公共政策研究
Online ISSN : 2434-5180
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3 巻
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巻頭言
会長基調講演
特集 政策決定の透明性と明確性を目指して
  • 岸本 哲也
    2003 年 3 巻 p. 12-21
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    近年,情報公開や行政評価など「政策の透明性」を促進することをめざす制度が整備されてきている。本論文では,主として経済学の分析手法を用いて,政策の透明性を増すことがどのような効果をもたらすかを検討する。

    結論を要約すれば,政策の透明性を増すことには,効率性増加をはじめ,いくらかの望ましい効果をもたらすことを期待できるが,他方,政治に働きかけるための資源を多く持つ人をそうではない人よりも相対的に有利にすることによって,有権者間の公平性について望ましくない効果をもたらす可能性がある。後者の効果を回避できるか否かは,主として政治的資源をそれほど持たない一般有権者が,政策決定過程へどれほど参加できるようになるかにかかっている。

  • 佐々木 信夫
    2003 年 3 巻 p. 22-33
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    知事と議会を直接公選とする二元代表制のもとで,わが国で最大規模の官僚制組織である「東京都政」の政策決定はいかに行われているか。とりわけ,東京における最後の新都市開発とも思われる臨海副都心開発の生成過程は,政治と行政,国政と都政の狭間に揺れながら新都市が形成されていった,極めてユニークな政策例である。

    住民参画の時代と言われるように「開かれた過程」での政策形成が中心となる自治体政治の中で,東京の臨海副都心開発は,都民に対して極めて「閉じた過程」での政策形成であった点に特徴がある。しかも,都知事の交代により議会で決定した政策公約が反故にされるなど,議決機関としての議会の政策決定とは何かが問われた事例である。事実,臨海副都心開発は当初計画とは極端に違ったものとして形成されていった。

    中央集権体制が1世紀以上続いたわが国では,地方自治体が主体的に政策を形成していった歴史は極めて乏しい。臨海副都心開発は東京都保有の土地の上での開発政策であったがゆえに,その力量が問われた。だが,政策形成能力の未熟さがあらわになった例でもある。知事の交代で政策手法がガラッと変わり,結果が大きく異なってしまう。大統領制とは言え,都市形成がその対象になった時,被害が住民に及ぶ。最近の公共事業見直しも類似の傾向がある。しからば自治体における望ましい形の政策形成はいかにあるべきか,その点を明らかにしようとする。

  • 城山 英明
    2003 年 3 巻 p. 34-45
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    内閣の調整機能強化のために導入された経済財政諮問会議は,小泉内閣において事実上ここで決定するという姿勢を首相が示したことによって,極めて大きな役割を持つに至った。そして,民間議員がアジェンダ設定の上で大きな役割を果たした。民間議員の役割は,専門家というよりは体制内アドボカシーであった。このような経済財政諮問会議の活動の実質的な役割は閣議の実質化であったといえる。民間議員という外部からの刺激剤を利用することによって,主要経済閣僚間での実質的議論が可能になった。このような経済財政諮問会議の役割は,国際的にもユニークであった。閣議を実質的に活性化したという機能面ではイギリスのPSX関係閣僚会議と似ている。しかし,大臣によって構成されるPSX関係閣僚会議とは,外部の民間議員の力を借りているという面で異なる。他方,外部者を動員するという意味では,米国のCEAと似ているが,CEAが経済学の専門家によるチェック機能を担うのに対して,経済財政諮問会議の機能は,科学的検証とともに国民の視線の代弁というアドボカシー機能を含んでいた。経済財政諮問会議は,政策形成過程における様々な緊張関係・対立を透明化し,明示化しているという意味では,民主主義の観点からも意味があるといえる。しかし,これが今後安定化していくためには,与党内調整メカニズムとの調整,財務省を中心とする年次予算編成過程との関係の整理,関与の基盤となる知識情報基盤の整備といった課題を抱えている。

  • 曽根 泰教
    2003 年 3 巻 p. 46-54
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    政治の世界の情報公開は,行政の情報公開との違いや,政治改革の中で論じられてきた情報公開の意味などを示すことが特徴となる。

