RADIOISOTOPES
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60 巻, 3 号
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原著
資料
連載講座
中性子回折の基礎と応用(応用29)
  • 小泉 智, 山口 大輔
    2011 年 60 巻 3 号 p. 117-130
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    一般に波数領域 q=10-3nm-1(対応するサイズはμm)を観測する手法を中性子超小角散乱と定義する。本稿では,はじめにピンホールを用いた中性子小角散乱法と完全結晶を用いた中性子超小角散乱の歴史を概観する。次に,集光レンズとピンホール型小角散乱装置の組み合わせによる新しい進展を紹介し,二つの手法は,観測サイズの棲み分けにおいて相補的であることを述べる。最後にバクテリア産生セルロース,アクチン細胞骨格,タイヤ,燃料電池の膜電極接合体への応用例を紹介し,その階層構造を論じる。
中性子回折の基礎と応用(応用30)
  • 坂倉 輝俊, 田中 清明, 竹中 康之, 渡辺 真史, 野田 幸男, 岸本 俊二, 松石 聡, 細野 秀雄
    2011 年 60 巻 3 号 p. 131-149
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    還元率0%から50%の無機電子化物の結晶構造を,放射光X線と中性子線回折法を使用して研究した。電子化物はC12A7(12CaO·7Al2O3)の単位格子中にある12個のケージから2個の酸素原子を引き抜いて作成する。2個の酸素原子は12個のケージ中に,自身の存在するケージと近傍のケージを歪ませながら無秩序に分布する。本文中ではO3としているこの酸素原子によるケージの歪みは非常に大きく,Al-O結合の一つは切断されAl-O3結合が形成される結果,新しいAlO4四面体ができるほどである。また,O3の存在により,ケージ中の他の原子は統計的に分布すると考える必要が,換言すれば,原子を最大4個に分けて取り扱う必要が生じる。一方,O3は結晶学的には一般位置にあるが,点群対称4 バーを持つケージ中心の近傍に位置するため,席占有率は2/(4×12)と非常に小さい。
    O3の席占有率が小さいのにもかかわらず,ほとんどの予測された分裂原子が差フーリエ図上で見つかった。次に,O3が4個のうちの一つの席に在るとき,それに基づく歪みに対応する結晶構造を,分裂原子のうちから選んで再構築した。歪構造の妥当性は,分裂原子周囲の静電ポテンシャルを計算して評価した。決定したC12A7の歪構造は,部分還元された電子化物でも基本的には変わらない。
    歪構造はほぼ決定できたが,ケージ中にあると考えられている‘自由電子’は測定できなかったので,近い将来,より精密な中性子及び放射光X線回折実験を行う予定である。
中性子回折の基礎と応用
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