地域社会の持続可能性が,国と地方をめぐる財政にとっての深刻な課題となっている。
第二次世界大戦後のわが国は,「国土の均衡ある発展」を国家目標に据え,全国総合開発計画や地力交付税制度を効果的に運用することによって,高度経済成長の果実を全国に隈なく配分し,ナショナル・ミニマムの実現を成し遂げてきた。しかし,1990年代以降,従来の拡大成長型パラダイムの下での「国土の均衡ある発展」が不可能になり,分権型社会の構築が新たな目標となりながらも,国と地方をめぐる税財政構造は,依然として旧来型のナショナル・ガヴァナンス・システムから脱却できていない。
分権型社会とは,ローカル・ガヴァナンスによって地域社会が経営される社会であり,そうした社会を実現するためには,ガヴァナンスの基盤としての税財政構造改革が求められる。この間,分権改革の一環として地方交付税に関する多様な改革論が提起されてきたが,未だ国と地方の間で明確な合意は形成できていない。
今日,求められている税財政構造改革は,自治体の自立性を高め,地域社会の持続可能性に貢献するものであると同時に,地球市民的な公共政策目標と共鳴するものでなければならない。こうした観点から,持続可能性を重視した自治体間の水平的財政調整システム構築に向けて,環境負荷係数を財源調整の基準に据えた地方交付税制度の改革を提言する。
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