公共政策研究
Online ISSN : 2434-5180
Print ISSN : 2186-5868
15 巻
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
巻頭言
会長講演
I 公共政策とソーシャルインパクト
  • 牟田 博光
    2015 年 15 巻 p. 13-24
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    開発プロジェクトはその対象が海外での活動であり、国際的な競争環境の中から、評価についても国際基準に基づいた評価が古くから行われてきた。中でも成果重視の立場から、プロジェクトのインプットから効果の発現までにいたるロジックに基づき、プロジェクトのソーシャルインパクトを測定する傾向が強かった。

    ソーシャルインパクトがどの程度であるかについては様々な方法論が適用され、計画的、実験的なデザインの構築が図られた。しかし、自然科学や医学の場合と異なり、社会の中で実施されるプロジェクトの場合、そのプロジェクトを取り巻く社会環境が効果に影響を与え、介入以外の社会環境をすべてコントロールすることはできないところから、特定のプロジェクトのソーシャルインパクト結果から一般的な政策的含意を導くことには困難がある。

    しかし、様々な環境の下で実施されたプロジェクト評価のデータベースが充実してくれば、そこから一般的な政策的含意を導くことは容易となり、将来の政策策定に役立つことが期待されている。もちろん、データベースが充実してきたと言っても、一般化の程度には限界はある。しかし、その限界を承知の上で上手に利用するのであれば、これらの利用は政策策定に有効な情報となろう。

  • 深尾 昌峰
    2015 年 15 巻 p. 25-37
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    非営利組織や社会的企業の「市民性」を資金的に支えるために登場した市民コミュニティ財団。それらの公共空間での位置付けは,正統性を得ていない問題に対して市民の連帯や協同がベースになった取り組みに対してコミットメントできることにある。それらの事業に対して寄付という経営資源を提供する。また寄付を社会参加の重要なツールとして捉えると多様な社会参加の確立にもつながる。日本において,近年注目を集めている「市民コミュニティ財団」に着目し,それらが誕生した背景や経営実態と社会的機能と役割を明らかにした。加えて,市民コミュニティ財団が生み出すインパクトを考えるときに,直接的な寄付仲介やその金額,またそれにより生み出された活動成果が重要であるのはもちろんであるが,寄付仲介もしくはプロジェクト生成のプロセスで意識的にデザインされている非資金的支援に大きな価値と役割が内包されている点が重要である。社会課題の掘り起こしや深堀りといった取り組みを多様なステークホルダーと展開していることが地域のダイナミズムにつながっている。また緒についたばかりの日本のコミュニティ財団にとって今後,社会的な信用を獲得し,ソーシャルインパクトを創出し続けていくためにどのような条件と成長が必要なのかを明らかにした。

  • 松尾 順介
    2015 年 15 巻 p. 38-50
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は,クラウドファンディングの世界的な拡大を概観した上で,米英日の3か国の投資型クラウドファンディング規制を考察し,規制のあり方を検討することである。クラウドファンディングの拡大は,広範かつ多様な領域において,社会的インパクトを有するものと考えられる。特に,投資型クラウドファンディングは,投資の新しいあり方として注目される。ただし,クラウドファンディング全体の中で,投資型クラウドファンディンディングの割合は,必ずしも高いものではない。その要因の一つとして,法制度による規制が考えられる。投資型クラウドファンディングは,どの国の法制度においても金融・投資規制の対象となるが,投資規模が少額であるため,通常の規制が課されると,規制コストの負担は相対的に大きなものとなり,投資スキームが成立しなくなる可能性が生じる。したがって,投資型クラウドファンディングが拡大・成長するためには,開示規制の免除など,一定の規制緩和の必要性がある。しかし,過度な規制緩和は,投資者保護を疎かにし,市場の信頼性を低下させる危険性も含んでいる。そこで,市場育成のための規制緩和と,投資者保護のための規制整備ないし強化とのバランスが公共政策上重要な課題となる。本論文は,米国,英国および日本の投資型クラウドファンディング規制について比較検討した。その結果,日米英の政策当局は,上記の公共政策上の課題に関して,投資者保護を強化することを第一義的に重視した上で,市場の育成を企図しているものと考えられる。ただし,各国の規制は,導入後,検証に耐えうる時間が経過していないため,各国が導人した規制が適切に機能しているかどうかを判断するためには,今後の推移を慎重に見守る必要がある。

