみ,(2)NMESと足関節背屈運動,(3)足関節背屈運動のみの3群に分けて15分間施行し,それぞれ前脛骨筋上の皮膚表面温度を測定した.NMESにはESPURGE(伊藤超短波製)を用い,電気刺激条件を周波数20Hz,パルス幅180μsec,刺激強度は感覚閾値とした.測定は日本サーモロジー学会のテクニカルガイドラインに準じて行った.測定開始時と15分後に撮影した画像から前脛骨筋直上の表面皮膚温の平均値を描出した.解析は測定開始時と15分後の皮膚温に対し,SteelDwass法にて多重比較を行った.

    【倫理的配慮】研究の趣旨と方法を説明し同意を得た.

    【結果】15分後の温度は(1)33.43±1.81,(2)35.76± 1.28,(3)35.66±1.79となり,(1)(2)群間,(1)(3)群間に有意差が認められ,(2)(3)群間で有意差は認められなかった.(2)NMESと足関節背屈運動と(3)足関節背屈運動のみを施行した群で,(1)NMESのみの群よりも有意に皮膚表面温度が上昇した.

    【考察】足関節背屈運動を施行した群において,表面皮膚温度の変化を捉えることができた.また感覚閾値でのNMESでは,表面皮膚温度の変化はみられなかった.このことから,スマートフォン用サーマルカメラを用いて,筋収縮が限局して減弱している筋活動を,表面皮膚温の変化により描出できる可能性が示唆された.

  • 柚村 梨々子, 坂本 美喜, 上出 直人, 佐藤 春彦, 柴 喜崇
    セッションID: O-046
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】疼痛は、高齢者における有訴率の上位を占め、歩行能力やADLの低下をきたす要因の一つである.そこで、本研究では1年間の追跡調査を行い、疼痛強度の変化が運動機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.

    【方法】1年間の追跡調査が可能であった地域在住高齢者109名のうち、Baseline時もしくは1年後に疼痛を有した地域在住高齢82名(平均年齢71.0歳,男性15名,女性67名)を対象に、疼痛部位,疼痛継続期間,疼痛の主観的強度(Numerical Rating Scale),疼痛の生活への支障の有無、運動習慣を調査した.また身長,体重, 5m最速歩行時間,5m快適歩行時間,Chair Stand test(CST),Timed Up and Go test(TUG)を測定した.疼痛強度の変化に関与する要因の検討には、疼痛強度の変化量を従属変数に、目的変数を年齢およびCST,TUG,快適歩行時間,最速歩行時間の各変化量とする重回帰分析を用いた.有意水準は5%とした.なお,本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2016-G021B).

    【結果】疼痛の主観的強度は、Baseline時は中央値3.0(範囲0-9)、1年後は中央値3.5(範囲0-9.5)であった.生活への支障に関しては,「支障なし」の回答が56%を占めた.運動習慣のある者の割合はBaseline時、1年後ともに約 80 %であった.疼痛強度の変化は、快適歩行時間の変化のみ正の関連性を示し、(p<0.05,回帰係数2.2、自由度調整済み決定係数=0.08)、他の項目は関連がなかった.

    【結論】疼痛強度が増加すると歩行時間が延長する傾向が認められたが、その影響は少ないことが示された.今回の対象者は、疼痛は有するものの生活に支障ない者が多く、運動機能への影響が少なかったと考えられた.

  • 塩浦 宏祐, 岩井 勇気, 千須和 真幸, 黛 太佑, 佐藤 里沙, 田島 健太郎, 塩浦 明日香, 大角 哲也, 原田 亮, 臼田 滋
    セッションID: O-047
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】生活空間の拡大は介護予防において重要である。 生活空間は環境因子による影響を受けるとされているが、家族構成の影響は明らかではない。本研究の目的は、家族構成が生活空間に及ぼす影響を明らかにすることである。

    【方法】対象は群馬県高崎市在住の高齢女性(ふれあい・いきいきサロン又は介護予防教室参加者103名、通所リハビリ利用者9名、外来リハビリ患者1名)113名(平均年齢74.5±5.6歳)とし、「独居」、「夫婦のみ」「2世帯以上(多世帯)」の3群に分類した。調査項目はLife-Space Assessment(LSA)、Short Physical Performance Battery(Community-Based Scoreにて採点:SPPBcom)、JST版活動能力指標、日本語版-改定Gait Efficacy Scale(mGES)、家庭内での役割の数、自宅周辺の坂道・階段の有無、自動車運転の有無とした。解析には一元配置分散分析、Spearmanの順位相関係数、対応のないt検定を用いた。有意水準は5%とした。

    【倫理的配慮】本研究は当院倫理審査委員会の了解を得た。被検者には研究の目的と方法を説明し、書面にて同意を得た。

    【結果】対象者の内訳は独居群22名、夫婦群45名、多世帯群46名だった。LSAの平均値はそれぞれ75.7±19.1点、78.6±19.2点、77.0±18.3点であり、有意差は認めなかった。LSAとの関連はSPPB-com(それぞれrs=0.53、0.38、0.39)、JST版活動能力指標(rs=0.63、0.56、0.42)、mGES(rs=0.60、0.56、0.45)と有意な相関を認め、役割の数は独居群のみ(rs=0.69)関連を認めた。運転状況は独居群、夫婦群では運転者が非運転者に比べて有意にLSAが高いが、多世帯群では有意差を認めなかった。

    【考察】家族構成により生活空間との関連は異なった傾向を示しており、家族が生活空間に影響を与えている可能性がある。また、多世帯群のみ運転状況に有意差がみられなかったのは、家族の協力が背景にあると考えられる。

    【まとめ】介護予防活動では対象者の社会状況に合わせた関わりが求められる。

  • 田中 悠, 坂本 美喜, 上出 直人, 佐藤 春彦, 柴 喜崇
    セッションID: O-048
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】サルコペニアの診断には四肢骨格筋量の測定が必要だが,標準的な測定方法は特殊な機器や環境を要するため,地域在住高齢者を対象にサルコペニアの診断を簡便に行うことは困難である.そこで本研究では簡便に骨格筋量を推定する方法について検討することを目的とした.

    【方法】地域在住自立高齢者523名(男性152名,女性371 名,平均年齢72.7歳)を対象に,年齢,性別,身長,体重, 四肢骨格筋量,周径(上腕,下腿),握力, Chair Stand Test(CST),Timed Up ang Go test(TUG),5m快適歩行時間および5m最速歩行時間を測定した.四肢骨格筋量は,生体インピーダンス法にて測定した.四肢骨格筋量と各測定項目の関連はPearsonの積率相関係数にて検討し,また四肢骨格筋量を従属変数に,性別,身長,体重,周径(上腕,下腿),握力を説明変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った.さらに,四肢骨格筋量の推定値と実測値間の誤差についてBlandAltman分析を用いて解析した.有意水準は5%とした.なお,本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承諾を得て実施した(承認番号:2016-GO21B).

    【結果】四肢骨格筋量の推定回帰式は,四肢骨格筋量(kg)=0.055×握力(kg)+0.179×下腿周径(cm)+0.169× 身長(cm)-2.342×性別(1;男性,2;女性)+0.108×体重(kg)-19.927となり,決定係数R2は0.94であった.四肢骨格筋量の推定値と実測値の誤差では,固定誤差は認められなかった.比例誤差は有意であったが相関係数は 0.12と低かった.

    【考察】

    【まとめ】地域在住高齢者における四肢骨格筋量は,地域在住自立高齢者を対象として,簡便に測定可能な測定項目から四肢骨格筋量が推定できることが示唆された.

  • 坂本 有加, 坂本 美喜, 上出 直人, 佐藤 春彦, 柴 喜崇
    セッションID: O-049
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】加齢に伴い身体組成には変化が生じ,特に筋骨格系では骨格筋量の減少と脂肪量の増加が認められる.近年では骨格筋量減少と脂肪量増加を併せ持つサルコペニア肥満者において歩行障害や転倒のリスクが高いことが報告され問題となっている.そこで本研究では,地域在住女性高齢者の身体組成および筋力,身体機能について調査し,これらの関連を調査した.

    【方法】地域在住女性高齢者501名(平均71.9±4.5歳)を対象に,身長,体重,骨格筋指数(SMI),体脂肪率,膝伸展筋力,握力,5m努力歩行時間,Timed up and Go test(TUG),Chair Stand Test(CST)を測定した.SMIと体脂肪率は生体インピーダンス法を用いて算出した.対象者は体脂肪率(肥満≧30%)とSMI(低筋量<5.7kg/m2)で健常群(162名),低筋量群(90名),肥満群(191名),低筋量/肥満群(58名)の4群にわけた.各測定項目の群間比較は,一元配置分散分析を用いて解析した.群間で有意差の見られた項目については,年齢を共変量とする共分散分析を用いて比較した.有意水準は5%とした.本研究は北里大学医療衛生学部倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2016-G021B).

    【結果】膝伸展筋力および握力は,健常群と比較して低筋量群と低筋量/肥満群が有意に低かった.歩行時間は,健常群と比較し肥満群と低筋量/肥満群で有意に延長していた.TUGは健常群と比較し肥満群と低筋量/肥満群で有意に時間が長く,CSTは健常群と比較し低筋量/肥満群が有意に延長していた.共分散分析でもこれらの結果は同様であった.

    【結論】低筋量/肥満群では,低筋量群や肥満群よりも筋力・身体機能ともに低下していた.このことから,身体機能には,筋量だけでなく肥満度も影響することが示唆された.

  • 小島 千明, 坂本 美喜, 上出 直人, 佐藤 春彦, 柴 善崇
    セッションID: O-050
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【背景】加齢性筋減少症(サルコペニア)は、高齢者のADL・健康寿命低下に繋がるため早期介入や予防が重要である.四肢骨格筋量と筋力は関連性が高く、身体機能との関連性は弱いと報告されているが、横断研究では加齢による筋力の低下を過小評価する可能性が高いことも指摘されている.そこで本研究では、地域在住女性高齢者を対象に2年間の追跡調査を行い、四肢骨格筋量と筋力・身体機能の変化の関連性を分析した.

