公共政策研究
Online ISSN : 2434-5180
Print ISSN : 2186-5868
10 巻
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巻頭言
小特集
  • 諸富 徹
    2010 年10 巻 p. 6
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー
  • 曽根 泰教
    2010 年10 巻 p. 7-22
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    本稿は,2009年の総選挙で多数の議席を獲得し政権交代を果たした民主党政権(国民新党,社民党との連立ではあるが)が直面している問題点を整理したものである。

    権力の移行という意味での政権交代の事例が少ない日本で,今回の政権交代を分析するために,(1)過去における政治改革の文脈で位置づける。(2)民主党政権は政策決定過程を変え,さらに,その変えたシステムを使って政策内容を変えるという方針が,現実の政治のなかで,なぜ簡単ではなかったのかを明らかにする。(3)マニフェスト政治を本格的に展開しようとすると,財源をはじめとする現実的な問題に直面する。マニフェストの作り方や実行体制,司令塔の重要性,具体的に推進するための工程表の作り方などの問題に触れる。この政治過程とは,有権者の政権選択を原点にして,国会→内閣→各府省大臣→各府省のもとで「首相を中心とする内閣のリーダーシップ」を確立するというシステムとしての「権力」の軸と,政策課題をマニフェストに集約して,総選挙で国民との対話を図り,「総選挙」→「実行体制」→「政策実施」→「実績評価」→「総選挙」のサイクルの「政策」の軸とからなる。この「権力」と「政策」が交錯する地点で,政党と政府のダイナミックな関係が発生する。その政策の軸には,政権交代時に起きる「ポリシーレビュー」(policy review)と政策転換を含む。政権交代が特別なことではなく日常的になるということは,政権交代や政策転換が公共政策の研究にどれだけィンパクトを与えるかを論ずることも重要になってくる。

  • 横山 彰
    2010 年10 巻 p. 23-33
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    本稿は,2009年の政権交代後の鳩山政権・菅政権の経済政策の変化を考察し,現下のデフレ・円高・ゼロ金利といった経済情勢と少子高齢化などの長期的な社会情勢のもと。日本社会の持続可能性を高めることの意義を確認したうえで,持続可能性の逹成に必要な経済政策を考えるうえでの理論的枠組みについて再検討し,経済成長・財政再建・環境保全の三者共立を図ることが可能な望ましい経済政策を論述する。

  • 大石 眞
    2010 年10 巻 p. 34-44
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    2009年夏の衆議院議員総選挙は,現行憲法の定める議院内閣制のもと,長い間続いてきた自民党中心の政権から民主党政権への交代という画期的な変化をもたらした。そこで本稿は,わが国の議院内閣制の運用がどのように変わったか,議会の役割や機能はどのように変化したかについて,憲法学の立場から規範論的な分析,検討を加えることを目的とする。新政権の発足から1年という期間であるため,制度や慣例への未習熟のせいもあるが,議院内閣制の下における両議院の議事運営上のルールや先例に対する正当な配應に欠ける運用が見られる。そのため,内閣提出法案の成立率も著しく低かったか,直近の参議院議員通常選挙での敗北を機に,野党との協調を探る動きが出てきたことは注目される。

  • 上神 貴佳
    2010 年10 巻 p. 45-58
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    2009年総選挙では民主党を中心とする連立政権が成立した。有権者から新しい多数派へとマニフェストを媒介とする委任(mandate)が成立し,政権交代を機に選挙と政策過程がつながったと見立てることもできる。しかし,この委任モデルの背景にある代理人(delegate)型の代表観には,論理的な間題点が隠されている。第1に,有権者から委任を受ける代理人が個々の議員であるならば,政策過程では議員間の調整が必要となり,責任の主体が不明瞭となる(代表の複数性)。この問題を回避するため,委任理論や責任政党制論は政党の公約を重視するが,限られた数の政党が多様な有権者の利益をどのように集約するのか。政党はさまざまな争点間の政策的な整合性を作り上げ,自らを政策次元変上に位置づけることによって有権者の選択を手助けできるが,容易なことではない。第2に,代理人が当選後も有権者からの委任に忠実なのは,将来時点において審判を受けるからである。問題は,環境変化によって有権者の選好が変わり,当選時の公約を遵守するだけでは対応できなくなる場合である。その結果,公約が反故にされる可能性も否定できない(代表の時間軸)。議院間で異なる多数派が時間を置いて成立する可能性すらあり,それらをどう調整するのかという問題も残る。本稿では,大規模な調査データを用いて,政党と回答者の政策的な一致率,回答者の政治意識における政策的な次元,環境変化に対する民主党の予測的な反応の3点を検証し,委任モデルの可能性と限界について考察する。

論文
  • 田中 雅子
    2010 年10 巻 p. 59-69
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,日本の年金改革を事例に用い,政権構造と政策帰結との関係を政党の戦略に着目して分析することにある。政権構造としては,単独政権か連立政権か,そして連立政権のなかでもどのような政党の組合せによる連立か,という点に注目する。

    日本では1990年代以降,2つの年金改革が成立した。1つは自民党単独政権下で二度導入が試みられたものの,強い反対により見送られた支給開始年齢の引上げであり,もう1つは保険料負担に上限を設定したうえで将来にわたる負担増と給付減である。2つの年金縮減はいずれも左派政党,中道左派政党を含む連立政権で成立した。本来,左脈政党は福祉重視を標榜し,給付の拡大を主張する立場にある。そうした政策志向をもつ左派政党が,なぜ年金縮減に対して強力な抵抗者とならず,単独政権下でさえ逹成できなかった負担増の政策課題を成立させることができたのであろうか。