  • 長峯 純一
    2015 年 15 巻 p. 51-63
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    ソーシャル・サービスヘの社会的ニーズの高まりを背景に,社会的事業やサードセクターの活動や貢献が重要になっており,その経済的な価値を評価することを意図したソーシャル・インパクトという概念が定着しつつある。本稿は,このソーシャル・インパクトを評価するための社会的投資収益(SROI)という概念の意味を,費用便益分析の中の内部収益率という考え方と比較しながら解釈する。社会的事業の成果を社会的投資収益として貨幣価値評価をすることの意義を検討すると共に,それには困難と限界があることを指摘する。次いで,ソーシャル・インパクト活動を実践するアイディアとして注目されているソーシャル・インパクト債(SIB)の事例を取り上げ,その概念とスキームを整理し,SIBに指摘されているメリットとデメリットを比較検討する。ここでも事業の成果(アウトカムとインパクト)を評価することが,SIBのスキームを機能させる上で重要な意味を持つことを確認する。同時に,アウトカムの評価において政府の失敗が起きる可能性を指摘し,SIBスキームの中で共謀や結託が起きないよう,より広いスキームからガバナンスの体制を考えることが重要であると主張する。

Ⅱ 公共政策教育の基準化
  • 新川 達郎
    2015 年 15 巻 p. 64-77
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    日本公共政策学会(以下,本学会という)では,公共政策学教育の在り方について,その基準あるいは標準の検討を重ねてきた。公共政策学やその教育の定義については多様な見解があるとしても,共通して参照可能な基準は探索できるのではないかという見通しのもとに作業を進めることとした。そのために本学会として「公共政策教育の基準に関する研究会」(以下,研究会という)を設置し,2013年度と2014年度の2年間にわたって検討を行ってきた。その検討の経過においては,研究会メンバーの議論のみならず本学会の年次研究会における報告を行うことも含めて,本学会会員諸氏の積極的な参加と助言を頂戴した。その最終報告書は,2015年秋季の本学会理事会に提出された。そこでは公共政策学の学問体系を踏まえながら,日本の学士教育の実情に沿った公共政策学教育の基準を発見するべく努めた。本論文においては,「公共政策教育の基準」に関する検討の経緯を振り返りながら,その中で研究会に加わった一人である筆者として改めて「公共政策学」の「教育」の標準をどのように考えればよいのか,その「参照基準」について,その背景,意義,課題について,検討することとしたい(1)

論文
  • 呂 茜
    2015 年 15 巻 p. 78-89
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    歴史的な建造物や景観・町並みを保存・保全することを目的に,市町村によって最も活用されてきたのが重伝建地区制度と言える。本稿は,全国の重伝建地区を抱える自治体へのアンケート調査を通して,文化財保護法で謳われている伝統的な建造物や景観・町並みの保存・保全という同制度の目的と,並行して文化庁が唱えている地域の自立や持続のための同制度の地域振興・観光振興への活用がどう認識されているか,重伝建地区の存続に向けてどのような問題・課題があるか,という実態把握をまず行う。その上で,伝統的建造物の修理・修景への財政補助がどの程度の効果をもってきたか,そして近年の懸案事項である空き家問題の実態とその対策の効果に関する検証を行う。

