歪んだ分布に従う正値データに対して, ベキ変換を用いて正規分布に近付けてから解析を行う立場は, 正規理論の豊富さと, ベキ母数によりかなりの分布族が再構成されるという柔軟さとが, ベキ変換の適用の大きな動機になっている.この論文では, まず, F分布のベキ変換公式から導かれた, F分布の中央値の近似公式を用いてメジアンランクの近似公式を与える.近似精度は実用に耐えるものである.次に, F分布に対するWilson-Hilferty変換の公式を, カイ2乗分布の場合に適用して1変量分散分析で自由度不揃いの平方和に対する正規確率プロットを構成する.正規確率プロットの打点のための位置決めには, 先のメジアンランクの近似公式が利用される.正規確率プロットの利用は要因効果を偏りなく評価するのに役立つ.最後に, F分布に対するWilson-Hilferty交換の公式を一般化F分布に適用して導入されたベキ正規分布族を用いて, 位置・尺度同時要因解析のための一つの統計的モデルを提案する.このモデル化はBox-Cox変換を用いた立場とは異なり, 一般化線形モデルの立場に近く, 統計的に取り扱いやすいモデルになっている.
抄録全体を表示