    第1に,政治を政策決定から捉えると,政策判断の根拠になる資料・データなどの情報が公開されていることがまず必要になる。

    その点では,政治資金規正法に基づく届出の怪しい数字・データを基に議論をすることに,政治の世界ではある意味で慣れきた。

    第2の問題は,政策決定「過程」の情報公開である。そこには,その過程を「完全生中継」せよという立場から必要に応じてという立場までの幅がある。

    この点では,国会や審議会などは開示が進んでいるものの,実質的な意思決定を行っている政党内部の過程や,「意思決定途中」の官僚機構内部の情報公開は,依然として,非公開が原則である。

    第3は,情報公開を誰に対してするのかである。国民一般なのか,専門家なのか,あるいは,「関心をもった」公衆なのか。接近可能性(accessibility)の確保はある意味で,請求権に基づく請求に対して情報を開示する「狭義の情報公開」であるが,情報提供を含む「広義の情報公開」の主張もある。

    地方自治体の首長たちの運動は,情報提供,情報共有にまで進め,県民・市民と情報を共有すると同時に,県民・市民に責任を持ってもらうという発想が背後にある。

    第4は,政治改革の文脈での情報公開である。政治改革における情報公開は,第1位の優先問題ではなかったが,「説明責任」は直接的な手段というよりも,ボディーブローのように長期に効いてくる,有力な武器の1つとして考えられてきた。

    政治の領域での情報公開も,最終的にはコーポレート・ガバナンス問題に行き着き,それは,金融や医療のような政策領域とも共通しているのである。

  • 細野 助博
    2003 年 3 巻 p. 55-67
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    審議会型政策形成が中央省庁再編後ますます重要性を帯びてきた。内閣主導型政治の本格化と軌を一にしている。ところで,審議会型政策形成に対して官僚の「隠れ蓑」でしかないという批判も根強い。しかし,経済財政諮問会議,税制調査会,財政制度等審議会等に関する新聞報道や筆者自身の参与観察から,必ずしもその批判はあたらない。むしろそれよりも重要な論点は,審議会型政策形成の「質」であり,その水準をどう保証するか,どう維持するかなのである。そこで審議会委員の判断力と人数,そして多数決のタイプについて簡単な確率モデルを作成した。モデル分析の結果から,委員たちの判断力の質的水準の向上が審議結果を加速度的に向上させるという示唆が得られる。また,審議内容の情報公開を積極的に進める必要がある。情報公開のモニタリング機能が,政策形成過程の透明化を実現し,結果的に政策形成の「質」を向上させてくれる。

  • 宮脇 淳
    2003 年 3 巻 p. 68-78
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    1990年代以降の日本の財政改革,行政改革の取り組みにおける問題点として,議論の二分化による「理念と技術の承離」とそれによる「改革から整理への劣化」を上げることができる。理念と技術の黍離は両者を結び付ける中間的制度の見直しを困難にし,行政改革等の取り組みをコスト削減からプロセス改革,組織文化改革へと進化させることを難しくしている。とくに,方法論,上向き論であるNPM理論の活用においては,取引コスト理論が指摘する事後コスト等新たな財政会計情報の形成,そしてエイジェント理論による契約関係に基づくガバナンスの形成が不可避となる。こうした情報やガバナンスの形成を支える中間的制度設計が進んでおらず,そのことが既得権体質や官僚行動メカニズムを従来型で埋め込む姿を残す逆機能を生じさせている。独立行政法人等新たな制度を有効に機能させ,少なくともプロセス改革のグレードに進化させるためには,政策形成,組織ガバナンスの前提となるデータそして情報形成の再検討とそれに基づく意思決定に大きな影響を与える理念と技術の中間的制度の見直しと形成を進めなければならない。それにより,資源配分を律する予算編成等に新たな評価軸を導入することで,インクリメンタリズム(増分主義)体質を前提とした従来の配分構造を見直すことができる。同時に,市場原理を公的部門に導入することで改革が進むのではなく,導入される市場原理を権威主義型から新たな情報共有に基づく民主主義型に転換することが必要となる。

論文
  • 伊藤 修一郎
    2003 年 3 巻 p. 79-90
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    治体聞における相互参照の経路の特定は,自治体政策過程研究の重要な課題であるが,同時に,方法論的に困難な課題でもある。その困難さを回避するために,本稿は政策内容の類似性を手掛りとして,参照先を推定する方法を提唱する。この方法によって,景観条例の条文を類型化し,クラスター分析を行った結果,歴史的景観条例都市景観条例など,目的別のグラスターが形成された。このことから,自治体は近隣の自治体を参照するよりも,政策目的に合致した参照先を,全国から探索することが明らかになった。同時に,市,県,町村といった,自治体の規模または制度上の役割別のクラスターも形成された。このことから,規模が近い自治体間(または,制度上の役割が近い自治体間)の相互参照が行われる傾向にあることも明らかになった。

