本報告では,
137Cs γ線源が作る放射線場の特徴およびこの場に置かれた物質内での深部線量曲線について議論した。まず, 線量計測上基本量であるカーマと吸収線量を記述するために簡単な数式化を行った。真空中での平行光子ビーム照射という条件では, 急激な増加とその後の緩やかな減少という, よく知られた深さ分布のパターンが確認できた。
この理論的予想に反して, 11mg/cm
2のプラスチック基板上の15mg/cm
2の硫酸カルシウムTL素子とアルミニウムフォイルを用いた実験では, 深部線量がアルミニウムの厚さ30mg/cm
2で表面の値に比べて約30%減少するという結果となった。これは26keV光子の減弱に相当する。いくつかの別の実験および吸収線量のオーダー推定より, 表面での線量は線源カプセルや空気層で発生した二次電子に影響されていると推論した。
より定量的に議論するため, EGS4モンテカルロコードを用いて, ステンレスカプセル入りガラス状球形線源と仮定して, 二次電子フルエンスを計算した。この結果, フルエンスでは二次電子は一次γ線のわずか3%程度しかないが, 線量換算係数がきわめて高いため, 表面での吸収線量への寄与は70%を超えることがわかった。物質へのγ線照射や線量計の較正実験の際には, これら二次電子への配慮が必要である。
抄録全体を表示