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内藤 悠太, 斎藤 典孝, 斉藤 大樹, 昆野 修平, 杉山 祐耶
2024 年 28 巻 1 号 p.
1-4
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
当社では,線路設備モニタリング装置により,軌道状態を把握・分析し,最適な時期・方法により修繕を行うCBMを推進している.CBMでは分析結果に基づく最適な保守計画の策定が重要であり,当社では高頻度データを基にMTTの施工計画を作成する「MTT保守計画策定支援システム」を活用し,年間計画の軸となる軌道整備計画を策定している.一方,MTT以外の工種による軌道整備計画においても高頻度データを活用しているものの,その計画を支援するシステムは未開発であった.そこで,MTT保守計画策定支援システムを補完することを目的に開発した「4頭TT保守計画策定支援システム」の試行を複数の保線技術センターを対象に実施したところ,妥当性の高いシステムであるという結果が得られ,保守線区に応じた実装方法について提言することができた.
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斉藤 大樹, 昆野 修平, 杉山 祐耶, 内藤 悠太, 斎藤 典孝
2024 年 28 巻 1 号 p.
5-12
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
バラスト軌道の軌道変位保守では,大型機械であるマルチプルタイタンパ(MTT)によって数百mの延長にわたり連続的に行われる.一方で,スポット的な保守としてはハンドタイタンパ(HTT)による人力施工が従来行われてきたが,軌陸バックホウを使った4頭タイタンパ(4頭TT)等の小型機械の運用を拡大してHTT施工を代替することで,機械化による作業効率や作業安全等の向上が期待できる.本研究では,小型機械の運用上の制約等を考慮して,効果の高い小型機械の保守計画案を作成する手法を提案し,さらに現場で活用可能なシステムを開発した.開発したシステムで実在するモデル線区を対象に保守計画を試算したところ,MTTと4頭TT等を組み合わせた効果的な軌道変位保守計画を作成するのに有効であると考えられる結果を得た.
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山門 健人, 鈴木 惇平
2024 年 28 巻 1 号 p.
13-20
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
本研究ではロングレールにおける軌道の座屈箇所の推定を目的として,過去にJR東日本管内で発生した座屈箇所の挙動分析,k-means++法を用いたクラスター分析による座屈箇所の推定を試みた.挙動分析では座屈箇所の高低変位のデータにおいて,ばらつきが確認され,道床状態の不良による道床横抵抗力の減少が通り変位の進行に影響を及ぼしている可能性が示唆された.クラスター分析においては,線路設備モニタリング装置により測定された軌道変位データを活用し,複数の分析項目をクラスタリングすることでデータ群の中で座屈の可能性が高い箇所を抽出する座屈箇所推定モデルを構築した.また,座屈箇所のデータを考慮した半教師あり学習とすることで,任意の線区においてモデルの適用を可能とし,管理における優先順位の策定に活用できる可能性を示した.
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小原 優輝, 鍋島 康之
2024 年 28 巻 1 号 p.
21-24
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
台湾の鉄道は日本統治時代に大きく発展を遂げたといわれている.台湾の鉄道自体は清朝時代にすでに完成していたが,その状態は極めて悪く,台湾の北部にのみしか路線がなく,南方進出の拠点,台湾島内の産業活性化には到底満足のいくものではなかった.日本統治下に入ってから,縦貫線を皮切りに多くの路線と駅が開業し,台湾の鉄道と経済・産業は飛躍的に発展した.光復後,台湾が中華民国の統治に置かれてからも,日本統治時代の鉄道システムを継承しているため,至る箇所で日本統治時代の影響を見ることができる.本稿では,特に日本統治時代の影響が顕著な駅舎と運輸システムに注目し,日台間の差異とその差異が生じた要因について考察する.
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小池 則満, 尾崎 茉名都, 川口 暢子
2024 年 28 巻 1 号 p.
25-33
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
地域鉄道が自然災害で被災し,鉄道路線としての復旧もしくは交通モード転換の意思決定が行われるまでに時間がかかる場合が多い.本研究では,沿線自治体からの支援金を得ながら運行がなされている名鉄蒲郡線について住民アンケート調査を実施し,仮に蒲郡線が大きな被害を受けた場合の,復旧費用負担についての意識と,鉄道に関する様々な考えとの関連を分析した.その結果,同じ蒲郡市内でも,沿線と非沿線の住民同士では鉄道維持に対しての考えに有意差がみられること,種々の施策には賛意を示しつつも被災時の地元負担には消極的な意見が多いことなどを指摘した.住民の意向を踏まえた鉄道の事業継続について,防災や復旧という観点を交えながら考察した.
