米国核医学会で提唱されている内部被ばく線量計算方法(MIRD)においては,β線のエネルギーは,線源臓器内で完全に吸収されると仮定されている。しかし,RI内用療法の基礎実験で用いられるマウスの臓器は,
90Yからの高エネルギーベータ粒子の飛程と比べ,相対的に小さい。したがって,高いエネルギーのベータ粒子は,線源臓器を透過し,結果として,周囲の臓器の線量が増大することが知られている。マウスに投与されたβ線放出核種からの内部被ばく線量を正確に推定するには,CT画像を基にしたボクセルファントムのような,よりリアリスティックな幾何学的モデルが必要とされ,そこで,モンテカルロ計算コード(EGS5)を用いて,精密にベータ粒子の輸送をシミュレーションすることが重要になってきている。本研究の目的は,モンテカルロ計算コードによりマウス内のベータ粒子の輸送をシミュレーションするために作成したユーザーコードの妥当性を評価することにある。このため,マウスを模擬した小型タフウォーターファントム内に小型ガラス線量計と
90YCl
3溶液を封入したカプセルを埋め込み,その小型ガラス線量計で測定された吸収線量分布をこのユーザーコードを用いた計算結果と比較することによって確認した。このユーザーコードで計算された小型ファントム内吸収線量の分布は,測定された結果と比較し,かなり良い一致をしていることがわかった。
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