    【方法】対象は、2年間の追跡調査が可能であったA市在住女性高齢者49名(平均69.6±3.5歳)で、測定項目は、身長、体重、四肢骨格筋量、下腿周径、腓腹筋筋厚、膝伸展筋力、5m最速歩行時間、Timed Up and go test (TUG)、Chair stand test(CST)とした.四肢骨格筋量は生体インピーダンス法にて測定した.各測定項目の経時的変化には反復測定分散分析、骨格筋量の変化率と各項目の変化率の関連はPearsonの積率相関係数を用いて検討した.有意水準は5%とした.なお、本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2016-GO21B).

    【結果】四肢骨格筋量は、Baselineと比較して1年後には有意差はなかったが、2年後に有意に減少していた.筋厚も同様の傾向を示した.膝伸展筋力は1年後から有意な減少を認めたが、握力は2年後に有意に低下した.歩行時間は1年後で有意に短くなったが、2年後には再度延長した.TUGおよびCSTは有意な変化は認めなかった.骨格筋量の変化率との関連をみると、身長(相関係数r=0.37)、体重(r=0.57)、筋厚(r=0.31)、下腿周径(r=0.29)に有意な関連がみられた.

    【結論】加齢に伴い骨格筋量や筋厚、筋力は低下したが、身体機能は変化が見られなかった.骨格筋量低下が見られても身体機能は維持されていることが示唆された.

  • 渡邉 観世子, 佐藤 珠江, 久保 晃
    セッションID: O-051
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】ウィメンズヘルス理学療法(WHPT)は2015年にPT協会で組織化されて以降,その重要性が注目されているが,臨床現場の実態は不明確で学部教育で修得すべき知識は十分に確立されていない.本研究では学部教育で扱うべき内容を明らかにするための基礎資料を得ることを目的とし,栃木県内の病院におけるWHPTの実態を調査することとした.

    【方法】栃木県内の「病院(医療法による区分)」で一般病床を持ち,常勤の理学療法士が勤務する,リハビリテーション科,整形外科,産婦人科,泌尿器科,乳腺(外)科のいずれかが設置されている45病院に調査を依頼した.調査内容はWHPTに関する,妊娠期,出産後,女性特有の悪性腫瘍,加齢に伴う問題,女性アスリートの5つを大項目とした37症状を挙げ,2017年度の理学療法処方件数,およびすべての理学療法処方件数について回答してもらった.集計は全処方件数に対する各大項目の処方件数の割合と,各大項目のWHPTを実施している病院数の割合を算出した.

    【倫理的配慮】対象施設へ調査の目的を口頭と紙面で説明し,本調査への回答をもって同意とした.本調査は倫理審査委員会の承認を得ている(17-Io-193).

    【結果】45病院のうち42病院から回答を得た(回収率: 93.3%).全体の処方件数に対するWHPTの処方件数の割合は,平均で7.3%(平均174件)であった.各大項目の処方の割合・実施病院の割合は,妊娠期0.3%・9.5%,出産後0.2%・7.1%,女性特有の悪性腫瘍8.3%・57.1%,加齢に伴う問題86.7%・52.4%,女性アスリート3.2%・ 26.2%であった.

    【考察】女性特有の悪性腫瘍は,処方件数の割合は少ないものの,実施している病院は半数以上であり,多くの病院が対応している症状であることが分かった.処方件数が最も多かった加齢に伴う問題と合わせて学部教育に取り入れるべき内容であると考えられる.一方で妊娠や出産に伴う症状への実施は少ない現状が明らかとなった.

  • 木島 隆
    セッションID: O-052
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】近年臨床実習のあり方に問題視される場面が多くなってきており,指定規則の変更によるガイドラインにも実習方法の変更が盛り込まれている.本校では2017 年度の臨床実習(長期)よりクリニカルクラークシップ(以下CCS)導入し、導入前後に学生の良好な時間的変化を昨年の本学会で報告した.今回導入初年度にクリニカルエデュケーター(以下CE)に実習施設訪問中に聞き取り調査を行いCCS導入に際してのCEとしての感想をまとめたのでここに報告する.

    【方法】56施設62名のCEに実習施設訪問の際に聞き取り調査を実施した.対象は経験年数10.8±6.5年(平均経験年数±標準偏差:経験年数範囲:4 〜30年)であった.調査項目はCCSを実施しての感想とし,自由意見として述べて頂き集計後,①すごく良い②良い③あまり良くない④良くない⑤その他の5件に分けた.また,肯定的・否定的・その他の感想に分けカテゴリー化し傾向や性質を検討した.なお,本研究に際し施設名・氏名などを除き第三者がデータ化したため施設や個人が特定されるようなことはない.

    【結果】①21名(33.9%),②28名(45.2%),③6名(9.7%), ④1名(1.6%),④6名(9.7%)であった.肯定的意見としては,教育方法が良い(11件)や時間に余裕・業務がスムーズ(7件),チェックリストが良い(6件)などであった.否定的な意見は,レポートは必要(7件)や学生の考え方が分かりづらい(4件)などであった.その他としては,学生の積極性が必要(5件)などの感想であった.

    【考察】今回の調査の結果CCSでの実習方法はおおむね良好な感想であった.肯定的な意見は主に学生の経験や成長を考えた教育者的思考が伺えた.否定的な意見は教育者自身の経験からの意見や教育方法への不安がみられた.実習方法の変更は,変更に至った背景や方法の正しい理解と実践経験が重要であると考えられる.

  • 竹沢 友康
    セッションID: O-053
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【はじめに】当院は平成28年より診療参加型実習へと移行した.養成校,実習生に対しては事前に実習指導者会議等を介して報告し了承を得た.しかしながら,施設と養成校間での情報共有,共通認識だけでなく,実習生の診療参加型実習における実習形態,実習指導に関する理解度を把握することが診療参加型実習を推進する上で重要であると考え.実習開始後にアンケート調査を実施した.

    【対象】平成28年から平成30年までに当院で臨床実習を行った理学療法学科学生8名(男性:3名,女性5名,平均年齢24.1±6.38歳)

    【方法】自己記入式質問紙を用いて独自に作成したアンケート調査を実施.アンケートは1.実習形態,2.実習生の理解度,3.実習指導からなる12質問項目と自由記載とした.回答方法は5件法とし,分析方法は各選択肢の回答数を集計して項目ごとに割合を算出.自由記載は質的データ分析法の内容分析を参考にした.

    【倫理】ヘルシンキ宣言に則り対象者に対しては説明と同意を得た

    【結果】アンケートにおける1.実習形態に関しては,「そう思う」「全くそう思う」の割合は,72.5%.2.実習生の理解度に関しては,「そう思う」「全くそう思う」の割合は,85%,3.実習指導に関しては,「そう思う」「全くそう思う」の割合は100%.自由記載項目においては,ケースレポート,レジュメ作成有無に関する項目が最も多かった.

    【考察】ケースレポート,レジュメ作成に関しては,施設及び養成校での実習評価に影響することから,診療参加型実習においても作成したいとの意見が見られた.このことは実習生の実習における興味,関心事項を表していると同時に臨床実習が形骸化している可能性を示しているとも考えられる.診療参加型実習への移行を目前に,今一度,臨床実習に関して養成校,実習生,施設の3者間において再検討し適正化を図る必要性があると考える.

  • 本澤 薫, 下井 俊典
    セッションID: O-054
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【背景】理学療法教育における臨床実習では自己効力感ならびに社会的スキルは人間関係の構築において必要な能力である。臨床実習の実習形態は、1人の学生を1人の実習指導者が担当する1:1モデルと、2人の学生を1人の実習指導者が担当する2:1モデルが導入されている。臨床実習での自己効力感と社会的スキルの関連性についての報告はみられるが、実習形態別には報告されていない。 そこで実習形態別に自己効力感と社会的スキルの関係について明らかにすることを本研究の目的とする。

    【対象】対象者は平成30年度第3学年85名のうち、評価実習を実施した77名である。2種類のアンケートを2回実施し、すべての回答で不備のあった9名を除外した。

    【方法】当学科3年生は夏季休暇中に3週間の評価実習を実施している。今回、実習前後で自己効力感と社会的スキルを計測することのできる自己効力感尺度ならびにKiss-18(Kikuchi's Scale of Social Skills:18Iitems)を用いてアンケートを実施した。自己効力感尺度は23項目、Kiss-18は18項目から構成される。両尺度とも回答は5件法とした。結果は対象者全体で比較する他に実習形態別に群わけし、実習前及び実習後で自己効力感と社会的スキルの関係をSpearmanの相関係数を用いて求めた。本研究は国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を受けている(18-Io-47)。

    【結果】対象者68名のうち、1:1モデル群は44名、2:1モデル群は24名であった。全体、1:1モデル群、2:1モデル群の各々で有意な相関が認められた(p<0.01)。実習前の相関係数(r)は0.57、0.59、0.58であり、実習後の相関係数(r)は0.57、0.48、0.78であった。

    【考察】今回の結果から、先行研究同様に自己効力感と社会的スキルの相関がみられ、実習後は1:1モデルと比べて2:1モデルで強い相関係数がみられた。2:1モデルの臨床実習は患者様や指導者のみならず、一緒に実習を行っている学生との人間関係も考慮する必要があるからではないかと考える。

  • 吉川 和孝, 唐木 晃一
    セッションID: O-055
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】2010年4月30日に厚生労働省医政局より理学療法士(以下PT)などのコメディカルスタッフによる痰の吸引行為が許可された。しかし実際にどの程度の施設でPTによる吸引が行われているのかを報告した研究は少ない。そこでPTによる吸引行為の実施状況や傾向について調査を行った。

