理学療法とちぎ
Online ISSN : 2434-2300
Print ISSN : 2186-4861
10 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
講 座
  • ~歩みとこれから~
    金子 操
    2021 年 10 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー
  • 高橋 仁美, 本間 光信, 塩谷 隆信
    2021 年 10 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)では,フレイルおよびサルコペニアの有病率が高く,これらはCOPD 患者の予後を規定する重要な因子となる.COPDにおけるサルコペニア対策としては,従来,栄養療法が推奨されている.しかし,近年では,栄養療法のみでは限界があるとし,運動療法を併用した呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の有効性が報告されてきている.フレイルは身体的(physical),認知的(cognitive),社会的(social) の3 つの側面を持っている.このなかで,身体的フレイルに関しては,基本的な概念が国際的にほぼ共通しており,加齢による骨格筋量の減少や食欲不振による慢性的な低栄養などが相互に影響し合っているとされる.骨格筋量の減少,慢性的な低栄養などは,心身機能の低下を大きく加速させ,フレイル・サイクルと呼ばれる悪循環を形成する.このフレイル・サイクルの中心となるのが加齢性筋肉減弱現象であるサルコペニアである.フレイルは高齢者で多くみられるが,その特徴として身体予備能力の低下とストレスに対する脆弱性の増加がある.フレイルは,慢性疾患であるCOPD にも大きく影響を及ぼしており,近年のシステマテックレビューでは,COPD 患者とプレフレイルの合併は56%,フレイルの合併は20%と報告されている.また,3 つの縦断的研究では,COPD とフレイルには双方向性の関係にあり,COPD患者ではプレフレイル,フレイルの合併が多く,高齢COPD における合併頻度は2 倍となっている.このようなことから,臨床的はCOPD 患者に対してはフレイルやサルコペニアの評価と対策が重要となっている.

    サルコペニアは,その原因には多くの因子が関連しているが,加齢に伴った筋肉喪失の状態にある臨床症候群といえる.EWGSOP の診断基準では,筋肉量の減少と筋力低下が必須となっている.COPD 患者におけるサルコペニアの有病率は14.5%であり,年齢およびGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)分類とともに増加する.一般にCOPD 患者では,筋肉量の減少と筋力の低下が存在する.筋量や筋力に関するこれまでの研究では下肢における報告が多いが,大腿四頭筋の脆弱性や性別との関連は認められていない.COPD 患者でサルコペニアを合併する患者は,合併しない患者に比べると運動耐容能,身体活動性,健康関連QOL は低下するが,呼吸リハに対しての反応は良好で,43 人中12 人は,呼吸リハ後にサルコペニアが消失したという報告もある.また,安定期COPD 患者においては,15%がサルコペニアに罹患しているとされるが,COPD 患者の様々な症状を改善する呼吸リハは,サルコペニアの合併そのものはその効果に影響しないと考える.

    COPD における呼吸リハは,身体活動性を向上させる効果的な治療法として確立されてきている.呼吸リハの長期的な目標は,より活動的なライフスタイルを通じて,体力などを維持させることである.包括的な呼吸リハにおいて最も重要な種目は運動療法と栄養療法であり,自己効力の向上を通して行動変容を起こすことが課題となる.栄養療法と低強度運動療法のコンビネーションセラピーは,COPD 患者の運動耐容能と健康関連QOL の改善効果があり,フレイルとサルコペニアを合併する症例に対しての新しい治療手段となると期待される.

症例報告
  • 黒澤 智視, 高徳 昭彦, 野澤 洋平, 川合 直美, 金子 操
    2021 年 10 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    [はじめに]一定の運動学的条件を満たすと,ハムストリングスが膝伸展作用を有することが先行研究で示されている.これら条件に着目した介入により,膝伸展動作の代償で起立動作が可能となった症例を経験した.[症例紹介]皮膚筋炎,交通外傷による大腿の皮膚移植が既往にある60 代女性で,蜂窩織炎で入院となった.大腿四頭筋の筋力が特に低下していた.[経過]起立時の膝伸展動作をハムストリングスで代償することで,移乗動作の介助量が軽減し,ADL が向上した.[結論]両側の大腿四頭筋の筋力の著明な低下に対し,ハムストリングスの膝伸展作用を生かし,起立動作が改善した.

  • 廣瀬 友梨, 森岡 奏子, 飯島 聖人, 渡部 健太郎
    2021 年 10 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    [はじめに]閉塞性動脈硬化症により足趾切断後に廃用を生じ,日常生活動作(ADL)能力が低下した糖尿病性腎症患者に対して,透析中と非透析中の理学療法を実施した一例を報告する.[症例紹介]70 歳代男性,他院にて人工透析導入となった.ADL で疲労が強く要介助だった.歩行ではBorg scale 下肢14,呼吸14 であった.[経過]透析中,非透析中の理学療法介入を行った.結果,下肢筋力ではManual Muscle testing(MMT)3 → 4 と改善,体組成にて筋肉量増加を認めた.歩行時のBorg scale 下肢11,呼吸11 となり自宅退院に至った.[考察]透析中と非透析中の理学療法介入により,筋力改善,運動耐容能向上しADL が改善したと考える.[結論]透析中と非透析中の理学療法は運動耐容能を向上させる.

  • 根岸 兼也, 一瀬 裕介
    2021 年 10 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    [はじめに]Pilon 骨折を含む多発骨折術後に右足底の痺れ・感覚障害が生じた症例を経験した.[症例紹介]70 歳代女性,梯子から転落し,右Pilon 骨折(Ruedi 分類Ⅲ),右腓骨骨幹部骨折,右内果骨折,左踵骨骨折を受傷後,観血的整復固定術を施行した.[経過]部分荷重を経て,全荷重を開始したが退院後も右足底の痺れ・感覚障害の症状が継続し,外来リハビリテーションを実施した.セルフトレーニング,ストレッチ指導を中心に週に1 回の頻度で介入を継続し,12 回の介入で改善が認められた.[考察]術後の長期免荷期間により足底筋膜,母趾外転筋の硬化が生じ,内側足底神経の圧迫を引き起こしたことが痺れや感覚障害が発生した一因ではないかと考えられる.[結論]Pilon 骨折の術後は神経障害が生じる可能性があり,術創部周囲の癒着予防や足底の硬化予防が重要だと考える.

調査報告
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