理学療法とちぎ
Online ISSN : 2434-2300
Print ISSN : 2186-4861
6 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
症例報告
  • 石坂 勇人, 美濃和 紀子, 阿久津 瑞季, 前田 寿美子, 丸山 仁司
    2016 年 6 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    脳死肺移植後にリハビリテーションを実施した症例に対し,術後1年の6MWT,IKEF,体成分分析,呼吸機能検査,千住らのADL評価を行った.移植前と比べて呼吸機能の改善を認めたものの,下肢筋力は不十分であり,呼吸困難感よりも下肢の疼痛や疲労感によるADL,6MWTの制限を認めた.原因として鎮静,人工呼吸器管理,長期不動化に伴うICU-AWが考えられた.ICU-AWは左右対称性の四肢麻痺を呈する症候群とされており,本症例においても下肢筋力の回復が遅延していた.肺移植患者はICU-AWになるリスクが高く,術後の呼吸機能が改善しても,身体機能の低下が伴う可能性があり,可及的早期からのリハビリテーションを実施していく必要がある.

  • 三浦 寛貴, 鈴木 宗大, 遠藤 佳章, 田崎 正倫, 中澤 環, 鈴木 悠, 鈴木 暁, 高久 和順
    2016 年 6 巻 1 号 p. 5-8
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    本症例は右中大脳動脈の出血性脳梗塞により重度左片麻痺・Pusher現象を呈した90歳男性である.初期評価時はPusher現象の出現によって座位保持に介助が必要な状態であった.それ以外にも覚醒不良,筋力低下,アライメント不良などといった様々な心身機能の低下が強く認められており,座位保持獲得の阻害因子になっていると考えた.そこでPusher現象に対する座位保持訓練と併行し,姿勢アライメントの修正や覚醒,筋力向上のための歩行訓練などそれぞれの問題点に対しての介入を行った.その結果,安定した20分以上の座位保持が可能となりトイレ時の介助量が減少した.Pusher現象に対する介入はそれのみに着目するのでなく患者の全体像を評価した多角的な理学療法介入を行う必要がある.

  • ―外反母趾に対する術後装具療法の紹介―
    竹沢 友康, 金谷 裕司
    2016 年 6 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    外反母趾に対する左第一足趾矯正手術を施行した患者の術後理学療法を経験した.術後の装具療法に関しては,本邦では散見されず,ギプスシーネ保護期間における廃用症候予防と早期動作獲得に向けた理学療法に関しては課題を残している.本症例に対しては装具療法としてVACO®pedesを使用し,術後4日目から立位,歩行練習を開始することができた.早期からの立位,歩行練習は廃用症候群を予防するだけでなく,早期動作獲得にも繋がるため早期退院,社会復帰を可能にする.今後,外反母趾のみならず足趾,足部疾患の術後では従来の装具療法に加え,選択肢の1つとして使用されることを強く期待する.

  • ―階段昇降動作評価を再考する―
    五月女 宗史, 竹沢 友康
    2016 年 6 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    [目的]腰部術後患者のバランス能力と階段昇降動作との関係を明らかにし,階段昇降動作尺度を考案する.[対象]腰部の観血的手術を施行した20名.[方法]独歩群と杖歩行群の2群に分類し,片脚立位保持と10ステップテスト,2ステップテストを測定した.階段昇降動作の評価としてScale for stepping the stairway(以下;SSS)を考案して測定した.Mann-WhitneyのU検定を用いて群間比較を行った.各バランステストとSSSでSpearmanの順位相関係数を用いて相関分析を行った.[結果]独歩群では全てのテストで有意差が認められ,各バランステストはSSSと相関を示した.[結語]SSSは静的・動的バランスを包含したテストであり,動的バランステストとの関係性の強さが示唆された.

  • ―TKA術後の外来理学療法を通して―
    永藤 祐哉, 竹沢 友康
    2016 年 6 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    本症例は右変形性膝関節症(以下:OA)を呈し右人工膝関節置換術(以下:TKA)を施行した症例である.TKA術後はクリニカルパスに則り,機能再獲得,機能再建し生活水準を満たし自宅退院となった.その後,外来理学療法では左足底部の疼痛の訴え,アライメント不全による歩容不良が認められた.左足部に鶏眼が好発部位とは異なるところに存在し,足部の疼痛,アライメント不全,歩容不良に起因していると考えた.そのため,右TKA術後の機能維持,改善を図りながら左足底部の鶏眼が与える影響に関して運動力学の観点に着目し治療,評価を行ったので以下に報告する.

  • 内田 拓実, 押山 徳, 伊澤 一彦
    2016 年 6 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    本症例は高校硬式野球部の投手であり,練習試合の投球中に肘内側部痛が出現し,投球不能となり当院を受診した.野球肘内側部障害に対する治療は,患部の疼痛消失に伴い投球プログラムへ移行することが一般的とされるが,通常のプログラムでは試合に間に合わないことと,本人の強い希望を尊重し,医師による関節内ステロイド注射と理学療法を併用し,不完全ながらも35日で試合へ復帰することが可能となった.スポーツリハビリの現場では時として医学的根拠による治療計画と患者・選手のニーズのどちらを優先させるべきかという場面に遭遇する.患者背景や病態に応じた理学療法の戦略を立てることは重要である.