    【方法】対象は関東圏の病院・有床診療所とし、アンケート期間は2018年12月1日〜2019年3月31日とした。調査内容は吸引行為が認められているか、いつから吸引行為が認められたか、病院機能、施設の病床数、PTの常勤人数とした。アンケート方法はアンケートツールSurveyMonkey®を使用し、単純集計を行った。

    【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言を厳守して行った。また研究概要を説明し、同意を得た。

    【結果】108施設にアンケートを依頼し、67施設から回答を得た。回収率は62%であった。吸引行為が認められていたのは39施設(58%)で認められていない施設は28施設(42%)であった。施設の病床数別でみると、101床〜200床群で吸引行為が多く行われている傾向(67%)があり、PTの常勤人数別でみると11 〜20人群で多く行われている傾向(80%)があった。

    【考察】施設単位でアンケート調査を行い、約半数の施設で吸引が許可されていることが明らかになった。しかし実際には施設単位で吸引行為が認められていても、個人単位で吸引行為が認められていない場合もあるため、PTの吸引実施率はより低い数字である事が考えられる。 今後養成校のカリキュラム改訂により「喀痰等の吸引」が必須化となるため、施設内での研修会実施や外部の研修会参加などを推進し、PTによる吸引行為の知識技術向上が必要になると考えられる。

    【まとめ】PTによる吸引行為が認められてから9年になるが、吸引が認められていない施設も多い。今回の研究は調査対象が少ないため、今後大規模調査が必要であると考えられる。

  • 岩澤 裕之, 鈴木 智裕, 岩崎 さやか, 西山 昌秀, 近藤 千雅, 原口 直樹
    セッションID: O-056
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【はじめに,目的】脚伸展筋力は動作や運動耐用能との関連が強いと報告されているが,測定には通常大型の専門機器を必要とし,臥床患者の測定を簡便に行うのは難しい.ベッド上での正確かつ簡便な測定方法が確立できれば,臥床患者の筋力の把握や介入の効果判定に寄与すると考えられる.本研究の目的は,臨床で広く使用される牽引式徒手筋力計を用いた新たなベッド上脚伸展筋力評価の信頼性,妥当性を明らかにすることである.

    【方法】対象は健常成人女性8名(28.1 ± 4.0歳)16肢と した.被験者はヘッドアップ60°のベッドに背臥位となり,牽引式徒手筋力計(Mobie MT-100,酒井医療株式会社)のベルトを足底の舟状骨結節レベルと頭側のベッド柵にかけ,ベルトが水平になるよう配置した.ベルトの長さは最大努力下での脚伸展時に膝屈曲角度が60°となるよう調節し,脚伸展筋力を測定した.5回の測定のうち最大・最小を除いた3回の平均値(単位:kgf)を代表値とした.検者内信頼性をICC(1,1),検者間信頼性をICC(2,1)にて検討した.また,妥当性の検討として,ストレングスエルゴ240(三菱電機エンジニアリング株式会社)と牽引式徒手筋力計による脚伸展筋力の相関について,Pearsonの相関係数を算出した.ストレングスエルゴを用いた測定では,等速性脚伸展筋力(50 回転/分)を2回測定し,最大値(単位:Nm)を採用した.有意水準は5%未満とした.本研究は聖マリアンナ医科大学臨床試験部会の承認を得て実施した.

    【結果】ICC(1,1)は0.79,ICC(2,1)は0.80であった.ストレングスエルゴと牽引式徒手筋力計による脚伸展筋力には有意な相関を認めた(r = 0.79).

    【結論】牽引式徒手筋力計による新たなベッド上脚伸展筋力評価は高い検者内,検者間信頼性を示し,既に信頼性が確立されているストレングスエルゴとの相関も高いことが示された.今後は高齢者や疾病を有する患者を対象とし,ADL動作との関連も含めた検討が必要である.

  • 江口 美咲樹, 宮坂 祐樹, 濱崎 圭祐, 黒川 純
    セッションID: O-057
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)とは,運動器の障害によって移動機能が低下した状態を示す.ロコモ度別に身体機能を調査した研究は多いが,変形性膝関節症(以下膝OA)に限定してロコモ度別の傾向を調査した研究は少ない.そこで本研究の目的は,ロコモ度別に膝OA患者の身体機能を調査することである.

    【方法】対象は,当院を受診した膝OA患者64名(男性8名,女性56名),平均年齢71(47-87)歳,身長156.5(140-177)cm,体重55.5(42-97)kgとした.リハビリ初回時に膝関節屈曲・伸展角度,体重支持指数(Weight Bearing Index:以下WBI),Visual Analogue Scale(以下VAS)を用いADL満足度・膝の疼痛を測定し,ロコモ度テストにてロコモ度を算出した.又X線画像をもとに医師がKellgren-Laurence(以下K-L)分類を診断した.統計手法はShapiro-Wilk検定を用い正規性を調査し,各項目をロコモ度1,2でMann-Whitneyの検定,t検定を用い比較検討した.ロコモ度別のK-L分類の差はカイ二乗検定を用い検討した.解析ソフトはR2.8.1(CRAN,freeware)を用い,有意水準は5%とした.

    【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に基づき,当院の倫理規約を尊守して実施した.

    【結果】ロコモ度1は伸展角度:0(-9-0)°,ADL満足度:24 (10-49),歩行時痛:46(20.5-57.5)であり,ロコモ度2は伸展角度:-5(-10--5)°,ADL満足度:50(27-71),歩行時痛:65(40-74)であり有意差を認めた(p=0.018,0.014,0.002).屈曲角度,WBI,年齢,身長,体重は有意差を認めなかった.またロコモ度とK-L分類とは有意な差は認められなかった.

    【考察】ロコモ度が高いほど,膝伸展制限があり,ADL 満足度は低く,歩行時痛が高値を示す結果となった.これらの項目は活動量を低下させる要因となるため,ロコモ度別に有意な差が認められたと推察する.また,年齢とロコモ度は関連があるといわれているが,今回は膝に疼痛がある患者を対象に行ったため,年齢に有意差が見られなかったと考える.

    【まとめ】本研究の結果ではロコモ度と伸展制限,ADL 満足度,歩行時痛が関連した.

  • 久保田 圭祐, 園尾 萌香, 塙 大樹, 平田 恵介, 藤野 努, 国分 貴徳, 金村 尚彦
    セッションID: O-058
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】変形性膝関節症(以下,膝OA)において,膝関節局所に集中した圧縮応力はその進行を助長する.本来,ヒトの歩行は,各周期に一定の運動パターンになることはなく,わずかな変動性を有している.一方で,膝OAは関節可動域制限や筋の同時収縮に伴い,この変動性が減少する.その中でも筋の同時収縮に伴う変動性低下は異常な圧縮応力に直結する.我々は,非線形解析手法の一つであるLempel-Ziv Complexity(以下,LZC)を用いて,連続歩行における筋活動パターンの変動性を定量的に評価し,膝関節への圧縮応力を反映する指標としてLZCの有用性を検討した.

    【方法】対象は健常若齢者11名(Y群)と健常高齢者10 名(E群),膝OA患者10名(OA群).表面筋電図計を用い,片側下肢5筋に電極を貼付,3km/hにおける1分間の歩行時筋活動を採集した.後半30秒間における筋活動データに対してLZCを実施し.それぞれ変動性を算出した.統計解析には,Kruskal-Wallis検定を用いた.

    【倫理的配慮】本研究は,埼玉県立大学倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:28507).

    【結果】大腿直筋,外側広筋はY群と比較してE群とOA 群で有意に変動性が減少した(p<0.05).その一方で,内側広筋に関してはY群と比較してE群においてのみ,有意に変動性が減少した.

    【考察】先行研究において,LZCは筋疲労によって減少することが報告されている.本研究では,大腿直筋と外側広筋は,E群とOA群においてLZCが有意に減少した.しかし,内側広筋はE群のみ減少した.これは,高齢者は加齢に伴って大腿広筋群全体の筋力低下の影響を反映しているが,その一方で膝OAは膝関節内側への圧縮応力の増加に対する代償的筋活動として大腿直筋と外側広筋がより過剰に活動し,筋疲労が生じている可能性が考えられる.これらのことから ,LZCは膝OA患者における特徴的な筋活動パターンを反映する可能性がある.