    アンケート結果の検証・検討の結果,重伝建地区への選定と財政補助が,伝統的な建造物および町並みの保存・保全に一定の効果をもたらしてきたことは認められる一方で,財政補助によって地区全体の伝統的建造物の修理を終えるには50年もの長期間がかかることが分かった。現在の対策では,人口減少や後継者不足の方が先に進み,財政補助金の減少傾向や空き家増加を鑑みると,地域の衰退に歯止めがかからないことが危惧される。重伝建地区でも空き家問題は深刻化しており,その対策として活用されている行政による買取り・活用や空き家バンクによる斡旋も,抜本的対策にはほど遠い。制度創設から40年を経た重伝建地区制度も,地域の持続性を考えると根本から制度再構築を図らなければならない時期に来ていると言えよう。

研究ノート
  • 青木 一益
    2015 年 15 巻 p. 90-103
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    近年,急速な発展を見る一連の「トランジション研究」は,持続可能な社会経済へと移行するための複雑で長期にわたる動態を捕捉し,重層性を帯び共進化する相互作用の過程において,いかなるシステム・イノベーションが,なぜ,どのように,(不)可能になるのかを分析するための,理論・視座の構築をはかるものである。「サステイナビリティ・トランジション」論とも形容されるここでの学術展開を背景に,本稿が考察の対象とするのは,アヴェリノ=ロットマンズによる権力(関係)概念の再構築の試みである。アヴェリノらの問題関心は,トランジション経路に看取し得る顕著に権力的な位相の自覚的・明示的な分析が依然不十分であり,また,そのことが,システム・イノベーションをめぐる理解の深化を妨げている,というものである。現状改善を企図して提示される「権力(関係)概念」モデルはサステイナビリティ・トランジションにおいて鍵となる変化(・・)の可能性と時間(・・)的スケールとの連関を,権力(・・)を媒介にしてより体系的に可視化するための枠組みを提供する。そこで,本稿では,まず,トランジション研究の射程および理論・視座の基本体系を概観した上で,アヴェリノらの当該業績のレビューを通じて,同モデルを紹介する。これを受け,本稿では,関連社会科学領域に蓄積を見る既存権力論との相互参照において,同モデルの位置付けや新規性を確認することで,その意義と可能性に検討を加える。

  • 飯塚 俊太郎, 堤 麻衣
    2015 年 15 巻 p. 104-115
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,「構想日本」というシンクタンクが,自ら考案した「事業仕分け」の国政における採用を実現した過程を解明することを通じ,シンクタンクの役割や影響を論じることにある。2009年の民主党を中心とする連立政権への政権交代を象徴する出来事となった事業仕分けは,構想日本が発案し,その全面的関与のもとに2002年から全国の地方自治体で実施を積み重ねてきた手法である。それは,政権交代後間もなく,内閣府に設置された行政刷新会議を司令塔とする官邸主導のプロジェクトとして,国政にて実施される運びとなった。本稿は,シンクタンクの役割と影響に着目して,事業仕分けが国政にて採用された過程を分析する。シンクタンクが実際の政策過程に及ぼした役割や影響の具体的考察は,それ自体稀有と言える。その上で,以下のような示唆を得る。従来のシンクタンク論の通説的見解では,自民党長期政権とそれに伴う行政・官僚主導の政策形成の在り方が日本のシンクタンクの脆弱性や未熟性の要因として指摘されてきた。それに対し,本稿の分析は,政権交代という出来事を機に,一シンクタンクの構想であった事業仕分けが国政の中枢にて採用された事例を提示する。また,そうした事象が起きた背景として,政権交代が契機であったことはもとより,1990年代以降の政治改革・行政改革を通じた制度的な変化により内閣機能の強化や官邸主導への流れが醸成されてきたという背景を仮説的に示す。今後の日本のシンクタンク研究では,このような政治環境の変動を,シンクタンクを取り巻く環境の変容として考慮する必要があることが示唆される。

  • 爲我井 慎之介
    2015 年 15 巻 p. 116-130
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    2000年以降,我が国大都市制度の骨格は,自治体の大規模化と事務権限の移譲を一括りにする「概括的な政策」へと転換した。そこで本稿では,制度下にある政令指定都市(政令市)の規模や中核性を数値化し,それらの関連性から,制度の直面する課題を明らかにする。

