洛北史学
Online ISSN : 2436-519X
Print ISSN : 1345-5281
2 巻
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
論説
  • 六朝期の兵役・力役徴発方式と北魏の三長制
    渡辺 信一郎
    2000 年 2 巻 p. 1-15
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2023/03/23
    ジャーナル フリー
    小稿は、「三五占兵」「三五発卒」「三五民丁」などの表現によって、五胡十六国期から六朝期にかけてたびたび実施された、編戸農民からの軍役・力役の徴発方式を手掛かりに、六朝期における徭役編成の特質を明らかにしようとするものである。通常「三五発卒」方式は、『資治通鑑』胡三省注によって、「三丁につき二丁、五丁につき三丁」、もしくは「三丁につき一丁、五丁につき二丁」の徴発方式出会ったと理解されている。しかし「三五発卒」の実態を検討してみると、それは六割に達するような高率の徴発をしめすものではない。三五には三×五の意味があり、「三五発卒」とは十五丁に一卒を徴発する兵役・力役編成方式であった。南朝にあっては、この徴発方式の定着によって三五門層と呼ばれる庶民下層階級を生みだし、北朝にあっては、北魏の三長制村落組織に構造的に組み込まれることによってその完成形態を獲得した。
  • ヨーロッパにおけるポーランドのトポス
    小山 哲
    2000 年 2 巻 p. 16-39
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2023/03/23
    ジャーナル フリー
    ポーランドでは、自国と自民族がヨーロッパ世界のなかでいかなる位置を占めるかという問題をめぐって、中世以来、さまざまな立場から議論が展開されてきた。「サルマチア」は、そのような言説が編成されるさいに重要な核となるトポス(場所/定型的表現)である。本稿では、東中欧地域におけるヨーロッパ的アイデンティティの特質を探る手がかりとして、サルマチア概念の歴史的変遷を考察した。ポーランドの人文主義者たちは、ヤギェウォ朝ポーランド=リトアニア国家の起源を古代サルマチアに見い出すことによって、自国がヨーロッパの古典的伝統に連なる存在であることを主張した。ルネサンス期に形成されたサルマチア起源論は、バロック期に「サルマティズム」と呼ばれるイデオロギーと生活様式の複合体を生み出した。その中心的な担い手であるシュラフタ(貴族身分)は、「サルマタ」(サルマチア人)として自己表象することによって、ルネサンス期とは逆に、ヨーロッパ世界における自国の異質性と優越性を強調した。一八世紀の啓蒙主義者は、サルマティズムを克服すべき旧弊として批判したが、分割によって国家の独立が危機にさらされると、サルマティズムは国民意識の表現として再生した。トポスとしてのサルマチアは、ヨーロッパ文化圏への帰属を主張すると同時に、ヨーロッパ世界におけるポーランドの辺境性・異質性をも表象する、両義性をはらんだ概念であるといえる。
  • 近畿における石庖丁生産・流通の再検討(Ⅱ)
    仲原 知之
    2000 年 2 巻 p. 40-65
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2023/03/23
    ジャーナル フリー
    弥生時代における生産と流通を考察するうえでこれまで多くの議論がなされてきたものに石庖丁がある。なかでも和泉地域の池上曽根遺跡の石庖丁はその流通における議論の中心となってきた。本稿ではこの池上曽根遺跡をはじめとする和泉地域を中心に石庖丁の生産と流通の再検討をおこなった。まず各集落の製作状況の詳細を明らかにした。その結果、 いずれの集落においても石庖丁を製作していた状況を明らかにすることができた。次に製作途中品率等の分析から、池上曽根遺跡などの拠点的集落ではそれほどの差がなく石庖丁を製作していたと判断した。また拠点的集落と衛星的集落には石材獲得状況や石器出土量に格差があることも示した。これらの成果をもとに弥生時代における石器流通について拠点的集落の役割を考察した。
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