  • 田中 博之, 小野 達也, 西﨑 香苗, 池上 仁志
    セッションID: O-059
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【はじめに】健常者の立ち上がり動作には股関節が100° 以上屈曲することが報告されており、THA等により股屈曲制限が生じている患者では、健常と異なるパターンで立ち上がることが推察される。本研究では、股屈曲制限下での立ち上がり動作の筋電図学的特徴を明らかにすることを目的とした。

    【対象と方法】対象は健常男性10名(平均年齢26.8±4.1歳)とした。運動課題は、下腿長と同じ高さの座面からの立ち上がり動作とし、股関節装具による股屈曲90°制限下での立ち上がり(以下制限あり群)・装具なしの立ち上がり(以下制限なし群)を各3回施行した。左前脛骨筋、中殿筋、大殿筋、腹直筋等に電極を貼付し、課題遂行時の筋活動および徒手筋力測定に準拠した最大随意収縮(以下:MVC)を表面筋電図計で記録した。立ち上がり動作を3相に分け、MVCより各相の%MVCを算出した。 統計は対応のあるt検定を用いた(p<0.05)。

    【結果】第1相中殿筋は制限あり群2.8±1.6%制限なし群 1.84±1.0%(p=0.002),大殿筋は制限あり群2.6±1.8%制限なし群2.1±1.3%(p=0.04)であり、他筋に有意差はなかった。第2相は中殿筋が制限あり群1.8±1.0%制限なし群1.3±0.8%(p=0.03),前脛骨筋は制限あり群6.4± 4.3%制限なし群4.1±2.1%(p=0.02)であった。第3相に有意差はなかった。

    【考察】本検討より、股屈曲制限は、立ち上がり第1 〜2 相に影響することが明らかとなった。立ち上がり動作の初期相で生じる体幹前傾は下肢関節モーメントに影響するため立ち上がり動作において重要な要素であることが知られている。股屈曲制限下での立ち上がりは体幹前傾が減じるため、第1相では大殿筋、中殿筋による股関節外旋、第2相では前脛骨筋による下腿前傾を増大させて身体重心の前方移動を行ったと推察された。

  • 菊原 日和, 樋口 大輔
    セッションID: O-060
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】3歳未満児を持つ母親において腰痛・肩こり、そのコントロール感、育児・日常生活動作(ADL)の困難感の3者の関連性を明らかにすることを目的とした。

    【方法】3歳未満児を持つ母親404人(33.3±4.6歳)を対象とした。調査項目は①腰痛・肩こりの強度(VAS)、 ②コントロール感(7段階リッカート尺度)、③育児・ADLの困難感(2種類の質問紙)の3項目とした。①を独立変数、②を媒介変数、③を従属変数とした媒介分析を行った。ただし、肩こりのモデルにおいては腰痛、腰痛のモデルにおいては肩こりを調整変数とし、それぞれの影響を除去した。統計解析の有意水準は危険率5%とした。

    【倫理的配慮】無記名式アンケートにつき回答したことをもって研究参加に同意したこととみなした。高崎健康福祉大学倫理審査委員会の承認を得た(No.2967)。

    【結果】肩こり・腰痛の強度はそれぞれ37.6±27.7点、 34.5±28.4点であった。また、肩こり・腰痛のコントロール感はそれぞれ3.4±1.6点、3.3±1.6点、育児動作・ADL困難感はそれぞれ5.1±3.7点、7.6±6.8点であった。 肩こりのモデルでは、コントロール感および肩こりの強度は育児・ADL困難感と関連しない、または、弱く関連する程度であり、コントロール感が媒介することは確認できなかった。一方、腰痛のモデルでは、コントロール感が腰痛の強度と独立して育児・ADL困難感と関連しており、コントロール感が媒介していることが確認できた。

    【考察】肩こりのコントロール感は肩こりの強度と育児・ADL困難感とを媒介しなかったのに対して、腰痛のコントロール感が腰痛と困難感とを媒介したことは、腰痛が生じやすい中腰姿勢や腰の屈伸を伴う動作は工夫によって回避することができる場面があり、そのことがコントロール感として困難感に影響を与えたと考えられた。

    【まとめ】3歳未満児を持つ母親において腰痛のコントロール感はその強度に関わらず育児・ADLに影響を与える。

  • 原田 大樹, 井上 大介
    セッションID: O-061
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【はじめに】当院では患者支援の均一化を図るため、3名でグループを構成、グループ単位で患者を担当する形式を取っている。また毎月実績指数の予測を行っている。

    【目的】グループ担当によって患者支援の均一化が図れているか、予測と誤差がどの程度生じているのか、また入院時に得られる情報で実績指数に影響する因子は何かを明確にすることを目的とした。

    【方法】対象は当院回復期リハビリテーション病棟に平成30年5月1日から平成31年1月31まで入院していた107名とした。データは当院データベースより後方視的に収集した。調査項目は、担当経験年数、担当グループ、入院日、退院日、年齢、入院時日常生活自立度評価の運動項目(Functonal Independent Measure motor:FIMm)、退院時FIMm、入院時Vitality Index(VI)、予測した退院時FIM、予測した在院日数、予測した実績指数とした。 グループ毎の各項目の差を把握するためKruskal-Wallis 検定、また実績指数と関連する項目を把握するためSpearmanの順位相関係数を用いた。統計処理はSPSS for Windowsを使用した。

    【倫理的配慮】当院倫理委員会にて承認を得た(受付番号:310203号)。

    【結果】グループはA,B,Cの3グループであり、各グループの値をA,B,Cの順に示す。入院時FIMmは50.0,51.8,50.2、退院時FIMmは73.3,73.3,72.9、FIMm利得は23.1,21.5,22.7、入院期間は49.5,50.6,43.5、実績指数は55.4,43.9,56.0、予測誤差についてFIMm利得は1.71,-0.6,0.3、入院期間は-6.7,-10.8,-3.2、実績指数は6.7,0.9,5.9であり、いずれの調査項目においても各グループ間で優位な差は認めなかった。関連性については実績指数と入院時FIMmが有意な低い負の相関を認めた(p<0.05,r=-0.314)。

    【考察】グループ担当制によるグループ毎の臨床能力の差の是正が行われていることが示唆された。また実績指数を予測する上で入院時FIMmが指標となる可能性が示唆された。

  • 柴田 信也, 大石 敦史, 平尾 利行, 澤野 靖之
    セッションID: O-062
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】若年期腰椎分離症(分離症)患者の身体機能を報告した文献は散見されるが、分離症患者の障害の程度と身体機能について関連性を述べた報告は渉猟した限りみつからない。本研究の目的は分離症患者における障害の程度と身体機能の関連性を明らかにすることである。

    【方法】対象は2016年11月〜2019年2月に当院で分離症と診断された15歳未満の75例(男性59例、女性16例)とした。対象に対し、指床間距離(Finger Floor Distance:FFD)、腹臥位股関節外旋可動域・内旋可動域、他動下肢伸展挙上角度(Straight Leg Raising:SLR)、踵殿間距離(Heel-Buttock Distance:HBD)を計測した。 腰痛による障害の程度はOswestry Disability Index (ODI)、スポーツ時腰痛の程度はVisual Analog Scale (VAS)を用いた。各測定項目とODIまたはVASの関連性について、Spearmanの順位相関係数を用いて検討した。

    【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に沿って対象者の倫理的配慮を行った。

    【結果】ODIと各身体機能は右HBD(r=0.30,p<0.01)と左HBD(r=0.29,p<0.05)にのみ有意な弱い正の相関を認めた。また、VASと各身体機能の間に相関を認めなかった。

    【考察】分離症患者のODIに影響する身体機能因子を調査した本研究の結果、大腿前面の柔軟性が関連していることが明らかとなった。大腿前面の柔軟性改善は、腰部への機械的ストレスを軽減させ、分離症患者における障害の程度を改善させる可能性があると考える。しかしVASと身体機能は相関を示さなかったことから、運動中における腰痛の軽減には下肢筋の柔軟性改善以外にも必要な要因があると考える。

    【まとめ】分離症患者における障害の程度には大腿前面の柔軟性が関連していた。

  • 斎藤 雅史, 宮澤 拓, 市川 智也, 石橋 未奈, 吉澤 慎太, 熊谷 森, 小田切 愛, 平塚 民子, 小越 悠行, 石橋 俊郎
    セッションID: O-063
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】側弯症に対する治療はCobb角に応じて経過観察・装具療法・手術が基本である.思春期に進行する症例がいるが,この時期に理学療法を行うことでCobb角の改善を図り,装具療法・手術への移行を少なくすることが望ましい.本研究では側弯症患者に対して構築性/機能性に分類し,理学療法の有用性を検討した.

    【方法】対象は側弯症と診断された小学生から高校生の52名,X線にてCobb角,椎骨の回旋の計測を行った.double curve ,回旋変形,家族歴のうち一つ以上該当する症例を構築性,その他症例を機能性に分類した.統計学的解析はCobb角変化角度に対して,機能性/構築性の分類×curve type×回旋の有無×家族歴の有無で多元配置分散分析にかけた.

    【倫理的配慮】症例およびその保護者に対し,治療介入前に研究趣旨と内容を十分に説明し同意を得た.なお同意が得られない場合も治療介入には影響しないことを説明した.研究利用するデータは,年齢・性別・レントゲン読影結果・問診内容のみとし,匿名化して解析し個人が特定できないようにした.

    【結果】方法に則って分類した結果,構築性は25名,機能性は27名であった.構築性のCobb角が改善した症例は6名(24%),不変17名(68%),悪化2名(8%).機能性は改善7名(26%),不変19名(70%),悪化1名(4%)であった.double curveよりsingle curveの改善率が高かったが(p<0.001),構築性/機能性の分類は治療結果に関連しなかった.

    【考察】構築性/機能性に分類し理学療法を行った結果,改善率に有意差はみられなかった.思春期側弯症の発症・進行には,遺伝的背景やメラトニン欠乏による病因説から骨形態的な問題がある(特に構築性).そのため理学療法は根拠がないとされているが,今回の結果では両群ともに良好な結果を示した.

    【まとめ】理学療法によりCobb角が維持・改善された症例は多く,構築性および機能性側弯に対して理学療法の有用性が示唆された.

  • 鈴木 翔太, 中澤 理恵, 坂本 雅昭
    セッションID: O-064
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】投球障害肘では,肘関節に加わる外反ストレスが重要な原因とされている.そのため肘の外反制動に作用する前腕筋群の機能低下は,パフォーマンス低下,障害発生に繋がると考えられる.本研究は前腕機能及び投球パフォーマンスの経時的変化を捉え,コンディショニング及び投球障害予防の一助とすることを目的とした.

    【方法】対象は整形外科的疾患または疼痛がなく,全力投球可能な大学生準硬式野球チームの選手10名とした.秋季リーグ戦をオンシーズンと定義し,シーズン前後に前腕機能評価5項目(握力,ピンチ力,手関節タイトネス,尺側手根屈筋筋力,尺側手根屈筋筋硬度)とパフォーマンス評価1項目(投球速度)を測定した.各評価項目のシーズン前後の比較と,シーズン前後の変化量を算出し投球速度と前腕機能評価の相関を算出した.