  • 田村 貴行, 爲我井 将悟, 大高 洋平, 町田 敏
    2016 年 6 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    心室細動からの蘇生後,両側腸腰筋血腫による両側大腿神経麻痺を合併したマルファン症候群の症例を経験した.歩行動作は比較的早期に獲得したが,立ち上がり動作の獲得が遅延した.その原因の1つとして,原疾患による高身長の影響が考えられた.職場の完全復帰には,企業体の協力や通勤事情などの社会的要因が関与した.心疾患,高身長などの特徴を有するマルファン症候群に合併した両側大腿神経麻痺では,身体的特徴を考慮した長期間のリハビリテーションが必要である.

  • ―上肢の重さと姿勢制御について―
    押山 徳
    2016 年 6 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    視床梗塞により左片麻痺を呈した症例に対して,上肢機能と姿勢制御に着目して理学療法を実施した。症例は上肢の重さを訴えており,家事を行う上でうまく使えないとのことであった。症例の特徴として,随意性は良好であるが,麻痺側胸郭から肩甲帯が抗重力位を保てず体幹が非麻痺側へと傾斜していることであったことから,胸郭や肩甲帯への介入を実施した。治療による効果の指標として,理学療法施行前後の麻痺側での片脚立位,前方へのリーチ距離を測定した結果,治療後においてそれぞれ改善がみられた.本症例においては麻痺側の胸郭や肩甲帯への介入により,姿勢制御の改善が図れたと考える.

  • ―術後5年を経過して―
    前田 和也, 石坂 正大
    2016 年 6 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    人工股関節全置換術(THA)後,脱臼への不安から動作を制限されることも多い.一方で,地域生活の特色として草取りが行われることは多い.本症例は5年前に右大腿骨頸部骨折を呈し,THAを施行し,退院時に草取り動作の指導を実施した.術後5年経過し,左変形性膝関節症の診断により,外来にて理学療法開始となった.現在においても草取りを行っており,草取り動作方法の経過について聴取した.退院時には主に四股立ちによる草取りを指導したが,腰痛のため主に椅子使用による草取りを行っていた.高齢者は腰部負担の大きい動作は腰痛を増大させる可能性があり,椅子使用は腰部負担の軽減につながり,草取り動作指導の一助になることが示唆された.

  • 安江 大輔
    2016 年 6 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    肩関節腱板断裂は高齢者の多くにみられ,疼痛と筋力低下を伴うことが特徴的である.今回,転倒により右肩腱板広範囲断裂を生じ,疼痛と筋力低下・自動挙上困難を呈し,日常生活に支障をきたしていた症例を経験した.受傷後,早期からの炎症に対する介入と肩甲骨・体幹機能向上を図り,残存腱板筋の機能を評価し介入することで疼痛の軽減と肩関節の自動挙上運動が可能となり良好な結果が得られた.

紹 介
  • 小野田 公, 久保 晃, 丸山 仁司
    2016 年 6 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    デジタル教材を利用したカードの理学療法分野への効果を明らかにすることを目的とした.国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科2年次生11名を対象とした.「改訂関節可動域表示ならびに測定法」についてのカードを作成し,各学生のスマートフォンに配信した.使用前後で関節可動域についての試験を実施し,分析した.カードの円滑な使用が可能であった.使用後の試験点数が有意に増加した.また,参考可動域,基本軸,移動軸の各項目の点数が有意に増加したが,各項目の差は認められなかった.このことより理学療法分野の基本的な知識の整理などへの応用が可能だと考えられる.

  • ―基礎とその実際―
    小林 薰, 田村 由馬
    2016 年 6 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    健康のために運動をしていても,座っている時間が長ければ健康によくない.人は目が覚めているあいだは何らかの活動をしているが,どのくらいの強度の活動を,どのくらいの時間行っているかは把握していないだろう.しかし,国際標準化身体活動質問票(通称アイパック)や座位行動質問票,または加速度計を内蔵した活動量計を用いることで身体活動量は評価できる.日常のなかで座り過ぎを減らし,年齢に見合った最適な強さで活動することが私たちの健康を支えることになる:できれば3.0~6.0 METsの中強度活動が望ましい.

  • 伊沢 諒, 押山 徳, 安江 大輔
    2016 年 6 巻 1 号 p. 53-55
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/16
    ジャーナル フリー

    少年野球の野球肘障害においてはOCDの早期発見が極めて重要であり,それを目的とした野球肘検診が各地で行われている.当院では2013年度より,地域高校と協力し行っている野球教室の中で地域学童野球への野球肘検診,障害予防についてのアンケート調査を選手・指導者へ実施している.3年間で発見されたOCD疑いの選手は287名中5名(1.7%)であり,アンケートの結果としては痛みがあっても病院を受診するよりも我慢して練習する選手が多く,学童期においても約3割の選手が肘痛を経験する結果であった.地域への障害予防に貢献していくためにも今後も継続してこの活動を続けていく必要性が考えられた.

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