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山幡 信道, 金子 雄一郎
2024 年 28 巻 1 号 p.
34-41
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
都市間の幹線交通機関を利用した旅客流動は,自然災害や悪天候等による運休や欠航,輸送障害などの影響を受けるが,その実態は十分把握されていない.本研究では,まず近年の台風や大規模地震等の災害発生時における新幹線の運行及び航空の運航状況を,当時の報道や既存の交通統計等を基に整理し,新幹線の運休期間に一定程度の移動が航空によって代替されていたことを確認した.次に携帯電話位置情報を基にした人口分布統計であるモバイル空間統計を用いて,自然災害等の事象が発生した際の新幹線の運休や航空の欠航による都市間の旅客流動への影響を分析した.さらに当該事象を含む一定の期間を対象に滞在人口を目的変数とする重回帰モデルを構築してパラメータ推定した結果,新幹線の運休が滞在人口の減少に寄与していたことが示唆された.
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安達 季並, 青木 宣頼, 笹原 大希, 道辻 洋平
2024 年 28 巻 1 号 p.
42-45
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
JR 東日本では新幹線の保守用車タイプの設備モニタリング車両を導入し,分岐器の画像と摩耗データが連続的に収録することができるようになった.これまでノーズ可動クロッシングの摩耗進展についての特定の定点での調査で行われているが,レール長手方向に連続的に測定し,その経時変化を調査した例はない.併せて車両運動シミュレーションを用いて,クロッシングと車輪の接触位置を把握し,実際の現場と比較観察を行った.クロッシング部では一般レール部とは異なりゲージコーナー部とフィールドコーナーで2点接触していることがシミュレーションと現場の測定結果でも確認出来たので,その結果を紹介する.
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幸野 真治, 辻江 正裕
2024 年 28 巻 1 号 p.
46-53
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
レール頭頂面においては,車輪との転がり接触の繰返しにより疲労き裂が発生する.き裂の発生・進展を正しく評価するには,実際に発生するき裂や摩耗を定量的に再現可能なき裂発生予測モデルの構築が必要である.そこで本研究では,小型円筒試験片を用いた転動疲労試験を実施し,熱処理レール材におけるき裂の発生・進展や摩耗進展を再現した.さらに,試験後の試験片を分析し,き裂の発生・進展や摩耗進展,塑性変形や加工硬化などの表層の材料組織への影響について評価した.その結果,き裂の発生件数,き裂長さ,塑性フロー厚さが転動回数の増加に応じて,初期の段階では急増するがその後は鈍化する傾向,およびすべり率が大きいほどより加工硬化が進行する傾向を確認した.また,熱処理レール材の摩耗係数が 1~5×10-4であることを明らかにした.
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小納谷 優希, 伊藤 太初
2024 年 28 巻 1 号 p.
54-61
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
レールガス圧接法では,圧接後の塑性変形によるふくらみ(余盛)を除去するため専用の油圧ポンプやバイトを用いて余盛を押抜く作業が必要である.本研究ではレールガス圧接法の簡略化のため,加圧力を変化させて圧接する変圧法に着目し,余盛の押抜き作業を省略可能な低圧縮量のレールガス圧接法を検討した.変圧法として,圧接初期過程にて高加圧力で圧縮変形を早期に開始させ,その後直ちに加圧力を低下させる加圧パターンにより,圧縮量約6mmのレールガス圧接部を複数作製し,様々な性能評価試験を行った.その結果,作製した圧接部において金属組織や硬度分布に異常は見られず,またレールガス圧接部の基準値を超える曲げ強度および繰り返しの列車荷重にも十分耐えうる応力振幅300MPa以上の曲げ疲労強度を有していることを確認した.
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北条 優, 高橋 貴蔵, 髙橋 成汰
2024 年 28 巻 1 号 p.