    【倫理的配慮】本研究は群馬大学人を対象とする医学系研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した.対象者には研究内容を説明し,同意を得た上で実施した.

    【結果・考察】シーズン前後で前腕機能,パフォーマンス評価のいずれの項目においても有意差を認めなかったが,シーズン後に投球側の尺側手根屈筋筋力は向上する傾向を示し,投球速度は低下する傾向を示した.トレーニング効果により尺側手根屈筋筋力が向上し,全身の疲労感により投球速度が低下したと考えられる.投球速度と前腕機能評価では,有意な相関は認められなかったが,投球速度が低下するとピンチ力と尺側手根屈筋筋力は向上,握力は低下する傾向を示し,投球速度と尺側手根屈筋筋硬度でも同様の傾向を示した.前腕筋は投球動作で活動するため個々の筋力が向上したが,握力低下は全身の疲労感を表していると考えられ,パフォーマンス低下を発見する一助となることが示唆された.また,尺側手根屈筋筋硬度は全身の疲労感を考慮することでパフォーマンス低下予測の可能性が示唆された.

  • 吉野 直美, 渡部 真由美, 遠藤 浩士, 雨宮 克也, 鈴木 大地, 倉澤 哲, 佐々木 雄太, 渡邊 雅恵, 服部 寛, 仲野 恵
    セッションID: O-065
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】埼玉県理学療法士会国際スポーツ競技対策委員会では、2017さいたま国際マラソン大会からランナーズケア活動(以下、ケア活動)を開始した。2017年は競技前後のランナーに対して実施し、利用目的や満足度等についてのアンケート調査を行い、第37回関東甲信越ブロック理学療法士学会で報告した。2018年は競技後のみのランナーに対して実施し、同様のアンケート調査も行った。今回は、この2回のケア活動の概要をまとめ、今後のケア活動に検討を加えたので報告する。

    【方法】対象は、2017、2018さいたま国際マラソン大会で埼玉県理学療法士会が設営したケアブースを利用したランナー、2017年は253名、2018年は229名であった。利用者への調査はケア活動に対するアンケートを無記名で回答いただいた。なお、本研究はヘルシンキ宣言に沿ったものである。

    【結果】2017年のみ実施した競技前の利用者の利用目的は、パフォーマンス向上が51.7%と最も多く、続いて、疲労回復、疼痛緩和、テーピングであった。競技前の理学療法サービス内容は、ストレッチやマッサージの他、テーピングや筋機能促通等を実施した。競技後の利用目的は、2017年は疲労回復84.2%、疼痛緩和59.3%であり、2018年も同様の傾向であった。競技後の理学療法サービス内容は、2017年、2018年ともに、ストレッチとマッサージが多い傾向であった。

    【考察】競技後の利用目的は、2017年、2018年ともに疲労回復と疼痛緩和が大半を占めた。2017年のみ実施した競技前の利用目的は、パフォーマンス向上が最も多かったことから、利用者のニーズの高さが示された。昨今のスポーツ理学療法分野では、疼痛緩和や疲労回復のみならず、傷害予防やパフォーマンス向上へのアプローチも実施されている。今後、スポーツ傷害予防やパフォーマンス向上をも目的としたケア活動として、競技後だけでなく競技前のケア活動の必要性が示唆された。

  • 遠藤 洋平, 櫻井 瑞紀, 可児 利明
    セッションID: O-066
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】瀬下らは、腹筋群の強化は転倒予防効果があると述べている。筆者は安全かつ簡便に行える座位での腹筋運動を考案し筋活動面から筋力増強効果の可能性を示したが、介入効果の検討まで至っていない。本研究は座位で行える腹筋運動の介入効果を明らかにすることを目的とする。

    【方法】A病院回復期リハビリテーション病棟入院中で座位保持可能、体幹・股関節屈曲MMT2~4、上肢BRS Ⅴ以上の8名を対象としクロスオーバーデザインとした。 測定項目は座位側方リーチ距離・FACT・BBS・TUG・FRTとした。座位での腹筋運動は①両大腿遠位部を両上肢で押す②片側下肢を挙上位保持し対側上肢で抵抗の2種類を実施した。介入群は等尺性収縮10秒×5set×2種類/日を2週間、対照群は通常運動療法を2週間実施し介入前後に上記項目を測定した。解析はJstatを用い、介入群と対照群の前後の測定値を二元配置分散分析にて比較検討し、交互作用を認めた項目に対し対応のあるT検定を実施した。有意水準は5%とした。

    【倫理的配慮】竹川病院倫理審査委員会の承認を得て、データ測定前に対象者に説明し同意を得た。

    【結果】全ての項目において前後の測定値に主効果を認めた。交互作用を認めたのはFRT(P<0.01)、FACT (P<0.05)であった。FRT・FACT共に介入群の前後差で有意差を認め(P<0.01)、対照群の前後差では有意差を認めなかった。

    【考察】瀬下らは、腹筋群の強化は高齢者におけるバランス機能向上に寄与する可能性があると述べている。本研究でも簡便に行える座位での腹筋トレーニング実施後にFRTの改善を認め、先行研究を支持する結果となった。

    【まとめ】考案した座位で行える腹筋運動を実施することで、FRT・FACTの改善が図れ、バランス及び体幹機能に対する介入効果が示された。

  • 佐藤 洋平
    セッションID: O-067
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】内側縦アーチ高の改善には、足趾圧迫運動が有効であるとされるが、母趾単独ではアーチ高に改善しないと報告がある。しかし、圧迫運動において母趾と他趾で比較した研究は渉猟し得ない。本研究の目的は、母趾と3趾の圧迫運動による、アーチ高への影響を明らかにすることである。

    【方法】対象は、健常成人30名(男性18名、女性12名、29(22-57)歳)の右側30趾を無作為に2群に分類した(母趾群15、3趾群15)。 運動方法は、立位膝関節伸展位・足関節背屈0°で、母趾・3趾をゴム球突起に圧迫する等尺性収縮で、50回ずつ週3回を6週間行った。尚、母趾・3趾での圧迫の確認は、足圧分布計を用いて目視で行った。運動効果の検証は、立位の舟状骨粗面高を足長で除し、百分率で求めるアーチ高率を用いた。アーチ高率は、運動前・後、6週後で測定した。 統計処理は、運動前のアーチ高率、運動前後のアーチ高率変化量、運動前-6週後のアーチ高率変化量を母趾群と3趾群で比較するため、2標本T検定またはMann-WhitneyのU検定を用い、有意水準は5%とした(統計ソフトR2.8.1)。

    【倫理的配慮】対象者には本研究の趣旨及び対象者の権利を口頭で説明し同意を得た。

    【結果】アーチ高率(運動前、運動後、6週後)は、母趾群18.48%、18.23%、17.27%であり、3趾群18.85%、19.63%、19.72%であった。運動前のアーチ高率は母趾群と3趾群で有意差を認めなかった。運動直後(p<0.01)、6週後(p<0.05)では、3趾群が母趾群に比べ有意に高値を示した。

    【考察】本研究より、アーチ高上昇のために足趾圧迫運動をする場合は3趾で行うと効果的であることが示唆された。3趾群のアーチ高が有意に高値を示した要因として、3趾圧迫運動では後脛骨筋が作用し後足部が回外することで足趾屈筋群がアーチ形成に効率よく働いたことが影響したと考える。

  • 木村 黎史, 鍋島 雅美, 内海 彩香, 小野 浩一, 平井 竜二, 保坂 直基
    セッションID: O-068
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】大殿筋は歩行周期の中では立脚初期に最も働くとされており,大殿筋の萎縮は跛行の原因の1つと報告されている.そのため,大殿筋は歩行動作の改善において重要であり,エクササイズ(以下Ex)が実施される機会は多い.しかし,どの種目の大殿筋Exが歩行へ影響を与えるかを検討したものは少ない.そこで今回,ホームExで実施されることの多い3種類の大殿筋Exが歩行へ与える影響を明らかにすることを目的とした.

    【方法】対象は健常成人22名(男16女6名,年齢29.9±6.5 歳,身長167.4±6.9cm,体重65.4±8.7kg)とした.大殿筋Exは,片脚で40cm台からできるだけ速く立ち上がる“立ち上がり群(以下A群)”,膝関節110度屈曲させ片脚で殿部を挙上する“ブリッジ群(以下B群)”,腹臥位で腰椎を後弯させ膝関節屈曲90度で伸展する“股関節伸展群(以下C群)”の3種とし,対象を6,8,8名とランダムに分類した.Exは10回3セットを週3回,3週間実施した.Ex実施前後において歩行評価と大殿筋筋力評価を行い,そのスコアの変化率を算出した.歩行評価は10m快適歩行(速度,歩幅,歩行率),10m最速歩行(速度),2ステップテストを実施し,大殿筋筋力評価はBIODEXを用いて測定した.統計学的分析は一元配置分散分析を行い,多重比較検定はBonferroni法を用いた.

    【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき研究への理解を 得た.

    【結果】Ex前における各スコアは10m最速歩行速度を除き,各群間に有意差を認めなかった.Ex前後の変化率は,歩幅においてのみA群(110%)がB群(101%),C群(100%)と比較して有意な向上を認めた(P<0.05).大殿筋筋力は各群間で有意差を認めなかった.

    【考察】今回の条件においては大殿筋筋力の向上は認めない中,立ち上がりExが歩行動作における歩幅を増大させた.歩幅が増大すると股関節屈伸運動が大きくなることが報告されており,今回選択したExの中で最も屈伸運動が大きい立ち上がりExは,運動パターンの変容として歩幅の向上につながったと考えられた.

