RADIOISOTOPES
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59 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 大内 浩子, 近藤 泰洋, 加賀 勇治, 阿部 美津也
    2010 年 59 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル オープンアクセス
    X線を過照射したイメージングプレート(IP)では,可視光を長時間照射しても潜像が消去されずに残る消去不全現象が観察される。消去不全光が輝尽発光(Photo-Stimulated Luminescence,PSL)であることを検証し,深い準位に捕獲された電子とその励起モデルを考案した。深い準位に捕獲された電子のうち長波長側に広がるすそ野が消去不全光の原因と考えられる。3種類の汎用されている市販IP(BAS-TR, BAS-MS, 及びST-VI)に線量を変えてX線を照射し,消去前と可視光による消去後の線量応答性を調べた。全ての種類のIPにおいて,線量に対してPSL密度が直線的な相関関係を持つことなど消去前後で線量応答性は同じであったが,消去不全光ではPSL密度値は著しく低い。これらの結果より,深い準位のセンターはFセンターに競合するトラップサイトとして働くが,電子の捕獲断面積はFセンターよりかなり小さいことが示唆された。
  • 金子 広久, 春山 保幸, 清藤 一, 山縣 諒平, 花屋 博秋, 小嶋 拓治
    2010 年 59 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル オープンアクセス
    媒質中における光子等の3次元的な輸送を計算できるモンテカルロ計算コード(EGS4-SPG)を用いて,γ線照射施設の照射室内線量率分布を計算により求めた。また,照射室構成部材である遮へい壁,照射テーブル及び線源保護板が線量率に与える影響について検討した。その計算の妥当性の評価のため,計算結果と電離箱型線量率計及びアラニン線量計による実測値とを比較した。この結果,測定値と計算値の差は,幅広い面積の板状線源の直近を除くと±数%以内であった。一般的に幅広い面積の板状線源の線量率分布の実測には,数日間を要し,線量計は40個程度を必要とする。しかし,単位線源量あたりの計算結果を用いることにより,板状線源の配置検討段階であらかじめ線量率分布を知ることができ,更に線源配置後の線量率分布測定は,線源直近についてのみ実施すればよく,線量計の節約及び線量測定時間の大幅短縮につなげることができた。
  • 浜田 正名, 北野 勝弘, 三ケ田 大吾
    2010 年 59 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル オープンアクセス
    平成21年3月からホルムアルデヒドを取り扱う場所において作業環境測定を行うこととなり,その公定法として高速液体クロマトグラフ法,検知管法のほか指定された簡易測定機器を用いる方法が定められた。病理検査室のようにホルムアルデヒドの発生源としてホルマリンだけを使用する作業場ではホルムアルデヒドを分離定量する必要がないので試料の前処理がやや煩雑な高速液体クロマトグラフ法を用いる利点は大きくない。また,検知管法は大変簡便な方法であるが測定者による読み取り誤差が生じる場合があり,それによって,作業者のばく露防止上の対策にも違いが生ずる。そこで,これらの点を解消する可能性を探るために公定法と同等の分析法として,14Cで標識されたホルムアルデヒドを用いて非標識ホルムアルデヒドの空気中濃度の測定を行うことを試みた。ホルムアルデヒドの発生源であるホルマリン溶液に14C-ホルムアルデヒドを混合し気化させた気体試料を,作業環境測定で広く行われているようにシリカゲルチューブで固体捕集した後,脱着し,シリカゲルに捕集された放射能を計測して求めたホルムアルデヒドの空気中濃度は,計算値及び検知管による測定値とよく一致した。今回,著者らは下限数量以下の14C-ホルムアルデヒドを用いて実験を行った。密封されていない放射性同位元素の許可事業所でない場合は,14Cのみの使用において,その総量が下限数量である10MBq以下であれば放射線障害防止法の規制対象とならない。ホルマリンを使用する作業場において,微量の14C-ホルムアルデヒドを用いて正確に空気中濃度を測定できたことから,ホルムアルデヒドの作業環境測定の際に本方法が有用であることがわかった。
技術報告
総説
  • 鳥居 寛之
    2010 年 59 巻 1 号 p. 37-48
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル オープンアクセス
    反物質に関する物理学の最先端について,CERNの反陽子減速器施設において「低速反陽子を用いた原子分光ならびに原子衝突」を掲げる筆者らASACUSA国際共同実験グループの研究を中心に概観する。
    反陽子ヘリウム原子は粒子・反粒子間のCPT対称性をテストする格好の素材である。このエキゾチック原子の精密分光により,これまでに反陽子の質量を十億分の1のオーダーの精度で決定することができるようになった。
    また,筆者らは反陽子を減速・冷却し,超高真空中の電磁トラップに捕捉して電子ボルト以下のエネルギーまで下げる技術を開発した。更にこれを250eV程度の超低速ビームとして引き出すことに成功し,このビームは,イオン化過程や反陽子原子の生成過程の研究に応用することができる。
    反水素はATRAPおよびATHENA(現ALPHA)実験グループによって,入れ子構造のペニングトラップで低温での合成に成功している。この中性反原子を磁場勾配でトラップし,将来的に1S-2S準位間のレーザー分光を目論む研究が進行中である。一方でASACUSAはカスプトラップを用いて反水素原子を生成し,スピン偏極した反水素の超微細準位間をマイクロ波分光することを目指している。
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