62-69
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
スラブ軌道を構成する部材である軌道スラブは,列車荷重を構造物に伝達し,軌間を保持する等の重要な役割を有している.寒冷地の明かり区間の軌道スラブ(タイプレート式)を対象に,補修部の劣化メカニズムを検討するとともに,凍害を模擬した軌道スラブのレール締結部への載荷試験を実施した結果,タイプレート端部までの欠損であれば,断面修復が不要であること,および,表面含浸材により凍害の進行を抑制できることを確認した.また,トンネル区間の軌道スラブ(座面式)の補修に適用するため,従来の樹脂モルタルより安価なポリマーセメントモルタル(以下,PCM)の付着強度試験およびPCMで断面修復した軌道スラブ肩部への載荷試験を実施した結果,列車荷重に対する耐力を有することを確認した.
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伊東 希典, 大野 広志, 小谷 真史, 田中 直樹
2024 年 28 巻 1 号 p.
70-75
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
清水建設(株)を代表とする共同企業体(SFTE-JV)は,フィリピン共和国で初の地下鉄工事「マニラ首都圏地下鉄事業CP101工区」において,地下駅ボックスカルバートの詳細設計を実施中である.一般的に地震が多い日本では地下駅も梁を設けて耐震性に配慮したラーメン構造を用いるが,当該地域は地盤が良く,地下駅が固い軟岩層に全て収まるため地震の影響は少ない.そのため,構造がよりシンプルなフラットスラブ構造を採用し,施工性を高めて品質を確保すると同時に内部空間の有効活用を図った.従来の2次元フレーム解析を前提とした設計手法は,得られた断面力を一定割合で再配分して照査する簡略的な方法をとっている.本設計では,3次元FEM解析により駅舎の細部にわたり応力発生状況を明らかにし,必要な範囲に必要な量の補強鉄筋を配置する合理的な設計を目指している.
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北川 晴之, 徳永 宗正, 松岡 弘大, 池田 学
2024 年 28 巻 1 号 p.
76-83
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
本研究では,設計年代の違いに着目した合成橋りょうの列車通過時の動的応答特性の実態把握を目的として検討を行った.まず,列車通過時のたわみ測定から近年の整備新幹線線区では共振現象が確認されたが,国鉄時代の合成橋りょうより静的たわみが小さくなることを明らかにした.また,計測結果と図面の分析結果から,整備新幹線線区は設計時の安全率が小さくなる一方,重量と剛性の双方が増加し,特に重量の増加が顕著であることが共振を励起する固有振動数の低下の一因であることを明らかにした.さらに,合成桁においても精度良く動的応答を評価するためには共振の影響を考慮する必要があることを示した.
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服部 紘司, 松岡 弘大, 田中 博文
2024 年 28 巻 1 号 p.
84-91
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
鋼橋で生じる支承あおりは,多大な労力をかけて目視点検されている.定期的に軌道検測車で計測される軌道変位により検知できれば検査を大幅に省力化できるが,列車通過時の支承あおり挙動とその軌道変位への影響は十分に解明されていない.本研究では,軌道変位による支承あおり検知の基礎的検討として,数値解析による支承あおり挙動の分析と軌道変位への影響について検討した.構造物変形時の動的軌道変位を算出可能な既存計算ツールに支承あおりを表す非線形ばねを導入したうえで,支間長12.3mの鋼橋を対象に解析を行った.その結果,浮き量に依らず橋りょう乗り移り時に急増するあおり箇所の変位が半波長 5m 程度の局所的な変動として軌道変位に現れることを明らかにした.
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保木本 晟也, 松岡 弘大, 服部 紘司, 矢野 貴洋, 四井 陽貴
2024 年 28 巻 1 号 p.
92-99
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
橋りょう・橋台・盛土により構成される橋台区間は軌道保守の代表的な弱点箇所であり,対策要否判断のためにも簡易な計測による状態の評価手法構築が必要である.本研究では,3台のビデオカメラにより画像計測されたレール変位を合成することで列車通過時の広範囲なレール変位分布を算出する手法を提案し,実路線の橋台区間に適用した.列車通過時における橋りょうから橋台裏盛土までの20締結分のレール変位分布を算出した結果,当該箇所では橋台から7締結目までのレールの沈下量が大きく4mm程度であること,車軸が橋りょう上に位置する場合に支持剛性の高い橋台部がシーソーの支点のように作用し,橋台裏のレールでアップリフトが生じること,などを明らかにした.
