公共政策研究
Online ISSN : 2434-5180
Print ISSN : 2186-5868
16 巻
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巻頭言
特集公共政策と民意
  • 松田 憲忠
    2016 年 16 巻 p. 5-6
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー
  • 森 道哉
    2016 年 16 巻 p. 7-18
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    本誌の特集「公共政策と民意」との関連において,本稿では,一般的に人々を指す公衆やその選好あるいは意思としての民意が,政策過程および政治過程の分析枠組みにおいてどのような位置づけを与えられているのかを考察する。具体的には,分析枠組みに反映される「時間的射程」,民主主義観,そして政策過程における「社会的過程」と「知的過程」の関係の3点に注意を払いながら,議題設定過程および政策決定過程の研究における公衆や民意の検討を進め,さらにそれらを積極的に分析に取り込む「政策フィードバック論」の展開を追う。先行研究の多くが公共政策を従属変数と捉えてきたのに対して,その特徴は,独立変数としての公共政策が,長期的にどのように日常生活を送る公衆の認識に影響を与え,ひいては市民参加に関係するのかを考究する点にある。この議論では,公共政策を制度のように機能するものと捉えており,そのデザインが重視される。本稿では,これらの研究動向の確認が,公共政策それ自体,公衆の政治参加,そして政府の役割について理解を深めるための材料を提供していることをも示す。

  • 京 俊介
    2016 年 16 巻 p. 19-32
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    近年の日本における一連の厳罰化立法は,「法と秩序」の強化を求める市民感情に基づく民意が刑事政策に強く反映されすぎることを意味する「ポピュリズム厳罰化」現象と捉えられるのか。刑事政策に影響を与える政治的要因については,主に犯罪社会学の文脈で議論が蓄積されてきたものの,政治学的な分析が不足してきた。本稿は,政治学の観点から,近年の日本の厳罰化立法がいかなる政治的メカニズムで生じているかを明らかにすることを目的とする。本稿は,まず,イシュー・セイリアンスと政党間対立の2つの軸によって,刑事法学者が列挙した近年の厳罰化の立法事例を類型化することで,その全体的な傾向を把握する。そのうえで,分析対象期間内に複数の立法事例をもち,類型化の結果から詳細に検討すべき特徴をもつ2つの法律,すなわち,少年法と児童買春・児竜ポルノ禁止法について,その立法過程の追跡を行う。以上の作業を通じて,本稿は,日本の厳罰化の立法過程について「ポピュリズム厳罰化」論が説明するのは,一連の凶悪な少年事件を背景として成立した少年法の2000年改正など一部の「目立つ」事例に限られ,その他の多くは世論があまり関心をもたないなかで官僚制に実質的な政策形成が委任されている「ロー・セイリアンスの政策形成過程」の枠組みで捉えられる,「民意なき厳罰化」と特徴付けることのできる立法であることを示す。

  • 野田 遊
    2016 年 16 巻 p. 33-45
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    いまや多くの自治体で市民満足度のデータを収集し,政策形成に活用している。その際の前提は,サービスの業績(または公務員の対応)が改善すれば,満足度(または業績)も比例的に上昇するというものである。このことは果たして正確であろうか。本研究は,公務員の対応がサービスの業績にどのように影響を与え,それが市民満足度にいかに影響を与えるかを検討したものである。大きく2つの部分に分かれる。前半は,満足度研究のこれまでの議論をふまえた変数間の整理であり,本研究が注目する三つの変数の関係を再確認する。後半は,公共政策分野の満足度研究が注目してこなかった非線形の手法の検討とデータを用いた検証結果の部分である。業績(対応)向上による満足度(業績)上昇の線形関係が適切かどうかを吟味する。満足度研究と密接にかかわる「政府に対する信頼研究」においても変数間の非線形の関係にはあまり注目していない。本稿ではマーケティング分野の満足度研究の手法を手がかりに非線形ケースを分析し,サービスの業績や公務員の対応に対する評価の低い層において,線形ケースが「業績(対応)変化による満足度(業績)変化の傾き」を過小評価(加えて業績に関しては高い層において過大評価)している可能性を析出した。最後にこうした過小(過大)評価をふまえたとき,政策の対象とその接し方をどのように考えるべきかについて検討した。

