公共政策研究
Online ISSN : 2434-5180
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4 巻
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巻頭言
特集 法の政策学
  • 阿部 泰隆
    2004 年 4 巻 p. 5-14
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    政策は法の形をとって初めて現実のものとなることが少なくない。そのための具体的な方法についてはこれまで何度も書いたことがある。本稿では,その璽要な視点のうち比較的最近のものをいくつか取り上げて,具体例で説明する。基本的な視点が大切であり,福祉の領域では基本条例などを作って,ばらまき福祉を防止すべきであること,法科大学院などを例に,基本理念だけではなく,具体的な制度設計が必要であったこと,内部告発者通報制度を例に外国法をやたらと真似ないこと,行政事件訴訟法改正の立法過程を例に,立法論を行う者は解釈論をご破算にすべきであること,日本の立法には費用対効果の発想が特に不十分であるので,その視点を入れるべきであるが,解釈でも多少は対応できること,立法に際しては,経過措岡に留意すること,法は明確でなければならないという視点が法の利用者のために不可欠であること等を扱った。

  • 渡辺 康行
    2004 年 4 巻 p. 15-23
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    2003年9月24日にドイツ連邦憲法裁判所は,甚礎・基幹学校における授業中も「イスラームのスカーフ」を着用したいという希望を明示する教師志望者に対して,そのことを理由にして採用拒否でぎるか,を争点とする事件に判決を下した。この問題に関して,これまで二つの考え方が対立していた。第1は,公教育の中立性や生徒の消極的信教の自由への影響を理由として,行政庁による採用拒否処分を合憲とする見解である。第2は,教師の信教の自由をより重視して,採用拒否処分を違憲とする見解である。これに対して連邦憲法裁判所は,法律の基礎がない限り行政庁は採用拒否できないとしつつ,ラント立法者が法律を制定してスカーフ着用を禁止することは可能だという予想外の判断を下した。こうして問題は政治過程に委ねらることになった。この結論は,一方では,民主主義の要請に適合している。しかしそれは,他方では,とりわけこの事件のように社会における少数者の人権にかかわる場合には,人権の価値低下という危険をはらんでもいる。この判決は立法を復権させたのか,あるいは立法に逃避したのか。これは,「法の政策学」を論ずる前に考えなければならない問題の一つである。

  • 大久保 規子
    2004 年 4 巻 p. 24-37
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    「市民参加・協慟」の推進を目的に掲げる条例には,自治基本条例,NPO支援条例等,多種多様なものがある。それぞれの自治体の事情に応じ,さまざまな方式を組み合わせることになると考えられるが,参加・協働のしくみの全体像,複数の条例相互の役割分担および体系化のプロセスを当初から視野に入れておくことが望ましい。

    参加のしくみを定める条例をみると,国の制度より進んでいるとみられる点も少なくないが,なお,①参加権の確立,②参加しやすい環境の整備,③参加手法の選択基準の明確化等の課題もある。また,NPOへのアウトソーシングや支援に関しては,NPOの自律性の確保が菫要であり,現在さまざまな形で導入されている登録制には改善すべぎ点もある。

    地方分権改革から数年が経過し,参加・協働の進展状況には,自治体によって大きな格差が生じ始めている。どのような条例をいかなるプロセスで制定・運用するかが,自治体の活力を左右する時代を迎えているといえよう。

  • 和田 淳一郎
    2004 年 4 巻 p. 38-43
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    経済学には制度設計に関する研究分野が潤沢てある。一般の経済学者は自由な競争はよい結果をもたらすからこそよいと主張しているに過ぎず,その根拠は「市場メカニズム(価格メカニズム)はパレート効率を達成する」といういわゆる厚生経済学の第一基本定理てある。しかし,市場がパレート効率の逹成に失敗するケースは種々存在し,政策介入,制度設計の根拠として敬重されるべきである。

    現状のパレート劣位な状況に対し,普通,複数のパレート優位な状況があり,数あるパレート効率な状況の比較に立ち入るには,通常余剰分析が必要になる。余剰分析が適当な厚生評価の手段であるためには,効用の可測性(基数性)と個人間の比較可能性の仮定が必要とされ,経済学の科学性を奪うので,政策提案の際にはこれらの仮定が認めてもらえるかどうかの確詔をする必要がある。また,公共政策においては,何らかの公平性の確保を含めたシステムの導入は必要だが,現実の政策実施の前提では効率面での損失というトレードオフを引き起こす。