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笠原 滉太, 阿部 和久
2024 年 28 巻 1 号 p.
100-107
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
離散支持された無限長レール上を単位調和加振力が一定速度で走行する問題を対象に,定点で観測されるレール振動応答が有する周波数特性について検討した.そのために,まず当該問題の解を解析的に導出した.続いて,その解に基づき周波数応答に認められる急変部の発生機構について理論的に考察した.その結果,当該現象が離散支持モデルにおいて発生するものであることや,軌道のパスバンド内では密に分布する一方,ストップバンド内ではそれが発生し得ないことなどがわかった.
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塩田 勝利, 宮下 綾乃, 園田 佳巨
2024 年 28 巻 1 号 p.
108-115
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
旧国鉄では分岐器の基準線側を最高速度120km/hで通過する高速用分岐器において,高低変位,通り変位,水準変位の整備基準値が高速用分岐器以外の分岐器と比べ厳しく設定されていた.この値は分岐器における速度向上試験時に継目やクロッシングで発生した著大横圧の対策の一環として設定されたものであるが,当該箇所は個別の対策が実施されており,それを鑑みると軌道変位の整備基準値は必要以上に厳しい値である可能性がある.そこで技術的根拠に基づく整備基準値の設定に向け,本研究ではMBDを用いて高速用分岐器における軌道変位が車両運動に及ぼす影響に関する検討を実施した.具体的には,軌道変位に関するパラメータスタディを実施し,現行の整備基準値内であれば影響は小さく余裕があることを示すとともに,各軌道変位の許容できる限度を明らかにした.
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田中 俊史, 楠田 将之, 佐野 功
2024 年 28 巻 1 号 p.
116-123
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
継目部材の損傷状態によっては列車の走行安全性が確保されないことがあるため列車抑止や徐行などの運転規制を実施している.これらはレール折損時を参考に安全側に制定されたものであるため,運転規制条件を緩和できる可能性が残されていた.
そこで,継目板および継目板ボルトが損傷した継目部を模擬した軌きょうを構成し,想定される運転規制条件や曲線半径に対して検討ができるように荷重条件を設定し,静的載荷試験を実施した.また,輪重横圧推定式により曲線半径別および列車条件別の輪重と横圧を算出し,静的載荷試験の結果を考慮した各条件におけるレールの左右目違い量を推定した.推定した値とレールの左右目違い量の目安値を比較し,継目部材損傷時の運転規制の考え方を検討したので報告する.
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矢野 貴洋, 岩本 啓貴, 宇野 匡和, 立花 拓也, 松岡 弘大
2024 年 28 巻 1 号 p.
124-127
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
持続可能な鉄道の実現には保守業務の効率化が不可欠であるが,実効性あるデジタル技術の導入に不可欠となる既存業務の系統横断的な整理と共有はなかなか進んでいない.四国旅客鉄道株式会社では鉄道総合技術研究所との共同研究により既存保守業務の実態調査を全系統で実施し共有と整理を進めている.本研究はこのうち土木系統の実態調査結果および省力化の方針を示す.実態調査では検査自体のほか移動に時間を要する土木保守の特徴に加え,JR四国特有の瀬戸大橋区間の検査などに人工を要する状況を示した.また,保線系統が有する軌道変位を利用した橋りょう支承あおりの検知手法,他系統で実施予定の列車前方画像を活用した駅ホームの高さ・離れ計測手法の開発を保守省力化の方針として示した.
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田尾 圭吾, 齋藤 航, 片山 雄一朗, 川口 昭人, 森 健矢, 田中 博文, 松岡 弘大
2024 年 28 巻 1 号 p.
128-135
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
持続可能な鉄道の実現には保守業務効率化が不可欠であるが,実効性あるデジタル技術の導入に必要な既存業務の系統横断的な整理と共有はなかなか進んでいない.四国旅客鉄道株式会社では鉄道総合技術研究所との共同研究により全系統での既存業務の実態調査と結果の共有と整理を進めている.本研究はこのうち保線系統の実態調査を対象とし,調査結果として,徒歩巡回に検査の4割以上の人工を要し,つき固め等の軌道状態維持に要する人工が不足傾向にあること,デジタル技術への置換えでは徒歩巡回で同時に実施される措置の考慮が必要となること,などの特徴を明らかにした.また,他系統の調査・検討結果も踏まえた保守業務省力化の方針を示したうえで実現のための具体的なデジタル技術活用の展望を示した.
