保育学研究
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51 巻, 3 号
―特集 保育と特別支援―
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
第1部 特集論文
<総説>
原著<論文>
  • ―「障害特性論に基づく遊び」の批判的検討から―
    松井 剛太
    2013 年 51 巻 3 号 p. 295-306
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,障害のある子どもがいる保育にとって,すべての子どもが充実した遊びを行うための示唆を提起することであった。研究方法として,特別支援学校幼稚部の遊びを分析対象とした。その結果,以下のポイントが明らかになった。第1に障害特性論から脱却することが遊びの充実につながること,第2に,個々の子どもの遊びの構えに着目すること,第3に,遊び込むための構造化を考えること,第4に,集団のノリを生むための教師の役割を振り返ること,であった。最後に,障害特性論の脱却のためには,保育独自の個別の指導計画の開発が必要であることを提起した。
  • ―1960~70年代の「園内支援体制」に焦点を当てて―
    田中 謙
    2013 年 51 巻 3 号 p. 307-317
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は1960〜70年代の幼稚園における障害児保育から,「園内支援体制」の構築に関する特質を検討し,この時期に先駆的に障害児保育を行っていた幼稚園においては一斉保育から障害幼児を含む集団での新たな保育体制が構築され,「園内支援体制」の構築が生じていたことを明らかにすることを目的とした。結果から次の3点が明らかになった。(1)障害児保育実施の契機に関しては両園とも保護者の要求を受ける形で受け入れが始められた。(2)障害児保育の特徴としてはそれまでの一斉保育では受け止め切れなかった障害幼児を受け止めつつすべての幼児への保育を充実させることへとつながっていった。(3)障害幼児を含む集団で保育・支援がなされる園全体の「園内支援体制」の変容がなされていた。
  • ―共同注意・情動の共有に着目しての実践の分析より―
    近藤 えみ子, 山本 理絵
    2013 年 51 巻 3 号 p. 318-330
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    自閉症スペクトラム障害と診断を受けていくような2,3歳の子どもに対する集団での絵本の読み聞かせを通した発達支援の方法について,障害児通園施設における実践を共同注意と情動の共有の視点から分析し明らかにした。子どもの好きなことと絵本を結びつけ,集団で楽しい雰囲気で絵本の読み聞かせを続けていくこと,毎日同じ時間に同じスタイルで読み,わかりやすく,できてほめられて嬉しい場面を集団の中につくり,そばにいる特定の大人と意識的に三項関係をつくり注意や情動を共有できるようにしていくことが重要である。
  • ―排除する子どもと集団の変容に着目して―
    浜谷 直人, 五十嵐 元子, 芦澤 清音
    2013 年 51 巻 3 号 p. 331-342
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,年長クラスの特別支援対象児が友達から排除された初期の状態から,インクルージブな状態になるまでの,友達関係と他の子どもの変容,それを促した保育者の取り組みを描いた事例研究である。4月当初,リーダー的な男児を中心とした小集団が固定的関係をつくり支援児を排除していた。担任は,多様な活動を提供して友達関係に揺さぶりをかけた。その結果,活動を媒介とした新たな友達関係が生じて,しだいに支援児と友達とのかかわりが生まれ,クラス自体がインクルーシブになった。従来,統合保育の実践研究では,支援児への個的支援と,集団に適応する過程を描くことが多かったが,本研究は,周囲の友達の変容に注目して詳細に描いた点に意義がある。
  • ―専門機関の実践研修を受講した研修生の視点から―
    藤原 里美
    2013 年 51 巻 3 号 p. 343-354
