中核市・特例市は,自治体の人口規模とそれに付随した移譲される事務権限を基準として,我が国の大都市制度の階層構造を形成している。両制度は,それらの単純化された基準に従っており,要件を満たす自治体の多くは,遅かれ早かれ制度移行を選択してきた。しかし,基礎自治体が大都市区分に移行する過程では,制度のあり方だけではなく,自治体固有の事情が当然影響するため,個々の事象を微細に検証する必要がある。
本稿では,越谷市を対象とした爲我井(2015)1の知見をもとに,東日本における昇格4市(郡山市,宇都宮市,前橋市,高崎市)の行政部局を対象として,中核市・特例市の昇格に関する追加のアンケート調査を行う。調査では,中核市・特例市への移行の準備段階から移行後に至る過程を踏まえて,四つの調査項目群から設問を設定した。ここでは,それらの回答結果を通じて,中核市・特例市への移行過程を明らかにしつつ,両制度がもたらす利得の内容について論じる。
分析により,調査自治体は,総じて事務・権限に主たる関心を寄せ,制度への移行と既存の一般行政事務を関連付けて議論しており,相互参照の結果,移行の手続きも類似している点が観察された。中核市・特例市への移行は,首長の同意のもと,行政の設定した共通のフレームワークにそって進められていた。
抄録全体を表示