RADIOISOTOPES
Online ISSN : 1884-4111
Print ISSN : 0033-8303
ISSN-L : 0033-8303
70 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 古渡 意彦, 谷村 嘉彦, Kessler Patrick, Neumaier Stefan, Röttger Annette
    2021 年 70 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 2021/01/15
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス

    原子力事故時等緊急時を想定した環境放射線モニタリングを確実に行うため、近年開発されたCeBr3シンチレーション検出器を用い、波高分布の一回の測定結果から、核種同定に加えて、空気中放射能濃度及び線量当量率の同時評価法を開発した。開発された手法は、エネルギー応答、線量率直線性及び角度依存性について、欧州放射線防護グループ(EURADOS)において実施される環境放射線モニタリング用線量計の特性試験で実施される試験法に従って行った。試験の結果、著者らが開発した手法が、国際規格(IEC)及びJIS規格で示された基準(エネルギー及び角度応答特性で−29%~+67%)に対し、基準を十分に満たす性能が示された。さらに、133Ba点線源を用い、特に131I及び133Xeを含んだ放射性プルーム通過による線量率増加及びそれらの空気中放射能濃度についても適切に評価できるか、実験室内での測定で検証した。その結果、著者らの開発した手法で得られた光子フルエンス率に、モンテカルロ計算コードPHITSで得られた換算係数を適応することで、妥当な空気中放射能濃度を推定できることが示された。

  • 堀井 幸江, 桑名 篤, 八戸 真弓, 草塲 新之助
    2021 年 70 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2021/01/15
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス

    カキ果実の放射性物質による汚染状況を把握するため,複数のカキ圃場で土壌及び果実の137Csならびに133Cs濃度を測定した。3年間調査した果実の137Cs濃度は低下する傾向の圃場が多く,移行係数については,年度間に有意な差はみられなかった。事故後5~7年が経過した時点では,地上部汚染の影響が低下しており,土壌から果実へのセシウムの移行も限定的であると考えられた。土壌の133Cs濃度は各圃場とも同程度であったが,果実の133Cs濃度が他の圃場と比較してより高い圃場があった。

総説
  • 二瓶 直登, 市橋 泰範
    2021 年 70 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2021/01/15
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス

    植物が外部から吸収する栄養として無機成分と有機成分があるが,植物の有機成分の利用についてはその複雑さ故に不明な部分が多い。しかし,炭素や窒素の安定同位体(13C, 15N),放射性同位体(14C)等のアイソトープで標識した有機成分を用いた緻密な実験結果の蓄積により,有機成分の作用機序が明らかにされつつある。本稿は,植物が利用する有機成分を対象に,その特性,吸収,代謝について,最新の研究報告を取り入れながら紹介し,植物生育への有機成分の有効性解明におけるアイソトープトレーサー実験法の貢献について説明する。

  • 狩野 直樹, 諸橋 峻秀, 宮本 直人
    2021 年 70 巻 1 号 p. 41-54
    発行日: 2021/01/15
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス

    降水中におけるトリチウム(T)濃度及び酸素・水素安定同位体比(δ18O, δD)の系統的な測定は,環境動態を把握する手段の一つとして有用である。そこで本総説では,近年(主に2010年以降)に日本国内で行われた種々のT, δ18O, δDに関する研究を,筆者らの研究も含めて調査した。その結果,主として以下のことが明らかになった。(1)降水中のT濃度には,“スプリングピーク”をはじめ,明瞭な季節変化が観測された。(2)高緯度の地域ほどT濃度が高くなる傾向(いわゆる緯度効果)が観測された。(3)2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故に伴って降水中のT濃度は一時的に上昇したが,その後同年5月以降は平年並みの推移に戻っていることが確認された。(4)δ18O及びδD単独では明瞭な季節的特徴は見られなかったが,これらの値から算出されるd-excess(=δD−8×δ18O)においては冬季に高くなる傾向が見られた。これらの結果は,日本の降水環境が季節ごとの気団の影響を強く受けていることを示唆している。

feedback
Top