MTシステム(マハラノビス・タグチ・システム)の様々な発展形の中の1つとしてRT法(Recognition Taguchi System)がある.RT法は,MTシステムの中で一番新しい方法であるため,数理的な性質や適用上の注意点についてほとんど議論されていない.RT法は,計算の簡便さとアイデアに満ちた魅力的な方法のように見えるが,連続型のデータへの適用にあたっては注意が必要である.
本論文では次の3点を議論する.(1)RT法を適用するには各項目の単位が同じ,ないしは各項目が無次元数でなければならない.そうでないなら,各項目の無次元化を行う必要がある.(2)RT法で用いられる距離には単位空間の中心位置で大きめの値を取り,中心から離れたところでゼロになるという不適切な性質がある.このことは,新たに採取したデータが単位空間の中心に近い場合,それを単位空間外と判定する可能性が高くなり,ミスリーディングである.(3)(2)で述べた不適切な性質を改良する距離を提案する.この距離は,単位空間の中心位置でゼロとなり,中心位置から離れるに従って比例的に増加する.
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