  • 相良 敬
    2003 年 3 巻 p. 91-105
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    稿の目的は,企業による環境自主規制が,英国のように環境政策の第一の手段として利用することができるのか,又は米国のように,現在世界のほとんどの国で環境政策の第一の手段となっている環境規制を補完するものとして用いられるべきなのかを検証することである。本稿では,まず始めに,環境自主規制が,環境規制よりも望ましいものであるとしみ主張の根拠となっている,①フレキシピリティと効率性が高い,②短期間での実施が可能である,③イノベーションを促進する,という3つの環境自主規制の長所の説明を行う。環境自主規制の長所の説明をした後。本稿は,それら3つの長所は,実際には必ずしも存在しない,またはその長所が実際には短所となってしまっていることを明らかにする。

    次に,本稿は,環境政策の手段として望ましいものであるための最も重要な条件である,市民が環境自主規制作成過程において参加できているのか(市民参加),市民は,環境自主規制を信頼しているのか(信頼性)としろ問題についての検証を,英国でのアンケー卜の結果をもとにして行う。そして以上の検証の結果から,環境自主規制jには,主張されているような三つの長所は,必ずしも存在しなかったり,その長所が欠点、となってしまったりしており,さらにその作成過程において市民が参加できておらず,そして市民からの環境自主規制に対する信頼性も極めて低いことが明らかとなる。

    したがって,環境自主規制は,現状では,環境政策の第一の手段として用いるには問題が多いので,環境政策の第一の手段としてではなく,環境規制を補完する環境政策の手段として用いられるべきである。また,環境自主規制が環境規制を補完する手段として,効果的,効率的に機能するためには,市民,環境団体,政府が,環境自主規制lの作成,実施においてより積極的に関わらなければならない。最後に,本稿は,環境自主規制が,環境政策の有効な手段として機能する為には,このように環境自主規制における市民,環境団体,政府の役割を変えるだけでなく,企業,政府,そして市民という社会全体が環境保全に対する意識を変え,積極的に環境問題に貢献しようとすることが必要であると結論づける。

  • 西山 慶司
    2003 年 3 巻 p. 106-117
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    本稿は,英国のエージェンシー(Executive Agencies)と日本の独立行政法人を比較し,一般に管理体質を改善し業務効率を向上する策として捉えられている「エージェンシー化(agencification)」が,結果として政府部内における統制の強化を受けるのではないかという点を明らかにする。

    英国の農薬安全庁(Pesticides Safety Directorate)と日本の独立行政法人農薬検査所の運用規準を比較検証した結果,どちらにおいても「エージェンシー化」は,目標設定・計画策定の裁量を小さくし,目標・計画を定める事務作業負担の純増を招色答責相手の多元化をもたらしていた。日英ともに制度設計の側面では,政府部内の統制強化と「エージェンシー化」の本来の意図である「管理の自由」との矛盾が共通することを確認した。

    本稿は.「エージェンシー化」の問題点として次の二点を指摘する。第一に.「エージェンシー化」による主務省と執行機関との聞の「関係距離(relational distance)」の拡大が.「エージェンシー化」の重要な要素て,あったはずの「管理の自由」を実質的に喪失させ,アカウンタビリティ確保の要請の結果として政府部内の統制を強化させていることである。第二に,強化された統制制度は,執行機関が統制に従うためのコンプライアンス・コストを増大させていることである。

  • 宮永 健太郎
    2003 年 3 巻 p. 118-129
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    本稿の課題は,欧州地域政策(European Regional Policy)ならびにそこで適用されているパートナーシップ原則を題材として「地域政策におけるパートナーシップとNPO」という観点から,地域政策における論点と求められている課題を整理し提示することである。その結果,以下の3点を論点として抽出した。第1に,欧州地域政策を改革する中で発展してきたパートナーシッブ。原則というものが,EUの政治・経済・社会といったあらゆる側面での統合に対応する形で出てきた言わば一種のガバナンスシステムだったという点である。これは,一般的にパートナーシップというものが,政策「主体」の変化というよりもむしろ政策「構造」の変化の体現とでも表現すべきものであることを示している。第2に,政策の目的や政策の段階ごとに,パートナーシップは様々な形態をとりうるという点である。これは,NPOとのパートナーシッブ。に関する制度設計は,そもそもの政策の目的や政策の段階の建て方の問題とセッ卜にして考えるべきものであることを示している。最後の第3に,NPOとのパートナーシップは,地方分権という文脈に担保され,地方政府が十分な能力を持っているような場合に上手く機能する場合が多いという点、である。つまり,政策当該地域の政府が,NPOを含む各パー卜ナーが政策にコミットできる実質的なチャネルとして機能できるかどうかが鍵になると考えられる。