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高橋 和樹, 下木 健児, 三﨑 友樹, 蝶野 武志, 為広 重行, 松岡 弘大
2024 年 28 巻 1 号 p.
136-143
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
持続可能な鉄道の実現には保守業務の効率化が不可欠であるが,実効性のあるデジタル技術の導入に不可欠となる既存業務の系統横断的な整理と共有はなかなか進んでいない.四国旅客鉄道株式会社では鉄道総合技術研究所との共同研究により既存保守業務の実態調査を全系統で実施し共有と整理を進めている.本研究はこのうち電力・信号・通信を含む電気系統の実態調査結果として,転てつ機・軌道回路の検査に電気系統全体の4割以上の人工を要すること,検査結果,異常時対応,常時監視データなどがそれぞれ記録・保管されていること,などの特徴を明らかにした.また,保守業務省力化のためのデジタル技術として検査記録を活用したアセットマネジメントによる検査周期適正化を展望として示した.
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稲場 亘, 松岡 弘大, 為広 重行, 貝戸 清之
2024 年 28 巻 1 号 p.
144-151
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
鉄道設備の保守業務省力化は地方鉄道の維持において極めて重要な課題である.特に検査周期が3か月と短い転てつ機は保守業務の中でも多大な人工を要しており,不具合発生性状を把握したうえで適切な周期延伸による省力化が切望されている.本研究では,統計的な不具合発生モデルであるワイブルハザードモデルに着目し,過去の検査記録からモデルを推定する際に課題となる不具合発生時点に関する不完備性を考慮可能なベイズ推定法を構築する.提案手法を実際の転てつ機の検査記録に適用し,統計的な不具合発生間隔や影響因子を分析するとともに,既存手法との比較により検査記録の不完備性を考慮可能な提案手法の有効性を実証的に示す.
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為広 重行, 松岡 弘大, 稲場 亘, 貝戸 清之
2024 年 28 巻 1 号 p.
152-159
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
鉄道設備は目視での検査により状態を管理している場合が多いが,検査記録に基づくアセットマネジメントの鉄道分野への導入は十分に検討されていない.本研究では,アセットマネジメント技術のうち,不具合発生過程がワイブルハザードモデルで表される設備のリスク評価に必要な維持管理シミュレーションを構築した.具体的にはJR四国の転てつ機に着目して,その検査記録から推計されたワイブルハザードモデルを利用した維持管理シミュレーションにより,不具合発生率などのリスクの時間推移と,検査周期との関係を定量化した.また,一般的な設備でよく利用される摩耗故障型と本研究の維持管理シミュレーションで対象とした初期故障型のワイブルハザードモデルの比較により,予防保全などの典型的な維持管理施策が初期故障型では有効でない可能性があることを明らかにした.
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田中 仁規, 土橋 亮太, 柏原 理恵, 坂井 公俊
2024 年 28 巻 1 号 p.
160-167
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
設計地震動の大きさの変化が,設計される構造物断面に与える影響を把握するために,鉄道橋りょう・高架橋を対象として,設計地震動を減少させた条件,増大させた条件での構造物の設計を行った.具体的には,対象とする橋りょう・高架橋の耐震設計において「部材断面の決定ケースとなっている照査項目を確認するための地震動」の大きさを変化させるとともに,この設計地震動に対して鉄道構造物等設計標準に基づいて性能を満足する構造物断面を算定した.その結果,今回検討を行った条件下では,「部材断面の決定ケースとなっている照査項目を確認するための地震動」であるL1地震動が変化すると,柱と杭基礎の断面に大きな影響を与えることを確認した.そのため,当該地点のL1地震動の大きさやL1地震時の構造物応答値,限界値等を精査することで,建設される構造物の合理化が期待される.
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山下 大輝, 和田 一範, 栗林 健一, 坂井 公俊
2024 年 28 巻 1 号 p.
