輸送機関の中では,航空機,特に商業用定期旅客機は100万回出発当たり1-2件と事故率がきわめて低く,この状態が長年継続している.安全で,信頼性の高い輸送機関と考えられるが,増え続ける交通量の中で,事故率が一定であることは事故件数の増加を意味し安心とはいえない.現実に世界では年間30-40件の事故が発生している.これら事故の主たる原因はヒューマンエラーである.1回の飛行には,操縦者のみならず,航空交通管制官,航空機整備員,気象予報官等々多くの職種が関わっている.人間が関わっている限りそこにはヒューマンエラーがつきまとう.これは,システムの信頼性の低下を意味することになる.ここでは,具体的な航空事故事例を取り上げ,繰り返し発生し防止が難しいと思われる事故とその分析,及び防止可能と思われる事故事例について紹介し,航空機が輸送機関として信頼性を高め安全・安心となるための問題点を探る.前者には「し忘れる」「注意の不適切」など人間の特性が絡み,後者には,マン・マシンインターフェースの古典的事例から,教育の可能性までが含まれる.
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