公共政策研究
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巻頭言
会長講演
特集紹介
特集論文
  • 坂井 亮太
    2023 年23 巻 p. 12-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    今日,熟議民主主義とミニ・パブリックスの実践は,政治理論と公共政策学の協働の最前線になっている。本稿では,この事例が,公共政策学が学際的な協働のあり方を構想する際の有益な参照点になりうると指摘した。まず熟議民主主義とミニ・パブリックスの実践を学際的な協働の成功事例ととらえ,その政治理論側からみた成功の要因と政治理論が公共政策学に接近する二つのパターンを検討した。その結果,熟議をめぐる政治理論と公共政策学の協働の成功要因として,(1)政治理論と公共政策学による共同の発展の追求,(2)政治理論による規範概念のモデルや制度構想への翻訳,(3)規範的理想の共有を通じた研究の方向づけと緩やかな解釈枠組の適用が確認された。また,政治理論が公共政策学に接近する第一のパターンは政治理論による規範概念の翻訳を起点とした学際化と公共政策学への接続であった。第二のパターンは,ファクト中心の政治理論が,公共政策学が必要とする知識を同様に必要とすることによってであった。ファクト中心の政治理論は,規範理論の構築にあたって経験的研究の成果を利用するものであり,その例として,熟議参加者の最適構成についての分析事例を示した。本稿は,熟議をめぐる政治理論が学際的な学問である公共政策学に接近していく姿を描きだすことを通じて,政治理論と公共政策学の領域をまたいだ連携のあり方を検討した。

  • 藤井 誡一郎
    2023 年23 巻 p. 25-36
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    新自由主義に基づいた行政改革により,公共サービスの提供主体の中に「孤立」と「分断」が常態化するようになった。それらは①直営と委託の分断,②不測の事態時の自治体の孤立,③正規職員と非正規職員の分断,④技能労務職の中での年配者と若手の分断,⑤役所組織内におけるサービス提供部門の孤立と分断,である。そこには,㋐公共サービスの質の劣化,㋑不測の事態に柔軟に対応できない体制,㋒非正規職員の処遇の改善㋓組織内の閉鎖性といった課題が生じている。

    これらの課題が時の経過とともに解決されるとは考えられにくく, 10年後は現状のままか,さらに深刻化した状態になっていると推察される。とりわけ㋐と㋒については特に深刻な社会的課題になっていると考えられる。㋐については安定的な業務委託先としては機能しにくくなる状況が見込まれる。㋒については,今後も増加する行政需要や新たな需要に対応していくための非正規職員の採用が見込まれるため,さらに手の施しようがない壊滅的な状態に陥る可能性がある。

    行政改革による公共サービス提供主体の脆弱化に対し,今後は「行政改革で失った資産をいかに取り戻していくか」が大きな社会的な課題になるであろう。公共政策学では多元的な主体によるガバナンスのもとでのガバメントの役割について,学際的な分野からの議論を展開していく必要がある。

  • 今本 啓介
    2023 年23 巻 p. 37-48
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,少子高齢化・人口減少が進む現在,フルセットを装備した基礎的地方公共団体を維持することが難しい地域が多く出現する中,特に小規模市町村を念頭に置き, 10年後の基礎的地方公共団体のあり方について論じることを目的としている。平成の大合併後広域連携が推進される中,広域連携が小規模な基礎的地方公共団体に及ぼす影響や,広域的地方公共団体として既に存在している都道府県との関係で小規模な基礎的地方公共団体をどのように捉えるべきかに着目した場合,全ての基礎的地方公共団体がフルセットを装備せず,地方公共団体がそれぞれの有する強みを活かし,それぞれの持つ情報を共有し資源を融通し合うという方向性自体は妥当であるものの,特に,連携中枢都市圏や定住自立圏で周辺市町村に位置づけられるか,圏域に入れないことから都道府県の補完・支援を受けることとなる小規模な基礎的地方公共団体において,現在の地方自治法が予定している市町村中心主義が維持できない可能性があること,及びそうした基礎的地方公共団体にしか属しないことが地方自治の本旨に抵触する可能性があることを指摘する。そのうえで,従来当然のこととされてきたすべての区域が基礎的地方公共団体に属するという前提が崩れる可能性があることから,そうした状況にも対応できる基礎的地方公共団体のあり方を今後検討することが必要であると結論付けている。

