本稿の目的は, 一般に要求分析, 機能定義, 仕様設計といったステップで行われるソフトウェアの設計開発プロセスについて, そのモデリングを行い, プロセス効率化のための管理方法論の考察とその実践的かつ簡易なインプリメンテーションを行うことである.このために, まず設計仕様をその構成メカニズムの違いにより「暗黙の仕様」と「固有の仕様」に分類する.このうち, 特に暗黙の仕様は設計者白身の知識や記憶の組み合せから自動的・無意識的に構成される設計仕様であり, 設計者担当者にとって白明ともいえる仕様を意味する.これに対して固有の仕様は設計担当者の保有する既存の知識範囲では決定不可能な設計対象に固有と認識される設計仕様である.そして, 設計開発プロセスがこれらを構成する2種類のプロセスから成り立つとするモデルの提案と, それに基づいた特に設計変更の予防と早期発見のためのプロセスの管理方法論について考察する.また, これを実現するためにプロセスの記述方式であるIDEF3を応用したそのインプリメンテーションを行う.最後に製造業における業務アプリケーションの設計開発プロジェクトの事例により, これらの妥当性について検証する.
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