軟鋼熔接部は母材部と熔着鋼との性質の差異により各種の機械的,物理的性質を異にし,又熔接の熱影響によつて母材部に於ても強度の異る部分を生ずることは既に知られてゐる處である.
筆者等も軟鋼熔接部について微細に衝撃値分布を測定した結果特にその融合部に衝撃脆弱部のあることを認めた.而も鋼材は各種の温度に於てその強度を異にし,特に低温度に於ては衝撃値に著しき變化を示す場合があるので茲では上記熔接部の衝撃値分布が高温及び低温に於て如何に變化するかを研究した次第である.
融合部を中心に2mmづゝ衝撃位置を變化せる20箇の試驗片を一組とし,700℃より-80℃までの各種温度にわたる衝撃試驗を行ひ試驗温度の影響を究明した.高温度に於ては熔接各部の衝撃値は略常温に於けると同様の分布状態の下に變化し常源に於て脆弱なる融合部は高温に於ても略同樣な傾向を示し,特に高温度なるがために低下するとは考へられない。又低温度に於ては母材部は-40℃に至れば急激な衝撃値の低下を來すに對し熔着鋼部及び融合部は或場合には-80℃に至るも尚かなりの強さを示し,從つて低温に於ては熔接部は母材部に比して却て安全なることが認められる.これ等の諸原因は主として熔着鋼部が母材に比して低炭素なること,熔着鋼部及び融合部附近は熱的影響により稍球状化せる微細組織を呈し,集中應力の影響小なること等によるものと考へられる.
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