    本稿の主張は次のとおりである。福祉拡充を志向する2つの左派政党は,いずれも保守政党と連立を組んでおり,年金縮減を主導するのは保守政党であるとみなされた。左派政党はむしろ与党として主体的に関与することで,縮減の規模をできるだけ穏やかなものとする役割を果たすことができた。政権政党に責任が集中する単独政権と異なり,連立政権においては政権を構成する政党の政策位置によって異なる力学が働くのではないかという問題意識に基づき,政策過程を分析する。

  • 上田 誠
    2010 年10 巻 p. 70-82
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    本研究は,中心市街地活性化における政策供給のフレームワークが,政府部門が政策供給主体となり民間部門が一時的な政策利益享受者となる段階と,民間部門が政策供給主体となり住民が最終的な政策利益享受者となる段階が有機的に連動することを前提としていること,さらにこのフレームワークのなかで,政策アクターが「商店街」の2つの概念(空間的概念と組織的概念)を自らに都合よく解釈することで,政策意図の変容が起こるという仕組みを明らかにする。

    また,中心市街地活性化法を含むまちづくり三法の制定によって,大規模小売店舗経営者や経済界は大規模小売店舗法を廃止することができたことに満足し,中小商業者や商店街組合は引き続き補助金を引っ張り出すことのできる中心市街地活性化法の制定に持ち込めたことに満足し,国は市場開放,規制緩和の流れに沿った改革が実現でき,同時に中小商業者に商店街対策が重要であるということを示すことができたことに満足していることを示す。そのうえで,政策意図の変容によって多様な立場の利益団体から満足を引き出し,また国にとっても政治的に満足なものであれば,この変容は政策関係者に黙認されることになるということを説明する。

研究ノート
  • 深見 真希
    2010 年10 巻 p. 83-93
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    米国において,危機管理とは応用管理科学である。第1に強調されるべきは管理機能であり,その行為者である「管理者」の育成と運用が危機管理の鍵とされている。その危機管理者については,大学院をはじめとする高等教育が充実化・長期化しており,それらを支援する研究開発が進められ,プロフェッション化が進んでいる。

    今日,米国危機管理者の育成および運用は公共管理モデルに依拠するものであるが,これは,従来の実働機関モデルや国土安全保障モデルでは,対応重視型の危機管理になってしまい,統合や調整が強調されるべき地域全体の公共安全を俯瞰するリスクベースの戦略的計画を立案し実行することか難しいからてある。また,地域全体の公共安全を管理するために,多当局協働システムを採用し,ゆえに新たに必要とされた非技術技能教育の拡充も,高度教育プロジェクトとしておこなわれている。

    すなわち,危機管理者の育成と運用の背景には,地方に危機管理部署を設置し危機管理者を配置するというだけでなく,公共管理モデルを採用したうえで,高度教育と研究開発を展開するという,政府による一連の戦略的な動きがある。今後,日本においても,地方の防災や危機管理を充実させていくためには,防災と危機管理の関係,その鍵となる管理者の職務や要件,彼らの職務満足を引き出す支援策なども含めて,中央レベルでその管理的側面が明らかにされる必要があるように思われる。

  • 藤本 吉則
    2010 年10 巻 p. 94-103
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    本稿は,2000年前後から各国で導入が始まった電子政府の議論を基に,電子申請の利用件数が伸び悩んでいることや住民基本台帳ネットワークの効用が実感できないことなど,日本の電子政府の普及が円滑に進んでいないことの要因の分析,類型化を行い,これからの公共部門におけるICT利用の可能性を検討する。

    類型化にあたっては,電子政府の進捗段階ごとに阻害要因によって与えられる影響力が異なることを踏まえ,双方向の特徴を活用した電子政府の段階に焦点をあて,とくにデータの蓄積とその活用といったデータベースの視点を取り入れ,分析を試みる。

    検討を行った類型化を日本の電子政府に当てはめてみると,技術的な要因による障害より,組織的・制度的要因による影響が強いことが示される。そのため,行政改革やより有益な価値のある情報創出などに電子政府を効果的に用いるため,情報システムの導人だけではなく,制度・組織の抜本的改革をも視野に人れた電子政府の取組みの検討を進める必要がある。

  • 井坂 暢也
    2010 年10 巻 p. 104-115
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    気候変動による異常降雨の頻度が増してきており,河川対策に過度に依存しない総合治水対策の必要性が高まっている。総合治水対策は,部門横断的な取組みを要するために行政部門間の連携が欠かせない。しかし,法制度の壁により,部門間の連携が困難になる。そのうえ,総合治水対策の要である流域対策は河川管理者である広域自治体と土地利用計画の裁量・権限を多くもつ基礎自治体の協力が総合治水対策を実施するための行政部門間の連携に不可欠であるが,自治体間の協力関係を築くのは難しい。本研究で扱った事例,総合治水対策を目指す滋賀県の流域治水政策の形成過程は基礎自治体の非協力により頓挫している。法制度だけではなく,そこには政治的な要因による水害リスクが存在した。政治的な阻害要因が生み出されるメカニズムを把握するため,政策決定のガバナンスを分析した結果,河川対策に依存する場合には基礎自治体に,流域対策に移行する場合には県に利益が分配され,ゼロ和ゲームを形成する法制度の構造が流域対策実施を阻む要因になっていることが明らかになった。政治的な水害リスクもガバナンス・ルールを規定する既存の法制度の影響を受け,必然的に生じているのである。今後の総合治水対策の必要性は増していくことが想定される。既存の制度の影署を把握したうえで,ガバナンス・ルールを操作することが広域自治体に求められる。

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