  • 三浦 哲司
    2023 年23 巻 p. 49-60
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    わが国のコミュニティ政策はこれまで補助金の配分が中心的な内容であったが,地域コミュニティを取り巻く困難な状況をふまえるならば,公共政策学の視点や知見を活かしたコミュニティ政策のとらえなおしが要請される。そこで.本稿では「公共政策学の視点・知見に依拠すると,コミュニティ政策はいかなる位相にあり,いかなる特質や論点を包含しているのか」という問いの答えを探る。一連の検討をとおして指摘できるのは,コミュニティ政策の要件として,政策の体系化,主体の多様化,内容の豊富化,効果測定の精緻化が要請されるという点である。同時に,地域コミュニティをどのようにマネジメントするか,自治体行政と地域コミュニティとの関係をどのように再構築するか,地域コミュニティの活動をどのように促すか,といった内容が論点として整理できる。ともあれ,個々の学問領域のみに依拠した改善策の模索には限界があり,多角的な視点による総合的な研究が引き続き求められる。こうした点で,学際性と問題解決志向をもつ公共政策学の社会的意義をあらためて確認できるといえよう。

  • 瀬野 陸見
    2023 年23 巻 p. 61-71
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    社会政策の観点から,社会的排除/包摂とはどのように位置づけられるか,ということを踏まえたのち,皆保険体制における排除の問題について議論を行った。国民健康保険における「資格証明書」の問題は皆保険体制における排除の問題と位置づけられるが,そのような現象が起こる理由には,社会保険という政策が持つ価値観に由来すると考えられるものがある。社会保険は,自由市場を前提とした,パターナリズム的な要素が低い設計であり,そのことから,普遍的な給付がそれなりに高水準に保たれやすく,また国民に受け入れられやすい制度となっている。私的財産権を尊重しつつ,社会政策としての社会安定性・社会統合のための目的を達成するため,現実の実現可能性を高めるためにはこのような価値規範が採用されてきたと考えられる。しかしながら,その価値規範から漏れてしまう「排除」の問題に対応することは制度の持続可能性のためにも重要である。そのためには保険料の減免・軽減制度をどこまで拡大させるかが重要となるが,このような排除の問題はあまり検討されてこなかった。

  • 安藤 加菜子
    2023 年23 巻 p. 72-83
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,子育て支援政策をめぐり社会に起こりうる分断の可能性と,その克服への道筋を論じる。少子化や人口減少に対する危機感は長らく訴えられてきた。そうしたなか,政府による子育て支援政策は,より包摂性を高めることを目指して改革されつつあるように見える。これまでの政策では支援の対象にならなかった親が,支援の対象として目を向けられるようになったからである。政府はあからさまに「普遍主義」という言葉を掲げてはいないが,子育て支援政策はより普遍的なものに変化しつつあると評価できる。一方で,子育て支援の普遍化に対する人々の支持を得ることには,困難が伴うことが予想される。その理由は財政や人手,組織面等様々にあるが,本稿は特に人々の価値観のありようからこの点を指摘する。勤労者としての自立を重んじる立場からの批判や,個別の事業レベルにおいて起こりかねない人々の支持が分かれることへの懸念である。そこで本稿では,普遍的な子育て支援政策として展開される事業を総体的に支持するための拠り所として,「担い手が固定されないケア」の価値に注目することを提案する。この提案がめざすのは,子育て支援政策の普遍化にあたって懸念となる支持の分断をやわらげることであり,公共政策学における規範的政策分析を用いた合意形成の支援の試みでもある。

  • 久保 はるか
    2023 年23 巻 p. 84-97
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,移行期にある再エネ政策について,現状分析と論点整理を行う。具体的には,制度設計が対象者に与えるメッセージに着目して対象者の行動がもたらした状況を分析し,再エネの促進を図る近年の取組みを政策統合(他の政策との調整,制度間の連携)の観点から分析する。

    再エネ市場の普及を目的とした当初のFIT制度は,従来型の開発志向の事業をもたらした。立地地域では,事前の情報の把握事業の決定プロセスヘの参加と協議地域への利益還元(地域貢献),自然環境・生活環境との調整という課題が認識された。問題に対して、既存法の規制強化や自治体条例によって部分的に対処されてきたが,近年用いられている促進区域・ゾーニングは,これらの課題に網羅的に対応しようとする手法といえる。