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,発達障害児に対する保育実践能力の尺度項目を作成し,特別支援教育に対する実践能力について障害児保育を経験した保育士の視点から明らかにすることである。対象の保育士は,東京都小児総合医療センター幼児デイケアで実施している「発達障害児の保育実践研修プログラム」に参加した研修生16名で,研修後の実践についての質問紙調査を実施した。回答の分析の結果,子どもの直接支援の局面を示す4つのカテゴリーと,具体的な支援方法を示す24のサブカテゴリー,及び園の連携の局面を示す2つのカテゴリーと,具体的な実践方法を示す10のサブカテゴリーが抽出された。その結果を基にインタビューガイドを作成し,研修生の中でも各園でリーダー的役割を担い実践を行っている4名の保育士にインタビューを実施した。その結果,「コーディネート能力」,「専門性」の2つのコアカテゴリーと,「園内連携」「周知」「学校との連携」「支援技術」「専門性の向上」という5つのカテゴリー,及び52のサブカテゴリーが分析され,発達障害児への保育実践能力項目として17の能力が示唆された。
  • ―Linked Systemにおける「アセスメント」から「目標設定」に焦点を当てて―
    真鍋 健
    2013 年 51 巻 3 号 p. 355-367
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    特別支援教育の展開に伴って,「個別の指導計画」の展開が大いに期待されている。しかし,保育者がそれらの計画を作成する際,適切な目標設定や支援方法の考案,さらには専門家との連携などに困難が生じている現状も指摘されている。本研究では,計画作成の一連のプロセスのうち「アセスメントから目標設定」に焦点を当て,特にアセスメント情報を集約・要約するツールの存在がもたらす影響を2つの事例を通して検討を行った。この事例の結果から,収集されたアセスメント情報を活用しながら,保育者・外部支援者の双方が「保育者のニーズ」と「幼児のニーズ」の丁寧なすり合わせを行うことが重要であることが示唆された。
  • ―コンサルテーション実施の「その後」に焦点を当てて―
    守 巧, 中野 圭子, 酒井 幸子
    2013 年 51 巻 3 号 p. 368-378
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,保育者の主体的な保育実践を導くコンサルテーションが成立するための要因を明らかにすることである。協働的なコンサルテーションでの専門家からの助言を,保育者が「その後」どのように検討し,「気になる子」の保育実践に発展・応用したのかを主体的な保育実践を導いたコンサルテーションの記録から分析した。結果,1)専門家による保育者の焦燥感の「引き受け」,2)行動の意味の言語化,3)保育者の主体的判断の促しと選択の余地の設定,が協働的な関係作りを成功させる要因として抽出された。併せて,「気になる子」への適切な対応や指導上の配慮としての保育実践が,保育者自身の主体性や専門性を向上するプロセスとして機能し得ることが明らかになった。
  • 阿部 美穂子
    2013 年 51 巻 3 号 p. 379-392
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,保育士の気になる子どもの保育に対する効力感を高めるための巡回相談の在り方を検討することを目的とする。12名の訪問者が,保育士による協議主体型の問題解決志向性コンサルテーション(PANPSコンサルテーション)システムを開発し,24か所の保育所(園)で巡回相談を実践した。アンケート調査の結果,コンサルテーションに参加した保育士の気になる子どもの保育効力感が,実践後に有意に向上した。保育士の意識が,専門家への依存者から,保育の主体者へと変容したことが示唆された。また,コンサルテーションに用いた「行動の分析&支援シート」は,保育士の主体的な取り組みを支え,気になる子どもの支援体制作りに寄与できるツールとなったことが分かった。
  • ―子ども,保護者,保育者・小学校教諭の3者の語りの質的分析より―
    佐藤 智恵
    2013 年 51 巻 3 号 p. 393-403
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,特別な支援を必要とする,ある一名の男児の,保育所から小学校への移行について,男児,保護者,保育者・小学校教諭の3者の語りを併せて質的に分析し,就学移行期の実相を描き出すことである。方法は,半構造的なインタビューを行った。分析により,それぞれが男児について異なる見方をしていたこと,男児にとって小学校での学習環境に困難さがあったこと,保護者との関係性において保育者と小学校教諭では差異があったことが浮かび上がった。また保育者と小学校教諭では「子どもの特性に合わせる」ことについて違いがあると考えられた。
第2部 委員会報告
第13回国際交流委員会企画シンポジウム報告
災害時における保育問題検討委員会企画シンポジウム報告
第3部 保育の歩み(その2)
英文目次
編集後記
奥付
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