研究ノート
  • 塚原 康博
    2003 年 3 巻 p. 130-136
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,景気浮揚のための代表的な政策である公共事業と高齢化社会において拡大が不可避である社会福祉支出の生産波及効果を拡大レオンチェフ乗数(通常のレオンチェフ乗数,すなわち中間投入を通じた生産波及効果,と消費活動を通じた生斥波及効果の2つの効果の結合効果)を推計することによって比較分析した。この推計に当たり,取り上げる消費の範囲に関しては,2つの考え方がある。すなわち,消費の範囲を広くとる総最終消費支出ベースによる推計と消費の範囲を狭くとる家計現実消費ベースによる推計である。本研究では,両方の推計を行った。いずれの推計でも,社会福祉と公共事業の牛産波及効果の差は1%以内におさまっており,社会福祉と公共事業の生産波及効果はほとんど同程度とみなせる。この結果は,短期的な景気浮揚のための公共支出の配分において,公共事業だけでなく,社会福祉も選択肢の1つになりうることを示唆している。

  • 中川 芳江
    2003 年 3 巻 p. 137-147
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    本の動物愛護管理行政は,2000年の「動物の愛護及び管理に関する法律」の改正施行により転換期にある。動物愛護推進員制度が市民参加の制度として初めて法律で定められたが,動物愛護の領域で行政と市民のパートナーシップ事例は依然極めて少ない。動物愛護推進員は法に基づき市民が委嘱される準公務員で,立入検査等の権力はなく啓発を目的とする。

    今回,兵庫県は日本で初めての動物愛護推進員制度運用のモデル・ケースとなり,筆者は民間の立場から行政と市民の聞に位置する“協働コーディネーター”として本制度運用に深く携わった。筆者は地方自治体と動物愛護推進員の中間で中立的な存在として位置し,地域づくりのプロセス・デザインを図った。

    本稿では,この事例の成果と課題を通じて,日本の動物愛護管理行政における市民参加についてまとめる。

    成果は,協働企画型の運用が行政・市民双方の意識変容を促したこと,その結果,地域課題の解決への筋道を“シナリオとして協働で作成できたこと協働コーディネーターが重要な機能を果たしたこと,行政の縦割りを克服する生活者視点の成果が認められることである。課題は市民参加の多様なレベルへの対応である。

    本稿の結論として,エージェント型の市民参加から協働企画型への移行,協働コーディネーターの活用,動物愛護の倫理的意義再構築の必要性を挙げる。

  • 西岡 晋
    2003 年 3 巻 p. 148-158
    発行日: 2003/10/31
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    日本の医療供給政策は,1980年代中葉に,従来の供給促進型から供給抑制型へと大きく転換した。他方,その主要政策手段は誘導型規制から直接規制へ変化し,当時の新自由主義的改革の基調とは逆行するように,行政介入が強化された。この80年代の医療供給制度改革の背景・要因と,その政策過程の解明が本研究の目的である。

    本稿ではウィルソン(Carter A. Wilson)の提唱する「政策レジームモデル」を分析枠組みとして援用し,包括的な政策過程分析を試みた。政策レジームは,①権力編成,②政策パラダイム,③組織,④政策,の4つの次元から構成されており,通常は長期的安定状態にある。しかし環境の変化が政策レジームにゆらぎをもたらし,上記4つの要素全てに変化が生じると,レジームは変容する。

    事例研究の結果,福祉国家の危機や疾病構造の変化といった外在的な環境変化が既存の医療供給政策レジームに圧力を加え,その後,供給促進パラダイムの危機と転換,専門家共同体の形成と社会党の現実政党化による政策ネットワークの変化,厚生省衛生部局の再編,供給抑制型政策と直接規制lの実施を経て,レジームが完全に変容し医療供給政策の転換がもたらされたことが明らかになった。

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