本稿は,市民参加にかかる従来の研究では汪目されてこなかった,「事業アクターとしての市民参加」という類型,すなわち,市民がその事業のアクターとして不可欠に組み込まれており,市民参加なくしては当該事業が円滑に遂行されないため,担当行政部局・行政現場が市民に対して積極的に参加を求めるタイプの市民参加を,廃棄物政策を事例にして提示する。
従来から研究されてきた市民参加,とりわけ「規範論としての市民参加」にかかる制度を地方政府内の各部局が共通して用いる統一的ルールとして地方政府内で定めるとき,多くの場合,その制度は首長または地方政府の計画・統括部局で発案され,トップダウンで制度化が決定される。本稿では,まず,この例として,市民参加の本格的全国的な制度化の嚆矢と言える情報公開制度の導入にかかる地方の取り組みを紹介する。
次いで,大都市の廃棄物行政の分野について,廃棄物担当部局が,トップダウンによる方針に従い全市的要請を受けたかたちでのみ市民参加に取り組んだのではなく,廃棄物政策サイドにおいて市民参加を推進すべき独自の政策環境上の要請があって取り組んだ市民参加推進(「事業アクターとしての市民参加」)の事例があることを,政令市へのアンケート調査や市民・元地方政府職員への聴き取り調査により,明らかにする。
最後に,「事業アクターとしての市民参加」につき,廃棄物政策以外の事例も含め,考察する。
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