RADIOISOTOPES
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71 巻, 3 号
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ノート
原著
  • 菊池 美保子, 西 康一, 高村 昇, 塚田 祥文
    2022 年 71 巻 3 号 p. 185-193
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    福島県浪江町では東京電力福島第一原子力発電所事故後に除染が行われ,2017年3月31日から居住制限区域及び避難指示解除準備区域が解除された東部で,住民の帰還が始まった。2019年と2020年に除染された圃場とその周辺から,自家栽培作物及び自生植物の様々な自家消費作物を採取した。穀類,いも類,豆類,野菜類及び果実類の181試料の放射性Cs濃度を求め,作物摂取による内部被ばく線量を算出した。自家栽培作物中137Cs濃度は0.18–46 Bq kg−1新鮮重量と,すべて基準値の100 Bq kg−1を下回ったが,圃場周辺の畦や森林から採取した自生植物は栽培作物より高い3.2–175 Bq kg−1新鮮重量であり,一部試料で基準値を超えた。2020年に自家消費作物を摂取した成人男性の放射性Csによる追加となる内部被ばく線量は0.032 mSvであり,事故により追加となる内部及び外部被ばく線量0.64 mSvの約5%を占めた。自生植物を含めず自家栽培作物のみを摂取した場合の内部被ばく線量は0.012 mSvとなり,自生植物も含む自家消費作物を摂取した場合の約1/3であり,1 mSvを十分に下回った。

連載講座
  • 古田 雅一
    2022 年 71 巻 3 号 p. 195-210
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル オープンアクセス

    放射線照射食品健全性についての考え方と欧米やわが国の長年に渡る健全性評価の先行研究について解説した。特に放射線照射により食品中の脂質から特異的に生成する2-アルキルシクロブタノン類(2-alkylcyclobutanones; 2-ACBs)の毒性試験に関して,最近のわが国で実施された研究成果を欧米の先行研究と対比して解説した。わが国の研究では,欧米の先行研究の試験条件を参考にし,より厳しい投与条件を用いて試験を行った。国際的なガイドラインに従って実施した遺伝毒性のバッテリー試験の結果はすべて陰性であった。一方で発がんプロモーション活性については,培養細胞を用いたスクリーニング試験において,2-ドデシルシクロブタノン(2-dodecylcyclobutanone; 2-dDCB)及び2-テトラデシルシクロブタノン(2-tetradecylcyclobutanone; 2-tDCB)はともに陽性を示したが,実験動物を用いたさらに高度な試験においてはすべて陰性であった。以上のことから,2-ACBsの毒性学的懸念は否定され,これまで国際機関が示してきた照射食品の安全性に関する見解を覆すような新たな知見は得られなかったと結論できる。

  • 片岡 憲昭
    2022 年 71 巻 3 号 p. 211-217
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル オープンアクセス

    300 keV以下の低エネルギー電子線で食品への表面殺菌方法を検討した。殻つき生卵の卵殻殺菌を例に,モンテカルロシミュレーションで卵殻に浸透する電子ビーム深度分布を作成し,可食部に照射される制動X線の線量が,0.10 Gy以下となる照射条件を明らかにした。電子ビームの照射加速電圧は80–200 keVが深度分布として最適であり,可食部線量を考慮すると80–150 keVが最適な照射条件であった。

  • 朝田 良子
    2022 年 71 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル オープンアクセス

    食品の安全性,健全性確保のために殺滅菌は不可欠な操作であるが,加工食品の製造においては近年,味・香りなど天然に近い品質重視,さらに栄養的な健康増進を求めるのがトレンドである。そのため,死滅に至らない「損傷菌(芽胞)」が発生しやすい状況であり,対策が求められている。このような社会的ニーズに応えるため,食品照射の基礎研究として,損傷菌(芽胞)の特性と,その対策のための放射線殺菌技術の有用性について紹介する。

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