  • 窪田 好男
    2016 年 16 巻 p. 46-58
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    政策評価と民意の関係について政策評価論ではこれまで議論はあまり行われてこなかった。しかし両者は,どちらも公共政策や公共政策決定システムに影響を及ぼすものとして実は関係がある。政策評価と民意の関わりがどうなっているのか,どうあるべきかを考えることが本稿の目的である。政策評価の手法は政策の価値を明らかにしようとするタイプと,それは意図せず政策がプログラム・セオリー通りに実施されたのか,必要性はあるのかを明らかにしようとするタイプがある。前者については費用便益分析や費用有効性分析,後者についてはプログラム評価や業績測定,事業仕分けなどの手法が開発され国や地方自治体で制度化されてきたが,いずれも民意による政策評価を意図するものではなかった。しかし,実務には民意による政策評価への期待もあり,それも関わってか,市民参加の自治体評価制度ともいうべき,何らかの形で市民と関わりを持つ政策評価の制度を試みる動きがある。本稿ではそうした動きとして京都市政策評価制度,進化した事業仕分け,青森県政策マーケティングを取り上げ検討し,民意による評価そのものと言える政策評価の手法や制度はなく,市民が持つ情報を政策形成や政策評価に活用しようという手法や制度がほとんどであり,政策評価はその評価結果が清報として民意の形成に資するものであると結論する。

  • 足立 幸男
    2016 年 16 巻 p. 59-72
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    自由民主主義を指導的政治理念とする政治社会においては今日,国によって程度の差こそあれ概ね,公共政策の分析(デザイン)/決定/実施/評価は民意との整合性に留意しつつなされているし,またそうでなければならないとされている。民意は今や全ての政策活動に対する最重要の制約条件かつ究極の正統性根拠としての広範な社会的認知を獲得するに至った,そう言っても決して過言ではない。しかし,それにしても,民意と祖容れない政策を構想・決定・実施しようとすることが何故かくも激しく指弾されねばならないのか。《民の声》(Vox Populi)は《神(天)の声》(Vox Dei)としてどこまでも敬い崇められねばならないのか。

    本論ではまず,《政策需要》(ある政策の実施に市民がどの程度の強さの正もしくは負の選好を有しているか)という意味での民意を発見・同定するための二種類のアプローチ――議会選挙,国民投票,世論調査等の結果から民意を推定しようとする考え方と,社会構成員の日々の市場行動から政策需要を推定しようとする支払意思額アプローチ――の各々の意義と限界(問題点)を検討する。次いで,社会構成員の政策需要(民意)――その「民意」がいずれのアプローチによって同定されたものであれ――に従わないこと,民意に変化を惹き起こすことを目的意識的に追及するような政策を構想し断行することが強く要請され正当化される,そうした場合も決して稀ではないことを論ずる。(598字)

論文
  • 永見 靖
    2016 年 16 巻 p. 73-84
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    本稿では,業界の振興を所管(業所管)する省が,環境法の多くを環境省と共管していることについて,法律上の趣旨は何か,その趣旨に沿った組織体制となっているかを分析した。環境法の中でも,リサイクル,化学物質等の分野では,業界振興が目的とされていないにもかかわらず,環境省以外の省が業所管の立場から環境省と共管している法律が多い。なぜ環境省専管とならないのか。本稿では,各省の設置法や個別の作用法に関する国会等での政府の説明を基に,業所管省が所管する法律上の趣旨を分析した。具体的には,中央省庁等改革基本法の省の編成方針やそれに関連する議論に基づき分析したが,その趣旨は見出せなかった。このため,個別の環境法の制定時の国会での議論等からその趣旨を明らかにした。この結果,環境法を業所管省が所管するのは,製造工程や製品の性状等の規制時に,対象となる業界についての技術的知見が必要だからだとされていることが確認された。最後に,この技術的知見の活用という趣旨を踏まえて各省内の事務分配がされているか,各省の組織令から確認した。組織令上は,規制対象となる業界が多い法律等において,業界について技術的知見を有していると考えられる課が,環境法を所管していない場合もあることが確認できた。

資料等
  • 爲我井 慎之介
    2016 年 16 巻 p. 85-97
    発行日: 2016/12/20
    公開日: 2019/06/08
    ジャーナル フリー

    中核市・特例市は,自治体の人口規模とそれに付随した移譲される事務権限を基準として,我が国の大都市制度の階層構造を形成している。両制度は,それらの単純化された基準に従っており,要件を満たす自治体の多くは,遅かれ早かれ制度移行を選択してきた。しかし,基礎自治体が大都市区分に移行する過程では,制度のあり方だけではなく,自治体固有の事情が当然影響するため,個々の事象を微細に検証する必要がある。

    本稿では,越谷市を対象とした爲我井(2015)1の知見をもとに,東日本における昇格4市(郡山市,宇都宮市,前橋市,高崎市)の行政部局を対象として,中核市・特例市の昇格に関する追加のアンケート調査を行う。調査では,中核市・特例市への移行の準備段階から移行後に至る過程を踏まえて,四つの調査項目群から設問を設定した。ここでは,それらの回答結果を通じて,中核市・特例市への移行過程を明らかにしつつ,両制度がもたらす利得の内容について論じる。

    分析により,調査自治体は,総じて事務・権限に主たる関心を寄せ,制度への移行と既存の一般行政事務を関連付けて議論しており,相互参照の結果,移行の手続きも類似している点が観察された。中核市・特例市への移行は,首長の同意のもと,行政の設定した共通のフレームワークにそって進められていた。

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