著者らはすでに, 機能性複合糖質の代表格である細胞膜面上の糖蛋白質の糖鎖機能を模倣した新規なドラッグデリバリーシステムの開発を目指して, 蛋白質を介したリポソームへの糖鎖の導入方法を検討し, リポソーム膜面上に結合した糖蛋白質の糖鎖構造改変とレクチン結合活性ならびに体内動態特性との関連について明らかにしてきた。これまでの体内動態実験では,
125I標識複合体を用いてきたが, 通常, 糖蛋白質の
125I標識率はきわめて低いため, その
125I標識率を高めるための工夫が必要となってきた。そこで, 本研究ではBolton-Hunter試薬 (以下, BHRと略す) を用いて, 標識率の改善を試みるとともに, レクチン結合活性および生体内動態への影響について検討した。一般的には先にBHRを
125I標識し,
125I-BHRを蛋白質に導入する方法をとるが, 今回は先にリポソーム中のアミノ基にBHRを反応させ, p-ヒドロキシフェニルプロピル基を導入した後にクロラミンT法による
125I標識を行う方法をとった。結果として, BHR処理により複合体の
125I標識率は顕著に上昇した。また, BHR処理による複合体のレクチン結合活性への影響は見られなかった。しかしながら, 生体内動態は両者で顕著な差が見られた。すなわち, 肝臓への取込みが高まり, その結果腎臓への排泄が速められた。
以上の結果より, 糖蛋白質結合リポソームの放射性ヨード標識には, 新たなる方法を開発する必要があろう。
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