    促進区域・ゾーニングという手法は,再エネの促進と第一次産業の発展や地域づくりとを組み合わせる政策調整を取り込んだ制度であり,地域エネルギーとの親和性が高い。近年のFIT制度は,これらの制度との連携を強化し,地域エネルギーとしての機能を認定要件に加味するなど,制度のカバーする領域を広げている。このような動きは,地域でどのような事業を促すべきか、政策間のバランス調整について制度がどのようなメッセージを示すべきかという,政策統合の制度設計のあり方に関する新たな論点を提起している。

投稿論文
  • 出口 航
    2023 年23 巻 p. 98-112
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    国会議員はどれほど政治資金を調達し,それは制度・競争環境・政党・個人属性といった要因とどのような関係にあるのか。1990年代の政治改革では,小選挙区比例代表並立制の導入によって政治資金の必要性が低下すると予測された。2000年代以降は議員レベルの収入実態が把握されていない。また,参議院議員も検討されていないため,異なる制度や競争環境と政治資金の関係は明らかになっていない。

    本稿は,政治資金収支報告書から2017・2018年の衆参議員データを構築し,議員の政治資金収入を検討する。制度,政党個人属性と収入の関係を,並立制導入直後の二次データ(1996年)との比較から検討した。明らかになった点は次の通りである。

    第一に,政治改革で目指したように議員の収入額は減少しつつあるが,議員間で収入額に差がある。第二に,参院議員よりも衆院議員の方が,比例単独選出より小選挙区選出議員の方が収入額は大きい。第三に,政治改革直後と比べてどの政党でも収入額が減少しているものの,自民党議員は相対的に大きな収入額を維持している。第四に,個人要因と比べ,選挙制度や所属政党が収入額との関連が強く,比例区選出議員は収入が少ない傾向にある。これらの結果は,政治改革が資金の抑制に一定程度機能したことを示唆している。

  • 木下 健
    2023 年23 巻 p. 113-126
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,第208回国会(2022年度)の予算審査を分析対象として,議院内閣制・ニ院制という政治制度の違い,とりわけ参議院予算委員会で採用される片道方式が,委員会審査の質疑という議員行動に影響を及ぼしているかを検証した。国会質疑の巧拙が生まれる5つの要因として,参議院の監視機能,議員の専門性,選挙制度の違い.イデオロギー.キャリアを取り上げた。参議院予算委員会では,片道方式を採用しており,短い質疑を数多く行うことによって,効率的な審査を行うことが可能であり,監視機能を担う上で有用となっていると考えられる。

    分析の結果参議院予算委員会で採用されている片道方式に起因して,衆議院議員の方が政治レトリックを多用していることが明らかになった。参議院予算委員会で採用されている片道方式は限られた質疑時間を最大限活用するため,政治レトリックの使用を減らすことが明らかとなった。権力の融合と分立という観点から考えると,衆参の選挙制度の違い及び審査方式の違いによって,質疑に違いが生じていることが明らかとなった。参議院議員は監視機能を発揮しようとして質疑を行い,衆議院議員は有権者に向けて政治レトリックを使用しているといえる。

  • 吉田 隆紘
    2023 年23 巻 p. 127-138
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    日本の行政組織においては頻繁に配置転換が行われている。こうした配置転換は「ジェネラリスト型の配置転換」などとも言われ,技能形成のために行われていると説明されてきた。すなわち,様々な部署で経験を積むことで行政官個人は幅広い技能を身につけ,ジェネラリストとして育成されていくとされる。しかし,行政官個人は着実に技能を習得するとは限らず,しばしば技能形成に失敗するとした方が自然である。技能形成に関心が集中してきた先行研究においては,そうした技能形成に失敗した場合が見落とされてきた。そこで本稿では,技能形成に失敗した[冗員」に注目し,一定の条件下で冗員が組織内で部署間をタライ回しのように配置転換させられるというメカニズムから頻繁な配置転換を説明し,それを実証する。実証にあたっては京都市立学校教員人事を題材とし,優秀教員表彰制度を用いることで技能を直接観察することの困難性を乗り越える。結果として,技能習得可能性の低い個人の方が技能習得可能性の高い個人よりも異動サイクルが短く,より頻繁に配置転換をしていることが明らかとなった。この結果は中央省庁などにおいてキャリア組がジェネラリスト型の配置転換として頻繁に配置転換させられることなどとは対照的であり,従来ジェネラリスト型の配置転換と思われてきたものは冗員のタライ回しであった可能性を示唆するものである。