    経済学が通常暗黙のうちに置く個人の合理性の仮定は,人間が行う選択肢の多さ,複雑さにより,計算可能性問題,先読み推量の限界の問題を引き起こすが,人間がどう合理的でないかをきちんと示してパターナリスティックな政策は採用されるべ彦であろう。

  • 関谷 昇
    2004 年 4 巻 p. 44-58
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    社会契約説という考え方は,個人主体を準拠点にして法と政治との応答関係を律する一つの規範原理である。近年はポストモダニズムの影響によって,そのt体性の構図や法学的思考の論理が批判されつつあるが,社会契約説の原理的可能性は依然として失われておらず,それどころかその原理性は法や政治政策にとって改めて問い直しの契機を発し続けていると考えられる。本稿は,社会契約説の現代的意義を改めて模索することを目的としている。社会契約説を,「作為」の論理という形で政治社会の発生の原理的基礎づけとして把えるならば,それは個々人が自発的に政治社会を営む民t主義原理を強調することを意味し,政治参加や政治過程の活性化を構成原理として弁証することにつながっていく。それはさらに,実践的な局面において,多元的な合意形成の充実を伴いながら,市民社会論として応用されてもいる。これに対して社会契約説の現代的復権は,所与の政治社会の帰結の原理的評価として再構成されるものであり,構成原理に対して制約原理にシフトしていると考えられる。それは法学的思考を背景とした配分的正義の導出を意味しており,それに甚づく国家権力の正当性を弁証することに応用されている。そこからさらに,リベラリズム的正義論として批判的に再構成されてもいるのである。本稿では,社会契約説が前者の側面から後者の側面へ転回した点を踏まえながら,そこに残されている課題を見出すことによって,今後の法学や政策学に必要とされる規範原理について検討を加えるものである。

論文
  • 秋吉 貴雄
    2004 年 4 巻 p. 59-70
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,「政策移転(policytransfer)」の分析フレームについて考察し,わが国における政策移転の政治過程について,政策アイディアの受容と変容の過程に焦点を当てながら考察することである。

    比較政治や公共政策研究において,これまで政策波及(policy diffusion),政策収敏(policy convergence),教訓導出(lesson-drawing)といった概念か提示されてきた。その中て,特定の国の政策をモデルとして新しい政策が形成されるプロセスが注目され,政策移転の概念が形成された。この政策移転の政治過程の分析視角として,制度,アイディア,学習,という3つか指摘される。

    本研究ては,決定的事例としてわが国の航空輸送産業における規制緩和を取り上け,①米国てのアイディアの生成,②アイディアの波及,③自由競争遅人への抵抗,④閉ざされた決定,という4つの段階に注目し,上述の分析視角からわが国においてとのように米国を中心とした規制緩和のアイディアが受容され,変容したかについて考察している。

    事例の分析結果から,①制度による疫容,②アイディアの混乱,という2つの要因による「学習の歪み」によって,規制緩和というアイディアが政策移転の過程て変容し,政策効果が挙げられなかったことが指摘される。

  • 岩渕 公二
    2004 年 4 巻 p. 71-82
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    市民参加の潮流と政府・自治体の財政状況の悪化を受けて,NPOをはじめとする非営利セクターが政策過程へかかわる機会が増えてきている。そのとき重要になるのが,NPOのアカウンクビリティである。本論では,市民参画の新しい場面としてクローズアップされている評価にかかわるNPOのアカウンタビリティについて考察するものである。

    評価にかかわるNPOのアカウンクビリティは,2つの視点から幣理できる。1つは評価プロセスに某づく視点であり,もう1つはNPOの制度,組織および活動形態に基づく視点である。評価プロセスに基づく視点では,評価の「設計」「測定」「判定」「判断(選択,決定)」のどの段階にかかわるかによって,アカウンタビリティの内容や性質が変化する。一方,NPOの制度や組織,活動形態に甚づく視点では,組織がもつ公益性と運営に欠かせない経営技術,設立および活動の基本となる社員ならびに資金提供者の自由意志と主体性から,アカウンクビリディの内容や性質が変化する。それらは,NPOの関与が受動的立場か能動的立場か,あるいは消極的か積極的かによって,問責の度合いも変化し,時にはそれらが交錯する事態さえ起こり得るのである。

    評価にかかわるNPOには,こうした多様なアカウンクビリティが存在し,それらを果たすことで関与の正当性を担保できるし結果の合理性も確保できると考えられ,公共サービスの主体が多元化する中でNPOのアカウンタビリティは重要性を増すものと考えられる。

研究ノート
  • 台 豊
    2004 年 4 巻 p. 83-94
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    本稿は,政府の公的年金改革案について,公共政策の策定・評価に関する基準に基づく検証を行い,より望ましい改正像を模索するものである。

