洛北史学
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最新号
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論説
  • 丹波国と周辺の諸窯を事例として
    稲本 悠一
    2023 年 25 巻 p. 1-29
    発行日: 2023/06/03
    公開日: 2023/07/21
    ジャーナル 認証あり
    奈良時代の須恵器は、全国的に似た形態をとるが、地方色がみられる地域も存在する。丹波国とその周辺は、このような地域の一つであり、先行研究でも注目されたが、詳細な検討は未だ不十分であった。本論では、まず、丹波国の須恵器編年を提示し、当該地域に特徴的な「丹波系」須恵器の生産時期の特定と様相の把握を行った。その結果、丹波系須恵器は八世紀前半に出現し、八世紀後半に丹波とその周辺に展開することが明らかになった。また、丹波系須恵器の生産地間の関係を検討することで、各生産地は丹波系須恵器の生産に加え、窯体構造や重ね焼きの方法が共通しており、工人の交流を通して生産技術や情報が伝播した可能性を論じた。交流は、丹波国を中心に、地理的要因や交通路の関係で丹波国とつながりの深い周辺地域まで及んだ。このようなローカルな範囲における技術交流は、奈良時代の地方における須恵器生産のあり方の一つであったと捉えられる。
  • 仁寿舎利塔を中心に
    山田 周
    2023 年 25 巻 p. 30-54
    発行日: 2023/06/03
    公開日: 2023/07/21
    ジャーナル 認証あり
    中国全土を統一した隋文帝は崇仏皇帝であった。その仏教政策については、個々の施策の関連性、文帝が抱懷していた全体的な政策意図がどのようなものであったかの解明は、先行研究でなお不十分である。そこで本稿では、集大成ともいえる仁寿舎利塔建立事業を取り上げ、その思想的な背景にも説き及びながら、仏教政策全体の歴史的な位置づけを目指す。 文帝の建塔は先立つ開皇年間の仁寿宮造営とも関連するなど、早期から計画されたものであり、轉輪聖王と称されるインドのアショーカ王が全土に八万四千の舎利塔を建てた事績を典拠とする。その目的は文帝自身が轉輪聖王とならんとすることにあったと考えられ、しかもそうした政策は、彼に始まったわけでもない。その淵源は北斉を経由し、梁武帝にまで遡り、それを踏襲している。つまり文帝の仏教政策は政権の禅譲を受けたはずの北周の存在を否定し、「梁―北斉―隋」という仏教による正統論を示すものであった。
  • 博物館資料としての再評価に向けて
    石谷 慎
    2023 年 25 巻 p. 55-79
    発行日: 2023/06/03
    公開日: 2023/07/21
    ジャーナル 認証あり
    義和団事件を機に二十世紀前半に蒐集された日本国内所蔵の中国古銅器は、中国での発掘調査が進み、考古学の研究対象が遺跡・遺物に移った今においても製作技術論や理化学分析の対象、あるいは博物館の展示資料として用いられている。しかし、国内所蔵の中国古銅器の多くは発見地や伝来が不明・不確かな遊離資料であり、なかには倣古銅器や偽古銅器が雑じる可能性もあるため、再評価し、研究・展示資料としての有効性を示す必要がある。そこで本稿では、宋代以降の古銅器蒐集と古器物学の歴史を整理したうえで、そこから学びとった形態・紋様・材質・制作の四つの要点に基づく観察と発掘資料との比較によって古銅器を評価し、来歴調査を通して製作年代や修理履歴を明らかにすることの重要性を実践的に示した。
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