  • 寺下 和宏
    2023 年23 巻 p. 139-155
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,韓国における基礎自治体のパネルデータを用いて,女性団体の活動が自治体の福祉予算に与える影響を明らかにした。先行研究は,女性団体をはじめとする「女性]の利益を代表するアクターが政治過程に参加することで,福祉の拡充がもたらされると論じてきた。この中で,女性団体はアウトサイダーとして,福祉拡充の世論形成に重要な役割を果たしつつ,時に労働団体や左派政党と連携して,政策起業家として福祉政策を主導してきたことが指摘されてきた。その一方で,先行研究では,女性団体と福祉政策の関係についてデータを用いた実証分析がほとんどなされてこなかった。そこで本稿では韓国の基礎自治体の福祉予算の規定要因を分析し,女性団体の活動が福祉予算にいかなる影響を与えるのかを検討した。その際機械学習を導入した抗議イベント分析を用いて,韓国語の新聞記事を分類することで,韓国各地の女性団体の活動に関する独自のデータを構築した。差の差法(DID)による分析の結果,女性団体による抗議の有無が自治体の福祉予算に影響を与えるとは言えないが,進歩的な女性団体のみが抗議をしている場合か,女性・福祉に関するシグナルを発する抗議のみが観察される場合に,その2-3年後の人口一人当たり福祉予算が増加することが明らかになった。

  • 竹中 勇貴
    2023 年23 巻 p. 156-167
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    本論文は,都道府県議会における知事の議案の可決や修正・否決をよりよく説明するために,知事と有権者の政治的なコミュニケーションに注目する。1990年代以降政治のメディア化をはじめとする変化もあり,メディアを通して自らの議案について有権者へのアピール(「going public」と呼ばれる)をする知事が多く見られるようになった。本論文は,有権者へのアピールが知事の議案の成立につながる条件は限られており,全体的には知事と議会の対立を深めると論じる。よって,政治のメディア化が指摘される時代にありながら,知事は選挙前連合が大きいほど,議会との関係を協調的にするためにむしろ意図的に沈黙を選択するようになる。

    知事が自らの議案を修正・否決されやすくなるにもかかわらず有権者にアピールするという行動は,「非難の政治」の理論によって説明できる。すなわち,知事が有権者にアピールするほど知事の議案の修正・否決によって議会側の支持が大きく低下し,相対的に知事に有利な状況となる。具体的には,選挙前連合に自民党が含まれない知事については,有権者に積極的にアピールするほど知事の議案の修正・否決によって次回選挙で自民党の議席率が大きく低下する。しかし,選挙前連合に自民党が含まれる知事についてはそのような効果が見られない。

    本論文は,有権者へのアピールの指標として知事の記者会見の数に注目し,都道府県の公式ウェブサイトやそのアーカイブにおける記者会見録からデータを収集し,上のことを定量的に明らかにする。

資料・解題・レビュー・報告等
  • 高橋 勇介
    2023 年23 巻 p. 168-178
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー

    コロナウイルス流行の中,雇用調整助成金が,雇用維持に対する政策の一環として着目されるようになった。雇用調整助成金をめぐっては,失業を未然に防いでいるという主張がなされる一方で,正規雇用の雇用保護を助長し,産業構造の転換を遅らせるという批判がなされてきたことも事実である。一方で,多くの先行研究が,雇用調整助成金の雇用維持効果を認めている。ただし,リーマン・ショックを契機とした,雇用調整助成金の支出拡大と財政運営については,課題も残された。

    本稿では,雇用調整助成金の財政運営の変遷と政策効果に対する議論を整理し,制度の課題について検証する。特に,コロナウイルス流行による経済変動のもとでは,2020年の雇用保険臨時特例法制定や「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」の新設が実施され,一般会計からの繰り入れも行われたが,厳しい状況に追い込まれたすべての企業が必ずしも受給を求めるわけではなく,雇用調整助成金には失業回避効果があるものの,社会的損失も発生する可能性があるなど,課題も多い。一方で,雇用保険の受給期間が短く,非正規雇用に対する雇用保護が弱い日本においては不況時における雇用維持政策として,一定の政策的意義があると考えられる。

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