保育学研究
Online ISSN : 2424-1679
Print ISSN : 1340-9808
ISSN-L : 1340-9808
52 巻, 3 号
―特集 子育て支援―
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
第1部 特集論文
<総説>
原著<論文>
  • ―支援者の母親規範意識と母親のエンパワメントに着目して―
    中谷 奈津子
    2014 年 52 巻 3 号 p. 319-331
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は母親のエンパワメントの観点から以下のことを明らかにする。地域子育て支援拠点事業の利用を通して母親にどのような変化がみられるか,母親の変化は属性や支援者の子育て支援観,母親規範意識などと関連するか,支援者の子育て支援観は支援者自らの母親規範意識と関連しないのか。全国の地域子育て支援拠点事業に協力を依頼し支援者と利用者を対象にアンケート調査を行った。調査の結果,拠点事業の利用によって,母親は育児負担の軽減,育児情報の取得と活用,仲間づくりを行っていることがわかった。母親の変化は支援者の子育て支援観よりも母親規範意識に影響される傾向にあること,支援者の母親規範意識は支援者自らの子育て支援観に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
  • ―支援職の「語り」の分析―
    星 三和子, 塩崎 美穂, 向井 美穂, 上垣内 伸子
    2014 年 52 巻 3 号 p. 332-343
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,地域子育て支援拠点における,困難や悩みをもつ親に対する介入的支援の実際について検討し,支援の課題と発展性を探ることである。来所者のなかで気になる親,相談のニーズのある親,虐待リスクのある親,生活困難の親,一人親,地域で孤立している親に焦点を当て,15か所の支援担当責任者に聞き取り調査を行った。その語りの分析の結果,地域子育て支援拠点が最初の支援へのアクセスの場として有効であり得ること,そのための条件として,支援者の多様なニーズへの感受性と柔軟な対応,実際面と心理面での支援,継続支援,他機関との連携,保育・福祉・精神保健の統合された支援概念の支援職集団での共有の必要性が示された。
  • 島津 礼子
    2014 年 52 巻 3 号 p. 344-354
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究では,「協同的な学び」こそが,子育て支援の実践を行う上でも重要ではないか,という観点から,幼稚園の「保育参加」に焦点を当てる。そこでの保護者の学びや戸惑いおよび保育者の学びや認識の変化などを関係論的に捉え明らかにすることにより,「保育参加」の意義を考察した。「保育参加」の観察および質問紙調査の分析結果として,保護者,保育者の双方が子どもへの理解を深めながら,子どもを共に育てるという認識を醸成していることが明らかになった。また,保護者が園の保育に参加する上での戸惑いや負担感も生じているが,これらの保護者や保育者の学びや葛藤,認識の変容は,レイブとウェンガーが提示した正統的周辺参加論に依拠すれば,協同的な学びの契機であると同時に,保育を行う実践共同体自体の変容や保育の質の向上の可能性を有することが明らかになった。
  • ―園内の「子育て相談」に対する保護者インタビューの考察から―
    高畑 芳美
    2014 年 52 巻 3 号 p. 355-364
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究では,2歳から6歳の子どもの保護者を対象に,幼稚園の子育て相談についてインタビューを実施した。その内容を,M-GTAにより質的分析を行ったところ,子どもの成長に応じて母親の意識の変容が明らかになった。幼稚園で行う子育て相談は,1対1のカウンセリング型にとどまることなく,子どもの様子を見ながらの気軽な相談場所であるようにすること,担任教諭との橋渡しや,地域の関係機関との調整等特別支援教育コーディネーターとしての役割も同時に担っていることが,示唆された。
  • ―親子ムーブメント活動を活用したプログラムの検討―
    阿部 美穂子
    2014 年 52 巻 3 号 p. 365-378
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究では,親が直接子どもとかかわりながら,子どもの社会的スキルを伸ばすための方法を学ぶことができる子育て支援について検討した。発達に気がかりがある子どもとその母親11組に対し,ムーブメント活動を活用して,社会的スキル獲得のための親子参加型の子育て支援プログラムを考案し,実践した結果,子どもの社会的スキル,及び母親の子育てに対する自信が有意に向上した。さらに,母親の感想や自由記述の分析から,実践の過程で,母親は教えられた子育てスキル以外に,自発的に多様な子育てスキルを考えて実行するようになったことが分かった。また,母親から,親子の楽しい成功体験を導く本プログラムは,分かりやすく,取り組みやすいものであることが報告された。
  • ―親と子の関係性に着目した「しつけ」への取り組み―
    寺田 恭子, 赤井 綾美, 小杉 知江, 藤崎 亜由子, 榊原 志保
    2014 年 52 巻 3 号 p. 379-390
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,人が本来持ち備えている「主体性」に着目し,家庭での「しつけ」を地域の子育て家庭が共有することを通して,「子どもの主体性を育てる」地域の子育て支援の課題を検討することを目的としている。行動理論に基づき感情を抑制する親支援プログラムを活用しながら地域で「親の主体性」に働きかける「しつけ」に取り組んだところ,受講後の親アンケート調査から親の変化として「子どもの主体受容」「親効力感の向上」「自尊感情の安定」「自己のふり返り」という4つの因子が認められた。地域の子育て家庭が「しつけ」を共有することによって,自己の「しつけ」へのふり返りだけではなく,他の親やスタッフとの相互作用により「親の主体性」が育ち,さらに親と子の相互作用によって「子どもの主体性」が育つ芽が示された。
  • ―ドイツにおける匿名の母子支援プロジェクト―
    柏木 恭典
    2014 年 52 巻 3 号 p. 391-401
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,子育て支援に対するドイツの赤ちゃんポストと匿名出産の隠された意義について明らかにすることをねらいとする。ドイツで最初の赤ちゃんポストを設置したのがシュテルニパルクである。それだけでなく,この団体はドイツで最初の匿名出産を実施している。だが根本的には,彼らは幾つかの幼稚園を運営する地域の民間教育団体である。いったい彼らのねらいは何か。私が明らかにしたのは,子育て支援と赤ちゃんポストの連関だけではない。保育とシュテルニパルクの実践の連関についても明らかにした。本研究ではシュテルニパルクの思想的背景に迫る。その結果,シュテルニパルクの思想は新教育に基づいているが,また同時に,批判理論に基づいているということが示される。本研究の帰結として,シュテルニパルクは単に赤ちゃんポストを設置しただけでなく,新たな子育て支援の可能性を示したことを主張する。
第2部 委員会報告
第14回国際交流委員会企画シンポジウム報告
課題研究委員会企画シンポジウム報告
第3部 保育の歩み(その2)
英文目次
編集後記
奥付
feedback
Top