  • 宮田 一弘, 長谷川 智, 岩本 紘樹, 篠原 智行, 臼田 滋
    セッションID: O-069
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】大腿骨近位部骨折は高齢女性で受傷率が高く、歩行能力については受傷前まで回復しにくい。歩行速度にはバランス能力の関与が大きいが、どのバランス構成要素が歩行速度と関連しているかは不明である。そこで、本研究ではBalance Evaluation Systems Test (BESTest)のセクションを用いて、大腿骨近位部骨折後の高齢女性の歩行速度を判別するCutoff値を明らかにすることを目的とした。

    【方法】本研究は2病院にて理学療法を実施した大腿骨近位部骨折後の者を対象とし、取り込み基準は65歳以上の女性、病棟での歩行が監視以上のレベルの者で、計46名 (81.2±6.2歳)であった。評価項目は、BESTest、快適歩行速度(CWS)とした。統計解析として、アジア人のサルコペニアの診断基準であるCWS 0.8m/sで2群に分け、群を従属変数、BESTestの各セクションを独立変数として、Receiver operating characteristic(ROC)曲線より歩行速度判別するCutoff値およびArea Under the Curve(AUC)を求めた。

    【倫理的配慮】本研究は後方視的研究のため個人情報が特定されないように配慮し、各施設の倫理審査委員会の承認を受けて実施した。

    【結果】全対象者の手術からの期間、BESTest、CWSの平均値(SD)は82.1(6.2)日、70.1(13.5)%と0.76(0.31)m/sであった。歩行速度が速かった群は22名であり、ROC解析からCutoff値(AUC)は生体力学的制約が70.0% (0.78)、安定限界が88.1%(0.63)、予測的姿勢制御が66.5%(0.82)、反応的姿勢制御が69.4%(0.77)、感覚機能が83.4%(0.73)、歩行安定性が64.3%(0.92)であった。 歩行安定性が高精度、安定限界を除く4つのセクションが中等度の精度であった。

    【考察】本研究結果より、BESTestの各セクションは大腿骨近位部骨折後の高齢女性の歩行速度を判別することができることが示唆された。また、判別精度の高かったセクションのCutoff値は臨床場面にて歩行速度向上に対する理学療法の一つの指標となると考えられる。

  • 片田 昌志, 松村 福広, 安中 正法, 亀山 祐, 大木 由香梨
    セッションID: O-070
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】外傷後に生じる鉤爪趾の原因は,骨折部および周術期の関節可動域運動不足による長母趾屈筋の癒着が報告されている.今回我々は外傷後早期から関節可動域運動を行ったが,鉤爪趾を来した4例を経験したので報告する.

    【対象】下肢外傷後に鉤爪趾を来した4例.平均年齢51.5 歳(40 〜64歳).原因は脛骨遠位端骨折3例(AO分類A3:2例,C3:1例),足関節果部骨折1例(AO分類C2:1例).開放骨折はGustilo分類typeⅡ:1例,ⅢA:2例,ⅢB:1例であった.全例,一期的外固定後に内固定を行い,術直後から関節可動域運動を行った.また,4例中2例は外固定中から装具療法を行い,MP関節中間位,IP関節伸展位で保持した.術後6週から部分荷重を開始,以降は歩行指導と荷重位筋力練習を追加した.

    【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき,個人情報保護に配慮し行った.

    【結果】最終観察時は平均13 ヵ月(12 〜16 ヵ月).全例に鉤爪趾が残存した.JSSFは76.5点(69 〜85点)であった.SAFE-Qは痛み・痛み関連73.6,身体機能・日常生活の状態72.7,社会生活機能78.1,靴関連66.7,全体的健康感72.5と靴関連が最も低値であった.

    【考察】我々は外傷後早期から関節可動域運動や装具療法を併用することで鉤爪趾の予防に努めているが,鉤爪趾を回避できない症例も経験する.今回報告した4例は骨幹端部粉砕や重度軟部損傷例であり,血腫によるコンパートメント症候群により長母趾屈筋が虚血性壊死に陥り癒着したと考えられる.このような経過を辿る場合,術直後から関節可動域運動を行ったとしても,激しい疼痛や循環障害により関節可動域運動が遅れ,鉤爪趾を来しやすい.また,鉤爪趾が残存した場合は靴関連で困ることが多く,大きめのToe Boxやメタタルザルサポート付きで底側疼痛部に柔らかい素材を用いた足底板の使用を考慮する必要がある.

    【まとめ】骨幹端部粉砕や重度軟部損傷例は鉤爪趾が残存しやすい.

  • 藤原 教弘, 濱崎 佳祐, 関口 貴博, 黒川 純
    セッションID: O-071
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】体操競技(以下:体操)選手の傷害について傷害部位,上肢傷害に着目した研究などが散見されるが成長期障害についての報告は少ない.体操選手では,分離症や骨端症などの成長期にみられる障害が進行してから受診することが多くみられる.そこで本研究の目的は体操選手の成長期障害の特徴を明らかにする事である.

    【方法】対象は2012年1月〜2018年12月に当院を受診したジュニア期の体操選手1017名2030件中,成長期障害に該当する診断名413件(男性153件、女性260件)とした.調査方法は診療記録上から抽出した診断名の件数をカウントし,腰部,膝関節,肘関節,足部,その他の5部位に分類した.検討項目は①小学生以下②中学生③高校生の各群間において部位別の障害発生件数を比較した.また,障害発生件数を男女で比較した.統計学的処理はR2.8.1を用いて,検定はピアソンのχ2検定を行った.優位水準は5%とした.

    【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき実施する.

    【結果】成長期障害体操選手の各群間の障害発生件数では,腰部は中学生(49%),高校生(30%)に多く,小学生以下(20%)は少ない.肘関節は小学生以下(60%)に多く,高校生(7%)は少ない.膝関節は小学生以下(60 %)に多く,中学生(30%),高校生(10%)は少ない.足部は小学生以下(74%)に多く,中学生(24%),高校生(3%)は少ない.成長期障害体操選手の障害発生件数を男女の比較では,全体で比較すると小学生以下(30 %)の女性が多かった.

    【考察】近年の体操では,低年齢化がみられる.本研究の結果では,小学生以下の身体が未成熟な状態で軟骨に負担がかかる事で成長期障害が発生し,肘・膝関節,足部の骨軟骨障害が多く,特に女子選手に多くみられた.中高校生では骨が成熟することで肘・膝関節,足部の障害が減少した.また,高得点を出すためには高度な技が要求され,宙返りでひねりを加える事で着地時に腰部に負荷がかかり腰部の障害が多いと考えられる.

    【まとめ】体操では各群間で成長期障害発生の特徴がみられた.

  • 猪狩 寛城
    セッションID: O-072
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】高校生ボート競技選手(以下ボート選手)の傷害として腰痛が多い。今までボート競技特性を考慮した可動域・筋力検査、パフォーマンステストを実施し、腰痛との関連を調査したが関連は認めなかった。しかし、他のスポーツ競技では腰痛との関連が示唆されている検査があり、その検査とボート選手の腰痛について調査した事はない。そこで、本研究の目的は、ボート選手に対して他のスポーツ競技で腰痛との関連が認められた検査を実施し、ボート競技における腰痛との関連性を調査する事とした。

    【方法】対象は1年から3年のボート選手男女61名(男性25名、女性36名)とした。口頭で腰痛の有無を確認し、腰痛(有)群、過去(有)群、無し群の三群に分類した。 各群に対して背臥位股関節自動屈曲、フルスクワット、長座前屈、自動HBDを実施し、3群間で比較した。統計学的解析はKruskal Wallis H-testとカイ二乗検定を実施し、危険率は5%とした。

    【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に則り、選手には研究の趣旨を書面と口頭で説明・確認をした上で参加に同意を得た。

    【結果】各群の内訳は腰痛(有)群32名、過去(有)群18名、無し群11名となり、腰痛(有)の割合は52.5%、全選手ボート競技の継続が可能であった。全測定項目において各群間で有意差は無かった。

    【考察】他のスポーツ競技で腰痛関連因子とされた検査に関しても、ボート選手には関連が認められなかった。 今回の結果と今までの結果を踏まえると、ボート選手は身体機能的な特徴から生じる腰痛は少なく、ローイングスキルが腰痛に関与している可能性が示唆された。ボート競技は高校生になってから競技を始める選手が多くローイングフォームの成熟度が低いと考えられるので、各選手に対して良いとされているローイングフォームの姿勢指導をする事で腰痛を減少することが出来るのではないかと考えられた。

  • 粕山 達也, 種市 裕考, 御子柴 健人, 村上 直
    セッションID: O-073
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】様々なスポーツ活動をする上で重要な投・跳・走動作などの基本的運動能力に関しては、幼少期に成熟した動作パターンを確立することが望まれる。一方で、後天的要素の強い投球動作は運動の成熟が難しく、動作に多様性があることが報告されている。本研究は、小学生の投球動作の多様性について客観的に明らかにするとともに、投球動作を用いた運動発達的評価の有用性について検討することを目的とした。

    【方法】対象は、小学1年生76名(男子48名、女子28名)とした。測定は、文部科学省で規定されている新体力テストのソフトボール投げの投球動作を高速度カメラ(サンプリング周期120Hz)にて投球側矢状面と後方前額面から撮影した。投球動作をRobertonらの運動発達パターン評価(上肢、上腕、前腕、体幹、下肢の5項目を3または4段階で評価し、最高17点満点で成熟度を評価)を用いて点数化した。

    【倫理的配慮】本研究は、健康科学大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号第5号)。

    【結果】投球動作の平均点は10.8±1.7点(男子11.0±1.8点、 女子10.4±1.4点)であり、男女で有意な差は認められなかった。得点分布では、男子は二峰性分布を示したが、女子は一峰性分布であった。投球動作のパターンは23通り観察されたが、5つのパターンで全体の64%を占めていた。投球動作が稚拙な様子が観察された9点以下の児童は28%であった。

    【考察】投球動作は基本的運動能力の中でも成熟が難しく、小学生1年生においては多様な運動パターンを呈していた。先行研究においては、投球動作は男女差が顕著に出る動作と報告されているが、1年生の段階では著明な差は認められなかった。9点以下の児童は投球動作において不器用な様子が観察されたため、本研究は発達性協調運動障害など運動発達のスクリーニング評価としても有用であることが示唆された。

  • 望月 優人, 丸山 新, 渡邊 修司
    セッションID: O-074
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】近年,腹横筋(以下,TrA)に着目したDraw in exercise(以下,DI)の効果について超音波診断装置(以下,US)を用いて検討した報告が散見される.一方で,骨盤底筋群(以下,PFM)の同時収縮を伴ったDI(以下,PDI)の効果についての報告は極めて少ない.そこで本研究では,PDIの効果についてUSを用いて検討した.