168-175
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
鉄道高架橋の振動特性(固有振動数,減衰定数)は,高架橋の地震時挙動を把握するために重要である.この振動特性は揺れの大きさに応じて変化する振幅依存性を示すことが知られている.本検討では,実物大の模擬設備である3連の1層ラーメン高架橋群に多数の加速度計を設置し,常時微動観測と地震観測を実施した.観測結果を整理することで,当該高架橋の振動特性とモード形状を推定するとともに,これらの振幅依存性を確認した.その結果,当該高架橋は橋軸方向に構造物一体となって振動し,橋軸直角方向には高架橋群の片側が大きく振動するモード形状を有し,これらのモード形状は,微動(0.01gal)~地震動(数10gal程度)の振動の範囲では概ね同様であることが分かった.一方で振動の振幅が大きいほど,固有振動数は減少し,減衰は増大することを確認した.
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石川 太郎, 牧野 敦, 綿引 泰治, 坂井 公俊, 進藤 良則
2024 年 28 巻 1 号 p.
176-183
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
延長の長い線状構造物である鉄道構造物の設計において,一般的な鉄道橋脚やラーメン高架橋は,多くの場合,単純な1質点系に置き換えた非線形応答スペクトル法により耐震設計を行っている.この手法で通常用いられる所要降伏震度スペクトルでは,系の減衰定数としてh=0.04/T(0.1≦h≦0.2)を想定しており,応答値もそれに対応したものとなる.近年の研究で,構造物の1次モードの地上部と地中部の振幅比から減衰定数を評価し,非線形応答スペクトル法の枠組みに取り込んでL2地震時の応答を評価する手法が提案されている.今回,本手法を適用して整備新幹線の高架橋の設計を行った.その結果,通常の所要降伏震度スペクトルを用いた場合と比較して設計が合理化される傾向を確認した.
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栗原 巧, 堀 雄一郎
2024 年 28 巻 1 号 p.
184-187
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
JR東日本では,保守の省力化,耐久性向上,作業性向上および故障リスクの軽減を目的に横取り装置および横取り装置用列車防護装置を改良し,2021年度からの老朽取替に合わせ導入している.横取り装置および同防護装置には,横取り材の着脱状況を制御器へ情報伝達する検知器があるが,設置・調整不良および列車からの繰り返し衝撃による故障などの不具合事象が報告されている。そこで,過去の不具合事象や検知器の構造を分析し,耐久性向上,作業性向上および故障リスクの軽減を目的とした改良を実施した.
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堀 雄一郎, 道辻 洋平
2024 年 28 巻 1 号 p.
188-195
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
鉄道線路用の分岐器は,構造が複雑で可動部や狭隘部を有するため一般軌道と比べて転換不能等の設備故障発生リスクが高い.その発生原因の一つであるポイント転換力の増大は,分岐器の様々な保守状態が競合して発生することがあるため,発生メカニズムが複雑で明確に原因を特定できず原因不明として扱われる場合もあるなど,保守管理上の困難箇所である.そこで本稿では,分岐器の軌道変位並びにポイント床板等の軌道部材の保守状態によって転換力がどう変化するかを求める簡易な計算式を作成し,試算を行った.その結果,トングレール先端に近いエリアにおける高低・通り変位,ポイント床板の給油状態,控え棒の張りすぎの一部で影響が大きいという結果が得られた.
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紅露 一寛, 大場 陸
2024 年 28 巻 1 号 p.
196-203
発行日: 2024年
公開日: 2024/07/24
ジャーナル
認証あり
レール継目部に井桁状まくらぎを使用したバラスト軌道を対象とした,バラスト道床の不可逆変位の評価解析法を構成した.提案手法は車両・軌道系の連成振動解析と弾塑性モデルを用いたバラスト道床繰り返し変形解析とを組み合わせて構成している.軌道振動解析モデルははり・ばね・ダッシュポット・質点を組み合わせたモデルとし,井桁状まくらぎは弾性床上の変断面はりでモデル化する.一方,バラスト道床の繰り返し変形挙動は,cyclic densificationモデルにより弾塑性応答を表現し,軌道振動解析により評価した通常まくらぎ・道床間作用力の最大値,および井桁状まくらぎ反力分布の各一定区間における反力値の最大値を作用外力として与えた有限要素法により評価した.簡単な解析例を通して,井桁状まくらぎでは,バラスト道床上面の鉛直残留変位は通常まくらぎの場合の半分程度に抑制されることがわかった.
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