妊娠状態では種々の脳血管障害の頻度が増加することが知られており, 脳循環動態異常の関与が推測されるが, 現在のところその原因は明らかにされていない。今回, われわれは重要な指標の一つである脳血流量を評価する量的で妊娠中絶予定の妊婦10例を対象に中絶前後で
133Xeガス吸入法を用いて局所脳血流量の変化を測定した。中絶前では, 大脳半球61.6±9.1, 前頭葉60.6±8.7, 側頭葉75.0±12.3, 頭頂葉64.5±9.2, 後頭葉62.6±11.7, 大脳基底核69.2±10.7, 小脳72.3±13.0, 中絶後では大脳半球56.6±9.7, 前頭葉56.6±9.9, 側頭葉68.2±13.4, 頭頂葉51.2±9.1, 後頭葉59.1±11.1, 大脳基底核62.4±11.1, 小脳60.2±10.1 (単位はいずれもml/100g/min) と後頭葉を除く各部位で妊娠時の方が有意に高値を示した。妊娠状態では非妊娠時に比べ局所脳血流量が増加していることが確認された。
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