    【方法】対象は健常成人男性10名(平均年齢21.4±0.9歳)とし,測定項目はUSより得られるTrA,内腹斜筋(以下,IO),外腹斜筋(以下,EO)の筋厚とし,表層筋膜の境界線を基準に画像解析ソフトimagejにて測定した.運動課題を通常のDIとPDIとし,{(動作時筋厚−安静時筋厚)/安静時筋厚}にて各筋の変化率を算出し,運動課題間における各筋厚変化率をWilcoxon符号付順位和検定を用いて比較検討した.

    【倫理的配慮】本研究は帝京科学大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号18098).

    【結果】各筋の筋厚変化率(DI・PDI)はEO(-0.8±13.3 %,-16.9±14.2 %),IO(12.5±11.8 %,18.9±15.9 %),TrA(22.7±28.6%,43.5±36.0%)であった.PDIはDI に比し,TrAの筋厚変化率が有意に高かった(p<0.05).一方で,IOとEOに有意差は認められなかった.

    【考察】PDIではDIに比し,TrAの筋厚変化率に有意差が認められたことから,従来のDIにPFMの能動的な同時収縮を伴うことで優位なTrAの筋収縮が得られる可能性が示唆された.一方で,本研究にはサンプルサイズ等の限界があることから,今後はサンプルサイズの拡大や,PDIの再現性に関する検討など,研究を発展させていく必要がある.

    【まとめ】PDIとDIでは筋厚変化率に異なる結果が得られることから,DIを行う際は目的に応じて運動様式を考慮する必要性が示唆された.

  • 田浦 貴行, 濱崎 圭祐, 宮坂 祐樹, 黒川 純
    セッションID: O-075
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
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    【目的】ハムストリングス肉離れにおいて、伸張性エクササイズが障害予防に有効であると報告されているが、ハムストリングス各筋に対してのトレーニング効果は不明なものが多い。本研究では伸張性エクササイズにおける大腿二頭筋長頭(BFl)と半腱様筋(ST)の筋活動を ①Extender(Ex)、②Diver(Di)、③Glider(Gl)、④Nordic Hamstrings(NH)、⑤Jackknife stretch(JK)計5種目にて比較した。

    【方法】対象は健常男性20人20脚で、測定筋はBFlとST とした。測定肢は本人が片脚支持しやすい側とし、測定機器は表面筋電図(Noraxon社製MyoTrace400)を使用し各測定は1回を5秒間かけて5セット行った。解析区間は5秒間の内3秒間の筋活動とした。Danielsらの徒手筋力検査法に準じて測定したBFlとSTの筋活動を最大随意収縮(MVC)とし、各測定筋の値を正規化し%MVC を算出した。検討項目はBFlとSTの%MVCとした。統計学的解析にはR2.8.1(CRAN,fleeware)を使用し対応のないt検定もしくはMann-Whitny’s U検定を用いBFl とSTを比較した。有意水準は5%とした。

    【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に基づき実施した。また当院倫理委員会の承認を得て、被験者に研究の意義・目的について十分に説明し同意を得た後に実施した。

    【結果】Ex、Di、JKにおいてBFlが有意に高値な筋活動を認め(Ex:p<0.001、Di:p=0.003、JK:p=0.002)、Gl、NHにおいては有意な差を認めなかった(Gl:p=0.06、NH:p=0.6)。

    【考察】荒木らは6週間のNHのトレーニング効果はハムストリングス個々の筋で異なり、特にSTへの効果が顕著であったと報告しているが、本研究ではNHに有意差は認めなかった。一方Ex、Di、JKにおいてBFlの活動が高くみられた。本研究の結果から、股関節肢位の変化がBFlとSTの筋活動に影響する可能性が考えられた。

    【まとめ】トレーニングの種目間において筋活動に差がみられた。

  • 篠塚 真充, 小林 久文, 小山 晴樹, 竹内 大樹, 植谷 岳郎
    セッションID: O-076
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    【背景】夜間痛を呈する肩関節疾患の治療において夜間痛を把握し,介入の負荷量を調整することが重要となる.しかし,臨床における夜間痛の主観的な把握では治療方針の決定に苦慮することがある.近年,夜間痛を客観的に評価する指標として,前上腕回旋動脈(AHCA)収縮期血流速度(PSV)に着目されている.

    【目的】夜間痛を呈する腱板断裂例に対し,AHCA血流速度に着目し,夜間痛の増減に合わせて負荷量を調整することで良好な治療成績を得たため報告する.本報告はヘルシンキ宣言に基づき本人に説明と同意を得た.

    【対象・方法】66歳女性.AHCAのPSVは夜間痛出現時と減少時(出現時から17日後),再燃時(27日後),再減少時(41日後)の4期で超音波診断装置(US)のpulse doppler modeを用いて測定した.夜間痛の分類には,林らの分類を用い,疼痛,機能評価にはVisual Analog Scale(VAS)・DASHscoreを用いた.理学療法は夜間痛出現時に就寝時ポジショニング指導・icing指導を行い,減少時に肩関節周囲筋のリラクゼーションを実施し,再燃後,再度icingを指導した.

    【結果】夜間痛出現時は林らの分類でType3,VAS 1.5,PSV 28.4cm/s,DASHscore 20.5/100,減少時は林らの分類Type2,VAS 0.5,PSV 15.9cm/s,再燃時は林らの分類Type4,VAS 9.5,PSV 22.3cm/s,DASHscore 14.1/100,再減少時は林らの分類でType1,VAS 0,PSV 12.2cm/s,DASHscore 13.3/100であった.

    【考察】多田らは腱板断裂症例に対する夜間痛有無のAHCA PSVのCut off値は20.5cm/sと報告している.今回,USを用いることで夜間痛を客観的かつ経時的に観察し治療介入を選択した.その結果,夜間痛が減少したため適切な治療が選択できたと考えた.

  • 河原 忠司, 峯崎 貴博, 山川 尋, 赤羽根 良和
    セッションID: O-077
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】Reverse shoulder arthroplasty(RSA)は肩関節軸を内下方に偏位させ腱板の機能を必要とせず、三角筋の収縮により肩を挙上できる特徴がある。今回RSAを施行された症例に対し肩甲上腕関節の拘縮予防、肩甲帯の機能回復を目的にアプローチを行い良好な成績を得られたので報告する。

    【症例紹介】70代女性。現病歴:自宅玄関で転倒し受傷。 Y病院に入院し骨接合術試みたが上腕骨頭の粉砕強く閉創。その後RSA施行。術後10日に当院受診され理学療法開始。

    【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき十分に説明し同意を得た。

    【理学療法評価】術後4週(肩甲上腕関節への他動運動許可時)右肩関節可動域:他動屈曲50°外転50°下垂位外旋-40°結帯動作体側レベル。shoulder36:疼痛0.5可動域1.6 筋力0.2健康感1.8日常生活1.9スポーツ能力0。

    【理学療法介入】肩甲上腕関節の拘縮予防は超音波を用いて三角筋・大胸筋・肩甲下筋・上腕二頭筋長頭等への滑走性を維持・改善し、肩甲帯の機能回復は肩甲挙筋・小胸筋等へのストレッチや僧帽筋・前鋸筋の強化を実施した。自主練習としてタオルを使った窓拭き動作等を行った。

    【結果】術後6 ヶ月右肩関節可動域:他動屈曲140°自動屈曲120°他動外転115°自動外転100°下垂位外旋0°結帯動作L4レベル。shoulder36:疼痛3.1可動域3.4筋力3.3健康感 3.8日常生活3.3スポーツ能力3.0。

    【考察】本症例において良好な成績が得られたのは、手術で侵襲された組織周辺や三角筋下での骨折部周辺との癒着が防止できた事、肩甲挙筋・小胸筋等へのストレッチや僧帽筋・前鋸筋の強化により肩甲骨上方回旋を確保できた事である。これによりRSAの特徴である三角筋のレバーアームが増大し、屈曲・外転可動域の改善が図れたと考える。

    【理学療法学研究としての意義】RSA症例では、肩甲上腕関節の拘縮予防と肩甲胸郭関節の機能回復に焦点を当てる事で、積極的な筋力訓練を行わなくてもADL能力は十分に改善する事が示唆された。

  • 近藤 里穂, 渡辺 学, 桒原 慶太
    セッションID: O-078
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】両側変形性股関節症に対し両側同時人工股関節全置換術(以下THA)を施行後、感染・寛骨臼損傷・大腿神経麻痺と多重した術後合併症に複雑な機能障害を呈した症例を経験した。歩行獲得までの経過を考察を交えて報告する。なお、本人へ症例報告に対し口頭で十分に説明し、理解・同意を得た。