    まず,公的年金政策の分野において妥当する政策策定・評価基準について考察を行い,具体的な基準として有効竹,公平性,効率性,実行可能性を提示する。

    次に,公的年金改革に関する四つの主要な論点,即ち①基礎年金の財政方式,②厚生年金の財政方式,③給付と負担の調整,④高額所得者の給付制限について,上記甚準に基づく検証を加える。

    総括的な結論として,保険料水準の固定およびマクロ経済スライドの採用により世代間の公平を図ろうとする点において,政府案を評価するとともに,特に国民年金制度における未加人・未納ひいては無年金者・低年金者の発生が大きな課題として残されることを指摘し,これに対応した三つの選択肢――①「皆年金」という政策目標の放棄,②税方式への移行,③厳格な所得捕捉システムを前提とする所得比例制度の導入――について論じる。

  • 朴 盛彬
    2004 年 4 巻 p. 95-107
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    金融自由化以前では「護送船団方式」の金融行政が日本の金融システムの枠組みを作り出し,金融システムの安定性を維持してきた。競争的市場では特定銀行の経営破綻が「伝染効果(contagion effect)」を通じて金融システムの不安定化をもたらし得るが,この金融システムの不安定化を回避するための制度的枠組みが「護送船団方式」であるということができる。この枠組みにおいてレント(rent)の発生・配分のメカニズムおよび天下りを通じた「レントの循環」が欠かせない要素である。無論,天下りは金融部門だけに見られる現象でないのだが,天下り経営者が個別銀行の経営のあり方にどのような影響を与えたのかについて計量的分析を行うことは,「護送船団方式」の実態とその変容を理解するうえで,有益な作業であろう。

    本稿ては金融市場に存在する大量の天下り経営者が個別銀行の経営状況,ひいては銀行間の競争システムのあり方にどのような影響を与えてきたのかについて実証的研究を行った。実証分析の結果によれば,天下り経営者と経営の効率性・健全性の間には有意に負の相関関係が見られる。個別銀行の中て天下り経営者は個別銀行の経営の健全性を引き上げるべく機能しなかったが,このことから必ずしも天ドりが個別銀行経営の非効率性をもたらしたとは言い切れない。「護送船団方式」では,レントの発生・配分を通じて,最も経営効率の悪い銀行を含むすべての銀行の存続が確保されていたために,個別銀行の経営効率の向上はそれほど菫視されなかった。「護送船団方式」は金融システムの安定性の維持という観点から一定の意義が認められるが, 1990年代に入り,バプルの崩壊を機に,従来の規制緩和などの効果とあいまって,市場におけるレントが急激に減少したことにより,「レントの循環」により成り立つ「護送船団方式」は機能不全の状態に陥り,金融危機は発生したと考えられる。

  • 山本 竜大
    2004 年 4 巻 p. 108-119
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー

    本稿は道府県議会議員が開設するホームページ(以下HP)のコンテンツを政策情報の視点から分析する。統一地方選直前の2003年3月までに現職議員2597人中で733人がHPを持っていた。議員HP上の政治・政策情報に関する試論を提供した上で,議員の政党・会派,年齢,学歴,当選回数選挙区の都市度を入力し,HP上のメニューと政策・公約を分類し,ダミー変数化させた。それらを利用したロジスティック回帰式から県議の間にもデジタル・デバイドの存在が判明した。次にクラスカル・ウォリス検定などを利用した多重比較の検討から,メニューには年代と党派により差が多くみられる一方で,公約の同質性の高さが他方で指摘される。

    以上の県議HPコンテンツの検討から,本稿は次の事柄を指摘できる。県議は新情報コミュニケーション技術(ICT)をポスターや通信ツールの一つとして利用し始めるが,政策過程を説明するレベルには逹していない。各県全体の利益頁献への客観的かつ具体的な政策説明や活動報告の情報発信だけでなく,都市部と農村部選出議員,与野党,永田町で連立政権を構成する系列党派の間で生じうる利害の調整過程を自らの視点から説明できるために,新ICTやHPは県議にとっても有用な政治コミュニケーション・ツールになり,今後さらに貴重な政策評価の材料を提供する可能性がある。

  • 2004 年 4 巻 p. 132
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー
  • 2004 年 4 巻 p. 137-143
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー
  • 2004 年 4 巻 p. 144-145
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー
  • 2004 年 4 巻 p. 146
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー
  • 2004 年 4 巻 p. 147
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル フリー
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