    はじめに,予備作業として戦後日本の大都市制度(特別市及び政令市制度)の成立過程で生じた対立構造を整理し,政令市の設計概念を把握した。次に,全国に20ある政令市を対象に,人ロ・面積などの都市規模とその中核性を示す変数を投入して主成分分析を行い,それらの4つの特性に合成した。さらに,主成分得点を求め,政令市を複数のクラスターとして類型化した。

    先行研究の知見が示すように,自治体の区画と背景にある社会的実態のかい離は,大都市問題の本質である。分析結果は,制度の単一性にも関わらず,政令市相互の関係性が極めてかい離している状況を示した。また,後発型政令市とは,外形的には地域の大規模な中核都市だが,周辺地域を圧倒するほどの都市の中核性や一体性を欠いていることを明らかにした。

    本来,大都市制度の適用範囲は,背景にある大都市社会を無視しては論じえないものである。新たな大都市の枠組みの構築にあたっては,より大都市の都市属性を踏まえた制度化が不可欠であろう。

  • 中嶋 学
    2015 年 15 巻 p. 131-145
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    協働型ネットワークは,複雑な問題への対応が求められる様々な政策分野における政策実施や公共サービスの提供に用いられている。しかしながら,協働型ネットワークには,目的・利害関心・認識枠組み等が異なるメンバーが参加していることから,メンバーの集合行動が困難となり,パフォーマンスとアカウンタビリティの問題が生じる。そこで,協働型ネットワークを評価する必要性が指摘されており,産出された業績情報がネットワークメンバー間で学習のために活用されることにより,ネットワークのパフォーマンスの向上およびアカウンタビリティの確保に貢献することが期待されている。本稿は,協働型ネットワークにおける業績情報の学習のための活用に影響を与える要因を明らかにすることを目的としている。ネットワークメンバー間の関係性および相互作用が,業績情報の学習のための活用に与える影響に焦点をあて,米国A郡において「システム・オブ・ケア」を実施している協働型ネットワークの事例分析を行った結果,協働型ネットワークにおけるメンバー間で,一方のメンバーが組織間コミュニケーションにおいて業績情報を学習のために活用している場合に,もう一方のメンバーも業績情報を学習のために活用する傾向があることが明らかになった。つまり,協働型ネットワークにおいては,業績情報の学習のための活用は相互的に行われる傾向がある。

  • 三田 妃路佳
    2015 年 15 巻 p. 146-159
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,長い間実現しなかった日米航空自由化が実現した要因,自由化ができたのにも関わらず羽田空港の昼枠について米国と合意ができていない要因について明らかにすることである。Pierson(2004)の研究などを歴史的制度論の研究を基に分析枠組みを設定し,おもに調整問題や拒否点という4つの視点から制度変化の要因を分析した。その際,航空会社,空港会社,国交省,政治家等の関係者へのヒアリング等,定性的な手法を用いた。

    オープンスカイの実現に至る過程では,拒否点,調整問題,正のフィードバックで変化がみられた。拒否点については,成田空港周辺自治体の発着枠拡大への合意,JALの破綻による,航空会社の政府への影響カとオープンスカイヘの姿勢の変化が見られた。調整問題については,新しい仕組みATI(制度)の導入により,自由化への航空会社の見解が変化し,また,国土交通省の国外航空会社を守るという認識が変化した。さらに,政権交代により,成田空港だけが国際空港の中心であるという方針が変更した。こうした拒否点,調整問題の変化は,自由化に対する国土交通省の交渉時の選択肢を増やし,米国とのオープンスカイに合意しないという90年代から続いた正のフィードバックの状況を変化させることになった。

    つまり,日米航空自由化拒否点や調整問題,それに続く正のフィードバックに変化があったためであることが明らかになった。加えて,資産特定点の影響が,自由化の内容に制限を与えることも明らかになった。

書評
その他
feedback
Top