    【症例紹介および経過】症例は70歳代前半女性。THA後右側に感染を認め、デブリードマンおよび再置換術を施行。再置換術後右寛骨臼損傷および右大腿神経麻痺を認め、8週免荷の方針となった。術前より脊椎アライメントは腰椎前弯-骨盤前傾位で右膝関節外反変形を伴うWindswept型変形を呈していた。関節可動域(以下ROM)は股関節伸展-20°以上であった。アライメント異常とROM制限の改善目的に腰方形筋、脊柱起立筋群と内転筋、外旋筋モビライゼーションならびに下部腹筋群と腸腰筋の賦活化目的に筋力増強練習を実施した。同時に右大腿四頭筋の筋不活動予防目的に神経筋電気刺激療法(以下、NMES)を週5回、1回15分実施した。術後8週の1/3部分荷重開始時で、ROMは股関節伸展-10° まで改善した。筋力は大腿四頭筋MMT1/4、荷重で膝折れを認め、歩行は困難であった。その後、膝折れ・荷重への恐怖心緩和目的にリングロック膝継手付き右膝伸展固定装具を装着し、骨盤-股関節中間位を意識しながら右下肢荷重練習を行った。その結果、術後24週で筋力は大腿四頭筋MMT4まで回復し、屋内T杖歩行が自立された。

    【考察】術後合併症による寛骨臼損傷部位保護のための免荷・部分荷重期間の延長が大腿神経麻痺からの回復を阻害した一要因と考える。しかしながら、荷重制限期間中にNMESの導入や脊椎-骨盤アライメントと股関節ROM制限へ介入したことで、大腿神経麻痺領域の筋の賦活化および麻痺を促通しやすいアライメントへと修正され、関節変形から波及した代償性運動方略や大腿神経麻痺の改善に寄与し、歩行再獲得に至ったと考えられた。

  • 米山 早織
    セッションID: O-079
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】本症例は着地時に,左第1 〜4中足骨基部骨折を受傷した.骨癒合が完全な状態からリハビリ開始となったが,荷重時痛から歩行が困難となっていた.評価結果から疼痛の原因は,着地時に後脛骨筋機能不全が生じたことによる足底筋膜炎が考えられ,これに対し治療を行った結果,良好な経過が得られた為,以下に報告する.

    【説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り説明し,口頭にて患者様とご家族様に同意を得た.

    【症例紹介】10代男子.X-74日:跳び箱の前転倒立着地時に左第1 〜4中足骨基部骨折を受傷し,免荷の保存療法となる.X-24日:荷重開始.X日:リハビリ開始.

    【左下肢の評価】アーチ高率:右10.6%左6.4%.疼痛:後脛骨筋筋腹の圧痛VAS35㎜足底内側VAS37㎜第1 〜4 中足骨頭VAS15㎜.筋力:内返し2.筋緊張:腓骨筋・足底筋膜の高緊張,後脛骨筋の低緊張.外反ストレステスト:陽性.非荷重位:右<左距骨下関節過回内.荷重位:右側荷重位,膝関節外反,距骨下関節回内,内側縦アーチ低下.

    【治療】足底筋膜ストレッチ,内側縦アーチ・内返し筋力訓練,アンクルソフト®の処方

    【一週間後の左下肢再評価】疼痛:後脛骨筋筋復の圧痛VAS10㎜足底内側VAS12㎜第1 〜4中足骨頭VAS3㎜.筋力:内返し3.筋緊張:後脛骨筋・足底筋膜の高緊張軽減,後脛骨筋の低緊張軽減.荷重位:正中荷重位,距骨下関節回内軽減.

    【考察】本症例は,膝関節外反位・距骨下関節回内位・内側縦アーチが低下しており,後脛骨筋の圧痛と外反ストレステストの陽性が認められた.着地時に足関節外反力が強く働き,後脛骨筋機能不全が生じたものと考えた.後脛骨筋機能不全により荷重位では,より内側縦アーチが低下し足底筋膜が高緊張となったことで,足底筋膜炎による疼痛が生じていると考えた.以上から,足底筋膜炎による疼痛の軽減目的に後脛骨筋に着目し治療を行ったところ,筋緊張低下と筋力向上により,荷重時痛が軽減したと考えられる.

  • 石川 達朗
    セッションID: O-080
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】理学療法実施後に筋疲労や手術後の侵襲部位に疼痛が発生し、普段運動経験のない患者にとって嫌悪刺激となることは臨床場面で多くみられる。人工膝関節全置換術(以下TKA)後に自宅退院目的で回復期リハビリテーション病院(以下回復期病院)へ転院し、病棟生活や理学療法後の疲労感と膝関節周囲の疼痛により、リハビリテーション意欲が低下している症例を担当した。 応用行動分析学の後続刺激の整備に着目した理学療法を展開した結果、主体的な運動行動が増え持久力向上を認めたため報告する。症例には、ヘルシンキ宣言に基づき同意を得た。

    【症例紹介】80歳代女性、右大腿骨顆部壊死により、右膝関節に疼痛が出現し歩行が困難となったため、疼痛除去目的でTKAを施行。歩行能力とADL改善目的で回復期病院へ術後12日目に転院となった。

    【理学療法評価】右膝関節他動屈曲にてNRS5/10、T字杖歩行の右単脚支持期にNRS8/10の疼痛の訴えがあった。MMT(右/左)大殿筋3/4、中殿筋2/2、体幹屈筋群2。T字杖を使用し見守りにて病棟内移動を行っていた。自覚的運動強度は100mの屋内移動後、Borg scale を用い下肢12、胸6であった。

    【理学療法および結果】嫌悪刺激となる疼痛の除去目的のため、関節可動域改善、筋力・筋持久力向上のための運動療法を実施。また後続刺激の整備目的で、万歩計を利用した歩数のデータ化による社会的評価と、賞賛を用いた社会的強化を実施した。その結果、自発的に病棟生活にて運動を行う頻度が増加し、6分間歩行テスト234m、Borg scale下肢8、胸0と耐久性が改善した。

    【考察】意欲とは行動の推進力であり、能動性が必要になることが報告されている。社会的評価と強化を実施したことで、主体的に運動を行うことが可能となり、持久力の改善に繋がったと考えられる。意欲低下の理由は様々だが、原因を評価し後続刺激を整備することで、患者様の指示従事行動が得られやすくなるのではと考える。

  • 辻 翔子, 坂本 雄, 吉田 智貴, 平井 大策
    セッションID: O-081
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】近年リハビリテーション栄養について注目が高まっており、回復期脳卒中患者の入院時の栄養指標が高いほど退院時Functional Independence Measure (以下FIM)が有意に高く、運動FIM利得が高値になりやすいと報告されている。本研究は当院回復期リハビリテーション病棟の脳血管疾患患者の運動FIM利得と入院時の栄養状態の関係を明らかにすることを目的とした。

    【方法】対象は2018年7月20日〜9月28日に当院回復期リハビリテーション病棟に入棟した脳血管疾患患者14名である。評価項目は基本情報(性別、年齢、原疾患、身長、体重、BMI、栄養管理法)、栄養指標Mini Nutritional Assessment-Short Form(以下MNA-SF)、運動FIM利得とし、入棟・退棟時ともに1週間以内に評価した。入棟時MNA-SFと運動FIM利得の関係をピアソンの累積相関係数を用いて検討した。

    【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に基づき当院臨床倫理委員会の承認を得て実施した。

    【結果】入棟時MNA-SFの平均は6±2.6、低栄養64%、低栄養の恐れあり36%、運動FIM利得の平均は14.3±12.6 点であった。入棟時MNA-SFと運動FIM利得に有意な正の相関(r=0.58;p<0.05)がみられた。

    【考察】入棟時MNA-SFと運動FIM利得に比較的強い相関関係があり先行研究と同様の結果が得られた。低栄養患者は筋肉量減少によりADL改善を阻害してしまう可能性がある。しかし、入院中に栄養状態が改善した患者はADLの向上やFIM利得が有意に多かったとの報告があり、本研究でも栄養状態の改善でADL向上の可能性があることが示唆される。今後、栄養科との情報共有を密にし、ADL改善への取り組みを行っていきたいと考える。

  • 松井 智子, 長谷川 智, 宮田 一弘, 幸地 大州, 渡辺 真樹, 柳澤 正, 臼田 滋
    セッションID: O-082
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】回復期リハビリテーション(リハ)病棟へ入院する脳卒中患者の6 〜62%に低栄養を認めるとされている。当院では平成26年より栄養支援が開始され、Albumin(ALB)2.9g/dL以下、または体重減少や食事摂取量低下を認めた患者に対して栄養支援を行っている。本研究の目的は、栄養状態の程度と栄養支援の効果の影響を検討することである。

    【方法】対象は回復期リハ病棟へ入院した脳卒中患者のうち、栄養支援の対象となった25名とした。対象のうち、栄養支援開始時にALB2.9g/dL以下のものを栄養状態低レベル群、3.0g/dL以上のものを高レベル群とした。調査項目は性別、入棟時年齢、在棟日数、栄養支援介入日数、発症日から入棟までの日数、ALB、Body Mass Index(BMI)、Functional Independence Measure(FIM)とした。各項目に、対応のないt検定、χ2乗検定を実施した。有意水準は5%とした。

    【倫理的配慮】本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した。

    【結果】栄養状態低レベル群は14名、高レベル群は11名であった。低レベル群と高レベル群の疾患や、合併症・併存疾患に偏りは認めなかった。低レベル群は、高レベル群よりも有意に女性が多く、高齢で、退院時のBMIやFIMが低い傾向にあった。FIM利得とFIM効率は低レベル群で高い傾向にあった。在棟日数と介入日数は低レベル群で短い傾向にあったが、発症日から入棟までの日数は低レベル群で長い傾向にあった。

    【考察】入院時の栄養障害の程度は、年齢や性別の影響を受け、身体機能の改善やADLの改善を阻害することが示唆された。本研究では栄養状態低レベル群において栄養状態が大きく低下している原因は調査できておらず、今後はより個別的な栄養支援のために、栄養障害の原因を分析する必要があると考えられる。

    【まとめ】回復期リハ病棟において栄養支援の対象となった脳卒中患者の入院時の栄養障害の程度は、退院時の身体機能やADLへ影響を与えることが示唆された。

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